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<クーガーの条件>
しおりを挟む結局人間では、自分だけがデカイ芋虫を食べる羽目に在った。
砂を混ぜた様な食感と、満足気に微笑むゴブリン。
思い出したくもない。
アイツは悪魔だ。
そんな悪夢の晩餐から一夜明け。
先導するガルの三人に付いて行き、エミリとトウと俺は沼地を抜けた草原に向かっていた。
同行する理由は、当然食料問題だ。
思っていたよりも食べれそうな魔物が少ないから、エミリに料理してもらうのも難しいし。
かといって狩りを配下に頼むと、ゴブリンの時の様に何が出てくるか解らない。
要するにまともな料理が食べたいし、エミリにも食べさせてあげたいのだ。
ガルのメンバーに相談した結果、街迄連れて行ってもらう事になった。
だが街に行くには馬車でも一日以上掛かるらしく、今向かっている場所で馬代わりを調達するらしい。
「ラタさん達無事に帰れたんですかね・・・」
「ケルマンも居るし大丈夫だろ、なんたって王国騎士だからな」
魔王城の調査だったと聞いた時は驚いたが、ルドエルとリジョンの会話を聞いた感じだと他にも同行者が居たらしい。
ガオンとルミニーの戦闘を観ていたので、もしも魔王の姿で会っていたらと思うとゾッとする。
「アンタ達着いたよ、アレがクーガーだよ」
ルミニーの指差した先には、見渡す限り広い草原で寛ぐダチョウの様な生き物が居た。
「あんな生き物、どうやって捕まえるんだ?」
不安気な俺の質問に、ルミニーは笑って答える。
「アンタは、まぁ観てな」
特に何をするでも無く黙ってクーガーを観ていると、エミリの隣に一匹のクーガーが座る。
「エミリはこの子だね、撫でてみな」
ルミニーの言う通りにエミリがクーガーを撫でると、クーガーは嬉しそうに顔を上げている。
ダチョウに似てはいるが羽は無く、代わりに小さな手が有りフサフサした毛並みはウサギっぽい。
「カワイイ!モフモフしてる~!」
エミリが楽しそうにモフモフしている姿は、実に和む。
ずっと観ていたい気分だ。
そんな風に眺めている間にも、ルミニーとリジョンの隣にクーガーが座り。
近くにクーガーは沢山集まったが、隣にクーガーが居ないのは俺とルドエルだけになった。
「そろそろだね。ルドエル乗る手本見せて、教えてやんな」
ルミニーの言葉に反応してルドエルは立ち上がり、集まったクーガーの近くに歩いて行く。
「何が始まるんだ?」
「クーガーは人間好きでね、オスは女好きでメスは強い男好きなのさ」
ルミニーが話している間にルドエルはクーガーに飛び乗り、俺にも乗れと手で合図をしている。
「次はアンタの番だね、尾っぽの短いのがメスだから」
マジか。
オスとメスで条件違い過ぎだろ、こっちは馬にすら乗った事無いんですけど……。
だがエミリの前で、びびった姿は見せたくない。
見よう見まねで一匹のクーガーに飛び乗ると、確かに手触りはモフモフしている。
「しっかり首を持て、振り落とされると死ぬぞ!」
ルドエルが不穏な言葉を叫ぶと同時に、ルドエルを乗せたクーガーと俺を乗せたクーガーは走りだす。
ウオォオ~。
ちょっ、ちょっと待て。
まだ心の準備、心の準備が出来てね~よ。
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