38 / 143
<宣言>
しおりを挟む
ガオンが寝たのは諦めよう、流石に魔物が来たら起きるだろう。
其れよりも今、気掛かりなのはゴブリンの挙動不審だ。
骸骨兵の帰りを待つ間に気付いたが、魔物を警戒しているのか辺りを何度も見回している。
其れだけならゴブリン自体が弱いから警戒しているのかとも思えるが、時々俺の方もチラ見しているのが気になる。
何か企んでいるのかとも思ったが、あれだけ社畜のゴブリンに限って其れは無いだろう。
となると考えられるのは、ボスである魔王に対しての期待の眼差しだ。
此れはもう有る意味刺客だ。
全く油断出来ない。
戦う姿を見せて弱そうだと思われたら、何が起きるか解らない。
唯一の心の安らぎは傍に居るエミリを見れる位だが、其れをしているとトウから鋭い視線が刺さる。
何なんだ此の状況は、刺客だらけじゃねーか。
魔王って、もっと権威が有るんじゃないのか。
早く骸骨兵帰って来てくれ。
そんな俺の願いが届いたのか、骸骨兵は無傷で帰って来た。
骸骨兵に指示したのはダンジョン内部の視察だけだが、魔物が居るなら攻撃され無傷ではないだろう。
「良し、どうやら安全そうだ。ガオンを起こしてくれ、中に入ってみるぞ」
「はい、命懸けでやらせて頂きます」
ゴブリンが透かさずガオンを起こす、確かに寝起きが悪ければ命懸けかもしれない。
先頭を骸骨兵二体、寝起きで面倒そうなガオンの順で俺達は洞穴の奥へと進んで行く。
岩壁を掘り進めたような内部は暗く、トウが灯り代わりになっている。
別れ道に差し掛かると骸骨兵が立ち止まり、ゴブリンが俺に訊ねる。
「二手に別れますか? 魔王樣」
其の期待の眼差しをやめろ。
別れるはずがない。
そんな事をしたらガオンの居ないチームはどうなるか解らね-じゃねーか。
そんな気持ちをグッと堪え。
「必要ない、このまま右に行くぞ」
そう云うと一行は右の洞穴を進み歩き続け、その間に何度かの別れ道に遭遇する。
一応進んだマッピングはエミリにしてもらっているが、そんな経験は無いだろうから当てには出来ない。
そろそろ戻った方が良いか考えていると、前方からキラーアントが八匹現れた。
キラーアントは骸骨兵を通り抜け、ガオンを狙い飛び掛かる。
実力差から考えれば骸骨兵を狙いそうだが、もしかして敵だと認識されていないのか。
透かさず骸骨兵に攻撃指示を出すと、後列のキラーアントは骸骨兵にも飛び掛かる。
結果的には全キラーアントをガオンが一人で倒したので良かったが、問題は骸骨兵が敵と認識されていなかった事だ。
偵察が無意味だったのなら、中に何れだけ敵が居るか予想も出来ない。
更にダンジョン内では感知の効く範囲が狭く、進む先を選ぶ基準にもならない。
「敵が増えてきましたけど、このまま進みますか」
立ち止まり考えていると、丁度良くゴブリンが聞いてきた。
取り敢えず進むなら、先ずはゴブリンの期待を潰しておかないといけない。
「進もう、此れ位の敵数で我は戦わないがな」
完璧な宣言だ。
まあガオンが要れば此処は大丈夫だろう。
此れで安心して探索を続けられる。
誰もが油断していた此の時、静かにピンチは迫っていたのだった。
其れよりも今、気掛かりなのはゴブリンの挙動不審だ。
骸骨兵の帰りを待つ間に気付いたが、魔物を警戒しているのか辺りを何度も見回している。
其れだけならゴブリン自体が弱いから警戒しているのかとも思えるが、時々俺の方もチラ見しているのが気になる。
何か企んでいるのかとも思ったが、あれだけ社畜のゴブリンに限って其れは無いだろう。
となると考えられるのは、ボスである魔王に対しての期待の眼差しだ。
此れはもう有る意味刺客だ。
全く油断出来ない。
戦う姿を見せて弱そうだと思われたら、何が起きるか解らない。
唯一の心の安らぎは傍に居るエミリを見れる位だが、其れをしているとトウから鋭い視線が刺さる。
何なんだ此の状況は、刺客だらけじゃねーか。
魔王って、もっと権威が有るんじゃないのか。
早く骸骨兵帰って来てくれ。
そんな俺の願いが届いたのか、骸骨兵は無傷で帰って来た。
骸骨兵に指示したのはダンジョン内部の視察だけだが、魔物が居るなら攻撃され無傷ではないだろう。
「良し、どうやら安全そうだ。ガオンを起こしてくれ、中に入ってみるぞ」
「はい、命懸けでやらせて頂きます」
ゴブリンが透かさずガオンを起こす、確かに寝起きが悪ければ命懸けかもしれない。
先頭を骸骨兵二体、寝起きで面倒そうなガオンの順で俺達は洞穴の奥へと進んで行く。
岩壁を掘り進めたような内部は暗く、トウが灯り代わりになっている。
別れ道に差し掛かると骸骨兵が立ち止まり、ゴブリンが俺に訊ねる。
「二手に別れますか? 魔王樣」
其の期待の眼差しをやめろ。
別れるはずがない。
そんな事をしたらガオンの居ないチームはどうなるか解らね-じゃねーか。
そんな気持ちをグッと堪え。
「必要ない、このまま右に行くぞ」
そう云うと一行は右の洞穴を進み歩き続け、その間に何度かの別れ道に遭遇する。
一応進んだマッピングはエミリにしてもらっているが、そんな経験は無いだろうから当てには出来ない。
そろそろ戻った方が良いか考えていると、前方からキラーアントが八匹現れた。
キラーアントは骸骨兵を通り抜け、ガオンを狙い飛び掛かる。
実力差から考えれば骸骨兵を狙いそうだが、もしかして敵だと認識されていないのか。
透かさず骸骨兵に攻撃指示を出すと、後列のキラーアントは骸骨兵にも飛び掛かる。
結果的には全キラーアントをガオンが一人で倒したので良かったが、問題は骸骨兵が敵と認識されていなかった事だ。
偵察が無意味だったのなら、中に何れだけ敵が居るか予想も出来ない。
更にダンジョン内では感知の効く範囲が狭く、進む先を選ぶ基準にもならない。
「敵が増えてきましたけど、このまま進みますか」
立ち止まり考えていると、丁度良くゴブリンが聞いてきた。
取り敢えず進むなら、先ずはゴブリンの期待を潰しておかないといけない。
「進もう、此れ位の敵数で我は戦わないがな」
完璧な宣言だ。
まあガオンが要れば此処は大丈夫だろう。
此れで安心して探索を続けられる。
誰もが油断していた此の時、静かにピンチは迫っていたのだった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで
一本橋
恋愛
ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。
その犯人は俺だったらしい。
見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。
罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。
噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。
その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。
慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
わがおろか ~我がままな女、愚かなおっさんに苦悩する~
かみやなおあき
恋愛
「女に愛されたい」と願い死んだ男は異世界で運命の出会いをする。しかしその女には心に決めた愛する王子様がいた。
『わがおろか』これは我がままにもほどがある女と、愚かにもほどがある男の物語。男主人公視点と女主人公視点で進行していきます。
男主人公
「俺は女にフラれ絶望死したが童貞であったため異世界に転生することができた。
与えられた試練は『女に愛されよ』だ。
するとこの転生先の世界には俺を愛してくれる女が一人はいるということか!
最高だ! 可能性があるのなら俺は心の底から頑張れるよ!
前世ではそんな可能性が皆無だったからね!
おっ! あそこに悪党に襲われ貞操の危機な美少女が!
ということはあれが俺の嫁! そうに決まっている!
なになに? 私には使命がある?
お任せあれ! 命を掛けて君を守りそして共に使命を果たそう!
だってそれが俺の存在そのものだもの!
さぁ冒険だ! 君と俺の幸せな未来に向かって、レディゴー!」
女主人公
「私は性悪女のせいで王子との婚約を破棄させられ、辺境に追放となり挙句の果てには力までも封印されてしまう最低最悪な状況に陥った。
こうなったのも私が性悪女の王子暗殺計画の陰謀を知ってしまったからだ。
ああ王子よ! おお心から尊敬する愛しの王子!
たとえこの身がどうなろうとも、あなたのことは私が御守りいたします!
偽王妃になろうとしている性悪女の陰謀を打破した暁には私こそが真王妃となってあなたと結ばれるのです!
えっなにこのおじさん? 私の力になりたいって?
うーむなんか不気味だなこいつ。
まぁきっと私が美人で好きになったから力になりたいわけよね。
ならば王子のためにあなたの力を借りましょ。
そう考えるとこんなに都合のいい存在はいないわね。
あなたの使命は私が王妃に返り咲くことを手伝うこと。
でもこのことを教えるとそのやる気が失われるから秘密にします!
なに? それはよくないって? 良いのよ、そんなの、こんなの。
だってこいつは私に惚れているんだからさ!」
全111話の不定休で朝7時30分頃に投下。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる