上 下
127 / 143

<前例>

しおりを挟む
「うあぁあ-!!」

粘糸には、死にかけた悪い前例が在るから。

嫌な予感というのか、予想はしていたが最悪の結果だった。

先に階段を登り進んでいたゴブド達を、ガオンと俺が追う。

其処までは良かったが、頂上前の道は塞がれていて。

立ち止まっていたゴブド達に追い付いたガオンが、塞いでいた何かを戦斧で打ち飛ばす。

粘糸で繋がった俺が、其の勢いでぶっ飛ばされたのは云うまでもなく。

こうしてガオンを追い越した俺は、一位を手に入れたと同時に塔頂上の空に舞い。

恐怖の悲鳴を上げながら、落ちていくのだった。

「うあぁあ-!!」

ゴブドの粘糸で受け止められた俺は、何事も無かったかの様に。

「着いたな…… 」

そう言って、魔王らしく冷静を装おう。

「ガハハ流石は魔王様、遊びでも一位ですな」

「ああ、……当然だ」

さも狙ってやったみたいな空気にはしたが、こっちは遊びじゃね-よ。

ゴブドのお陰で助かったが、マジで死ぬかと思ったわ。


だが落ち着いて辺りを見渡すと、今の出来事が遊びだったと気付く。

見覚えの在る人達が、傷を負い倒れたままピクリとも動かない。

ガルのメンバーだ。
まさか死んでいるのか。
異世界なんだから回復薬とか魔法とか、何か無いか。
焦り考えても、人を生き返らす方法なんて知らず。

見知った人達の死に初めて直面した俺は硬直し、動揺を隠せない。

其れと同時に、エミリとトウを見付ける。

エミリに怪我は無く、微かに呼吸していて。

其のエミリを守る様に、エミリの前に倒れたトウは必死に立ち上がろうともがいている。

此処に何故ガルのメンバーが居るのかは解らないが、ガルのメンバーやトウが倒れている理由は明白だった。

トウをニヤついた表情で見下ろすソイツは、見た目は魔族の様に変わり果て禍々しい。

だが見間違うはずがない、二度もエミリを襲ったクソ野郎だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで

一本橋
恋愛
 ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。  その犯人は俺だったらしい。  見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。  罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。  噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。  その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。  慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

わがおろか ~我がままな女、愚かなおっさんに苦悩する~

かみやなおあき
恋愛
「女に愛されたい」と願い死んだ男は異世界で運命の出会いをする。しかしその女には心に決めた愛する王子様がいた。 『わがおろか』これは我がままにもほどがある女と、愚かにもほどがある男の物語。男主人公視点と女主人公視点で進行していきます。 男主人公 「俺は女にフラれ絶望死したが童貞であったため異世界に転生することができた。 与えられた試練は『女に愛されよ』だ。 するとこの転生先の世界には俺を愛してくれる女が一人はいるということか! 最高だ! 可能性があるのなら俺は心の底から頑張れるよ! 前世ではそんな可能性が皆無だったからね! おっ! あそこに悪党に襲われ貞操の危機な美少女が! ということはあれが俺の嫁! そうに決まっている! なになに? 私には使命がある? お任せあれ! 命を掛けて君を守りそして共に使命を果たそう! だってそれが俺の存在そのものだもの! さぁ冒険だ! 君と俺の幸せな未来に向かって、レディゴー!」 女主人公 「私は性悪女のせいで王子との婚約を破棄させられ、辺境に追放となり挙句の果てには力までも封印されてしまう最低最悪な状況に陥った。 こうなったのも私が性悪女の王子暗殺計画の陰謀を知ってしまったからだ。 ああ王子よ! おお心から尊敬する愛しの王子! たとえこの身がどうなろうとも、あなたのことは私が御守りいたします! 偽王妃になろうとしている性悪女の陰謀を打破した暁には私こそが真王妃となってあなたと結ばれるのです! えっなにこのおじさん? 私の力になりたいって? うーむなんか不気味だなこいつ。 まぁきっと私が美人で好きになったから力になりたいわけよね。 ならば王子のためにあなたの力を借りましょ。 そう考えるとこんなに都合のいい存在はいないわね。 あなたの使命は私が王妃に返り咲くことを手伝うこと。 でもこのことを教えるとそのやる気が失われるから秘密にします! なに? それはよくないって? 良いのよ、そんなの、こんなの。 だってこいつは私に惚れているんだからさ!」 全111話の不定休で朝7時30分頃に投下。

処理中です...