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<B級上位>

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保存食や野営の準備を済ました翌日。



「ウチはリーダーのルミニーでコッチの魔法使いはリジョン、で剣士のコイツはルドエル。チーム名はガルって言うんだけど、これでもB級上位のパーティーだからね」



「宜しくお願いします」



恭しくエミリが頭を下げると、ルミニーはエミリの肩に手を置き。



「任しときな、必ず届けてあげるよ」と頼もしい言葉を掛ける。



待ち合わせ場所での自己紹介も終り、一行は馬車に乗り込み魔王城近くの沼に向かう。



鋪装されていない道とサスペンションも無く、タイヤが木造な馬車内部はとにかく跳ねて。

継続的に突き上げる衝撃が体力を奪う。

現代での車移動に比べてしまうと馬車の乗り心地は最悪だが、慣れているのかガルのメンバーは平然としていた。



「馬車の操縦出来るなんて凄いな」



「冒険者スキルだよ、こんなの冒険者なら誰でも出来るようになるよ」



疑問を投げ掛けると、馬車を操縦するルミニーは軽い口調で答える。

勉強不足だったが、どうやら職業で獲られるスキルも有るらしい。



「ウチらは報酬さえ貰えれば何でも良いんだけど、あんな沼に何の用があるんだい?」



「運命の人に会えるって占い師のお婆さんから聞いて」



ルミニーの質問に答えるエミリは恥ずかしそうに視線を落とす。



「そんな理由で~!? まあ魔王城に行けって訳じゃないから良いけど、オカシな娘だね」



笑い飛ばすルミニーは、どうやら色恋沙汰には興味が無いらしい。



「目的地は、そんなに危ない所なのか?」



「沼より奥に行ったら骸骨兵がウジャウジャ要るって噂だよ」



念の為聞いてみたが、思っていたよりも危なそうである。



こんな調子で雑談をする間も馬車は走り続けて、二時間が経とうとしていた頃。



「ここからは通行止めだぜ~」



馬に乗った盗賊らしき四人組が横路から突然現れ、馬車は急停止させられる。



「護衛に男が一人だけって楽勝だな~、オラ!さっさと金目の物全部出せ~」



「そのあとは、お楽しみのパーリーィーだぜ~」



馬上から盗賊達の下品な叫び声と笑い声が響く。

馬車内で怯えるエミリの前に出るが、こんな状況は想定していなかった。



魔物ならスキルが有るから問題無いが、人間相手ではエミリのスキルは発動しない。

もしも死んでしまったら、現実で寝たきりなエミリが此の世界に戻ってこれるか解らない。

護衛がB級上位で大丈夫なのか、そんな不安が頭を過る。



どんな手を使っても守らなければ。

そんな事を考えていた時。



其の様子を見ていたガルのメンバーは、やれやれといった感じで顔を見合わせている。



「一人で倒せるか賭けようか」



ルミニーはメンバーに笑い掛けるが、二人は面倒くさそうに片手を振って相手にもしない。



「つまんないね-、チョット待ってな」



そう言って一人馬車を降りたルミニーは、盗賊達の前に立ちはだかる。



「四人じゃ準備運動にもならなさそうだけど、ちょうど暇だったしね。かかってきな」



「ずいぶん余裕だな~」



「後が楽しみだぜ~」



馬から降りた四人は、ニタニタと笑いながらルミニーを取り囲む。



「ルミニーさん一人だけで行って大丈夫なんですか?」



「あの人数なら全然問題ないよ、実力は勇者クラスだからね。ギャンブル狂じゃなければチームもA級に認められるんだけどな・・・・・・」



諦めたように笑って答えるルドエルは、気にもせず剣の手入れを始めている。



数撃のやり取りで盗賊二人の剣は遠くに飛ばされ、盗賊達は驚いた顔を見合わせる。

たじろいでいる残りの二人は後退り、今にも逃げて行きそうだ。

ルミニーがスキルを使った様子もなく、盗賊達との実力差は明白だった。



「まだやるかい、次は斬るよ」



楽しそうに素振りを始めるルミニーを見る余裕も無く、盗賊達は馬に乗り走り去って行く。



「捨て台詞も無しかよ、まだまだだね」



そう言って馬車に乗り込むルミニーの強さは、正に勇者クラスだった。
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