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最終話
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「コウ、好きだよ」
イッた直後、まだつながった状態のままで和寿は俺を抱きしめた。
呼吸が整わない俺は応えることができない。
しばらくそのまま抱きしめられていたけど、和寿がすっと動き体の中から熱が引いた。
「っあ、……んぅ」
もうベッドルームに常備されているらしいタオルで和寿が俺の体を軽くふき始める。
「ぁ、自分で、できるから」
「んー、俺がやりたいんだよね」
知らぬ間に体力を使ったのか少し重だるいけど、動けないほどじゃない。
とりあえず拭くだけしてもらって、簡単にシャワーを浴びてソファーで一息。
なぜソファーで一息かと言えば、一緒にシャワーを浴びた和寿がベッドを綺麗にするかららしい。もちろん手伝わせてはもらえなかった。
呼ばれてベッドに戻ると、何かを考える間もなく和寿に抱きしめられながら眠っていた。
翌朝、さすがに体にはいつもと違う股関節の違和感とか、いろいろ少しだけ感じてはいたけど、行動に支障がでるほどのことはなく起きられた。
和寿は先に起きていたらしく、ベッドにはおらず当たり前のようにキッチンに立って朝食の用意をしていた。
気づいていない様子なのでベッドルームのドアから声を掛けた。
「おはよ」
「コウ! もっと寝てていいよ、朝ごはんできるのにもう少しかかるんだ」
「何か手伝う?」
「大丈夫、大丈夫」
「そっか、じゃあ水だけ貰ってもいい?」
笑顔で出してもらった水を受け取りソファーに腰を落ち着けて、ローテーブルに置いてある新聞を読む。
少ししたらいい匂いと共に朝食がダイニングに並んだ。
中華がゆらしく、様々な薬味や軽めのおかずがテーブルを彩っている。
「おいしそ」
「食べられそうなだけでいいからね」
俺は病人になったのかと思わないでもなかったが、前にも朝食として中華がゆは出てきたし、気遣われることは今更始まったことでもない。
特に気にせず蓮華を持った。
「いただきます」
「どうぞ」
割としっかりと鶏ガラのきいたおかゆにいろいろ足して堪能していると、和寿が口を開いた。
「あの三人とはいつから友達なのかな」
そんなに気になるのかと、びっくりしながらも言って減るものでもない。
「小学校から同じだけど、仲良くなったのは中学くらいかな」
運動場であえば遊ぶくらいで、わざわざ約束をしたり学校外で遊ぶことはない、小学生の頃はそんな距離感だった。
それが中一の時にみんな同じクラスになったのをきっかけに仲良くなった。
「鷹名瀬君に聞いたんだけど、裏ボスだったって」
「は? ないないない! 何言ってんだあいつ」
和寿は面白がるように笑っているが、俺は鷹名瀬のいい加減な情報に憤慨していた。
「裏ボスって言うなら佐藤だって。それにキレると手が出るのは窪内だし、ボスと言うかリーダー的なことやるのはいつも鷹名瀬だよ。俺は基本的にみんなについて行くだけだったよ。あいつマジで何言ってくれてんだ」
「その三人をまとめてたのがコウなんでしょ?」
「違う違う、まとめてたのは本当に鷹名瀬だから。鷹名瀬本当に裏ボスとか言ってた?」
「言ってたよ、そして今のコウの言葉で確信もした」
そんな確信するようなこと言ってないと思う。
その不思議そうなのが顔に出てたんだろう、和寿が説明してくれた。
「鷹名瀬君は、コウがどれだけ大事な友達が説明してくれたんだよ。学生時代の話で鷹名瀬君が色々役を引き受けたり忙しさで謀殺されそうな時とかプレッシャーで押しつぶされそうな時は何も言わなくてもコウが必ず手助けしてくれたって」
俺にはあまり覚えがない。
一緒に生徒会なんかやった時もあったが、俺は書記で鷹名瀬が生徒会長。手伝うのは当然だ。
「うーん、友達だし大変そうなら手伝うのは当たり前だと思うけど」
「普段暴力なんて振るわないのに、窪内君と殴りあったり一緒に喧嘩しにいったりしたのは?」
「それは……事実だけど。俺も子供だったからで」
若気の至りってのまさにああいう行動を言うと思う。
窪内に殴られたら殴り返したし、理不尽な喧嘩には加勢したこともあった。
「今は俺も窪内も全然そんなことないから」
和寿は笑って頷いてくれた。
「佐藤君は少しお家の事情が複雑だったんでしょ、詳しくはもちろん聞いてないよ。危ないことしそうな佐藤君を支えてたのがコウだって鷹名瀬君は言ってたよ」
「そんな大それたことしてないし、一緒に飯食ったりバイトしただけで、共有してる時間が少し多いくらいだって」
「でももしかしら自殺してたかもしれないほど悩んでたって」
「佐藤はそんなことしないよ」
思春期ゆえの不安定さも相まっていてそんなことを言っていたこともあったけど、もうすでに同性しか好きにならないことを告げていた俺が冗談めかして俺も死んじゃおーと言うとやたら必死に止めるられたのを覚えている。
「それぐらいのこと誰にだってある経験だろ? 長く友達してるといろいろあんだから。和寿もわかるだろ」
「分からないでもないけど、俺はわりとなんでも家族間で補いうことが多かったかな」
「あぁ、男兄弟だとそうかもしれないね。ウチは姉妹の間に俺一人で肩身が狭かったからなー」
聡い姉と、世渡りの上手い妹では、俺はもう太刀打ちできなかったし、今でももちろんできない。
「あいつらと何かを補えあえるとは思えない……」
俺が思わずこぼすと、和寿は笑った。
朝食をすっかり食べ終わったころ少し真面目な顔になった。
「鷹名瀬君は俺にコウが合う理由を説明してくれたけど、その通りだなって思うことが多くてそれが悔しいんだろうな」
和寿自身のことなのに、客観的な言い方が少しおかしい。
「鷹名瀬なんて言ってた?」
「コウは自覚ないんだろうけど」
和寿はそう前置きをした。
「相手に無理させない、気を使わせない、考えていないようでちゃんと考えてくれている、自然にいることを許してくれる」
鷹名瀬よ、売り込み過ぎ。他に褒めるところがないからって盛り過ぎだ。
「ごめん、和寿。それは忘れて。なんかすごく空気読める人みたいだけど、俺全然違うから」
恥ずかしくて穴があったら入りたい。
まさかそれを真に受けて俺と付き合う気になってくれたのかと思うと、居たたまれない。
「違わないと思うけどな、コウは俺に対しても寛容だよ。最初は自棄になってるのかと思ったけど、お願いしたことは聞いてくるのはコウはあまり苦じゃないんだね」
「……考えたことないから具体的に思い当らない」
「コウは俺が何でもしてくれるって思ってない?」
「それは思ってる」
「それは俺がさせてもらってるんだよ」
「結局してもらってるんだから同じことなような気が」
「それが違うんだな」
もう俺に分かるわけがない。
楽しそうに笑いながら食器を片付け始めたので、一緒に運んで布巾を借りてテーブルを拭きながら考えた。
例えば今テーブルを拭いているのだって本当は和寿がしたいのかもしれない。
俺はソファーに座って亭主関白でも気取ればいいのだろうか。
もう分からん!
「コウは考えなくていいんだよ、俺が好きなようにやるからね」
皿を洗いながら言ってくれる和寿が言う通りな気がしてきた。
何がしたくてしたくないのかは和寿しかわからないんだから、もう任せる。
「気にいらないところができたら言って、そしたら直すからさ」
布巾を返して皿を洗ってる横で手をすすがせてもらいがてら一応言っておいた。
「コウは甘やかされる天才だ、俺みたいのからしたらホント堪らない」
和寿のまさかの発言に、思考回路が謎過ぎて思わず真横の顔を見上げて凝視してしまった。
「何言ってんの?」
そんな俺におもむろにキスする和寿の謎は深まるばかりだ。
唇はすぐに離れたいったけど、俺のいぶかしい視線はそのままだ。
「…………」
「俺の我儘許してくれてる」
「俺の世話するのが、我儘なのか?」
「コウは俺がいなくても生活に困らないでしょ?」
「頼りないから手伝ってやろうってのが普通だろ?」
「過去はそうだったかもしれないけど、コウは違うから余計焦ったのかもな。俺のこと必要として欲しいって思わされた」
「……思わされたって」
「俺のすることにちゃんと反応してくれると嬉しくなるんだよ、お礼言ったくれたり、嬉しそうな表情とか、たまには恐縮したり。逆に普通に俺の手伝いしてくれて、それが痒い所に手が届くようなサポートだからこっちが嬉しくさせられたりするから、もっとコウのためにできることはないかって思っちゃうんだよね」
「そうかぁ~?」
そんなに言われるようなことはしてないと思うんだけど……。
何かしてもらってお礼言わないと、姉貴か妹に酷い言われ方するから身に着いてたのかもしれない。家にそんな厳しい教師が二人もいたせいで、和寿に好かれるなら少しは感謝してもいい。少しだけな、あの二人よそでは優しいらしいが俺にはキツイから。
その所業を思い出して眉間に皺が寄る俺に、洗い物をし終え早くも昼食の用意をし始めている和寿は戯れるように頬にキスをする。
「コウはやっぱり寛容だよ、世話焼かれるのが苦痛な人もいるし、そういう人には俺も何もしないけど、やっぱりいろいろさせてもらえると嬉しいんだよ」
「俺がそれを許してるってこと?」
「そうだよ、キスも許してくる」
「それって恋人なら当たり前……」
「そうだねー、恋人同士だよねー」
なんか恥ずかしくなってきたからキッチンから退散した。
和寿のが年上だし経験の差は歴然だし、立ち向かおうと思うのが間違いだ。
ソファーでまた新聞を読もうとするとキッチンから呼ばれる。
「コウ?」
「なんですかー」
「好き」
敵前逃亡したと思ったのに、遠隔射撃で撃沈です。
「コウは?」
「…………はい」
「好き?」
「好きですよ、和寿さん!」
意地悪くそんな言い方しかできなったし、もう新聞から目は離さない。
内容なんてまったく入ってこないけど、そんな振りでもしてないとむず痒くてしょうがない。
みんなこんな思いして生きてるのか、すごいな。
「コウ」
思いもよらず声は近く、真後ろから聞こえた。
振り返ると微笑む和寿が立っている。
なんだか怪しい雰囲気を感じ取れる様になったのは成長なのだろうか。
「な、なにかなー、和寿」
「男心が分からないところも、コウの魅力の一つだよ」
俺も男なんですけど、と言う隙は与えられず捕まえられてまたもやキス。
しかも今度はディープなやつをたっぷりと。
「っん、……ぁ、っう、ん」
知らずに和寿の腕を掴んでいて、体が弛緩していくのが自分で分かる。
しばらくして唇が離れると抱きすくめられて耳元で囁かれる。
「ソファーとベッドとどっちがいい?」
何をとは言わずもがなだろう。
明るいうちからとか考えなくもなかったけど、欲には抗えない。
「……ベッド」
素直に答えた俺を連れて和寿は嬉しそうにベッドルームに直行した。
そうして俺は、人より遅めのいろんな初体験を重ねている毎日を過ごしている。
おしまい
イッた直後、まだつながった状態のままで和寿は俺を抱きしめた。
呼吸が整わない俺は応えることができない。
しばらくそのまま抱きしめられていたけど、和寿がすっと動き体の中から熱が引いた。
「っあ、……んぅ」
もうベッドルームに常備されているらしいタオルで和寿が俺の体を軽くふき始める。
「ぁ、自分で、できるから」
「んー、俺がやりたいんだよね」
知らぬ間に体力を使ったのか少し重だるいけど、動けないほどじゃない。
とりあえず拭くだけしてもらって、簡単にシャワーを浴びてソファーで一息。
なぜソファーで一息かと言えば、一緒にシャワーを浴びた和寿がベッドを綺麗にするかららしい。もちろん手伝わせてはもらえなかった。
呼ばれてベッドに戻ると、何かを考える間もなく和寿に抱きしめられながら眠っていた。
翌朝、さすがに体にはいつもと違う股関節の違和感とか、いろいろ少しだけ感じてはいたけど、行動に支障がでるほどのことはなく起きられた。
和寿は先に起きていたらしく、ベッドにはおらず当たり前のようにキッチンに立って朝食の用意をしていた。
気づいていない様子なのでベッドルームのドアから声を掛けた。
「おはよ」
「コウ! もっと寝てていいよ、朝ごはんできるのにもう少しかかるんだ」
「何か手伝う?」
「大丈夫、大丈夫」
「そっか、じゃあ水だけ貰ってもいい?」
笑顔で出してもらった水を受け取りソファーに腰を落ち着けて、ローテーブルに置いてある新聞を読む。
少ししたらいい匂いと共に朝食がダイニングに並んだ。
中華がゆらしく、様々な薬味や軽めのおかずがテーブルを彩っている。
「おいしそ」
「食べられそうなだけでいいからね」
俺は病人になったのかと思わないでもなかったが、前にも朝食として中華がゆは出てきたし、気遣われることは今更始まったことでもない。
特に気にせず蓮華を持った。
「いただきます」
「どうぞ」
割としっかりと鶏ガラのきいたおかゆにいろいろ足して堪能していると、和寿が口を開いた。
「あの三人とはいつから友達なのかな」
そんなに気になるのかと、びっくりしながらも言って減るものでもない。
「小学校から同じだけど、仲良くなったのは中学くらいかな」
運動場であえば遊ぶくらいで、わざわざ約束をしたり学校外で遊ぶことはない、小学生の頃はそんな距離感だった。
それが中一の時にみんな同じクラスになったのをきっかけに仲良くなった。
「鷹名瀬君に聞いたんだけど、裏ボスだったって」
「は? ないないない! 何言ってんだあいつ」
和寿は面白がるように笑っているが、俺は鷹名瀬のいい加減な情報に憤慨していた。
「裏ボスって言うなら佐藤だって。それにキレると手が出るのは窪内だし、ボスと言うかリーダー的なことやるのはいつも鷹名瀬だよ。俺は基本的にみんなについて行くだけだったよ。あいつマジで何言ってくれてんだ」
「その三人をまとめてたのがコウなんでしょ?」
「違う違う、まとめてたのは本当に鷹名瀬だから。鷹名瀬本当に裏ボスとか言ってた?」
「言ってたよ、そして今のコウの言葉で確信もした」
そんな確信するようなこと言ってないと思う。
その不思議そうなのが顔に出てたんだろう、和寿が説明してくれた。
「鷹名瀬君は、コウがどれだけ大事な友達が説明してくれたんだよ。学生時代の話で鷹名瀬君が色々役を引き受けたり忙しさで謀殺されそうな時とかプレッシャーで押しつぶされそうな時は何も言わなくてもコウが必ず手助けしてくれたって」
俺にはあまり覚えがない。
一緒に生徒会なんかやった時もあったが、俺は書記で鷹名瀬が生徒会長。手伝うのは当然だ。
「うーん、友達だし大変そうなら手伝うのは当たり前だと思うけど」
「普段暴力なんて振るわないのに、窪内君と殴りあったり一緒に喧嘩しにいったりしたのは?」
「それは……事実だけど。俺も子供だったからで」
若気の至りってのまさにああいう行動を言うと思う。
窪内に殴られたら殴り返したし、理不尽な喧嘩には加勢したこともあった。
「今は俺も窪内も全然そんなことないから」
和寿は笑って頷いてくれた。
「佐藤君は少しお家の事情が複雑だったんでしょ、詳しくはもちろん聞いてないよ。危ないことしそうな佐藤君を支えてたのがコウだって鷹名瀬君は言ってたよ」
「そんな大それたことしてないし、一緒に飯食ったりバイトしただけで、共有してる時間が少し多いくらいだって」
「でももしかしら自殺してたかもしれないほど悩んでたって」
「佐藤はそんなことしないよ」
思春期ゆえの不安定さも相まっていてそんなことを言っていたこともあったけど、もうすでに同性しか好きにならないことを告げていた俺が冗談めかして俺も死んじゃおーと言うとやたら必死に止めるられたのを覚えている。
「それぐらいのこと誰にだってある経験だろ? 長く友達してるといろいろあんだから。和寿もわかるだろ」
「分からないでもないけど、俺はわりとなんでも家族間で補いうことが多かったかな」
「あぁ、男兄弟だとそうかもしれないね。ウチは姉妹の間に俺一人で肩身が狭かったからなー」
聡い姉と、世渡りの上手い妹では、俺はもう太刀打ちできなかったし、今でももちろんできない。
「あいつらと何かを補えあえるとは思えない……」
俺が思わずこぼすと、和寿は笑った。
朝食をすっかり食べ終わったころ少し真面目な顔になった。
「鷹名瀬君は俺にコウが合う理由を説明してくれたけど、その通りだなって思うことが多くてそれが悔しいんだろうな」
和寿自身のことなのに、客観的な言い方が少しおかしい。
「鷹名瀬なんて言ってた?」
「コウは自覚ないんだろうけど」
和寿はそう前置きをした。
「相手に無理させない、気を使わせない、考えていないようでちゃんと考えてくれている、自然にいることを許してくれる」
鷹名瀬よ、売り込み過ぎ。他に褒めるところがないからって盛り過ぎだ。
「ごめん、和寿。それは忘れて。なんかすごく空気読める人みたいだけど、俺全然違うから」
恥ずかしくて穴があったら入りたい。
まさかそれを真に受けて俺と付き合う気になってくれたのかと思うと、居たたまれない。
「違わないと思うけどな、コウは俺に対しても寛容だよ。最初は自棄になってるのかと思ったけど、お願いしたことは聞いてくるのはコウはあまり苦じゃないんだね」
「……考えたことないから具体的に思い当らない」
「コウは俺が何でもしてくれるって思ってない?」
「それは思ってる」
「それは俺がさせてもらってるんだよ」
「結局してもらってるんだから同じことなような気が」
「それが違うんだな」
もう俺に分かるわけがない。
楽しそうに笑いながら食器を片付け始めたので、一緒に運んで布巾を借りてテーブルを拭きながら考えた。
例えば今テーブルを拭いているのだって本当は和寿がしたいのかもしれない。
俺はソファーに座って亭主関白でも気取ればいいのだろうか。
もう分からん!
「コウは考えなくていいんだよ、俺が好きなようにやるからね」
皿を洗いながら言ってくれる和寿が言う通りな気がしてきた。
何がしたくてしたくないのかは和寿しかわからないんだから、もう任せる。
「気にいらないところができたら言って、そしたら直すからさ」
布巾を返して皿を洗ってる横で手をすすがせてもらいがてら一応言っておいた。
「コウは甘やかされる天才だ、俺みたいのからしたらホント堪らない」
和寿のまさかの発言に、思考回路が謎過ぎて思わず真横の顔を見上げて凝視してしまった。
「何言ってんの?」
そんな俺におもむろにキスする和寿の謎は深まるばかりだ。
唇はすぐに離れたいったけど、俺のいぶかしい視線はそのままだ。
「…………」
「俺の我儘許してくれてる」
「俺の世話するのが、我儘なのか?」
「コウは俺がいなくても生活に困らないでしょ?」
「頼りないから手伝ってやろうってのが普通だろ?」
「過去はそうだったかもしれないけど、コウは違うから余計焦ったのかもな。俺のこと必要として欲しいって思わされた」
「……思わされたって」
「俺のすることにちゃんと反応してくれると嬉しくなるんだよ、お礼言ったくれたり、嬉しそうな表情とか、たまには恐縮したり。逆に普通に俺の手伝いしてくれて、それが痒い所に手が届くようなサポートだからこっちが嬉しくさせられたりするから、もっとコウのためにできることはないかって思っちゃうんだよね」
「そうかぁ~?」
そんなに言われるようなことはしてないと思うんだけど……。
何かしてもらってお礼言わないと、姉貴か妹に酷い言われ方するから身に着いてたのかもしれない。家にそんな厳しい教師が二人もいたせいで、和寿に好かれるなら少しは感謝してもいい。少しだけな、あの二人よそでは優しいらしいが俺にはキツイから。
その所業を思い出して眉間に皺が寄る俺に、洗い物をし終え早くも昼食の用意をし始めている和寿は戯れるように頬にキスをする。
「コウはやっぱり寛容だよ、世話焼かれるのが苦痛な人もいるし、そういう人には俺も何もしないけど、やっぱりいろいろさせてもらえると嬉しいんだよ」
「俺がそれを許してるってこと?」
「そうだよ、キスも許してくる」
「それって恋人なら当たり前……」
「そうだねー、恋人同士だよねー」
なんか恥ずかしくなってきたからキッチンから退散した。
和寿のが年上だし経験の差は歴然だし、立ち向かおうと思うのが間違いだ。
ソファーでまた新聞を読もうとするとキッチンから呼ばれる。
「コウ?」
「なんですかー」
「好き」
敵前逃亡したと思ったのに、遠隔射撃で撃沈です。
「コウは?」
「…………はい」
「好き?」
「好きですよ、和寿さん!」
意地悪くそんな言い方しかできなったし、もう新聞から目は離さない。
内容なんてまったく入ってこないけど、そんな振りでもしてないとむず痒くてしょうがない。
みんなこんな思いして生きてるのか、すごいな。
「コウ」
思いもよらず声は近く、真後ろから聞こえた。
振り返ると微笑む和寿が立っている。
なんだか怪しい雰囲気を感じ取れる様になったのは成長なのだろうか。
「な、なにかなー、和寿」
「男心が分からないところも、コウの魅力の一つだよ」
俺も男なんですけど、と言う隙は与えられず捕まえられてまたもやキス。
しかも今度はディープなやつをたっぷりと。
「っん、……ぁ、っう、ん」
知らずに和寿の腕を掴んでいて、体が弛緩していくのが自分で分かる。
しばらくして唇が離れると抱きすくめられて耳元で囁かれる。
「ソファーとベッドとどっちがいい?」
何をとは言わずもがなだろう。
明るいうちからとか考えなくもなかったけど、欲には抗えない。
「……ベッド」
素直に答えた俺を連れて和寿は嬉しそうにベッドルームに直行した。
そうして俺は、人より遅めのいろんな初体験を重ねている毎日を過ごしている。
おしまい
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