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<後悔>

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「いきなり謝るなんて、一体どうしたんだい……? 」



ルミニーの質問に応えようとする衛兵は、今にも倒れそうな程に衰弱している。



「……お、応援をお願いします。 いっ……何時の間にか縛っていた糸から逃れ、広場が……」

其処まで話すと、衛兵は意識を失い倒れてしまう。



捕まえた実力を見込まれ頼みに来たのだろうが、逃げられるとは予想もしていなかった。



「この様子だと、どうやら毒の攻撃をくらったみたいだね。 ルドエル、ギルドに連れて行き治療してもらいな」



ルドエルは馴れた様子で、軽々しく衛兵を担ぎ上げギルドに向かう。



「アタシ達は広場に向かうよ」



広場が近付くにつれて濃くなっていく、紫色の霧が視界を遮り。



何処で助けを呼ぶ声と、うめき声が聞こえてくる。



「深く吸い込むなよ、毒だぞ!!」



注意を促す自分の声と同時に、リジョンの魔法で旋風が巻き起こり。



視界を遮っていた毒霧が、あっという間に霧散していく。



「また、上手いこと逃げられたみたいだね……」



毒霧を撒いたであろう、セトの姿は其所には無く。



たまたま居合わせた被害者だけが、倒れ苦しんでいるのだった。



「お母さん……、 苦しいよ……」



子供の口元を布で覆ったまま、気を失う母親を視てエミリが呟く。



「酷い……」



広場の周りには、同じように毒霧で倒れた人達で溢れていた。



「……俺のせいだ」



「そんな事は……」



庇うようにエミリは否定したが、間違いなく俺の判断ミスだ。



倒して得たスキルのホーネットスティールで、セトのスキルを奪っておくべきだった。



そうすれば毒を撒かれる事も、逃げられる事も無かった。



「アンタ達、落ち込んでるヒマは無いよ。すぐにケガ人を集めて回復魔法で延命だよ」



ルミニーの言葉で、落ち込んでいた俺とエミリは我に返る。



其処からは各々慌ただしく分業して、今の自分に出来る事をこなしていく。



丁寧に確実に、誰もが救う為に。



ギルドからルドエルが解毒班を連れて来たのは、そんな頃だった。



すぐさま解毒班は、被害者全員の解毒にあたり。



結果死者は0人。



まだ咳き込む者は居るが、もう立ち上がり会話もしている。



どうやらセトが逃げる時間を稼ぐ為に、わざと毒殺せず負傷者を増やし。



毒を弱めていたのが幸いしたみたいだが、其れでも毒は毒。



後遺症を残しそうな者がいなかったのは、正に不幸中の幸いだった。



「どうもありがとうございました」



「お姉ちゃんありがとう……」



さっき泣いていた子供がエミリに手を振り、エミリは笑顔を返す。



もう平穏を取り戻した広場は、人も少なくなり月明かりが射している。



「ルミニー達も帰ったし、俺達も宿屋に帰ろうか……」



頷くエミリを横目に俺が考えていたのは、今なら自然に手を繋げるんじゃねだ。



勿論告白もしていないし、付き合っている訳ではない。



だが、こういうのは雰囲気が大事だと云うだろ。



感づいているのか、トウの鋭い視線が少し気にはなるが。



意を決してエミリの手に触れようとした瞬間。



俺の手は弾かれ、エミリに触れる事が出来なかった。



気のせいだろうと、もう一度挑戦したが結果は同じ。



理由を考えると、思い出したのはギルドでのやり取り。



トリプルレアだと周りが騒いでいた、エミリのスキル聖者の行進と。



俺がセトを倒した後に、種族が人間から人外に変わった事だった。
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