転生者だか魔王だか知らんが俺の娘はオマエにはやらん

雨実 和兎

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<手遅れ>

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「やっぱり近場だとランクアップしても、稼げないもんだな…… 」

「高収入の依頼が必ず貼り出される訳ではないので、仕方ないですけどね…… 」

ギルド内に貼り出された依頼書を見つめ、ガルのメンバーは同様に溜め息を吐く。

「やっぱり装備に全額使ったのは、まずかったか…… 」

「ランクに見合う装備にするとか、調子に乗るからですよ」

「自分だって、新しい杖買ってただろ」

「私は全額じゃないです」

周りも気にせず、いがみ合うルドエルとリジョン。
其の矛先は、二人のやり取りを静観していたルミニーにも向かう。

「どうせルミニーもギャンブルで、似たようなもんだろ」

とばっちりを受けたルミニーは、特に怒るでも無く呟く。

「まぁ、大きく当てたいのは事実だね…… 」

言葉も無く項垂れる三人は、再び依頼書を眺める。

キラーアントを大量に倒して得た金を、各々使いきったのが原因だった。

ルドエルの新しい装備も、虚しく輝く。

「望んだら駄目だけど、もっと強い魔物が出ればな…… 」

「それなら獅獣王国に破邪の塔っていう、強い魔物が出る場所が在りますけど」

「……依頼書無しの場所か。どれ位の魔物が出るか解らないんじゃ駄目だな」

「獣人すら寄り付かない、危険な場所らしいですけどね…… 」
ルドエルとリジョンの会話を黙って聞いていたルミニーが、不敵に笑う。

「面白いねソレ、ギャンブルみたいで」

失言したとばかりにルドエルとリジョンは顔を見合わすが、もう手遅れなのは云うまでもなかった。


其の頃。魔物を食らい人間を棄てたセトは、紫色になった瞳を輝かせ破邪の塔を登り続けて行き。

新たに遭遇した魔物から、数え切れない程のスキルを奪っていた。

止まる事の無い快進撃は踏破した階数すら解らない程だったが、辿り着いた上階で立ち止まる。

其の異質な階層は、迷路の様に入り組んでいたさっき迄の階層とは違い。

広大な広場の其処には、巨大な二体のゴーレムが立ちはだかっている。

上階への通路を遮る其の存在感は、階層の守護者で在る事を疑いようもなかった。

其れでもセトの薄ら笑いは変わらず、駆け出しゴーレムに斬りかかっていく。

だが頑強なゴーレムにナイフの刃は弾かれ、傷付き欠けたのはナイフの方だった。

「コレは、スキル奪えそうにないね~」

そう言ってセトは溶かす毒液を打ち出し、煙りがゴーレムを中心に辺りを包む。

一時の静観。
沈黙を破る様に現れたゴーレムには傷一つ無く、セトを殴り飛ばす。

フラフラとよろめきながら、セトは立ち上がり。

新たに得たスキルで応戦するが、いずれもゴーレムにはダメージを与えず。

「攻撃効かないバケモンなんて、反則だろ」

そう言い残し逃げるのが、セトに出来た唯一の抵抗だった。

下の階層に降りると、ゴーレムは追っては来ない。

だが獅獣王国に戻るにしては、余りにも進み過ぎており。

こうしてセトは魔物の巣食う世界に一人、取り残されるのだった。
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