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<褒美>

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クイーンとのバトルで疲れきっていたのか、目覚めたのは昼過ぎ。

昨夜の様子だとクイーンが俺を襲う可能性は有るが、エミリを襲う事は無さそうだ。

まあ襲うの意味は違うだろうが、まだ安心は出来ない。

取り敢えず王室に向かい、扉の前で躊躇っていると王室内が何やら騒がしい。

扉を開くと中にはエミリとトウ、ネズが驚き慌てていて。

其の三人の中心では、ガオンが傷だらけのゴブリンを担いでいた。

「ゴブリンの其の傷、どうしたんだ一体……? 」

「ガハハ。夜だったから気付かなかったが、修行し過ぎたぞ」

笑い飛ばしながら、ガオンは担いでいたゴブリンを下ろす。

慌ててエミリが回復をしているが、これゴブリン生きているのか? 

修行というよりは、虐殺じゃねーか。

そんな疑問を解消する様に、咳き込むゴブリンの瞳が開き。

上半身を起こしたゴブリンは周りを見回し、状況を理解しようとしている。

「ガハハ生きてたな、修行再開するか? 」

休ましてやれよ、やはりガオンは恐ろしい奴だ。

俺とやたら戦いたがるが、コイツとの戦闘だけは避けねば…… 。

そんな事を考えていると、視線が合ったゴブリンが口を開く。

「魔王様。城を狙った敵兵が来てたので、命懸けで追い返しました」

キラキラした瞳で、ゴブリンは俺を見つめている。

城を狙った敵兵は、領主が集めた兵士の事だろう。

予定では、俺が毒で追い返すつもりだったのだが。

社畜だとは思っていたが、とうとう本当に命懸けじゃねーか。

「そうか……。良くやった、ゆっくり休んでくれ」

なんとか其れらしい言葉を返したが、特にあげれる褒美は無い。

それでもゴブリンは、嬉しそうに笑顔を返す。

居た堪れなくなった俺は、せめてものお礼に名前を授ける。

「そう言えば名前が無かったよな、今日からゴブドにしよう」

頷くゴブドは、大袈裟に涙を流し喜んでいる。

照れくさかったから直ぐに王室を出たのだが、少しゴブドが輝いて見えたのは気のせいだろう。


王室を出てからは、予定していた農地開発を始める。

昨夜の戦いで、Lvが上がったから使える骸骨兵の人数も増え。

指示した数十人の骸骨兵で、城内外の土地をドンドン耕していく。

「どうやらマトモな飯は、食べれる様になりそうだな」

「うん、早く育つとイイね」

様子を見に来て話すエミリとトウも、安心した様に寛ぎ眺めている。

労働力として報酬も要らず、文句も無く疲れを知らない骸骨兵。

正直戦力としては微力だが、使い方次第だなと思えた。

こうして農地が完成して種蒔きや植林を終えるのに、其れほど時間は掛からなかった。



一方。
指名手配となり逃亡中のセトは、巧みな嘘で善人を装い。
もて余す金を使い商人の馬車に乗って、生き延びていた。
こうして辿り着いた地は、隣国の獅獣王国。
住人の殆んどが、獣人達が暮らす国だった。
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