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<なんちゃって魔王>

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ものすごい勢いの足音が近付いて来ている、もう逃げる事も出来なくなってしまった。



「まあ、お前は玉座にでも座っていろ。オロオロしていると疑われるぞ」



落ち込む俺を意識内の元魔王がたしなめる。

どんな状態なんだコレは、授業参観のお父さんか。



諦めた俺は云われたとおりに座り、配下とやらを待つ。



「グレン樣、御無事でしたか」



目の前で跪く、駆け付けた配下を見て椅子から飛び上がりかけた。



見間違い様もない、同室獣人の獅子である。



「ああ、問題無い」



其れっぽい答えで誤魔化すと、獣人は一歩下がり。



「当然です、グレン樣を倒すのは俺ですから」と不吉な言葉を吐く。



様子を見る限りでは気付いてなさそうだが、問題が増えているような気がする。



其れと後ろに並んでいるのは一緒に逃げていた彼女と鳥、ゴブリンと魔族だ。



取り敢えず彼女が無事だった事を喜びたいが、今は抑え黙って様子見だ。



何せククク野郎の狙いが解らない。

自分の魔法で俺を此所に飛ばしたんだから、おおよそ俺の居場所は解っているだろう。



其れに俺の能力はバレてそうだから、今の骸骨魔王姿である俺を疑われてもおかしくはない。



そんな事を考えているとククク野郎が一歩前に出て頭を下げる。



「お初御目に掛かります魔王樣、私はウスロスと申す者ですが、是非私めも配下に加えて頂けないでしょうか」



頭を下げる前の顔が、ニヤついている様に見えたのは気のせいだろうか。

当然配下どころか友達にだってしたくないし、出来るだけ遠くに行ってほしい位だ。



だが断ればコイツは何をしでかすか解らない。

其れはさっきの魔法で経験済みだから間違いない。



「弱いし仲間は多い方が良いのじゃないか、どうするのだ?」



急かす本物の魔王の声が、直接頭に聞こえてくる。

弱いしは、事実だが余計だな。

出来るだけ魔王らしく、この場を切り抜ける為に思案を巡らし閃いた。



「良かろう、今此所に居る者全て我の配下と成るが良い」



完璧だ。

ククク野郎は要らないが、此れなら断られなければ彼女の事も仲間に出来るかもしれない。



「有り難き幸せ。光栄でございます」



頭を下げるウスロスはやはりクククと笑っている様に見えるが、其れが喜んでいるからとは思えない。

同様にゴブリンも宜しくお願いしますと頭を下げるが、見るからに敬意が違う。



問題は困惑して周りを見ている彼女だが、意外にも肩に乗っていた鳥が口を開いた。



「配下の件、仲間というなら引き受けましょう」



彼女は驚いた表情で鳥を見直しているが、鳥は彼女と視線を合わさずに頭を下げている。



「仲間で構わん、して名前はなんと言うのだ」



「トウとエミリです」



俺の質問には全てトウが答え、エミリは口を開けたままの状態になっている。



「そうか、各々空いている部屋を使い休むが良い」



取り敢えずボロが出る前に話しを終わらし、全員を部屋から追い出す。

成功だ。

何とか魔王を演じ切ったぞ。



配下が退室すると同時に頭に機械的な声が響く。

職種・囚人時々拳闘士から[職種・なんちゃって魔王]に変わりました。



職種に依り[骸骨兵使役][魔王っぽい覇気]を取得しました。

職種に依りって、そんなシステムが有ったのか。

其れに魔王って職種なのか?。

まぁ良い役得だ。



魔王っぽいって、如何にもなんちゃって魔王なスキルだな。

だが骸骨兵使役の方は使い勝手が良さそうだ。

ステータスオープンを唱え、確認してみる。

<骸骨兵使役>

自身MP使用にて骸骨兵を使役する事が出来る。



<魔王っぽい覇気>

自身MP使用にて魔王っぽい覇気を出す事が出来る。



「良かったではないか」



他人事な魔王の声が、直接頭に聞こえてくる。



こうして俺はLVたった2という異世界最弱の、なんちゃって魔王になったのだった。

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