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毒霧が広場に撒かれた日から二日が経ち、すっかり街は平和を取り戻し。
犯人である、サイコパス野郎も現れてはいない。
ただ少し変わった事と云えば、街の住人を救った噂が広まり。
街の至るところで住人に話し掛けられ、ちょっとした英雄扱いになってしまったのと。
親方の俺に対する扱いが優しくなった位だ。
だが引き受けていたレンガ運びの仕事も、無事に終わり。
金も入ったので、俺達は街から出て行く準備を始めていた。
少し名残惜しいが、元々は街に長居するつもりではなかったし。
住む城が有るのに、宿屋で泊まり続ける金も勿体無いので仕方ない。
「マオーさん、ここの野菜どうですか?」
エミリが呼び寄せる出店では、台の上にあらゆる種類の野菜が並んでいて。
年老いた婆さんが、退屈そうに店番をしている。
「良いな、店主さん。お願いがあるんだが、店の野菜の種と苗を売ってほしいんだけど…… 」
そう言って金の入った袋を見せると、店主は怪訝そうに俺達を視ている。
「あれま珍しい客が来たもんだ、農場でも始めるのかい? 」
良く観ると俺達が噂の英雄だと気付いたのか、店主の様子が和やかに変わる。
「あれま良く見たら噂の英雄さんでないかい、それなら断れないわね。 息子に準備させるから明日取りに着な」
こうして街に来た目的だった野菜を手に入れ、後は必要なのは農具と服だけだ。
野菜が育つ迄の時間は掛かるが、コレでゴブリンの地獄の晩餐からは開放されるだろう。
まるで夫婦の新生活品集めの様な、平和で幸せな時間は直ぐに終わり。
全ての買い物を済ませ。
宿屋の食堂で寛いでいると、妙な噂が聞こえてきたのだった。
「魔王城近くの領主が、魔王城を管理しに行くらしいぜ」
「魔王が居ないからか、タダで城が手に入るようなものだからな…… 」
聞こえていたエミリと俺は、驚いた顔を見合わす。
住む城が奪われてしまうかもしれない。
という考えと同時に浮かんだのは、其の領主ウスロスに殺されるぞだ。
これは帰るのを急がなくては。
緊張した視線を合わせるエミリも、同様の事を考えている様に思えた。
その頃。魔王城近くの洞穴では、成長進化の為に深い眠りに落ちていた一匹の紅い蟻。
其のクイーンアントの元に、不気味な笑い声が近付いていく。
「……妾に客とは、何者ぞ? 」
異様な気配を察知し、目覚めたクイーンは訊ねる。
「お初御目に掛かります。私は、魔王の参謀をしているウスロスと申します」
殺気混じりの異様な気配は互いに同じく、一言問答を違えば殺し合いは間違いない。
其れでもウスロスは、不敵な笑みを浮かべたまま話す。
「して、其の参謀が妾に何用ぞ? 」
クイーンの鋭い視線が、ウスロスに刺さる。
「番を亡くし淋しい想いをしているかと思いまして、是非魔王様を候補にと伺いました」
「番とは、妾の腹にいるコレの事か? 良く知っておるの? 」
跳ね上がるクイーンの殺気が、洞穴内に充満して景色を歪ます。
其れでもウスロスは笑みを絶やさず、会話を続ける。
「勿論。殺したのは魔王様ですから」
実際の所、ウスロスは誰が番を殺したのか知らない。
だが、其の方が面白いといった返答である。
「番の仇を候補とな……、フフ」
そう言ってクイーンが笑い始めると、同調した様にウスロスも笑い。
「そうです、番の仇を候補です。 ククク…… 」
洞穴内で不気味な笑い声が響き、重なり合うのだった。
犯人である、サイコパス野郎も現れてはいない。
ただ少し変わった事と云えば、街の住人を救った噂が広まり。
街の至るところで住人に話し掛けられ、ちょっとした英雄扱いになってしまったのと。
親方の俺に対する扱いが優しくなった位だ。
だが引き受けていたレンガ運びの仕事も、無事に終わり。
金も入ったので、俺達は街から出て行く準備を始めていた。
少し名残惜しいが、元々は街に長居するつもりではなかったし。
住む城が有るのに、宿屋で泊まり続ける金も勿体無いので仕方ない。
「マオーさん、ここの野菜どうですか?」
エミリが呼び寄せる出店では、台の上にあらゆる種類の野菜が並んでいて。
年老いた婆さんが、退屈そうに店番をしている。
「良いな、店主さん。お願いがあるんだが、店の野菜の種と苗を売ってほしいんだけど…… 」
そう言って金の入った袋を見せると、店主は怪訝そうに俺達を視ている。
「あれま珍しい客が来たもんだ、農場でも始めるのかい? 」
良く観ると俺達が噂の英雄だと気付いたのか、店主の様子が和やかに変わる。
「あれま良く見たら噂の英雄さんでないかい、それなら断れないわね。 息子に準備させるから明日取りに着な」
こうして街に来た目的だった野菜を手に入れ、後は必要なのは農具と服だけだ。
野菜が育つ迄の時間は掛かるが、コレでゴブリンの地獄の晩餐からは開放されるだろう。
まるで夫婦の新生活品集めの様な、平和で幸せな時間は直ぐに終わり。
全ての買い物を済ませ。
宿屋の食堂で寛いでいると、妙な噂が聞こえてきたのだった。
「魔王城近くの領主が、魔王城を管理しに行くらしいぜ」
「魔王が居ないからか、タダで城が手に入るようなものだからな…… 」
聞こえていたエミリと俺は、驚いた顔を見合わす。
住む城が奪われてしまうかもしれない。
という考えと同時に浮かんだのは、其の領主ウスロスに殺されるぞだ。
これは帰るのを急がなくては。
緊張した視線を合わせるエミリも、同様の事を考えている様に思えた。
その頃。魔王城近くの洞穴では、成長進化の為に深い眠りに落ちていた一匹の紅い蟻。
其のクイーンアントの元に、不気味な笑い声が近付いていく。
「……妾に客とは、何者ぞ? 」
異様な気配を察知し、目覚めたクイーンは訊ねる。
「お初御目に掛かります。私は、魔王の参謀をしているウスロスと申します」
殺気混じりの異様な気配は互いに同じく、一言問答を違えば殺し合いは間違いない。
其れでもウスロスは、不敵な笑みを浮かべたまま話す。
「して、其の参謀が妾に何用ぞ? 」
クイーンの鋭い視線が、ウスロスに刺さる。
「番を亡くし淋しい想いをしているかと思いまして、是非魔王様を候補にと伺いました」
「番とは、妾の腹にいるコレの事か? 良く知っておるの? 」
跳ね上がるクイーンの殺気が、洞穴内に充満して景色を歪ます。
其れでもウスロスは笑みを絶やさず、会話を続ける。
「勿論。殺したのは魔王様ですから」
実際の所、ウスロスは誰が番を殺したのか知らない。
だが、其の方が面白いといった返答である。
「番の仇を候補とな……、フフ」
そう言ってクイーンが笑い始めると、同調した様にウスロスも笑い。
「そうです、番の仇を候補です。 ククク…… 」
洞穴内で不気味な笑い声が響き、重なり合うのだった。
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