上 下
19 / 143

<希望と予想>

しおりを挟む
人との戦争でも起きたのか、もう何が起きているのか解らない。

それぞれ暴れ始める魔物達は逃げる事を優先しているのか、俺達を狙わず分散している。



其れでもミノタウロスだけは変わらず彼女に殴り掛かるが、やはり薄い光りに阻まれミノタウロスは触れる事も出来ない。



「邪魔だ」



そう言って、背後から現れた獅子顔の獣人はミノタウロスを床に叩き付け。

倒れたミノタウロスに拳で数撃くらわせ、ミノタウロスは気を失っている。



チームとでも認識されたのか、頭に機械的な声が響く。

ミノタウロス[能力擬態]の条件が整いました。

<クリティカルヒット>を取得しました。



此れはラッキーだ。

実力なら絶対に倒せない相手の能力を得る事が出来た。

だが今は喜んでいる場合ではない。

考える間も無く獣人が急かす。



「行くぞ」



獣人は何の説明も無く、壁を殴り壊し先導を始め。

其れに付いて行ったのは俺と彼女と鳥、後は同室のゴブリンと魔族だった。



あの魔族ククク野郎が付いて来たのは不安だったが、仲間は多い方が良い。

深く考えている間なんてなく、とにかく行動するしかなかった。



薄暗い廊下に抜け階段を登ると、何体かの骸骨兵に遭遇したが獣人が蹴散らし。

俺達は地上に向かって駆け上がって行く。



時々聞こえてくる爆発音が、今が平常時ではない事を物語っている。

薄暗い階段を抜け少し進むと建物内の内装はガラリと変わり、豪華な階段と大きなドアに装飾や敷物。

全体的に暗くて判断しずらいが、まるで城の玄関にでも居るようだ。



そんな事を考えていると、左右の廊下から駆け付けた骸骨兵四体に囲まれる。

倒す間も無く仲間を呼んでいるのか、骸骨兵達は増え続けていく。



「上に行くぞ、コッチだ」



骸骨兵に囲まれてはいたが此処が玄関なら目的の外は目の前。

獣人なら蹴散らして逃げれそうだが、あの数の骸骨兵とは戦えない俺は付いて行くしかなかった。



大きな階段を駆け上がり進んで行く方向では、爆発音が近く感じる。



「本当にコッチで良いのか?」



獣人は焦っているのか、俺の問い掛けに答えない。



二階の廊下に抜けると、追いかけて来ていた骸骨兵は六体に増えている。

何処か目的地でも在るのか獣人は迎え討とうとはせず、駆け続けて行く。

追いかける俺達の体力にも限界が迫っていた時、一際大きな衝撃音が鳴り響いた。



其れと同時に動きが止まった骸骨兵達は、その場に崩れ落ちる。

立ち止まらず、走り続ける獣人だけは気付いていない。



何が起きたのかは解らないが、助かったのか。

此れで彼女と逃げきる事が出来るかもしれない。

そう思って顔を見合わせていたのも束の間、突如ククク野郎が口を開く。



「つまらなくなってしまいましたね・・・・・・」



意味深に俺を見つめるククク野郎は、何か思い付いたのか微笑を浮かべ。

俺の方に向けて手を翳すと、見えていた室内の景色が一瞬で変わり。

周りには誰も居ない、広い円形のベランダに転移されてしまった。



見たところ二階だが、天井が高いので飛び降りれるような高さではなく。

外を眺めると動かなくなった骸骨兵が何体も崩れていて、さっき迄居た建物と同じなのは間違いない。



だが周りの景色は荒れ地で、助けを呼べるような人気なんて無く。

振り返り建物を眺めたら薄暗い城、其れを観て予想出来る所は魔王城しか思い浮かばなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...