転生者だか魔王だか知らんが俺の娘はオマエにはやらん

雨実 和兎

文字の大きさ
上 下
84 / 143

<褒美>

しおりを挟む

クイーンとのバトルで疲れきっていたのか、目覚めたのは昼過ぎ。

昨夜の様子だとクイーンが俺を襲う可能性は有るが、エミリを襲う事は無さそうだ。

まあ襲うの意味は違うだろうが、まだ安心は出来ない。

取り敢えず王室に向かい、扉の前で躊躇っていると王室内が何やら騒がしい。

扉を開くと中にはエミリとトウ、ネズが驚き慌てていて。

其の三人の中心では、ガオンが傷だらけのゴブリンを担いでいた。

「ゴブリンの其の傷、どうしたんだ一体……? 」

「ガハハ。夜だったから気付かなかったが、修行し過ぎたぞ」

笑い飛ばしながら、ガオンは担いでいたゴブリンを下ろす。

慌ててエミリが回復をしているが、これゴブリン生きているのか? 

修行というよりは、虐殺じゃねーか。

そんな疑問を解消する様に、咳き込むゴブリンの瞳が開き。

上半身を起こしたゴブリンは周りを見回し、状況を理解しようとしている。

「ガハハ生きてたな、修行再開するか? 」

休ましてやれよ、やはりガオンは恐ろしい奴だ。

俺とやたら戦いたがるが、コイツとの戦闘だけは避けねば…… 。

そんな事を考えていると、視線が合ったゴブリンが口を開く。

「魔王様。城を狙った敵兵が来てたので、命懸けで追い返しました」

キラキラした瞳で、ゴブリンは俺を見つめている。

城を狙った敵兵は、領主が集めた兵士の事だろう。

予定では、俺が毒で追い返すつもりだったのだが。

社畜だとは思っていたが、とうとう本当に命懸けじゃねーか。

「そうか……。良くやった、ゆっくり休んでくれ」

なんとか其れらしい言葉を返したが、特にあげれる褒美は無い。

それでもゴブリンは、嬉しそうに笑顔を返す。

居た堪れなくなった俺は、せめてものお礼に名前を授ける。

「そう言えば名前が無かったよな、今日からゴブドにしよう」

頷くゴブドは、大袈裟に涙を流し喜んでいる。

照れくさかったから直ぐに王室を出たのだが、少しゴブドが輝いて見えたのは気のせいだろう。


王室を出てからは、予定していた農地開発を始める。

昨夜の戦いで、Lvが上がったから使える骸骨兵の人数も増え。

指示した数十人の骸骨兵で、城内外の土地をドンドン耕していく。

「どうやらマトモな飯は、食べれる様になりそうだな」

「うん、早く育つとイイね」

様子を見に来て話すエミリとトウも、安心した様に寛ぎ眺めている。

労働力として報酬も要らず、文句も無く疲れを知らない骸骨兵。

正直戦力としては微力だが、使い方次第だなと思えた。

こうして農地が完成して種蒔きや植林を終えるのに、其れほど時間は掛からなかった。



一方。
指名手配となり逃亡中のセトは、巧みな嘘で善人を装い。
もて余す金を使い商人の馬車に乗って、生き延びていた。
こうして辿り着いた地は、隣国の獅獣王国。
住人の殆んどが、獣人達が暮らす国だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処理中です...