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婚約破棄して下さい

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校舎の渡り廊下を歩いていたエリカの腕をサミュエルは乱暴に掴み空き教室へ引きずり込んだ。

「いやっ!……サミュエル様?」

「っ!君は俺が他の令嬢と一緒に居ても何とも思わないのか?」


何故かサミュエルは眉間に皺を寄せ嫌そうにエリカに詰め寄る。エリカは心底ウンザリした。

「……私が歩み寄ろうとしても素っ気なく突っぱねて他の令嬢と仲良くしておきながら、それを無視すると怒り出す。サミュエル様は一体何がしたいんですか?そんなに私がお嫌いならば婚約破棄して下さい。そして違う方を婚約者にして下さい。その方がお互いの為ですわ…」

エリカは掴まれた腕を振りほどこうとするがサミュエルは離さない。そして彼女の身体を乱暴に抱き寄せ噛み付くように口付けた。


「っっ!んっ、」

サミュエルに後頭部をガッシリと掴まれエリカは柔らかな唇をちゅぱちゅぱ吸われて無理矢理舌をねじ込まれ口の中を掻き回される。引っ込めた舌を引っ張り出され痛いくらいにチュウチュウ吸われた。

「ふぁ、んっ、く、くるひっ、」

ちゅぱっと大きな音を立ててサミュエルは唇を離しエリカのおでこにチュッとキスをした。


「婚約破棄なんか絶対にしないっ、俺はエリカを愛してる!」

「はぁっ、はぁ…、あ、愛してる?馬鹿にしないでっ!愛してるならっ、何でずっとあんな態度を取り続けたのよ!信じられるわけないじゃない!」


エリカはサミュエルの身体を突き飛ばし全力で走った。サミュエルに口付けられた唇にまだ生々しく彼の感触が残っている。


「何がっ、何が愛してるよ。最低っ!!」

自分に冷たい態度を取り続けてまるで見せつけるように他の令嬢と寄り添うサミュエルに今更愛してると言われてもはいそうですかと納得出来るはずがない。

ムリヤリ唇を奪われてエリカは怒りと羞恥に身体を震わせた。ずっと好きだったサミュエルにキスをされた時に彼女は嬉しく思ってしまったからだ。

しかしそれは一瞬の気の迷いだったとエリカは気持ちに蓋をして心の奥底に仕舞い込んだ。あんなの事故みたいなものだからもう忘れよう…


あれからエリカは変わらない日々をおくっていた。サミュエルとは顔を合わせても挨拶をするだけで話しかけられても関わらずスルーしている。彼が令嬢と一緒に居るのを見かけてもすぐにその場を立ち去った。
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