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<後ろめたさ>

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死霊使いの能力は、過去の文献でも数人しか居らず。

忌み嫌われ罪人に堕ちた者。
恐れられ街を追放された者。
逃げる様に街を去った者。
其の何れもが、他の人間とは相入れず。
孤独な生涯で在った。

両親が能力の使用禁止をグレンに告げた時、グレンは「どんな姿になってもベンは家族だろ」と強く反発した。

「家族だからこそだよ…… 」

其の両親の言葉を渋々受け入れ、ベンは埋葬される事になり。

それからのグレンは、一人部屋に籠る様になるのだった。

家から出ようとしないグレンと、出たとしても受け入れてはくれない世界。
どちらにしても、両親の心配は絶えず。

まだ街の人間全員に知られた訳ではない間に、そう考えた両親は資金を与え。

不安を抱えたまま、グレンを隣国の獅獣王国へと送り出す事を決めたのだった。

旅立ちの日。
両親との約束を破ったグレンは、ベンを掘り起こし。

同行者に気付かれない様に、ベンを大きな布で隠して馬車に乗り込む。

着いた獅獣王国は、動物好きなグレンにとって悪い国ではなかった。

人間達の国と戦争になるかもしれないという不安は在ったが、獣人達は気さくで明るく。

連れ添うベンも心無しか、喜んでいる様に見える。

姿は醜い骸骨になっても、グレンには解るのだった。

其れでも隠さなければ、生きていけない後ろめたさ抱えながら。

用心して、住まいは獅獣王国の町外れに家を借りた。

獣人とはいえベンの骸骨姿を見られれば、魔物と間違えられ退治されかねないからだ。

会えない両親の心配を他所に、グレンの生活は安定していた。

獅獣王国で登録した冒険者ギルドの依頼が、収入源なのだが。

レアで在る死霊使いの能力は、汎用性が高く。

おそらく冒険者であろう、亡くなった骸骨を使い。

其の類いまれなる能力で、難なく依頼をこなしていく。

当然。獣人にも能力が見付からない様に、注意は怠っていない。

人気の有る依頼を避け、人里離れた依頼ばかりである。

其れでも骸骨の亡霊が現れるらしいと、多少の噂にはなってはいた。

だが獣人が襲われる様な害は無いので、ギルドでの依頼案件にも上がらず。

其れなりに暮らしていた時、其の生活が一変する出来事が起きるのだった。

「待てよベン、早いぞ」

夕方の日課で、グレンがベンと散歩に出掛けた時。

先に駆け出したベンが、いつものように戻って来ず。

冒険者と遭遇して襲われているのかと、グレンは慌てて後を追い。

離れた場所に見付けたベンは倒れていて、誰かが隣に座っている。

「ベン-!! 」

悲痛な叫び声を上げ。
必死で駆け寄るグレンが目にしたのは。

グレンの声に驚く獣人の女性と、腹を撫でられ喜ぶベンの姿だった。
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