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「朝陽……あのさ」
いつも通り週末、本当は昨日の晩に切り出さなければならなかったが、すっかり朝陽に甘やかされるのに慣れて、もう報告すらしないまま流れるようなスマートさで俺の体に触ってくれるから、ついそのまま流されてしまった。
朝起きて、さらには朝ご飯まできっちり食べ終わっていた。
今日の予定を立てようなんていう話を始めて漸く俺は朝陽に向き合った。
朝陽はいつもの爽やかな笑顔で振り向いてくれる。
「ん?」
ソファーの隣りに座ってスマホで天気や近隣のイベント事を調べていたのを顔を上げて、俺の方を見てくれた。
「流石に俺でもこういうのがこの年で普通じゃないってことは分かる」
そう切り出せば朝陽はスマホをローテーブルに置いた。
「ごめん、言いたいことが分らない」
そりゃそうだ、こういうのなんて曖昧な言い方したら分からんのは当たり前だ。なんなら全部おかしいんだから。
一人エッチを手伝ってもらっていることは当然だが、毎週末家に泊まらせてもらっていることも、朝ご飯もいつも用意させてるし、外食すれば俺が驕ることも多いけど朝陽の家に居ればすべて朝陽持ち。朝陽がお客様扱いしてくれるから家事を手伝うこともしてないし、なんだかんだ俺の日用品も歯ブラシとか替えの下着とか買って置いといてくれてるし、なんか肩とか揉んでくれさえする時もあったり、俺って王様かよって思っている。
どこをとっても甘え過ぎだ。
「だから、その」
緊張とどう話せば伝えたいことが伝わるのか、自信が持てないまま話し始めて、俺の口は上手く回らない。
だから朝陽の方が話の糸口を見つけてしまう。
「もう、やめたいってこと?」
「う、いや、その」
それが言えたらどんなに良かったかと俺ですら思う。
「昴は一人じゃできないってもう分かってるよね?」
「う、うん。だから」
「それなのに、やめてどうするの?」
朝陽に矢継ぎ早に聞かれて、何とか答える。
「……えっと、だから恋人とか」
朝陽が目を丸くする。
「え? 昴、恋人できたの?」
朝陽が距離を縮めて俺の真横に来た。
「で、できてない」
慌てて否定するけど、朝陽はより怖い顔で詰め寄ってくる。
「できる予定があるってこと?」
「え、えっと」
「誰?」
「誰って言うか……その」
意気地がないせいで肝心な部分を言い淀んでしまうと、朝陽はどんどん話を進めていこうとする。
「そいつにしてもらうから良いってこと?」
「いや、えっと、恋人は違うくて、その朝陽がさ、俺ばっかりにして自分はしなくて良いって言うから」
「言うから?」
「それはフェアじゃないっていうか」
「俺に恋人作れってこと?」
流石朝陽言わずとも俺の思考の流れが分かってしまうようだ。
「……えっと」
「どういう意味か分かってる?」
「えっと、その」
「俺に不誠実な付き合い勧めてるの分かってる?」
俺の面倒を見たまま他の人をなんて失礼にもほどがあるのはちゃんと分かっている。
「いや、だから、その、そういうことではなくて」
「じゃあなに?」
「その……俺の体使ってくれて良いていうか」
「体?」
「……男同士でも、なんていうか、できるって」
なんとなくはそういう行為があると噂を耳にしたことはあったが、実際どういうものなのか知ることがあるとは思っていなかった。
「それこそ、意味わかってる?」
朝陽がそう言うのも分かる。
俺の知識はかなり乏しい方だと自覚がある。だからこそ。
「だから、調べたっていうか」
朝陽は少しだけ驚いた様子だったが、すぐにまた怖い顔に戻る。
「調べたから? ちゃんと想像した? 自分が何されるか分かってるとは思えない」
朝陽にはやっぱり敵わない。
「想像は……ちょっと無理だったけど」
文章で読んだだけで絵ですら検索する度胸はなかったし、自分がなんて想像したところで何もイメージなんかできなかった。
元カノとの行為も半信半疑で毎回これでいいのかと考えながらやっていたから、どうにも苦い思い出だし、それが受け手になったからと言って何が変わるのかは分かるわけもなかった。
そんな俺をやはり朝陽にはお見通しだった。
「やっぱり、昴そういうの苦手なのは分かってるから、軽々しく言うもんじゃないよ」
諭されてしまうのも無理はないけど、俺の話の結論はそこじゃないから、なんとか言葉を続ける。
「いや、えっと、違うくて、違うって言うか」
「俺の事思ってくれるのは有難いけど、本当に気にしないでくれていいから」
「……あ、え……とさ」
「なに?」
ほとほと愛想が尽きたと言われても仕方ない表情でも朝陽はまだ俺の話を聞こうとしてくれている。
だから俺もなんとか勇気を振り絞る。
「無理だったら全然良いんだけど、いや、現状維持はやっぱり良くないと思うんだ」
「やめたいんだ」
「やめたいって言うか、あの、なんていうか」
「俺に昴の体使わせて、それで性欲処理すればいいなんて、酷いこと言ってるって分からない?」
怒らせているのは分かるが、ちょっと言い辛くてしどろもどろのまま話し続けるしかできない。
「性欲処理って言うか……今してもらってるのは俺の方だし、その、もし勘違い過ぎたらすごく申し訳ないっていうか」
「勘違いって何?」
「勘違いってか、烏滸がましいと言うか……もしよければなんだけど」
「良ければ何? 俺、昴を道具みたいに使う気ないよ」
「良ければ、俺を恋人に……どうかなって」
俺が出した結論はこれだった。
「恋人って、恋……人?」
予想外過ぎたらしく、朝陽は眉間に皺が寄るほど困惑しているようだ。
「男相手が無理だったら本当に申し訳ない、忘れてくれて全然良いんだけど」
「無理って、それは昴の方……」
朝陽は今までと違って、どこか感情の籠もってない声でそう言うから、俺も男に興奮する方ではないと思っている。
「男は無理だけど、よく考えても朝陽が恋人になってくれたらいいなって」
「それは、抜いてくれるから」
当然の感想だ。俺だってそう思う。
でもそれだけじゃない。
「出発点はそこなのことは否めない、俺の処理させてるし朝陽に同じことできるならそれが良いのかもしれないけど、朝陽はしなくて良いって言うし。だったら俺が自発的にしない行為でって考えたら、受け身になるのは俺でもできるなって、朝陽に迷惑かけるけど、俺一人を満たすよりはマシかもしれないしって思って」
「それさっきまで話してたのと何も違わない」
その通り。ここまでは俺の体を使ってと同じ話になってしまう。
「だから、そこから考えて、そこまでする間柄で、それだけで終わらせるってどういうことだろうって。お互い恋人出来たら無理だろうなって。だから始めは俺が自立すればいいんだって思ったんだけど、一人でできるようになって、彼女作って、その子とも気持ちよくできるようになれば自立って言えるかなとか。そしたら朝陽がさっき言ってたけど不誠実な付き合いを、お互いしなくて済むかなって」
朝陽は今度少しシュンとした。怒りはもうないらしい。
「……しようとしたんだ」
まだ朝陽の手を煩わせているのにも関わらず彼女を作ろうとでもとしたのだと軽蔑させたようで朝陽の表情が曇った。
ただ俺は実行する前に、気が付いたことがあった。
「ううん、そこまで考えて、あれって」
「あれ?」
俺は傲慢にも朝陽の立場に立って考えてみてしまった。
「朝陽はどうなんだろうって。少なくとも俺の事嫌いではないよなって。性的なことも拒絶しないくらいには親しいよなって。そこから別々に恋人作ること考えるからややこしいことになるんであって、お互いがお互いだけになれば良いんじゃんって都合のいいこと考え出して。俺、今はまだたぶんとしか言えないけど、朝陽がしてくれるんだったらなんでも平気だと思うんだ。えっと、マジでそんな気がなかったらゴメン、勝手に俺が考えただけで、いつもの暴走だから」
朝陽の性的思考を考えたわけではなく、朝陽のセーフラインを自分なりに検討した結果、選んでもらえるなら俺を推薦したくなった。
手がかかることは証明されてしまっているが、今の朝陽はそれをなんとか受け入れてくれている。そして現状のままでは俺が返せることは何もない。けれど恋人になったなら、自分で言うのもなんだが誠実さは間違いないし、向上心もあるから夜の生活だってもっとできることが増えるはずだ。もちろんそれ以外だって負担をかけるだけじゃない存在になれるように頑張る。
「俺だけを特別にしてくれたらいいなって、ホント、我儘が過ぎて本当にごめん」
「我儘って言うか」
「うん、無理ならちゃんと言って。俺そしたらもう、自分でできるように頑張るから。もう朝陽に面倒掛けない。その方が良いと思う」
呆れる朝陽の気持ちもよくわかる。飛躍し過ぎなのは自覚がある。でもそうでもしないと、俺はもう身動きが取れないくらい、きっぱりとした切っ掛けが欲しかった。
ただ朝陽は確実に戸惑っていた。
「恋人って……」
「重かった? でもさ俺もいい加減な付き合いはできないっていうか、体だけとか割り切れる性格してなくて、このまま友達って言うのも迷惑かけ過ぎだし、朝陽に負担かけたくないから」
朝陽はただの親切心で、人助けだったのだと思う。
それをこんな恋愛絡みにされて困るなって言う方が無理だ。
朝陽は当たり前だが珍しく動揺している。
「恋人って、恋人だよ?」
「うん、デートしたりとか、キスしたりとか、友達じゃないそれ以上の関係。浮気もして欲しくないし、俺だけ恋人にしてほしいから、無理だったらホントに全然言ってくれてくれて構わない」
「男同士だって分かってる?」
それこそ今更だ。
だって俺の男の象徴を握らせてしまっているのだから。
「え、うん。分かってる」
「昴、男好きじゃないだろ」
「男だから朝陽が良いってわけじゃなくて」
「抜いてくれるなら男でも良いってこと?」
前提条件が朝陽と俺とでは違ってきてしまっているのは仕方ないと思う。
だからそう思われても、俺はただ真摯に本心を話すだけだ。
いつも通り週末、本当は昨日の晩に切り出さなければならなかったが、すっかり朝陽に甘やかされるのに慣れて、もう報告すらしないまま流れるようなスマートさで俺の体に触ってくれるから、ついそのまま流されてしまった。
朝起きて、さらには朝ご飯まできっちり食べ終わっていた。
今日の予定を立てようなんていう話を始めて漸く俺は朝陽に向き合った。
朝陽はいつもの爽やかな笑顔で振り向いてくれる。
「ん?」
ソファーの隣りに座ってスマホで天気や近隣のイベント事を調べていたのを顔を上げて、俺の方を見てくれた。
「流石に俺でもこういうのがこの年で普通じゃないってことは分かる」
そう切り出せば朝陽はスマホをローテーブルに置いた。
「ごめん、言いたいことが分らない」
そりゃそうだ、こういうのなんて曖昧な言い方したら分からんのは当たり前だ。なんなら全部おかしいんだから。
一人エッチを手伝ってもらっていることは当然だが、毎週末家に泊まらせてもらっていることも、朝ご飯もいつも用意させてるし、外食すれば俺が驕ることも多いけど朝陽の家に居ればすべて朝陽持ち。朝陽がお客様扱いしてくれるから家事を手伝うこともしてないし、なんだかんだ俺の日用品も歯ブラシとか替えの下着とか買って置いといてくれてるし、なんか肩とか揉んでくれさえする時もあったり、俺って王様かよって思っている。
どこをとっても甘え過ぎだ。
「だから、その」
緊張とどう話せば伝えたいことが伝わるのか、自信が持てないまま話し始めて、俺の口は上手く回らない。
だから朝陽の方が話の糸口を見つけてしまう。
「もう、やめたいってこと?」
「う、いや、その」
それが言えたらどんなに良かったかと俺ですら思う。
「昴は一人じゃできないってもう分かってるよね?」
「う、うん。だから」
「それなのに、やめてどうするの?」
朝陽に矢継ぎ早に聞かれて、何とか答える。
「……えっと、だから恋人とか」
朝陽が目を丸くする。
「え? 昴、恋人できたの?」
朝陽が距離を縮めて俺の真横に来た。
「で、できてない」
慌てて否定するけど、朝陽はより怖い顔で詰め寄ってくる。
「できる予定があるってこと?」
「え、えっと」
「誰?」
「誰って言うか……その」
意気地がないせいで肝心な部分を言い淀んでしまうと、朝陽はどんどん話を進めていこうとする。
「そいつにしてもらうから良いってこと?」
「いや、えっと、恋人は違うくて、その朝陽がさ、俺ばっかりにして自分はしなくて良いって言うから」
「言うから?」
「それはフェアじゃないっていうか」
「俺に恋人作れってこと?」
流石朝陽言わずとも俺の思考の流れが分かってしまうようだ。
「……えっと」
「どういう意味か分かってる?」
「えっと、その」
「俺に不誠実な付き合い勧めてるの分かってる?」
俺の面倒を見たまま他の人をなんて失礼にもほどがあるのはちゃんと分かっている。
「いや、だから、その、そういうことではなくて」
「じゃあなに?」
「その……俺の体使ってくれて良いていうか」
「体?」
「……男同士でも、なんていうか、できるって」
なんとなくはそういう行為があると噂を耳にしたことはあったが、実際どういうものなのか知ることがあるとは思っていなかった。
「それこそ、意味わかってる?」
朝陽がそう言うのも分かる。
俺の知識はかなり乏しい方だと自覚がある。だからこそ。
「だから、調べたっていうか」
朝陽は少しだけ驚いた様子だったが、すぐにまた怖い顔に戻る。
「調べたから? ちゃんと想像した? 自分が何されるか分かってるとは思えない」
朝陽にはやっぱり敵わない。
「想像は……ちょっと無理だったけど」
文章で読んだだけで絵ですら検索する度胸はなかったし、自分がなんて想像したところで何もイメージなんかできなかった。
元カノとの行為も半信半疑で毎回これでいいのかと考えながらやっていたから、どうにも苦い思い出だし、それが受け手になったからと言って何が変わるのかは分かるわけもなかった。
そんな俺をやはり朝陽にはお見通しだった。
「やっぱり、昴そういうの苦手なのは分かってるから、軽々しく言うもんじゃないよ」
諭されてしまうのも無理はないけど、俺の話の結論はそこじゃないから、なんとか言葉を続ける。
「いや、えっと、違うくて、違うって言うか」
「俺の事思ってくれるのは有難いけど、本当に気にしないでくれていいから」
「……あ、え……とさ」
「なに?」
ほとほと愛想が尽きたと言われても仕方ない表情でも朝陽はまだ俺の話を聞こうとしてくれている。
だから俺もなんとか勇気を振り絞る。
「無理だったら全然良いんだけど、いや、現状維持はやっぱり良くないと思うんだ」
「やめたいんだ」
「やめたいって言うか、あの、なんていうか」
「俺に昴の体使わせて、それで性欲処理すればいいなんて、酷いこと言ってるって分からない?」
怒らせているのは分かるが、ちょっと言い辛くてしどろもどろのまま話し続けるしかできない。
「性欲処理って言うか……今してもらってるのは俺の方だし、その、もし勘違い過ぎたらすごく申し訳ないっていうか」
「勘違いって何?」
「勘違いってか、烏滸がましいと言うか……もしよければなんだけど」
「良ければ何? 俺、昴を道具みたいに使う気ないよ」
「良ければ、俺を恋人に……どうかなって」
俺が出した結論はこれだった。
「恋人って、恋……人?」
予想外過ぎたらしく、朝陽は眉間に皺が寄るほど困惑しているようだ。
「男相手が無理だったら本当に申し訳ない、忘れてくれて全然良いんだけど」
「無理って、それは昴の方……」
朝陽は今までと違って、どこか感情の籠もってない声でそう言うから、俺も男に興奮する方ではないと思っている。
「男は無理だけど、よく考えても朝陽が恋人になってくれたらいいなって」
「それは、抜いてくれるから」
当然の感想だ。俺だってそう思う。
でもそれだけじゃない。
「出発点はそこなのことは否めない、俺の処理させてるし朝陽に同じことできるならそれが良いのかもしれないけど、朝陽はしなくて良いって言うし。だったら俺が自発的にしない行為でって考えたら、受け身になるのは俺でもできるなって、朝陽に迷惑かけるけど、俺一人を満たすよりはマシかもしれないしって思って」
「それさっきまで話してたのと何も違わない」
その通り。ここまでは俺の体を使ってと同じ話になってしまう。
「だから、そこから考えて、そこまでする間柄で、それだけで終わらせるってどういうことだろうって。お互い恋人出来たら無理だろうなって。だから始めは俺が自立すればいいんだって思ったんだけど、一人でできるようになって、彼女作って、その子とも気持ちよくできるようになれば自立って言えるかなとか。そしたら朝陽がさっき言ってたけど不誠実な付き合いを、お互いしなくて済むかなって」
朝陽は今度少しシュンとした。怒りはもうないらしい。
「……しようとしたんだ」
まだ朝陽の手を煩わせているのにも関わらず彼女を作ろうとでもとしたのだと軽蔑させたようで朝陽の表情が曇った。
ただ俺は実行する前に、気が付いたことがあった。
「ううん、そこまで考えて、あれって」
「あれ?」
俺は傲慢にも朝陽の立場に立って考えてみてしまった。
「朝陽はどうなんだろうって。少なくとも俺の事嫌いではないよなって。性的なことも拒絶しないくらいには親しいよなって。そこから別々に恋人作ること考えるからややこしいことになるんであって、お互いがお互いだけになれば良いんじゃんって都合のいいこと考え出して。俺、今はまだたぶんとしか言えないけど、朝陽がしてくれるんだったらなんでも平気だと思うんだ。えっと、マジでそんな気がなかったらゴメン、勝手に俺が考えただけで、いつもの暴走だから」
朝陽の性的思考を考えたわけではなく、朝陽のセーフラインを自分なりに検討した結果、選んでもらえるなら俺を推薦したくなった。
手がかかることは証明されてしまっているが、今の朝陽はそれをなんとか受け入れてくれている。そして現状のままでは俺が返せることは何もない。けれど恋人になったなら、自分で言うのもなんだが誠実さは間違いないし、向上心もあるから夜の生活だってもっとできることが増えるはずだ。もちろんそれ以外だって負担をかけるだけじゃない存在になれるように頑張る。
「俺だけを特別にしてくれたらいいなって、ホント、我儘が過ぎて本当にごめん」
「我儘って言うか」
「うん、無理ならちゃんと言って。俺そしたらもう、自分でできるように頑張るから。もう朝陽に面倒掛けない。その方が良いと思う」
呆れる朝陽の気持ちもよくわかる。飛躍し過ぎなのは自覚がある。でもそうでもしないと、俺はもう身動きが取れないくらい、きっぱりとした切っ掛けが欲しかった。
ただ朝陽は確実に戸惑っていた。
「恋人って……」
「重かった? でもさ俺もいい加減な付き合いはできないっていうか、体だけとか割り切れる性格してなくて、このまま友達って言うのも迷惑かけ過ぎだし、朝陽に負担かけたくないから」
朝陽はただの親切心で、人助けだったのだと思う。
それをこんな恋愛絡みにされて困るなって言う方が無理だ。
朝陽は当たり前だが珍しく動揺している。
「恋人って、恋人だよ?」
「うん、デートしたりとか、キスしたりとか、友達じゃないそれ以上の関係。浮気もして欲しくないし、俺だけ恋人にしてほしいから、無理だったらホントに全然言ってくれてくれて構わない」
「男同士だって分かってる?」
それこそ今更だ。
だって俺の男の象徴を握らせてしまっているのだから。
「え、うん。分かってる」
「昴、男好きじゃないだろ」
「男だから朝陽が良いってわけじゃなくて」
「抜いてくれるなら男でも良いってこと?」
前提条件が朝陽と俺とでは違ってきてしまっているのは仕方ないと思う。
だからそう思われても、俺はただ真摯に本心を話すだけだ。
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