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<今更>
しおりを挟む洞穴の行き止まりで心折れた俺達魔王一行が座り込んでいると、近付く異様な音に反応して各々立ち上がり警戒する。
キラーアントと対戦していた時には無かった現象から予想すると、新しい敵の可能性が高い。
そんな事を考えていると大きな音と同時に洞穴の壁が崩れ、巨大でモグラの様な魔物が姿を現す。
新しい魔物の出現に俺達が身構えると、巨大モグラは両手を上げて弁解を始める。
「待っでくんろ、オラは敵でね」
太い爪に覆われた茶色い全身、モグラの魔物か?其れにしても田舎臭い喋り方だ。
巨大な見た目とは裏腹に、何だか今まで出会った魔物の中で一番親近感を感じる。
どうしたものかと一同顔を見合わせていると、モグラの背後からネズが顔を出す。
「近道正解ですわ、グレン様骸骨を届けに参りましたわ」
そう言えばコイツの存在を忘れていた。
外から入って来たという事は、外に出れるという事。
つまり俺達は生き埋めの状態から、無事助かったという事だ。
何時もヨダレを垂らして俺を狙うネズに助けてもらうとは、予想もしていなかった。
「ネズさんありがとう」
皆がネズを誉め讃える中、理由の解らないネズは愛想笑いを返す。
「ところでグレン様は……?」
ネズは辺りを見渡した後、クンクンと鼻先を動かし俺に顔を近付ける。
しまった。人間の姿のままだと何をしてくるか解らない。
だが今更誤魔化し様もなく黙っていると、ガオンが口を開く。
「其の人間が魔王様だ」
ガオンの言葉を聞きネズは不思議そうに首を傾げるが、もう一嗅ぎして納得する。
「確かにグレン様の匂いですわ……」
衣装が魔王の物というのも在るが、どうやら擬態は匂いにも効果が在るらしい。
「魔力が切れかけたのでな……」
取り敢えず其れらしい嘘を吐いてみたが、ガオンが本当の事を言えば即アウトだろう。
もしかしたら又、魔王が出て来ると思っているからかもしれないが。
兎に角助かった事を素直に喜んで、外に出るとしよう。
「其れでは脱出するか」
ネズ達が来た穴を通ろうとすると、何故かモグラの魔物が立ち塞がる。
「ちょっと待っでくんろ、オラ自分より弱い人間なんかの配下になれね」
配下?ネズの野郎いったい何を吹き込みやがったんだ。
このMP少ない状態なのに、戦って実力を示せと云う事か。
魔力が回復したらな。なんて言ったらネズの疑いが強くなるし、やるしかねーじゃねーか。
だが見た目ミノタウロスよりデカイし、岩盤掘り進んで来る位の腕力。
全く勝てる気がしね-。
一番親近感を感じるなんて思ってた自分を、ぶん殴ってやりたい。
そんな事を考えていると、呑気に笑う魔王の声が頭に響く。
「何やら面白い事になっているではないか」
何やらじゃねーよ。
出るのが遅せ-んだよ。
さっき、あんなに呼んでも応えなかったのに。
今更出て来て、面白がってんじゃねー。
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