転生者だか魔王だか知らんが俺の娘はオマエにはやらん

雨実 和兎

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<つぼみ>

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ルミニー達との戦闘で弱っているのか、明らかに触手の動きは鈍く。

這いずる様に蠢き、今のところ攻撃はしてこない。

落ち着き見直すと、エミリだけは微かに息をしているので死んではいなく。

この状況なら、自分だけ降りて助けを呼ぶ事は簡単だろう。

勿論エミリを一人にして、置いていくつもりは微塵も無いし

自分達を助けに来てくれたルミニー達を、放っておくつもりもない。

問題は一人も運びだす事が出来ない、此の無力な小さな身体だ。

ルミニー達の遺体を前にどうするべきか、全く正解が思い浮かばない。

こんな自分にだって、奥の手が無い訳ではなく。

一人甦らす事が出来るのだ。
どんな死に方だろうと、確実に完全に。

使うべきか。
其れは今か。

もし生き返らすなら、誰を選ぶか。
其れは不公平にならないか。

此の魔物は本当に、もう動かないのか。

選択出来ない。
一つ間違えれば、今度こそ本当に全滅だろう。

霞む視界から察するに、まだ毒は消えてそうにない。

取り敢えず毒が消え、エミリが目覚めるのを待つべきか。

早く起こして、一旦脱出するべきか。

正解の出ない思考ばかりが加速して、行動に移せず。

ただエミリが生きている事に安心して、見つめていた時だった。

「ガハハ!そんな事より修行だ、ゴブド今から全員倒すぞ。 どうやら強者が上に居るぞ、ガハハ~!!」

聞こえてきたのは、ガオンの高らかな笑い声。

特長の在る、あの笑い声。

聞き間違い様も無い、間違いなくガオンだ。

まさかマオーと探しに来てくれていたのか、だが修行とか聞こえたのは気のせいか。

どちらにしても、ガオンが登ってくるのなら待つ方が良いだろう。

後は、もう何も起きない事を祈るしかない。



だか心配そうにエミリを見つめているトウは、気付けなかった。

まだ自分達に降りかかるであろう危険、その妖しく鼓動するつぼみに。
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