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<祈り>
しおりを挟む捕らえられた状態のまま、エミリは眠る様に意識を失う。
どれだけ名前を叫んでも、其の目蓋は閉じたまま開かなかった。
幾らエミリが魔物からの攻撃を受けないとは云っても、不安要素は在る。
例えば生き埋めだとか、高所からの転落だ。
魔物からの攻撃と認識されない様な場合なら、どうなるかなんて解らない。
だからこそ、絶対に自分が守ると決めていた。
「……こんな事で、こんな事で諦められるか-!! 」
神様が本当に居るのなら、現実世界で救われなかった分も。
此処がどんな世界だろうと、エミリは幸せにならないとおかしいだろう。
好きな人と添い遂げ、笑顔溢れる家庭で子供を育てる。
そんな何処にでも在る普通の幸せ、其れを望んでいるだけなのに…… 。
魔法でも奇跡でも何でも良い、頼むからエミリだけ。
エミリだけは救ってくれ。
祈る様に必死の追撃。
増え続けていく触手をくぐり抜け、エミリに手を伸ばす。
だが、どれだけ手を伸ばしてもエミリには届かない。
「ゲホッ……、グフッ……」
また目眩がしてきて、羽も皮膚から崩れ落ち思う様に動かない。
こんな時だというのに、もう次の死期が近付いているのか……。
這いつくばり、其れでもエミリの方に近付いていく。
「ゲホッ……絶対に認めない、認めないぞ。 こんな結末は。 何度死んだとしても、エミリだけは…… 」
薄れていく意識の中。
大きな斬撃音と共に、聞き覚えの在る声が聞こえてくる。
「変わった鳥だとは思ってたけど、 ……アンタも中々無茶な事するね」
閉じ掛けた朧気な瞳に映るのは、駆け上がって来たルミニー達一行だった。
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