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<決意表明>
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「一隊は毒の使用者と関係性が高い、羽の追跡調査。もう一隊は、毒の使用者を追跡調査だ。
それでは二隊に別れ、行くぞ」
指揮をとるギズ隊長は、調査部隊に新たな指示を出し。
二手に別れたコボルト調査部隊は追跡を再開。
ギズ隊長率いる一隊は、宿屋からセトの行き先を追い。
もう一隊は馬車の経路から羽の出元を追う。
「森に出ているな。 もしも王国に戻る気が無いのなら、長い追跡になるぞ。 二名宿泊設営の準備をして、追ってきてくれ」
長期戦になるかもしれないという、ギズ隊長の一言で隊員達の表情が引き締まる。
其れはコボルト調査部隊の名に懸けて、何処に行こうが逃がさない決意表明でもあった。
木々の生い茂る森を、狩猟をする狼の如く駆けだすコボルト調査部隊。
「あれっ。 今通り抜けたの、調査部隊じゃないか」
「きっと街で騒いでた毒の調査だよ、これは犯人もう捕まるの確定だな」
すれ違う獣人の冒険者達は、憧れの眼差しを向ける。
だが隊員達は立ち止まる事無く、まるで平地の様に駆け抜けて行く。
「こっちに進んでいますね、この方角って…… 」
獅獣王国を出て森に入り駆け続け、冒険者すら見かけなくなった頃。
先導していた、隊員の一人が立ち止まる。
「ああ間違いない、破邪の塔だ…… 」
確信を得た様に、ギズ隊長が小さく頷く。
「わざわざ何故、あんな場所に…… 」
「人目を避ける為だけならリスクが高過ぎるから、何か理由が在るのかも知れないな」
隊員達が見上げる森の先には、破邪の塔が不気味に聳え立つのだった。
一方。獅獣王国から離れた森をクーガーに乗った獣人二人が、魔王城の方角に向かって駆け抜ける。
「御嬢様本当によろしいのですか。大臣の思惑は御嬢様とガオン様を引き合わせ、獅獣王国を裏で操るおつもりですぞ」
丸眼鏡を掛け白く立派な髭が特徴の、山羊の獣人は心配そうに訊ねる。
「ニャにも気にする事は無いですわ。 もしもガオン様が私を気に入ってくれるニャら、それは光栄ニャ事ですわ」
そう言って笑い返す猫人の御嬢様は、猫人特有の膨らんだ口元を上げる。
「しかし噂では、ガオン様は乱暴者で喧嘩好きの自由人。 幾ら猫族と獅子族の種族が近いとはいえ、危険ですぞ」
ここぞとばかりに爺は眼鏡の位置を直し強調するが、御嬢様は気にする様子も無く返す。
「幾つにニャっても子供扱いして、爺は心配性だニャ」
「当然ですぞ。私は御嬢様の執事なのですから」
「獅獣王国建国の、英雄の末裔ですのよ。 悪い人な訳ニャいですわ。 それに王女の肩書きが手に入るかもしれニャいのよ、幸運じゃニャい」
まるで決意表明の様に語る、御嬢様は嬉しそうに笑い。
爺は諦めた様子で、口をつぐむのだった。
それでは二隊に別れ、行くぞ」
指揮をとるギズ隊長は、調査部隊に新たな指示を出し。
二手に別れたコボルト調査部隊は追跡を再開。
ギズ隊長率いる一隊は、宿屋からセトの行き先を追い。
もう一隊は馬車の経路から羽の出元を追う。
「森に出ているな。 もしも王国に戻る気が無いのなら、長い追跡になるぞ。 二名宿泊設営の準備をして、追ってきてくれ」
長期戦になるかもしれないという、ギズ隊長の一言で隊員達の表情が引き締まる。
其れはコボルト調査部隊の名に懸けて、何処に行こうが逃がさない決意表明でもあった。
木々の生い茂る森を、狩猟をする狼の如く駆けだすコボルト調査部隊。
「あれっ。 今通り抜けたの、調査部隊じゃないか」
「きっと街で騒いでた毒の調査だよ、これは犯人もう捕まるの確定だな」
すれ違う獣人の冒険者達は、憧れの眼差しを向ける。
だが隊員達は立ち止まる事無く、まるで平地の様に駆け抜けて行く。
「こっちに進んでいますね、この方角って…… 」
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先導していた、隊員の一人が立ち止まる。
「ああ間違いない、破邪の塔だ…… 」
確信を得た様に、ギズ隊長が小さく頷く。
「わざわざ何故、あんな場所に…… 」
「人目を避ける為だけならリスクが高過ぎるから、何か理由が在るのかも知れないな」
隊員達が見上げる森の先には、破邪の塔が不気味に聳え立つのだった。
一方。獅獣王国から離れた森をクーガーに乗った獣人二人が、魔王城の方角に向かって駆け抜ける。
「御嬢様本当によろしいのですか。大臣の思惑は御嬢様とガオン様を引き合わせ、獅獣王国を裏で操るおつもりですぞ」
丸眼鏡を掛け白く立派な髭が特徴の、山羊の獣人は心配そうに訊ねる。
「ニャにも気にする事は無いですわ。 もしもガオン様が私を気に入ってくれるニャら、それは光栄ニャ事ですわ」
そう言って笑い返す猫人の御嬢様は、猫人特有の膨らんだ口元を上げる。
「しかし噂では、ガオン様は乱暴者で喧嘩好きの自由人。 幾ら猫族と獅子族の種族が近いとはいえ、危険ですぞ」
ここぞとばかりに爺は眼鏡の位置を直し強調するが、御嬢様は気にする様子も無く返す。
「幾つにニャっても子供扱いして、爺は心配性だニャ」
「当然ですぞ。私は御嬢様の執事なのですから」
「獅獣王国建国の、英雄の末裔ですのよ。 悪い人な訳ニャいですわ。 それに王女の肩書きが手に入るかもしれニャいのよ、幸運じゃニャい」
まるで決意表明の様に語る、御嬢様は嬉しそうに笑い。
爺は諦めた様子で、口をつぐむのだった。
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