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<魔法の在る世界>

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「エミリ大丈夫か? 」

「皆が……、酷い…… 酷すぎる…… 」

倒れたまま全く動かない仲間達を見つめ、エミリの表情は絶望に歪んでいく。

「魔法の有る世界だから、きっと大丈夫だ」

俺の言葉にエミリは静かに頷き、倒れたトウを抱き抱える。

実際は死者を蘇らせる魔法なんて、聞いた事も無いし。

其れ以前に目前のクソ野郎を、倒せるかすら怪しい。

前回勝った方法の空間圧縮魔法でさえ、何も無かったかの様に立ち上がっている。

今の俺に出来る能力で、何か倒す方法は無いのか。

そんな事を考えていた時、触手に変わったセトの右腕が巨大化。

まるで食虫植物が捕食する様に、倒れた仲間達を飲み込んでいく。

手前に居たガルの三人、ガオンと弟子達。

次々に飲み込まれていき、残されたのは俺とエミリとトウだけだった。

だが俺だって、仲間が飲み込まれていくのを只眺めていた訳ではない。

空間圧縮魔法を結界の様に使い、仲間達を覆ったのだ。

咄嗟だったので、防御効果がどれ位在るかなんて解らないし。

魔法を解除しようものなら、直ぐに消化されてしまうだろう。

其れでも触手に飲み込まれない様に、エミリとトウ俺にも同じ空間圧縮魔法を大きめに掛け。

かぶり付き襲い来る触手は空間圧縮魔法に遮られ、触手を塞ぐ事は成功だった。

こういう使用方法も有りだと解れば、セトの攻撃にも対応は可能だ。

そのまま魔法の集中を保ち、次の手を考える。

ざまあみやがれ。
そのままだが、名付けて結界防御魔法だ。

予想外の状況だったが、手も足も出ないとは此の事だろ。

巨大化した触手でも食いきれない俺達を、セトは不思議そうに見つめ歯軋りしている。

「グギギ…… 」

「マオーさん凄い、攻撃が防がれてる」

「言った通りだろ、魔法の在る世界だからな」

さも当然の様に答えたが、上手く行き過ぎて驚いたのは俺自身。

結果オーライのラッキーパンチだったが、セトのグギギ……が聞けて最高の気分だ。
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