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〈真人間の決断〉1
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「あ~!解らん!解らんな~!」
千夏と出会った翌日の朝から虎太郎は口癖のように同じ言葉を繰り返しているが、秋人が理由を聞くと「シバくぞ!」と脅し説明しようとはしない。
聞きたくても聞けないもどかしさからか、秋人が視線をチラチラと虎太郎に送っていると「お前付き合ってる奴おるか?」と虎太郎は突然意外な質問を投げ掛ける。
「そんなのずっと居ないよ~」
女っ気の無い人生を振り返るように嘆く秋人が、病室の天井を見上げていると「俺は付き合った奴10人以上おるわ!今はフリーやけどな」と虎太郎は自慢げに彼女との画像を携帯で見せつけ、からかうように笑う。
「そんなに付き合った事があったら解らない事なんて無いはずだよ~」
まだ信じていなさそうな秋人に「シバくぞ疑ってんのか!あんなタイプは付き合った事ないから解らんのや!」と虎太郎は冗談っぽく握り拳を突き立てる。
鈍い秋人でも、やっと虎太郎が悩む理由に気付き始めたのか「もしかして‥‥、千夏ちゃん‥‥?」と無神経な質問で、余計な事を聞くなと言わんばかりに虎太郎の鋭い視線を受けている。
「ケンカする人が嫌いって男らしい奴はアカンって事やろ!」
まるで秋人の質問が無かったかのように、虎太郎は一方的に話しを続け。
「アカンわ‥‥、気になって夜も寝られん‥‥、これは何なんや?」と自問自答のように呟きながら、枕を握り潰している。
「それ絶対恋だよ~!」
「違うわ!俺がそんな軟弱な訳ないやろ!」
恋愛に対する変なこだわりが有るのか、認めようとはしない虎太郎に「好きになるのは良いことだよ~」と反論する秋人は一般論を振りかざす。
「アホか!好かれる事は有っても俺が好きになる事は無いわ!」
「そんなの絶対オカシイよ~!もしかして‥‥、自分から告白したこと無いとか‥‥」
恐る恐る尋ねる秋人に「無いに決まってるやろ!」と言い切る虎太郎は一睨みして、秋人はそれ以上何も言えなくなってしまう。
数分間気まずい沈黙が病室に続くと「じゃあ‥‥、そろそろ合いに行こうかな~」と秋人は小声で呟き、試すように病室を去って行く。
少し手を上げ虎太郎は呼び止めようとしたが、好きになったと認めたくないからかごまかすようにバイク雑誌を手に取る。
数分後見るからに落ち着きを無くした虎太郎は、居てもたっても居られなさそうに後を追う。
リハビリ室前に着いた虎太郎は立ち止まり、扉に手を掛けては下ろし掛けては下ろしを繰り返し。
中に入るのをためらっていたが、室内から聞こえてくる笑い声に誘われるようにドアを開ける。
「やっぱり~、来ると思ったよ~」
待ち構えていたのか視線の合った秋人が笑顔を送ると、虎太郎は気まずそうに近寄り「オウ‥‥、一人で居っても暇やからな」と強がり、千夏には少し余所余所しく会釈を返す。
「歌詞進んでるか?」
「うん、今ちょっとづつ書いてる」
「いつでも良いで待っとるわ」
さりげない二人の会話に「オ~!見たい見たい!ソレ気になってたんだよ~」と秋人が割り込むと虎太郎は邪魔するなと言わんばかりに一睨みするが、秋人は全く気付いていない。
「まだ完成してないから秘密~!」
「え~!気になるよ~!」
まるで駄々っ子のように食い下がる秋人に「駄目ったら駄目~!」と千夏はからかうように笑顔を返す。
「さあ-、今日も頑張ってこようかな~」
そう言って千夏が患者の近くに駆け寄って行くと「何を頑張るんや?」と気になって仕方ない様子の虎太郎は、秋人に小声で尋ねる。
「ソレは知らないけど~、見てたらきっと解ると思うよ」
秋人の言うように黙って眺める虎太郎の立ち姿は、仁王のように患者を威圧していく。
「‥‥そういえば、いつも何か手伝っていたかな‥‥」
「大丈夫ですか?」
さりげなく声を掛け患者に手を貸す千夏の姿を見た虎太郎は、秋人に返事を返すでもなく見とれ立ち尽くす。
「もしも~し~?虎君?」
全く反応の無い虎太郎を横目に、秋人は不思議そうに首を傾げていたが「やっぱりそうだ~」と確信したかのように一人頷き。
そんな秋人の異変にも気付けない程、虎太郎は幸せそうに見とれていたが
「いつもありがとうね本当助かるよ」
「こちらこそ勉強になるから助かります」と親しげに千夏と話すリハビリ補助をしていた職員とのやり取りを見た瞬間、虎太郎の表情は一変していく。
「‥‥アイツ誰や?」
付き合っている訳でもないのに、虎太郎の怒りは目に見える程溢れている。
「えっ?何が?」
きょろきょろと秋人は反射的に周りを見渡すが、その理由を理解してはいない。
虎太郎の心配を余所に、親しげな会話を続ける二人は「こういう時はこんな感じで補助するんですよ」と手を触れ合い、更に強く虎太郎の怒りを受けている。
「今の見たか?セクハラや」
「え~?教えてもらってただけだよ~」
宥めようとする秋人を振りほどき、虎太郎は無言で詰め寄って行く。
「オイ!今触ったやろ!」
突然の怒号に、30代位の職員は返事も返せない程驚いてる。
「何を言ってるんだ?」
千夏と出会った翌日の朝から虎太郎は口癖のように同じ言葉を繰り返しているが、秋人が理由を聞くと「シバくぞ!」と脅し説明しようとはしない。
聞きたくても聞けないもどかしさからか、秋人が視線をチラチラと虎太郎に送っていると「お前付き合ってる奴おるか?」と虎太郎は突然意外な質問を投げ掛ける。
「そんなのずっと居ないよ~」
女っ気の無い人生を振り返るように嘆く秋人が、病室の天井を見上げていると「俺は付き合った奴10人以上おるわ!今はフリーやけどな」と虎太郎は自慢げに彼女との画像を携帯で見せつけ、からかうように笑う。
「そんなに付き合った事があったら解らない事なんて無いはずだよ~」
まだ信じていなさそうな秋人に「シバくぞ疑ってんのか!あんなタイプは付き合った事ないから解らんのや!」と虎太郎は冗談っぽく握り拳を突き立てる。
鈍い秋人でも、やっと虎太郎が悩む理由に気付き始めたのか「もしかして‥‥、千夏ちゃん‥‥?」と無神経な質問で、余計な事を聞くなと言わんばかりに虎太郎の鋭い視線を受けている。
「ケンカする人が嫌いって男らしい奴はアカンって事やろ!」
まるで秋人の質問が無かったかのように、虎太郎は一方的に話しを続け。
「アカンわ‥‥、気になって夜も寝られん‥‥、これは何なんや?」と自問自答のように呟きながら、枕を握り潰している。
「それ絶対恋だよ~!」
「違うわ!俺がそんな軟弱な訳ないやろ!」
恋愛に対する変なこだわりが有るのか、認めようとはしない虎太郎に「好きになるのは良いことだよ~」と反論する秋人は一般論を振りかざす。
「アホか!好かれる事は有っても俺が好きになる事は無いわ!」
「そんなの絶対オカシイよ~!もしかして‥‥、自分から告白したこと無いとか‥‥」
恐る恐る尋ねる秋人に「無いに決まってるやろ!」と言い切る虎太郎は一睨みして、秋人はそれ以上何も言えなくなってしまう。
数分間気まずい沈黙が病室に続くと「じゃあ‥‥、そろそろ合いに行こうかな~」と秋人は小声で呟き、試すように病室を去って行く。
少し手を上げ虎太郎は呼び止めようとしたが、好きになったと認めたくないからかごまかすようにバイク雑誌を手に取る。
数分後見るからに落ち着きを無くした虎太郎は、居てもたっても居られなさそうに後を追う。
リハビリ室前に着いた虎太郎は立ち止まり、扉に手を掛けては下ろし掛けては下ろしを繰り返し。
中に入るのをためらっていたが、室内から聞こえてくる笑い声に誘われるようにドアを開ける。
「やっぱり~、来ると思ったよ~」
待ち構えていたのか視線の合った秋人が笑顔を送ると、虎太郎は気まずそうに近寄り「オウ‥‥、一人で居っても暇やからな」と強がり、千夏には少し余所余所しく会釈を返す。
「歌詞進んでるか?」
「うん、今ちょっとづつ書いてる」
「いつでも良いで待っとるわ」
さりげない二人の会話に「オ~!見たい見たい!ソレ気になってたんだよ~」と秋人が割り込むと虎太郎は邪魔するなと言わんばかりに一睨みするが、秋人は全く気付いていない。
「まだ完成してないから秘密~!」
「え~!気になるよ~!」
まるで駄々っ子のように食い下がる秋人に「駄目ったら駄目~!」と千夏はからかうように笑顔を返す。
「さあ-、今日も頑張ってこようかな~」
そう言って千夏が患者の近くに駆け寄って行くと「何を頑張るんや?」と気になって仕方ない様子の虎太郎は、秋人に小声で尋ねる。
「ソレは知らないけど~、見てたらきっと解ると思うよ」
秋人の言うように黙って眺める虎太郎の立ち姿は、仁王のように患者を威圧していく。
「‥‥そういえば、いつも何か手伝っていたかな‥‥」
「大丈夫ですか?」
さりげなく声を掛け患者に手を貸す千夏の姿を見た虎太郎は、秋人に返事を返すでもなく見とれ立ち尽くす。
「もしも~し~?虎君?」
全く反応の無い虎太郎を横目に、秋人は不思議そうに首を傾げていたが「やっぱりそうだ~」と確信したかのように一人頷き。
そんな秋人の異変にも気付けない程、虎太郎は幸せそうに見とれていたが
「いつもありがとうね本当助かるよ」
「こちらこそ勉強になるから助かります」と親しげに千夏と話すリハビリ補助をしていた職員とのやり取りを見た瞬間、虎太郎の表情は一変していく。
「‥‥アイツ誰や?」
付き合っている訳でもないのに、虎太郎の怒りは目に見える程溢れている。
「えっ?何が?」
きょろきょろと秋人は反射的に周りを見渡すが、その理由を理解してはいない。
虎太郎の心配を余所に、親しげな会話を続ける二人は「こういう時はこんな感じで補助するんですよ」と手を触れ合い、更に強く虎太郎の怒りを受けている。
「今の見たか?セクハラや」
「え~?教えてもらってただけだよ~」
宥めようとする秋人を振りほどき、虎太郎は無言で詰め寄って行く。
「オイ!今触ったやろ!」
突然の怒号に、30代位の職員は返事も返せない程驚いてる。
「何を言ってるんだ?」
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