11 / 143
<好都合な相手>
しおりを挟む
翌日の朝。
早めに済ませた朝食は、目玉焼きだった。
ギルドで仕事の依頼を探しに来たが、他の冒険者達は変わらず冷たい視線を送る。
「気にするな、人の噂もなんとやらだ」
困った様子のエミリを慰め、依頼が貼り出された掲示板を眺める。
「良いのが無いな・・・・・・」
本当はエミリが回復魔法を使えるので、仕事がギルドじゃなく回復士でも良いのだが。
一般的だったからギルドに来ているのに、依頼が少ないのは予想外だった。
初期設定時に、城から離れた町の方がスローライフで良いかと思ったのは失敗だったかもしれない。
「他の町も検討した方が良いのかも知れないな、回復士で募集している所がないか探してみるか」
「うん、観てない所もあるしね」
こうして二人で町を探索してみたが、回復士での募集は見付けられなかった。
「時間の無駄だったな、もう一度ギルドにでも行ってみるか」
「でも、面白い御店沢山在ったよ、魔道具店とか」
そんな事を話しながら歩いていると、椅子と机だけ置いた簡易な出店をしている老婆に話し掛けられた。
「そこのカワイイお嬢ちゃん占いはどうだい?よく当たると評判だよ」
立ち止まる二人に笑い掛ける老婆は、黒ずくめの服装が如何にもな空気を醸し出している。
「トウちゃん、やってみたい」
お金を管理しているのが自分だからだが、娘にねだられるのは何だか懐かしい。
「仕方ないな・・・・・・」
照れ隠しにそう言うと、老婆に支払いを済ます。
「さて、何を占ってほしいんだい」
自信有り気に尋ねる老婆に、エミリは口をとがらせ悩んでいる。
「将来とかはどうだ」
「うん、ソレにする」
「はいはい、お嬢ちゃんの将来だね」
期待の眼差しを向けるエミリに、老婆は笑って答え。
机の上に置いていた水晶に両手をかざすと、水晶の内部が輝き始めた。
「此れは、お嬢ちゃんの運命の相手だね。中々の男前だよ」
水晶の内部は白い煙りがボヤけて見え、うっすらとしか運命の相手の顔は解らない。
「ねぇねぇ、どんな人?何処に行ったら逢えるの?」
前のめりになって聞くエミリに、老婆はオヤオヤと笑い。
「此の世界にとって特別な存在だね、魔王城近くの沼に行ったら会う事が出来るよ」と断言する。
「トウちゃん行ってみよう、だって運命の人だよ」
エミリは無邪気にねだるが、事はそう簡単ではない。
「どれくらい遠いか解らないし、行くにしても魔王城の近くなんだぞ」
「トウちゃんも要るし、近くだからきっと大丈夫だって」
育て方を間違えたのか病気の反動なのか、我が娘ながら楽観視が酷いな。
「さすがに二人で行くのは危なそうだから、ギルドに依頼してみるか」
飛びはねて喜んでいるエミリを見ると、やはり駄目だとは言えないし。
将来の旦那かも知れない相手が気になるのも事実である。
ギルドに移動して職員に確認すると目的の場所には一日位掛かり、依頼に対する報酬は金貨一枚が妥当らしい。
因みに金貨一枚は十万円位の価値に相当するが、この世界での価値であり現実には百分の一である。
来る前に用意しておいた金が多かったから、支払いは大した問題ではなく。
どちらかというと問題は、どんな冒険者なのかだ。
そんな話しをカウンターでしていると、職員が記載していた依頼書を女剣士が取り上げ。
「どれどれ~、金貨一枚良いじゃん~」と女剣士は遠慮無く読み上げていく。
「そんな事しても寝坊は取り消されませんよ」
仲間らしき、女魔導師が冷たくあしらい。
「まあまあ、二人供落ち着いて~」と仲裁に入った男剣士は、その女性二人に睨まれ黙ってしまう。
どうやら男一人、女二人の三人組らしい。
「ウチらが行ってあげようか、泊まりになるから中々受ける人見付からないと思うし」
口調は悪いが、悪気は無さそうに女剣士は微笑む。
思い返しても、昨日の審査騒動には居なかったし。
女性二人と気弱な男一人というパーティーなのも、自分達には好都合な相手だった。
早めに済ませた朝食は、目玉焼きだった。
ギルドで仕事の依頼を探しに来たが、他の冒険者達は変わらず冷たい視線を送る。
「気にするな、人の噂もなんとやらだ」
困った様子のエミリを慰め、依頼が貼り出された掲示板を眺める。
「良いのが無いな・・・・・・」
本当はエミリが回復魔法を使えるので、仕事がギルドじゃなく回復士でも良いのだが。
一般的だったからギルドに来ているのに、依頼が少ないのは予想外だった。
初期設定時に、城から離れた町の方がスローライフで良いかと思ったのは失敗だったかもしれない。
「他の町も検討した方が良いのかも知れないな、回復士で募集している所がないか探してみるか」
「うん、観てない所もあるしね」
こうして二人で町を探索してみたが、回復士での募集は見付けられなかった。
「時間の無駄だったな、もう一度ギルドにでも行ってみるか」
「でも、面白い御店沢山在ったよ、魔道具店とか」
そんな事を話しながら歩いていると、椅子と机だけ置いた簡易な出店をしている老婆に話し掛けられた。
「そこのカワイイお嬢ちゃん占いはどうだい?よく当たると評判だよ」
立ち止まる二人に笑い掛ける老婆は、黒ずくめの服装が如何にもな空気を醸し出している。
「トウちゃん、やってみたい」
お金を管理しているのが自分だからだが、娘にねだられるのは何だか懐かしい。
「仕方ないな・・・・・・」
照れ隠しにそう言うと、老婆に支払いを済ます。
「さて、何を占ってほしいんだい」
自信有り気に尋ねる老婆に、エミリは口をとがらせ悩んでいる。
「将来とかはどうだ」
「うん、ソレにする」
「はいはい、お嬢ちゃんの将来だね」
期待の眼差しを向けるエミリに、老婆は笑って答え。
机の上に置いていた水晶に両手をかざすと、水晶の内部が輝き始めた。
「此れは、お嬢ちゃんの運命の相手だね。中々の男前だよ」
水晶の内部は白い煙りがボヤけて見え、うっすらとしか運命の相手の顔は解らない。
「ねぇねぇ、どんな人?何処に行ったら逢えるの?」
前のめりになって聞くエミリに、老婆はオヤオヤと笑い。
「此の世界にとって特別な存在だね、魔王城近くの沼に行ったら会う事が出来るよ」と断言する。
「トウちゃん行ってみよう、だって運命の人だよ」
エミリは無邪気にねだるが、事はそう簡単ではない。
「どれくらい遠いか解らないし、行くにしても魔王城の近くなんだぞ」
「トウちゃんも要るし、近くだからきっと大丈夫だって」
育て方を間違えたのか病気の反動なのか、我が娘ながら楽観視が酷いな。
「さすがに二人で行くのは危なそうだから、ギルドに依頼してみるか」
飛びはねて喜んでいるエミリを見ると、やはり駄目だとは言えないし。
将来の旦那かも知れない相手が気になるのも事実である。
ギルドに移動して職員に確認すると目的の場所には一日位掛かり、依頼に対する報酬は金貨一枚が妥当らしい。
因みに金貨一枚は十万円位の価値に相当するが、この世界での価値であり現実には百分の一である。
来る前に用意しておいた金が多かったから、支払いは大した問題ではなく。
どちらかというと問題は、どんな冒険者なのかだ。
そんな話しをカウンターでしていると、職員が記載していた依頼書を女剣士が取り上げ。
「どれどれ~、金貨一枚良いじゃん~」と女剣士は遠慮無く読み上げていく。
「そんな事しても寝坊は取り消されませんよ」
仲間らしき、女魔導師が冷たくあしらい。
「まあまあ、二人供落ち着いて~」と仲裁に入った男剣士は、その女性二人に睨まれ黙ってしまう。
どうやら男一人、女二人の三人組らしい。
「ウチらが行ってあげようか、泊まりになるから中々受ける人見付からないと思うし」
口調は悪いが、悪気は無さそうに女剣士は微笑む。
思い返しても、昨日の審査騒動には居なかったし。
女性二人と気弱な男一人というパーティーなのも、自分達には好都合な相手だった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説

もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜
刹那玻璃
ファンタジー
行き当たりばったりです。
あらすじ変更あるかもです。
side変更ありです。
↓
自他共に認める病弱。偏頭痛持ち、慢性胃腸炎あり。
パニック障害と緊張すると引きこもりになります。
対人恐怖症のケもあり、全身から汗が噴き出ます。
自他共に認める多趣味。
一応裁縫はそこそこできます。刺繍もまぁできるし、見よう見まねで刺し子もいくつか完成させました。
編み物は凝りすぎない程度なら縄編みや模様編みはできます。セーターも編めます。
ぬいぐるみも作れますが自分で型紙は起こせません。
あとはレジンを使う小物も作れますし、天然石を使ったネックレスだのは楽しいです。
でも、そういったものはプロ並みに達する腕があるならいいのです。
私の腕はどうやってもアマチュア。その馬鹿加減にうんざりです。
情けないです腹立たしいです。
ネットフリマで販売していましたが、全く売れず、売れ残った在庫を抱え悶々とする私は、ひょんなことから人前に出なくていいというフリーマーケットに出品権をもらえることになる。
でも、代わりにこういう条件を突きつけられた。
◉フリマから提示した材料で作った商品を最低一つは並べること(初期は、今まで作っていたものも出品可能だが、量は減らすように努力する)
◉フリマから提示された材料で作った商品は他で販売したり、譲ったりしないこと
◉週一フリマはありますが、最低限、月に一度は出品すること
やった!
認められた!
その権利を使って在庫処分! ついでに収入獲得! 将来のために自分のスキルを磨いて月一の贅沢、某喫茶店で大好きなモンブランとコーヒーセットを食べるのだ!
※逝き遅れの魔術師の登場人物ちょっとだけ出てます。

追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~
一色孝太郎
ファンタジー
【小説家になろう日間1位!】
悪役令嬢オリヴィア。それはスマホ向け乙女ゲーム「魔法学園のイケメン王子様」のラスボスにして冥界の神をその身に降臨させ、アンデッドを操って世界を滅ぼそうとした屍(かばね)の女王。そんなオリヴィアに転生したのは生まれついての重い病気でずっと入院生活を送り、必死に生きたものの天国へと旅立った高校生の少女だった。念願の「健康で丈夫な体」に生まれ変わった彼女だったが、黒目黒髪という自分自身ではどうしようもないことで父親に疎まれ、八歳のときに魔の森の中にある見放された開拓村へと追放されてしまう。だが彼女はへこたれず、領民たちのために闇の神聖魔法を駆使してスケルトンを作り、領地を発展させていく。そんな彼女のスケルトンは産業革命とも称されるようになり、その評判は内外に轟いていく。だが、一方で彼女を追放した実家は徐々にその評判を落とし……?
小説家になろう様にて日間ハイファンタジーランキング1位!
※本作品は他サイトでも連載中です。

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~
アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」
突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!
魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。
「これから大災厄が来るのにね~」
「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」
妖精の声が聞こえる私は、知っています。
この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。
もう国のことなんて知りません。
追放したのはそっちです!
故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています

異世界で理想のスローライフを!目指して頑張ってます!!
ララ
ファンタジー
一度は憧れたことがあるのではないだろうか?
異世界召喚や転生に。
かく言う俺もめちゃくちゃ異世界転生に憧れていた時期があった!
いつ転生してもいいように、異世界にはないであろうお菓子や調味料、果ては日用品まで準備したセットを作っていたくらいだからな!
社会人となった今となっては黒歴史以外のなんでもないが。
仕事が転勤になって引越しの準備をしていた時、学生の頃に作った異世界リュック(異世界に持っていきたいものを詰め込んだもの)を見つけて自分の黒歴史を思い出し赤面していた時だった。
感じたのは一瞬の痛み、それから周囲の人々の悲鳴が聞こえた。
ーーあぁ、これだめだな。死んだな‥‥
‥トラックが家に突っ込んできて死ぬって不運すぎない?
‥ラノベなら横断歩道渡ってる途中でしょ!
‥でもトラックに轢かれたことには変わりないから転生できる?
‥どうせ転生するなら異世界がいいなぁとか最後にしょうもないことを考えていた。
次に目が覚めた時最初に見たのは2つの満月だった。
えっ、あっ、マジで異世界?
転生しちゃった??
********************
アカウントを変えたので再投稿です!
1話ずつ、文章を直しながら投稿していきます。
ちょっとだけ変更あり!
見切り発車で色々と矛盾が出てきていたので改めて設定を考えて書きましたがそれでも変なとこあるかもしれません!指摘してくださると嬉しいです!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
Weapons&Magic 〜彼はいずれ武器庫<アーセナル>と呼ばれる〜
ニートうさ@秘密結社らびっといあー
ファンタジー
魔法!努力!勝利!仲間と成長する王道ファンタジー!
チート、ざまぁなし!
努力と頭脳を駆使して武器×魔法で最強を目指せ!
「こんなあっさり死んだら勿体ないじゃん?キミ、やり残したことあるでしょ?」
神様にやり直すチャンスを貰い、とある農村の子アルージェとして異世界に転生することなる。
鍛治をしたり、幼馴染のシェリーと修行をして平和に暮らしていたが、ある日を境に運命が動き出す。
道中に出会うモフモフ狼、男勝りなお姉さん、完璧メイドさんとの冒険譚!
他サイトにて累計ランキング50位以内獲得。
※カクヨム、小説家になろう、ノベルピアにも掲載しております。
只今40話から70話辺りまで改修中の為、読みにくいと感じる箇所があるかもしれません。
一日最低1話は改修しております!

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる