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<スタートプリズン>
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なろうのハイファンタジー読んでたら寝るのが夜中の2時を越えていた。
寝不足なせいか気持ちは読んでいた異世界のままなのに、現実は車に乗り込み仕事に向かわなければいけない。
朝の占いじゃないけど、通勤時の信号待ちが多い日は何だか不安になる。
そんな事を思う位に一日の始まりは大切だ。
今日は対向車線の事故を目撃したが仕事に急ぎ走り続けると、急に凄まじい衝撃が走り気を失う。
一瞬の出来事だったので確証は持てないが、車間距離が空いていた事から想像すると自分も背後からの衝突事故を受けたのだと思う。
親元を離れ一人暮らしを始めた矢先の出来事だった。
気が付いたら目の前には鉄格子、何故か薄暗い牢屋の中。
事故が原因で捕まってしまったのだろうか。
そんな事も考えたが、そうではないと気付くのに時間は掛からなかった。
何故なら牢屋を見張っている監守はどう見ても骸骨兵、警官がハロウィンパーティーなんてあり得ないし。仮装で出来るクオリティの骸骨ではなかった。
其れにあれだけの衝撃が有ったにも拘わらず、身体は何処も痛く無い。
自分の身に起きた出来事を思い返すが、少しだけ思い出せるのは子供の声で「あっ……、ここにしたら面白いかも……」という不吉な言葉とその子供の笑い声だけ。
断じて認めたくはないが、もしかしたら自分は死後転生してしまったのでは。そんな考えが頭を過るのは当然の事だった。
「グヘヘ……、旨そうだ」
「ギャハハハ、たまんね~臭いだな」
薄暗くて見えなかったが向こう側にも鉄格子が有り、鋭く光る眼光の囚人達は嬉しそうに笑っている。
其の囚人達の笑い声で目が覚めたのだと理解するのに、そう時間は掛からなかった。
ある程度暗さにも眼が慣れてきたので、良く眼を凝らすと其の囚人達が人では無い事が解る。
人影とは言えない位に大きいし、どう見ても形状が異形なのだ。
慌てて振り返り同室の者を確認すると、まるでゲームの世界を映し出したかの様な魔物の姿。
小柄で気の弱そうなゴブリンや大柄でライオンの顔をした獣人、黒い翼と頭に角が生えた薄気味悪い笑顔の魔族。
此れは夢だ。
そう思う時点で夢ではないのかもしれないが、そう願うしかない。
恐る恐る自分の太モモをつねり、周りに気付かれないように確かめるが間違いなく痛い。
結構強めだったが眼が覚めたのは今の痛みで、目の前の世界は何も変わらない。
余りにも酷い状況だから更に強くして確かめたいが、これ以上はケガをしそうで出来ない。
「クククッ、ククッ」
そんな確認をしている事に感付いたのか、背後の魔族は笑い声を響かせている。
決して認めたくはないが此れは現実で、自分はゲームの様なこの世界に存在しているのだ。
終わった。完全に詰んでいる。
天使のような善人ではないが、こんな仕打ちを受ける程、俺は悪人ではないはずだ。
其れに異世界で勇者の冒険そういうゲームをした事は有るが、普通は森とか街とか城から始まるだろ。
牢屋からスタートって何なんだよ。これじゃあ何も始まらね-よ。
そんな心の叫びをも見透かし、嘲笑うように魔族の笑い声だけが静かな牢屋に響いていた。
この世界なのか元の世界なのか解らないが、神様が居るのなら一つ聞きたい。
此れは人違いではないでしょうか?。
寝不足なせいか気持ちは読んでいた異世界のままなのに、現実は車に乗り込み仕事に向かわなければいけない。
朝の占いじゃないけど、通勤時の信号待ちが多い日は何だか不安になる。
そんな事を思う位に一日の始まりは大切だ。
今日は対向車線の事故を目撃したが仕事に急ぎ走り続けると、急に凄まじい衝撃が走り気を失う。
一瞬の出来事だったので確証は持てないが、車間距離が空いていた事から想像すると自分も背後からの衝突事故を受けたのだと思う。
親元を離れ一人暮らしを始めた矢先の出来事だった。
気が付いたら目の前には鉄格子、何故か薄暗い牢屋の中。
事故が原因で捕まってしまったのだろうか。
そんな事も考えたが、そうではないと気付くのに時間は掛からなかった。
何故なら牢屋を見張っている監守はどう見ても骸骨兵、警官がハロウィンパーティーなんてあり得ないし。仮装で出来るクオリティの骸骨ではなかった。
其れにあれだけの衝撃が有ったにも拘わらず、身体は何処も痛く無い。
自分の身に起きた出来事を思い返すが、少しだけ思い出せるのは子供の声で「あっ……、ここにしたら面白いかも……」という不吉な言葉とその子供の笑い声だけ。
断じて認めたくはないが、もしかしたら自分は死後転生してしまったのでは。そんな考えが頭を過るのは当然の事だった。
「グヘヘ……、旨そうだ」
「ギャハハハ、たまんね~臭いだな」
薄暗くて見えなかったが向こう側にも鉄格子が有り、鋭く光る眼光の囚人達は嬉しそうに笑っている。
其の囚人達の笑い声で目が覚めたのだと理解するのに、そう時間は掛からなかった。
ある程度暗さにも眼が慣れてきたので、良く眼を凝らすと其の囚人達が人では無い事が解る。
人影とは言えない位に大きいし、どう見ても形状が異形なのだ。
慌てて振り返り同室の者を確認すると、まるでゲームの世界を映し出したかの様な魔物の姿。
小柄で気の弱そうなゴブリンや大柄でライオンの顔をした獣人、黒い翼と頭に角が生えた薄気味悪い笑顔の魔族。
此れは夢だ。
そう思う時点で夢ではないのかもしれないが、そう願うしかない。
恐る恐る自分の太モモをつねり、周りに気付かれないように確かめるが間違いなく痛い。
結構強めだったが眼が覚めたのは今の痛みで、目の前の世界は何も変わらない。
余りにも酷い状況だから更に強くして確かめたいが、これ以上はケガをしそうで出来ない。
「クククッ、ククッ」
そんな確認をしている事に感付いたのか、背後の魔族は笑い声を響かせている。
決して認めたくはないが此れは現実で、自分はゲームの様なこの世界に存在しているのだ。
終わった。完全に詰んでいる。
天使のような善人ではないが、こんな仕打ちを受ける程、俺は悪人ではないはずだ。
其れに異世界で勇者の冒険そういうゲームをした事は有るが、普通は森とか街とか城から始まるだろ。
牢屋からスタートって何なんだよ。これじゃあ何も始まらね-よ。
そんな心の叫びをも見透かし、嘲笑うように魔族の笑い声だけが静かな牢屋に響いていた。
この世界なのか元の世界なのか解らないが、神様が居るのなら一つ聞きたい。
此れは人違いではないでしょうか?。
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