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<グレンとベン>

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まだ魔王グレン・ルーファスが、魔王と呼ばれていなかった頃。

幼き頃のグレン・ルーファスは、只の人間だった。

グレンの父親は魔法学校の教師で、二属性持ち。

魔法騎士をしていた事も在り、生徒からの尊敬は高く。
当然、息子であるグレンの魔法能力も期待されていた。

だがグレンは、まだ能力に目覚めてはおらず。

特別なスキルや魔法を使えるでは無くても、家族は暖かく能力が開花する日を見守っていた。

「早いぞ、待て~ベン」

愛犬を追いかけ、笑顔で川沿いを駆けるグレン。

羨望の眼差しを向ける人間と居るよりも、愛犬ベンと居る方が楽しく。

其れはグレンが少年になっても変わらず、其の頃ベンは老犬となっていた。

「今日も川原に行こうかベン」

ベンは健気に尻尾を振りグレンの後を歩くが、ヨタヨタと力を無くし。

其れは日増しに明白で、数日後には川原に行く事も出来なくなってしまった。

其の日から、グレンはベンと一緒に寝るようになり。

水を飲ませたり、布団をかけたりと甲斐甲斐しく世話をするのだが、グレンの両親は諦めていた。

「ベンも歳だから長くないんだろう、もう数日持つか解らないな…… 」

「ベンが居なくなってしまうと、あの子が心配だわ…… 」

そんな風にグレンの両親は心配していたが、翌日ベンの容態は劇的に変わり。

「川原に行くぞベン、走れ」

グレンの言葉に応える様に、ベンは昔と同じようにグレンと走り川原を駆け回る。

「不思議だ、こんな事があるんだな…… 」

「奇蹟だわ、きっとグレンの願いが神様に届いたのよ」

グレンの両親は驚いていたが、実際にベンは駆け回っていたので疑いようもなく。

理を越えた、奇蹟を信じるしかなかった。

だが両親が安心出来ていたのも数日。

グレンと元気に駆け回るベンの姿に、異変が起き始める。

少しずつ身体中がただれて崩れていき、酷い箇所では内部の骨が見えだしている。

「コレは、何か病気に掛かってしまったのか…… 」

両親は慌てて町を周りベンの治療をしてもらうが、回復魔法ですら治らず。

原因不明のまま、ベンの容態は悪化していく。

グレンと走り回る元気さを保ちながら、日増しに見た目だけがおぞましく。

アレは呪いだ、病気だと囁かれ、周囲に不安を撒き散らし。

気味悪がられ疎まれながらも、どうする事も出来ない。

そんな日が続き、とうとうベンの姿は骨だけになり。
其れでもグレンの言う通りに、ベンは喜び駆け回る。

そうなった時に、両親は理解するのだった。

待ちに待った息子の能力が、死霊使いだった事に。
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