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自分で壊した幸せ
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『…最低!もう、いい。もう要らない!龍也兄なんかだいっきらい!』
萌奈の悲痛な叫び声が俺の頭の中に鳴り響く。
ボロボロと涙を流し顔を歪ませた彼女の姿が頭から離れない。萌奈のあんな辛そうな顔を今まで一度も見たことがなかった。
「っ、萌奈っ!」
何故すぐに彼女を追いかけなかったのか俺は酷く後悔していた。
「あら、行っちゃった。ふふっ…ねぇ龍哉さ、」
パンッ!
俺の腕に触れようとした女の手を叩き落とす。
「触るな!彼女に余計な事を言いやがってっ…もうお前に用は無い。出ていけ!」
「っ、酷いわ!何よその言い方…私は龍哉さんを」
「一回だけでいいから抱いてくれと言ったのはお前だろうが!用は済んだ、さっさと帰れ!」
目を釣り上げる女に俺は冷たく言い捨てた。所詮は性欲処理でしかない卑しい女は苛立ちながら脱ぎ散らかした服を着てキーキー喚きながら部屋を出ていった。
すぐに萌奈のスマホに電話をかけたけど留守番電話サービスに繋がる。メッセージアプリにメールを送ったが既読にならない。
「萌奈っ、頼む!萌奈出てくれよっ……」
何度かけても留守番電話サービスの機械的な音声が流れるだけだった。萌奈のスマホに俺からの着信音が鳴り響いていた時には…
既に彼女が俺の弟のモノになっていたなんて俺は知らなかった。
…………
「ただいま…」
あれから数日経ったけど萌奈からの連絡は無い。家に行ってもおばさんから萌奈は会いたくないと言っていると言われ門前払いされている。
物が少なくシンプルで綺麗に保っていた部屋は荒れ放題。片付ける気力も出ない。以前はかなり身だしなみにも気を遣っていたけれど無精ひげが生えても放ったらかし。
メッセージの既読はついたものの萌奈からの返信も折返しの電話も未だに無い。このまま萌奈は俺から離れていってしまうのだろうか?
ずっと大切にしてきた幼馴染。いつからか熱の籠もった大きな瞳で萌奈に見つめられる事に喜びを感じていた。甘ったれたように俺の名前を呼び小さな身体でめいいっぱい俺に愛を伝えようとする萌奈が愛おしくて堪らなかった。
本当に好きで好きであまりにも大切過ぎて萌奈に告白されお互いの想いを再確認した後も結婚するまで彼女に手を出すのを必死に我慢していた。
だけど性欲はマグマのように湧き上がる。萌奈とデートした日や彼女が部屋に遊びに来た日には抱き締めた萌奈の肌のぬくもりや握った手の柔らかさを思い出してひとり虚しく慰める。萌奈のあられもない姿を想像しながら何度も何度も醜い欲を吐き出した。
悶々とした日々を過ごしていた俺に悪魔が囁いた。
今月末で会社を退社するという女が入社してからずっと俺を好きだったと告白してきた。最愛の婚約者が居る俺は秒で断った。だが女はしつこく俺に食い下がりとんでもない事を言い出した。
『お願いします!ずっと龍哉さんの事だけを想ってきたんです。だから、一度で良いんです。たった一度だけ…抱いて貰えたら、そしたら私…龍哉さんを諦めます!』
後腐れなく欲を吐き出せる女の誘いに愚かにも俺は乗ってしまった。そしてこの世で一番大切な物を失った。
………………
数ヶ月後にやっと待ち焦がれていた萌奈からメールが届いた。だがその内容は俺を地獄の底へ叩き落とした。もう彼女は俺ではない男の手を取り未来に向けて歩みだしていた。それは俺のよく知る男だった。
萌奈の悲痛な叫び声が俺の頭の中に鳴り響く。
ボロボロと涙を流し顔を歪ませた彼女の姿が頭から離れない。萌奈のあんな辛そうな顔を今まで一度も見たことがなかった。
「っ、萌奈っ!」
何故すぐに彼女を追いかけなかったのか俺は酷く後悔していた。
「あら、行っちゃった。ふふっ…ねぇ龍哉さ、」
パンッ!
俺の腕に触れようとした女の手を叩き落とす。
「触るな!彼女に余計な事を言いやがってっ…もうお前に用は無い。出ていけ!」
「っ、酷いわ!何よその言い方…私は龍哉さんを」
「一回だけでいいから抱いてくれと言ったのはお前だろうが!用は済んだ、さっさと帰れ!」
目を釣り上げる女に俺は冷たく言い捨てた。所詮は性欲処理でしかない卑しい女は苛立ちながら脱ぎ散らかした服を着てキーキー喚きながら部屋を出ていった。
すぐに萌奈のスマホに電話をかけたけど留守番電話サービスに繋がる。メッセージアプリにメールを送ったが既読にならない。
「萌奈っ、頼む!萌奈出てくれよっ……」
何度かけても留守番電話サービスの機械的な音声が流れるだけだった。萌奈のスマホに俺からの着信音が鳴り響いていた時には…
既に彼女が俺の弟のモノになっていたなんて俺は知らなかった。
…………
「ただいま…」
あれから数日経ったけど萌奈からの連絡は無い。家に行ってもおばさんから萌奈は会いたくないと言っていると言われ門前払いされている。
物が少なくシンプルで綺麗に保っていた部屋は荒れ放題。片付ける気力も出ない。以前はかなり身だしなみにも気を遣っていたけれど無精ひげが生えても放ったらかし。
メッセージの既読はついたものの萌奈からの返信も折返しの電話も未だに無い。このまま萌奈は俺から離れていってしまうのだろうか?
ずっと大切にしてきた幼馴染。いつからか熱の籠もった大きな瞳で萌奈に見つめられる事に喜びを感じていた。甘ったれたように俺の名前を呼び小さな身体でめいいっぱい俺に愛を伝えようとする萌奈が愛おしくて堪らなかった。
本当に好きで好きであまりにも大切過ぎて萌奈に告白されお互いの想いを再確認した後も結婚するまで彼女に手を出すのを必死に我慢していた。
だけど性欲はマグマのように湧き上がる。萌奈とデートした日や彼女が部屋に遊びに来た日には抱き締めた萌奈の肌のぬくもりや握った手の柔らかさを思い出してひとり虚しく慰める。萌奈のあられもない姿を想像しながら何度も何度も醜い欲を吐き出した。
悶々とした日々を過ごしていた俺に悪魔が囁いた。
今月末で会社を退社するという女が入社してからずっと俺を好きだったと告白してきた。最愛の婚約者が居る俺は秒で断った。だが女はしつこく俺に食い下がりとんでもない事を言い出した。
『お願いします!ずっと龍哉さんの事だけを想ってきたんです。だから、一度で良いんです。たった一度だけ…抱いて貰えたら、そしたら私…龍哉さんを諦めます!』
後腐れなく欲を吐き出せる女の誘いに愚かにも俺は乗ってしまった。そしてこの世で一番大切な物を失った。
………………
数ヶ月後にやっと待ち焦がれていた萌奈からメールが届いた。だがその内容は俺を地獄の底へ叩き落とした。もう彼女は俺ではない男の手を取り未来に向けて歩みだしていた。それは俺のよく知る男だった。
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