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裏切り
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私はその噂が本当なのかを確認するだけのつもりだった。もし本当ならば彼を問いただしその相手と別れさせなければと思っていた。
「………フィリップ様」
2人がよく逢引に使っている、ひとけのない裏庭でぴったりと寄り添う2つの影を見つけた。
あぁ……噂は本当だった。
私と同じ公爵家のフィリップ様は婚約者であり初恋の相手だった。私とフィリップ様は5年前お互い12歳の時に婚約した。
あまり感情を表に出さないフィリップ様だがふとした瞬間に見せる彼の優しい笑顔に私は心惹かれていた。
学園に入学してからはフィリップ様と2人で過ごす時間は目に見えて減って行った。それでもこのまま学園を卒業したら予定通り彼と結婚するのだろうと私はぼんやり思っていた。
けれど………
実際に目にした2人の姿は誰が見てもお似合いで仲睦まじい様子だった。あんなに笑顔で話すフィリップ様を見たのは何年ぶりだろうか。
金髪碧眼で背の高いフィリップ様と桃色のふわふわ揺れるセミロングに緑色の大きな瞳の可愛らしい令嬢。最近どこかの男爵家が養子に迎えた元平民の少女らしい。
ふと視線に入る自分の髪を指先で摘んで眺めた。真っ黒で重く見える黒髪を私はあまり好きではない。
瞳の色も髪と同じ真っ黒なので無駄に白くて病人のような肌が悪目立ちしている。
はぁっと溜め息をついて顔を上げるとフィリップ様と視線が合った。ハッとした顔のフィリップ様に私は力無く微笑みその場を去った。
彼に詰め寄るつもりだったがあの現場を見たらもうどうでも良くなった。
全てが無駄だと気付いたから。分不相応の私は潔く彼の前から消える事にしよう。もう私の初恋も終わらせなければ……
「………フィリップ様」
2人がよく逢引に使っている、ひとけのない裏庭でぴったりと寄り添う2つの影を見つけた。
あぁ……噂は本当だった。
私と同じ公爵家のフィリップ様は婚約者であり初恋の相手だった。私とフィリップ様は5年前お互い12歳の時に婚約した。
あまり感情を表に出さないフィリップ様だがふとした瞬間に見せる彼の優しい笑顔に私は心惹かれていた。
学園に入学してからはフィリップ様と2人で過ごす時間は目に見えて減って行った。それでもこのまま学園を卒業したら予定通り彼と結婚するのだろうと私はぼんやり思っていた。
けれど………
実際に目にした2人の姿は誰が見てもお似合いで仲睦まじい様子だった。あんなに笑顔で話すフィリップ様を見たのは何年ぶりだろうか。
金髪碧眼で背の高いフィリップ様と桃色のふわふわ揺れるセミロングに緑色の大きな瞳の可愛らしい令嬢。最近どこかの男爵家が養子に迎えた元平民の少女らしい。
ふと視線に入る自分の髪を指先で摘んで眺めた。真っ黒で重く見える黒髪を私はあまり好きではない。
瞳の色も髪と同じ真っ黒なので無駄に白くて病人のような肌が悪目立ちしている。
はぁっと溜め息をついて顔を上げるとフィリップ様と視線が合った。ハッとした顔のフィリップ様に私は力無く微笑みその場を去った。
彼に詰め寄るつもりだったがあの現場を見たらもうどうでも良くなった。
全てが無駄だと気付いたから。分不相応の私は潔く彼の前から消える事にしよう。もう私の初恋も終わらせなければ……
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