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〈決意と悪意〉2
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会話が途切れたままの病室では、相変わらず携帯ゲームの音だけが響いている。
「辞めや!今度こそ本気や」
突然携帯の電源を切った虎太郎は、本気宣言と同時に携帯をベットに放り投げ。
それを見た秋人は口にこそ出さないが、如何にも疑いの眼差しを向けると「何や?疑ってんのか?シバくぞ!」と虎太郎はいつものように拳を見せつける。
「それなら練習手伝うよ~」
そそくさと秋人がギターを担ごうとすると「一人でええわ、俺が本気を出せば一人でも出来るようになるんや」と虎太郎はギターを取り返し、早速練習に向かった。
屋上で練習を再開した虎太郎は苦戦していたが、宣言通り簡単には諦めようとはしない。
もう弾き始めてから一時間は経とうとしていた頃「おっ‥‥、やっとるな~!邪魔するで~!」と見舞いに来た竜也が、笑顔で近寄る。
「何や竜か、邪魔するんやったら帰ってくれ」
そっけなく虎太郎が視線をギターに戻すと「せっかく合いに来たったのに冷たいな~!」と竜也は
たいして気にもしていない様子で、目の前に座り込む。
「からかいに来たの間違いやろ」
「違うわ!自慢しに来たんや」
自慢げに竜也は財布を取り出そうとするが「どうせまたパチンコやろ!俺は今日からマジで練習するんや邪魔するな」と練習を再開する虎太郎は、見ようともしない。
「冷たいな~!コレも見んのか~?」
悪戯な笑顔で土産を見せびらかす竜也に「それを先に出せや!シバくぞ」と虎太郎はコンビニの袋ごと土産を取り上げる。
「お~!パーツキングやん!」
袋から取り出した改造車専門誌の表紙を見ただけで、虎太郎のテンションはこの上ない。
「気が効くやろ~!ほれ開いてみ~」
イタズラっぽく手を出した竜也はページを開こうとするが「イヤ!今は見んぞ!」と両手で雑誌を閉じた虎太郎は、空を見上げ意地でも見ようとしない。
「何や?後のお楽しみか~?」
からかうように竜也は虎太郎の顔を覗き込むが「違うわ!さっき言うたやろ!俺はマジなんや!」と虎太郎は相手にしようとせず、ギターを弾き始める。
「何や~?何かオカシイな~?」
ニヤニヤと疑いの眼差しを向ける竜也に、虎太郎は黙れと言わんばかりの眼光で返答する。
二人がそんなやり取りをしていた頃、秋人は千夏の病室に来ていた。
オドオドといつもより落ち着きの無い秋人に「病室に来るなんて珍しいね」と千夏は笑いかけるが「そんな事ないよ~!たまたまだよ~」と秋人は下手な嘘を返し、視線すら合わせられない。
いつになく途切れ途切れな会話に、違和感は言うまでもない。
「ほら、そんな事よりも今日は良い天気だよ~」
ごまかすように秋人は窓の外を指差すが、実際はそれ程良い天気でもなく。
「何ソレ~!お見合いみたい~」と千夏は笑うが、秋人は上手く言葉も返せない。
「解った~、もしかして~告白?」
秋人の異変に気付いてか、千夏は場を和ますようにからかうが「違うよ~!なんでもないよ~!」と秋人は大袈裟に手を振りごまかす。
「今日は虎君一緒じゃないの?」
何処となく気掛かりなのか、さりげなく尋ねる千夏に「何かマジで練習するって屋上行ってから帰って来ないんだよ~」と秋人は隠す事も無く笑い飛ばす。
その頃まだ虎太郎の戻って来ない病室では、着替えを持って来た虎太郎の母親が「すいません‥‥、うちの子が迷惑掛けていませんか‥‥」と心配そうに、話し掛けた看護婦に頭を下げる。
「いえいえ、何も問題無いですよ。ほとんど病室に居ないですし」
「えっ‥‥?」
驚いた様子で聞き直す母親に「病室一緒の子と屋上でギター練習しているらしいですよ」と看護婦は社交的に笑顔を返す。
「そうですか‥‥」
これまでに我が子が起こした素行の悪さを思い出してか、涙声の母親は少し安心したように頷く。
虎太郎が本気で何かに取り組む事を誰よりも望み、誰よりも喜んでいたのが母親なのはその姿から明白だった。
その頃ヒマを持て余した秋人の悪友三人は、ファミレスで時間を浪費するのにも飽き始めていた。
「もう炭酸要らんわ~」
「はい俺、炭酸飲まれへん~」
「何で~?めっちゃ美味いやん~」
「あんなん飲む物違います~!知らんの骨溶けるんやで!」
「溶ける訳ないやろ!それやったら皆溶けてるやろ」
「はい知らんだけ~」
根拠の無い噂話で三人は馬鹿騒ぎするが、やはり間は持たない。
「いじる奴おらんとヒマやわ~」
「ゲーセンでも行くか~?」
「ゲーセンなんか行かへんよ~、携帯で充分です~!」
「イタ電してみようや!」
一人が秋人に電話すると、二人は楽しそうに顔を近づけ聞き耳を立てる。
「おい俺や!事故って金が要るから貸してくれ」
「え~?無理だよ~、お金無いよ~」
電話越しでも解る秋人の情けない声に「びびったやろ~!これが俺俺詐欺や~!」と三人は他の客を気にする様子も無く、ゲラゲラと馬鹿騒ぎしている。
「俺達ヒマやから今すぐこっち来て~さ!」
「え~?無理だよ~、骨折れてるし~、だったら病院に来れば会えるよ」
「そっちにうっとうしい奴居るから俺達行きたくないな~」
「もしかして虎君の事?良い人だよ~、好きな子の為にギター猛練習する位だし」
「何ソレ?どんな子~?どうせ金髪とかちゃうん~?」
「普通の子だよ~!同じ病院に入院してる」
「ええわ~、そんなん関係無いし~」
どうでもいいと馬鹿にしたように三人は笑うが、視線を合わす表情は明らかな悪意と悪巧みに満ちていた。
「辞めや!今度こそ本気や」
突然携帯の電源を切った虎太郎は、本気宣言と同時に携帯をベットに放り投げ。
それを見た秋人は口にこそ出さないが、如何にも疑いの眼差しを向けると「何や?疑ってんのか?シバくぞ!」と虎太郎はいつものように拳を見せつける。
「それなら練習手伝うよ~」
そそくさと秋人がギターを担ごうとすると「一人でええわ、俺が本気を出せば一人でも出来るようになるんや」と虎太郎はギターを取り返し、早速練習に向かった。
屋上で練習を再開した虎太郎は苦戦していたが、宣言通り簡単には諦めようとはしない。
もう弾き始めてから一時間は経とうとしていた頃「おっ‥‥、やっとるな~!邪魔するで~!」と見舞いに来た竜也が、笑顔で近寄る。
「何や竜か、邪魔するんやったら帰ってくれ」
そっけなく虎太郎が視線をギターに戻すと「せっかく合いに来たったのに冷たいな~!」と竜也は
たいして気にもしていない様子で、目の前に座り込む。
「からかいに来たの間違いやろ」
「違うわ!自慢しに来たんや」
自慢げに竜也は財布を取り出そうとするが「どうせまたパチンコやろ!俺は今日からマジで練習するんや邪魔するな」と練習を再開する虎太郎は、見ようともしない。
「冷たいな~!コレも見んのか~?」
悪戯な笑顔で土産を見せびらかす竜也に「それを先に出せや!シバくぞ」と虎太郎はコンビニの袋ごと土産を取り上げる。
「お~!パーツキングやん!」
袋から取り出した改造車専門誌の表紙を見ただけで、虎太郎のテンションはこの上ない。
「気が効くやろ~!ほれ開いてみ~」
イタズラっぽく手を出した竜也はページを開こうとするが「イヤ!今は見んぞ!」と両手で雑誌を閉じた虎太郎は、空を見上げ意地でも見ようとしない。
「何や?後のお楽しみか~?」
からかうように竜也は虎太郎の顔を覗き込むが「違うわ!さっき言うたやろ!俺はマジなんや!」と虎太郎は相手にしようとせず、ギターを弾き始める。
「何や~?何かオカシイな~?」
ニヤニヤと疑いの眼差しを向ける竜也に、虎太郎は黙れと言わんばかりの眼光で返答する。
二人がそんなやり取りをしていた頃、秋人は千夏の病室に来ていた。
オドオドといつもより落ち着きの無い秋人に「病室に来るなんて珍しいね」と千夏は笑いかけるが「そんな事ないよ~!たまたまだよ~」と秋人は下手な嘘を返し、視線すら合わせられない。
いつになく途切れ途切れな会話に、違和感は言うまでもない。
「ほら、そんな事よりも今日は良い天気だよ~」
ごまかすように秋人は窓の外を指差すが、実際はそれ程良い天気でもなく。
「何ソレ~!お見合いみたい~」と千夏は笑うが、秋人は上手く言葉も返せない。
「解った~、もしかして~告白?」
秋人の異変に気付いてか、千夏は場を和ますようにからかうが「違うよ~!なんでもないよ~!」と秋人は大袈裟に手を振りごまかす。
「今日は虎君一緒じゃないの?」
何処となく気掛かりなのか、さりげなく尋ねる千夏に「何かマジで練習するって屋上行ってから帰って来ないんだよ~」と秋人は隠す事も無く笑い飛ばす。
その頃まだ虎太郎の戻って来ない病室では、着替えを持って来た虎太郎の母親が「すいません‥‥、うちの子が迷惑掛けていませんか‥‥」と心配そうに、話し掛けた看護婦に頭を下げる。
「いえいえ、何も問題無いですよ。ほとんど病室に居ないですし」
「えっ‥‥?」
驚いた様子で聞き直す母親に「病室一緒の子と屋上でギター練習しているらしいですよ」と看護婦は社交的に笑顔を返す。
「そうですか‥‥」
これまでに我が子が起こした素行の悪さを思い出してか、涙声の母親は少し安心したように頷く。
虎太郎が本気で何かに取り組む事を誰よりも望み、誰よりも喜んでいたのが母親なのはその姿から明白だった。
その頃ヒマを持て余した秋人の悪友三人は、ファミレスで時間を浪費するのにも飽き始めていた。
「もう炭酸要らんわ~」
「はい俺、炭酸飲まれへん~」
「何で~?めっちゃ美味いやん~」
「あんなん飲む物違います~!知らんの骨溶けるんやで!」
「溶ける訳ないやろ!それやったら皆溶けてるやろ」
「はい知らんだけ~」
根拠の無い噂話で三人は馬鹿騒ぎするが、やはり間は持たない。
「いじる奴おらんとヒマやわ~」
「ゲーセンでも行くか~?」
「ゲーセンなんか行かへんよ~、携帯で充分です~!」
「イタ電してみようや!」
一人が秋人に電話すると、二人は楽しそうに顔を近づけ聞き耳を立てる。
「おい俺や!事故って金が要るから貸してくれ」
「え~?無理だよ~、お金無いよ~」
電話越しでも解る秋人の情けない声に「びびったやろ~!これが俺俺詐欺や~!」と三人は他の客を気にする様子も無く、ゲラゲラと馬鹿騒ぎしている。
「俺達ヒマやから今すぐこっち来て~さ!」
「え~?無理だよ~、骨折れてるし~、だったら病院に来れば会えるよ」
「そっちにうっとうしい奴居るから俺達行きたくないな~」
「もしかして虎君の事?良い人だよ~、好きな子の為にギター猛練習する位だし」
「何ソレ?どんな子~?どうせ金髪とかちゃうん~?」
「普通の子だよ~!同じ病院に入院してる」
「ええわ~、そんなん関係無いし~」
どうでもいいと馬鹿にしたように三人は笑うが、視線を合わす表情は明らかな悪意と悪巧みに満ちていた。
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