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最低な元婚約者様へ永遠にさようなら

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元婚約者クズーレ様へ

貴方がこの手紙を読んでいる時にはもう私はこの世には居ません。思い返せば貴方と仲睦まじく過ごせていたのは15歳の時まででした。学園に入学してすぐに貴方があの子を側に置くようになってからは全く関わる事がなくなりましたからね。


私が話しかけても貴方は嫌そうに顔をしかめて強制的に会話を終わらせあの子の所へ走り去りました。


私は知っています…
ある日の事でした。学園の人気の無い裏庭を通りかかった私は貴方とあの子の会話を偶然聞いてしまいました。ぴったりと身体をくっつけてベンチに座り私の事を話してましたね。


「本当に忌々しい…親の決めた婚約者のカレンになど愛は無い!私が愛しているのはヤリマお前だけだ!私の真実の愛はヤリマお前だ!カレンと結婚してもあんな女絶対に抱かないからな?カレンに別宅を建てさせてそこに2人で住もう!私の子を産むのはヤリマだけだ」


「クズーレ嬉しいわ!!カレンは財布にすればいいのよっ!金に物を言わせて私のグズーレを無理矢理に婚約者にしたんだから!あんな女が私達の真実の愛に勝てるわけないのよ!あの女には私とクズーレの為に沢山お金を出して貰いましょう!」


2人はとても楽しげに将来の計画を語っていました。私と貴方の婚約は子供の頃に結ばれています。そこに割って入ったのはあの子の方なのにぬけぬけとよく言えたものです。まぁ私とは人種が違うので理解出来なくて当たり前ですけどね。


私の家のお金をアテにして贅沢な暮らしをするのだと貴方達は言っていましたね。プライドも恥も持っていない人間とは貴方達のような人の事を言うのですね。勉強になりました…


私が知り合いの公爵子息と話していたら貴方は大声で怒鳴りつけて来ましたね。婚約者が居るのに軽々しく男と話すなと言いましたけど『ブーメラン』と言う言葉をご存知ですか?


私は貴方から受けた数々の仕打ちのせいでここ数年は胃がキリキリ痛む毎日でした。ただの胃痛だと思って薬を飲んでやり過ごしていました。けれどそれは思ったよりも深刻だったようです。


「何故もっと早く医者にかからなかったのですか!こんな…こんなになるまで放置してっ!もう手に負えない程に進行しています…まだ若いのにっ」


お忍びで腕の良い医師を屋敷に呼んで診察して貰ったらそんな事を言われました。末期の胃癌だそうです。胃が痛みだした頃に治療していたらすぐに治ったそうです。その頃とは…そう、貴方があの子に構い出した時期でした。


あっと言う間に癌は私の身体を蝕んで行きました。最近はめまいを起こして倒れたり吐血する事もありました。けれど学園では気力で耐えていました。貴方は私の体調の変化に何も気づきませんでした。私を視界にすら入れなかったのだから当然ですよね。


卒業を前にして私が学園を退学した時ですら貴方は会いにも来ず手紙の一枚も送ってくれませんでした。


貴方とのこれまでの事を全て包み隠さず両親と兄妹に話して余命宣告された事も告白しました。泣き崩れ貴方に激高する彼等に家族として感謝の言葉とこれからも愛していると伝えました。今後の貴方への対応は両親に任せました。


そろそろ終わりの時が近付いているようです。私は子供の頃から貴方が好きでした。愛されてもない愚かな私は貴方と結婚するのを楽しみにしていました。もう叶わない夢です。貴方の真実の愛のお相手のあの子とどうぞお幸せに。永遠にさようなら。

貴方の元婚約者カレン

………………………………………………


婚約者カレンの訃報を聞いたのは彼女の死から1ヶ月経過した後だった。この手紙が届き俺は頭の中が真っ白になった。全く同じ内容の手紙が俺の両親と彼女を可愛がっていた祖父母とヤリマの両親にも届いていた。


結果的に俺とヤリマは勘当され僅かな荷物と数枚の金貨を持たされ家を追い出された。カレンの父親が「愛し合う2人を引き裂く事は出来ない。カレンの遺言どおりに2人を一緒にしてやろう」と言ったそうだ。


俺とヤリマはカレンの家の馬車に乗せられ郊外の治安の悪いスラム街へと投げ出された。


「金が無くとも真実の愛があれば幸せになれるさ!」

カレンの父親は満面の笑みで青ざめる俺とヤリマに吐き捨てると馬車を走らせ去って行った。
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