転生者だか魔王だか知らんが俺の娘はオマエにはやらん

雨実 和兎

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<無駄足>

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近くの領主が魔王城を攻める噂を聞いた俺達は、魔王城へと向かい急いでいた。



戦闘狂のガオンや妖しいウスロスが居るのだから、俺が止めなければ皆殺しは確実だろう。



不安は大きいが、思っていたよりもクーガーの移動は速く。



魔王城に着いたのは、陽も落ちきった夜。



「なんとか着いたな…… 」



俺の言葉にエミリが頷く。



外から観ると不気味な雰囲気なのは変わらずだが、戦闘跡や人の気配も無く。



どうやら間に合ったのか、まだ領主とやらは来てないようだ。



噂自体がデマで、無駄足の可能性は有るが油断は出来ない。



すぐさま擬態で、魔王である骸骨の姿に変わり。



そのまま進み城門から城内に入ろうとすると、一人の人影がこちらに近付いて来ている。



「ククク……、 お待ちしておりましたよ魔王様」



そう言って出迎えをするウスロスの笑顔は、とても歓迎には見えない。



「実は魔王様の留守中に仲間が増えたのですが。其の者が魔王様の実力を観たいとの事で、参謀として此方で準備しておきました。



嬉しそうに語りながら、ウスロスが指し示す場所には洞穴が。



「其の者は玉座にて待っておりりますので、こちらの穴から進み。玉座まで生き延び、其の者を倒せればゲームクリアとなります」



ひとしきり説明を終えると、ウスロスは城内からゆっくりと門を閉め。



「魔王様の手に掛かれば、正に遊戯。 ゲームで御座いますが、其れではお楽しみを……。 ククク…… 」



そんな白々しい捨て台詞を残し、ウスロスの姿は見えなくなる。



門前に取り残された俺達は、洞穴を前に溜め息を吐くのだった。



何が参謀としてだ。

あの野郎。最後のククク、確実に本気で笑っていたな。



アイツに移動系の能力が無ければ、真っ先に心臓握り潰してやりたい位だ。



そんな事を考えていると、エミリが明るく呟く。



「……また洞穴ですね」



「仕方ないな…… 」



もう呆れているであろうエミリに、なんとか苦笑いを返す。



思い返せば、エミリには俺のカッコ悪い所しか見られていない。



ミノタウロスに殺されかけたり、クーガーに引き摺られ死にかけたり。



あのサイコパス野郎を倒した時も、結局一人だったし。



そう考えると今の状況は、悪くないのかもしれない。



中距離戦闘なら負けない位に、俺も強くなったからな。



「エミリ達は少し下がっててくれ」



洞穴からエミリ達を遠ざけ、<黒魔の息吹き>の麻痺毒を洞穴内に吹き込む。



ちょっとしたゲームみたいなものなんて言っていたが、信用なんて出来ない。



どうせウスロスの事だから、洞穴内は魔物だらけなんだろう。



今迄の俺なら何もせずに入って、後で後悔していただろうが。



今回は、そうはいかない。

これで、中に魔物が居ても動けないだろう。



トウから聞いたエミリのスキルなら、俺の毒は受け付けないし。



トウも、エミリの近くに居れば大丈夫だ。



俺には毒耐性が有るから、問題無い。



ウスロスが何を企んでいるのかは知らないが、これで無駄足になったな。



早く悔しがる顔が見てみたいもんだ。



こうして俺達はクーガーと貨車を残し、洞穴内に進むのだった。
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