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<精一杯の判断>
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「やっぱり騙されたんじゃない、こんな所に人なんて来ないよ」そう言ってルミニーは辺りを見回すが、確かに人の気配は全く無い。
森を抜けた先が目的地の沼だったのだが、魔王城近くというだけあって今にも魔物が出そうな空気を醸し出している。
沼は先が見えない位の広さなので、深さも其れなりに在りそうだった。
馬車で進むには道が悪すぎるので、此れ以上進むには歩くしかない。
「せっかく此所まで来たんだ、のんびり探してみるか」
エミリは小さく頷き、一行は気ままに歩いて行く。
「まぁ後は連れ帰るだけだからウチらは何でも良いけどね」
「何が起きるか解らないので長居は出来ないですけどね」
魔物も居ないのでルミニーが退屈そうにアクビをしてると、リジョンがたしなめる。
「まぁまぁ、二人供~」
仲裁に入ったルドエルは、例の如く二人に睨まれて黙ってしまう。
確かに長居するような場所ではないので、少しだけ見て回れば良いかと思った時だった。
ズシャズシャと大群が地面を踏みしめるような音が、近付いて来ている。
「マズイぞ・・・・・・」
ルドエルが呟く。
もう逃げ隠れる間も無く、目の前には30体程の骸骨兵が押し寄せて来ている。
「守りながらじゃキツイね」
逸速く前線に立つルミニーの手合図で、リジョンとルドエルは警護しながらの逃走を始め。
自分を抱き抱えたエミリとガルの二人は、ひたすらに走った。
一人応戦するルミニーの心配をする余裕も無く、とにかくひたすらに。
そうなったのはガルのメンバーに自分達のスキルを伝えていなかったのも有るが、スキルの効果を実感していない不安が有るのも事実である。
応戦からすり抜けた数体の骸骨兵達とは、逃走しながらルドエルが闘い。
走り続けて数十分。
沼地を抜けて辺りは岩場に変わっていたのだが、一行は走り疲れ立ち止まってしまう。
尚且つ前方には崖、後方には六体の骸骨兵が追いかけて来ている。
これ以上崖沿いを走り続けても、追い付かれるのは間違いなかった。
「迎え撃つしかないな、二人は下がっていて」
息を切らしながらもルドエルは立ちふさがり、骸骨兵に立ち向かう。
リジョンも援護魔法の準備に取りかかり、もう骸骨兵は目前に迫っていた時だった。
急に視界が真っ暗になり、身体に衝撃が走る。
目覚めたらエミリは骸骨兵五体に囲まれていて、自分は骸骨兵に掴まれ身動きが取れない。
「大丈夫かエミリ」
慌てて尋ねると、エミリは申し訳なさそうに謝っている。
「トウちゃんゴメン落ちちゃった・・・・・・」
エミリの服は傷付いているがケガはしていなさそうなので、自分で回復魔法を掛けたのだろう。
問題は取り囲む骸骨兵達である。
スキルの効果でエミリには触れられずにはいるが、囲んだままで逃がすつもりは無いらしい。
無敵とは云っても攻撃系のスキルや魔法をエミリは取得していないので、時間を浪費する以外に二人ではどうする事も出来ないのである。
「従うしかないな」
自分の言葉にエミリは頷き、私達は骸骨兵に連れられていく事となる。
手段として助けを待つ方法も考えたが、崖の下では期待も出来ない。
待ち続けて白骨化なんて死に方はエミリにはしてほしくないので、逃げるチャンスを窺う作戦である。
此の判断が正しいかどうか解らない今、運命の人とやらが現れれば勇者にでも見えるかもしれない。
其れでも、そんな神頼み的な事に期待はしたくない。
何故なら此れが今出来る、父親としての精一杯の判断だから。
森を抜けた先が目的地の沼だったのだが、魔王城近くというだけあって今にも魔物が出そうな空気を醸し出している。
沼は先が見えない位の広さなので、深さも其れなりに在りそうだった。
馬車で進むには道が悪すぎるので、此れ以上進むには歩くしかない。
「せっかく此所まで来たんだ、のんびり探してみるか」
エミリは小さく頷き、一行は気ままに歩いて行く。
「まぁ後は連れ帰るだけだからウチらは何でも良いけどね」
「何が起きるか解らないので長居は出来ないですけどね」
魔物も居ないのでルミニーが退屈そうにアクビをしてると、リジョンがたしなめる。
「まぁまぁ、二人供~」
仲裁に入ったルドエルは、例の如く二人に睨まれて黙ってしまう。
確かに長居するような場所ではないので、少しだけ見て回れば良いかと思った時だった。
ズシャズシャと大群が地面を踏みしめるような音が、近付いて来ている。
「マズイぞ・・・・・・」
ルドエルが呟く。
もう逃げ隠れる間も無く、目の前には30体程の骸骨兵が押し寄せて来ている。
「守りながらじゃキツイね」
逸速く前線に立つルミニーの手合図で、リジョンとルドエルは警護しながらの逃走を始め。
自分を抱き抱えたエミリとガルの二人は、ひたすらに走った。
一人応戦するルミニーの心配をする余裕も無く、とにかくひたすらに。
そうなったのはガルのメンバーに自分達のスキルを伝えていなかったのも有るが、スキルの効果を実感していない不安が有るのも事実である。
応戦からすり抜けた数体の骸骨兵達とは、逃走しながらルドエルが闘い。
走り続けて数十分。
沼地を抜けて辺りは岩場に変わっていたのだが、一行は走り疲れ立ち止まってしまう。
尚且つ前方には崖、後方には六体の骸骨兵が追いかけて来ている。
これ以上崖沿いを走り続けても、追い付かれるのは間違いなかった。
「迎え撃つしかないな、二人は下がっていて」
息を切らしながらもルドエルは立ちふさがり、骸骨兵に立ち向かう。
リジョンも援護魔法の準備に取りかかり、もう骸骨兵は目前に迫っていた時だった。
急に視界が真っ暗になり、身体に衝撃が走る。
目覚めたらエミリは骸骨兵五体に囲まれていて、自分は骸骨兵に掴まれ身動きが取れない。
「大丈夫かエミリ」
慌てて尋ねると、エミリは申し訳なさそうに謝っている。
「トウちゃんゴメン落ちちゃった・・・・・・」
エミリの服は傷付いているがケガはしていなさそうなので、自分で回復魔法を掛けたのだろう。
問題は取り囲む骸骨兵達である。
スキルの効果でエミリには触れられずにはいるが、囲んだままで逃がすつもりは無いらしい。
無敵とは云っても攻撃系のスキルや魔法をエミリは取得していないので、時間を浪費する以外に二人ではどうする事も出来ないのである。
「従うしかないな」
自分の言葉にエミリは頷き、私達は骸骨兵に連れられていく事となる。
手段として助けを待つ方法も考えたが、崖の下では期待も出来ない。
待ち続けて白骨化なんて死に方はエミリにはしてほしくないので、逃げるチャンスを窺う作戦である。
此の判断が正しいかどうか解らない今、運命の人とやらが現れれば勇者にでも見えるかもしれない。
其れでも、そんな神頼み的な事に期待はしたくない。
何故なら此れが今出来る、父親としての精一杯の判断だから。
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