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朝陽が何か考え込むように黙ってしまったので、流石に引かれたかなと切なくなっていると、テーブルの上に何気なく置いていた俺の手に朝陽はそっと自分の手を重ね、俺を覗き込むように口を開いた。
「試しに手伝うって言ったら引く?」
「え?」
顔を上げて真剣な顔を見ても意味がわからずにいる俺に朝陽は手をそのままに、話を進める。
「彼女以外に触られたことないんだろ?」
何をと言わなくても、ナニを指しているのか分かってしまう。
「彼女にも触られたことないけど」
「そうなの?」
意外だと言われているのが分かって、常識の分からない俺の不安は増す。
「それも変?」
「変ってわけじゃないけど、長い付き合いならいろいろ試しててもおかしくはないかなとは思う」
事態の改善のため多少の知識は自分で調べたりはしたが、それを彼女と試そうとはしなかった。
「なんか言い出しづらくて、義務でしてるなんて思わせたくなかったし」
「彼女はそれから?」
「できるわけないだろ、好きな相手すらいないよ。なんかもう俺ダメすぎ」
俯いて頭を抱えそうになっている俺に朝陽の優しい声が届く。
「だからさ、俺がしてみてもいい?」
明瞭な話し方をする朝陽にしては突飛な繋がりで困惑する。
「なんでそうなるんだ」
「俺は自分でして気持ちいいから、気持ちいいのが分かれば活路も見いだせるだろ」
話の流れは理解できなかったが、その理屈はなんとなく納得できてしまった。
何より自分一人ではもうどうしょうもなくなっている現実が俺にはあるから尚更に。
ただそれにすぐさま飛びつけるほど、良識は失ってないつもりだった。
「……そうだとしても、気持ち悪くない?」
俺がと言うより朝陽の方がと思ったのだけど、俺の手を握り続ける朝陽はこんな時でも俺ファーストらしい。
「気持ち悪いならやめとくけど、別にそこまで変なことではないだろ?」
「そうか?」
「高校生のなんか抜くとこ見せるなんて普通にあったけど」
信じられない状況に驚かずにはいられない。
「マジで!? どういう状況?」
「一緒にエロ動画見たりしたとき」
「そんな状況がそもそもなかったんだけど」
「俺が男子校だからか。でも男兄弟で兄貴から教えてもらったってのは少なくないと思うけど」
兄はいるがそんな話題になったことなどない。男兄弟にしてはお互いマイペースで喧嘩もほぼしてこなかったし、呑気な話しかしたことがない。
「家ではなかった、兄貴がエロ動画見てるかも知らない」
朝陽は必ずなものではないからと、あくまでも事例の一種だとしながらも、変なことではないと強調した。
「だから試しにどう?」
「どうって言われても」
判断しきれない俺は、朝陽からしたら悩みに翻弄されているように見えるのだと思う。
いつも心配してくれているように、そんな俺に手を差し伸べずにはいられないのだろう。
朝陽は真剣に俺の悩みに向き合ってくれているようだった。
「少しでも興味あるなら俺が手伝う」
「興味……」
「ない?」
「……ある」
それこそ本能的に気持ちいいことなら知りたいだろ。自分ではもうすでにどうにもできないと諦めていたからこそ、この機会を無視できなかった。
「良かった」
「いや、だってさ、なんか聞く分にはすごく気持ちいって言うじゃん! それ知りたいってのは変じゃないだろ」
なんで朝陽に言い訳しているのか、自分でも分からなかったが、勝手に口が動く。
「変じゃない」
「だからもしそれが知れるなら知りたい」
「俺と試行錯誤してみよう」
優しく笑いかけられて、なんだかこれからしようとしていることの現実味が薄れた。
だからもう考えるのはやめることにする。
「どうしたらいい?」
何も分からないなら朝陽に任せるのが一番だ。
「そうだな、俺が自分でしてる感じでするなら、もたれてもらった方が良いかな」
「こう?」
朝陽の近くにすり寄って、胸に背中を預ける。
朝陽もソファーに背を預けて俺を支えて、立てた膝の間に俺を落ち着かせた。
息苦しくなるとまずいと言って、すでに緩めていたネクタイを抜き取られ、俺は自分の腕を所在無げに胸のあたりに置く。
「リラックスしてる方が良いと思うから、下も脱がすな」
「うん」
耳元から聞こえる声に言われるがまま、されるがままに履いていたもの全てを一気に脱がされるが、ワイシャツの裾で丸見えになることはなかった。
「緊張する」
見えはしないが、あからさまな無防備感は感覚としてあって、勝手に心拍数が上がり始める。
「大丈夫、痛いことは絶対ないから」
耳元から聞こえる朝陽の声に安心感は与えられるが、テンパリ気味な俺は目に入る自分の手足が落ち着かない。
「靴下は? 履いてていいのか?」
正解なんてないのは分かっているのに、もう何でも聞いてしまうほどに思考は投げ捨てている。
「脱いでおこうか、窮屈なものはできるだけ無い方がいい」
俺が足を寄せるとそれさえも朝陽が脱がせてくれた。
「俺はどうしてたらいいんだ?」
「何もしなくてもいい、目逸らしといたほうが良いならそれでいいし、見てる方が安心するなら見てて」
「どっちが良いのかも分からない」
「じゃあ」
俺の腕の下から朝陽の長い腕か伸びて、俺のペニスを下からすくい上げるように持ち上げた。
「うわっ」
見ていたくせに何に驚いたのか自分でも分からない。
「大丈夫。いつもは何か見たり、考えたりしたりしてる?」
感じたことのない体温がそこにあって妙な緊張感が走るが、不思議と急所を触られてる恐怖はなかった。
「考えてると手が動かないし、見ても興奮するより研究する感じになるから興奮しない」
初めてそういうものを観た時は興奮していたはずなのに、いつからか教科書の様になって、彼女と別れてからは遠ざけてすらいた。
「じゃあ感じるままに教えて」
「ん……」
撫でるように触られ始める。
「痛くないだろ」
「痛くないけど、自分でするのと全然違う」
俺はそこを見ずにはいられなかった。むしろ自分でする時の方が全然みてないことに気がついたくらい。
朝陽が空いている手で俺の頭を撫でる。
「それで良いと思う」
「……」
「しんどい?」
「……だいじょぶ」
自分のものじゃないみたいに朝陽に触られるから、いつの間にか朝陽の腕にしがみついていた。
それでもなんとか邪魔だけはしないように、手首より先には触れないように堪える。
「声出して大丈夫だから」
「……こえ」
いつも出ているかすら自覚がなくて、何を発するべきなのか、考えた時点でどんな声も出るはずもなかった。
「どこが気持ちいい?」
朝陽はどこまでも穏やかに聞いてくれる。
「えっ……わかんない」
「気持ちよくない?」
「……いつもと違うのはわかる」
自分でしていないんだから当たり前だろと心の中でツッコミつつ、それでも苦痛でない以上の知らない感覚も僅かには体験できているような気はしていた。
だから俺のペニスはそれなりに普段の様子とは異なり、早々に存在を主張し始めてはいるが、いつも通り長期戦の様相を呈していた。
俺にはもう慣れた状況で、これから続く膠着時間を考えため息が出そうになるが、朝陽は違った。
「ちょっと滑り良くしようか」
「なに?」
朝陽が徐ろに立ち上がって俺の背後からいなくなり、チェストを何やら探している。
「オイル、マッサージ用のだから肌にも優しいよ」
見つけ出したらしいそれを手に、俺の方に見せてくれた。
「そんなの持ってんだ」
透明のボトルに透明の液体が入っているのが分かる。パッケージもシンプルもシンプルで、俺でも知ってる無添加が売りのブランドのものだった。
「ローションとかのが良かった?」
「え! や、そんなエログッズ出されてもよくわからん」
元の場所に戻ってきた朝陽が俺をまた背後から抱き込みながら、自分の手にそのオイルを垂らす。
「ローションくらいなら普通に薬局とかで売ってるよ」
探そうという発想がないと目に入ってこないものだ。
「そんなんだ、ゴムもネットかコンビニでしか買ったことなかったから」
「ローションですらエログッズなんだったら他のなんか尚更使ったこと無いよね」
すぐには俺のモノには触らず、オイルをなじませるように片手を動かしている。
「朝陽はあるのかよ」
こぼさないで器用だなと思いながらなんとなく聞くと、朝陽は当たり前のように答える。
「好奇心で買ったことはあるけど、好き好きだねあれは」
思わず首だけで朝陽を振り返っていた。
「あれって何? 一人エッチ用の?」
存在は知っているがよく分からないものに自分のペニスを突っ込む勇気は出なかった。
標準サイズだけど取れなくなったらどうするんだと、未知への恐怖で日和っていたから手に入れようと思ったこともない。
朝陽は照れた様子もなければ、卑猥な話をしている風でもなく、日用品の話でもしているようだ。
「そうそう、それも薬局で売ってたりするよ」
驚愕の事実だった。
「マジで?! そのへんの? 普通の薬局?」
「そうそう、大手のドラッグストア」
なんだか知らな過ぎてキャパを超え始めた俺は、顔を戻し少し茫然としてしまった。
「……すげー」
朝陽はたっぷりのオイルでテカる手を俺のペニスに添える。
「ほら、ちょっと感覚変わるだろうから不快だったら言って」
「んっ……、知らない感触……」
さっきと同じように優しく握り込まれて、朝陽の方が感覚を確かめるように数回握り込む動作を繰り返した。
その後緩やかな動きで扱き出す。
「滑りが良くなると違うだろ?」
明らかに今までと違う感覚が体に走り始めていた。
「……うん……っ……なんか、きもちぃ、かも」
「そのまま」
「……はぁ、んっ……はあ……」
朝陽の腕にまたしがみついてその感覚に耐える。
「ヤバイ……なんか、へん……」
「それで大丈夫だから」
いつもより自分の物が硬くなっているのが分かる。
「はぁ……、ぁ……ん……これが、ふつう?」
「ちゃんと硬くなってるし、いわゆる我慢汁ってのも出てきてるから、普通」
朝陽からは聞かなさそうな卑猥な単語が気に止まることもなく、ただただ翻弄される。
「こんな、なんだ……っ……はぁ、いつもと……ちがう」
「いつもはどう?」
つい目を閉じて、知らない感覚に耐えながら自分の行為を思い出す。
「……頑張って、こすって、おわらせる……ん……ぁ……」
「力入れすぎなのかな、これはどう?」
どうと言われて目を開けば握り込む角度を変えられ、亀頭を親指で撫でる動作が加わる。
「そんなゆっくりで、いいんだ……」
「正解なんて無いと思うけど、気持ちいいって思えばそれが正解って感じかな」
「……じゃ、……おれ、んッ……まちが、ってた」
擦れば終わると思い込んでいた俺は、撫でまわす様なその手の動きを見ながら、間違いを身をもって体験していた。
ゆるゆるとしごかれ続ける自分のものが全く別のものになって、自分に知らない感覚を伝えている。
生れて初めて感じるそれは、信じられないほど、脳がしびれる。
息の吸い方さえ忘れてしまいそうで、でも呼吸をすると快感が体を上ってきて、首を振ってそれを逃して、朝陽の二の腕を抱え込むように体に力が入って、俺の腰が勝手に浮きそうになるのを、朝陽が空いている左手で優しく抑えてくれて、そうされると足の先に力が伝わってそこからまた快感が駆け戻ってきて、逃れる方法が分からない。
「あさひ……や……はあ、あ、……おれ……」
「イきそう?」
必死に頷く。
「そのまま、何も考えなくていいから」
「……ぁ……っんん……あさ、ひ、……こわぃ……」
目を逸らせなくて、自分の体ではなくなったように力が入ったままで、体の中で出口のない何が巡っているようでいて、でも本当は出口を知っててそこに向かって登っていくような、得体のしれないものを感じる。
「大丈夫」
その言葉だけを信じて、必死に耐える。
「……はぁ、は……っあ……んんん……ぁぁ……」
「我慢しないで」
「……ぁッ……ッぅ……」
「俺に任せて」
朝陽の手の速度が増さっていくのが分かる。そして力加減が絶妙で、あっという間に弾ける感覚を味わう。
「ぁっ!……んんっ! …………ぅ……ッ……は、はぁ……」
「頑張ったな」
脳が働くまで少し掛かってしまう。
「……はっ……はぁっ……はぁ……あさひ……ごめん」
「謝る必要なんてないよ、気持ちよかっただろ?」
「……うん」
準備よくティッシュに受け止められていたけど、汚してしまうと分かっていたのに、その手を見ると申し訳なくなった。
ついでに俺のについたオイルまで拭き取ってもらってしまった。
「手洗ってくるから、待ってて」
「……うん」
気恥ずかしさも拭えない。
のそのそとパンツとズボンを履く。
「ありがと、助かった」
戻ってきた朝陽に言うといつも通りの親切な朝陽だった。
「なら良かった、またいつでも言って」
隣りに座って、何もなかったみたいにグラスにシャンパンを注いでくれる。
ただ俺には言ってることがよく分からなかった。
「え? また、とかある?」
「いきなり上達しないと思うよ」
修行まで必要とは思わなかった。
「そうなの? してもらったみたいにすれば良いんじゃないのか?」
「試してみたら分かると思う」
そう言われて、イメージしてみた。
そしてため息が出る。
「……そっか、試さないとか……面倒だな」
「やっぱり面倒くさい?」
今さっき朝陽にしてもらったことを再現するのは簡単なようでいて俺には高度なことだとやっと理解した。
「今のこと振り返って力加減して手動かしてってするんだって思ったら、やっぱり面倒くさいけど、頑張るしかないもんな。自分のためだし」
朝陽がどうしてたか考えると絶対手は動かない。何度もイメトレして手順を覚えなくてはならない。そしたら実践して、同じ動きができるように訓練しなければ、同じ快楽は得られないし、そもそも没頭できないからそれを無意識にできるようにまで習得する必要がある。
マジでめんどい。
「来週も家来たら?」
「え……それって」
甘すぎる誘惑だ。
「俺がまたしてもいいし、昴がするのを見てアドバイスするんでもいいよ」
「朝陽の前で自分でするの? え、それは無理かも」
瞬時に想像して、恥ずかし過ぎた。
「それは無理なんだ」
「人に見られてオナニーなんかできないって」
射精を見られるより、俺が下手で苦労している様を観察される方がずっと恥ずかしい。
「そっか、じゃあ次も俺がするよ」
「そんなわけにはいかんって」
なんの努力もなく、あの快感を手に入れられるなんて魅惑的すぎるが、そんなこと頼むわけにはいかない。
「取り敢えず成果報告ってことで、来週も金曜の晩が良い?」
優しい朝陽はそんな逃げ道まで用意してくれる。
「分かんない、残業あるかもだし」
「じゃあ土曜ね」
「……決まり?」
「決まり、決定」
「……わかった」
なんかやけになった訳でもなかったが、その後も勧められるままに酒を飲み、この日仕事も一段落ついて、さらに体もスッキリした俺は朝陽のベッドまで借りてぐっすり一泊させてもらった。
それどそれからの一週間、なかなか辛い日々だった。週初めは良かったのだ、体はすっきりしているし、週末までに試せばいいやと考えることもなかったから。ただオイルだけは買った。一応ローションもドラッグストアで見つけたけど、買う勇気はなかった。
問題はいざ自分でしてみようとしたところからだった。
「どうだった?」
約束していた土曜日。
昼過ぎに朝陽の部屋にやってきた俺はもう辟易していた。
「無理、だった」
「頑張ったんだ」
朝陽はソファーの上で膝を抱えて俯く俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
「もう、よくわからん。自分の体なのにどうしたら良いのかマジで分かんなくなって、前より酷い。下手に気持ちいいの知ったから、違う違うってそればっかになって無理矢理イったから、なんか頭痛くなるし、もうしたくない」
泣くほどではないが、もう過去一嫌気が差していた。
「俺がしようか?」
しばらく考えたくもなくなっていた俺は、迷惑をかけることもありすぐに断る。
「今日はいい、昨日したし、もうしんどいしほっとく。溜まったら勝手に出るだろ」
「投げやりだな、そんなに辛かったんだ」
優しく撫で続けられる手に、俺の愚痴は止まらなくなる。
「……みんなよくやるよ、あんなこと」
「気持ちいいことだからね」
「気持ちよくなんか無い」
「気持ちよかったよな?」
顔を上げて、柔らかく微笑む朝陽につい弱音が漏れる。
「自分でできなきゃ意味ない」
「気にするな、そのうち慣れる」
「慣れたらできるようになる?」
「心配するな」
けれど俺が慣れることはなかった。
「試しに手伝うって言ったら引く?」
「え?」
顔を上げて真剣な顔を見ても意味がわからずにいる俺に朝陽は手をそのままに、話を進める。
「彼女以外に触られたことないんだろ?」
何をと言わなくても、ナニを指しているのか分かってしまう。
「彼女にも触られたことないけど」
「そうなの?」
意外だと言われているのが分かって、常識の分からない俺の不安は増す。
「それも変?」
「変ってわけじゃないけど、長い付き合いならいろいろ試しててもおかしくはないかなとは思う」
事態の改善のため多少の知識は自分で調べたりはしたが、それを彼女と試そうとはしなかった。
「なんか言い出しづらくて、義務でしてるなんて思わせたくなかったし」
「彼女はそれから?」
「できるわけないだろ、好きな相手すらいないよ。なんかもう俺ダメすぎ」
俯いて頭を抱えそうになっている俺に朝陽の優しい声が届く。
「だからさ、俺がしてみてもいい?」
明瞭な話し方をする朝陽にしては突飛な繋がりで困惑する。
「なんでそうなるんだ」
「俺は自分でして気持ちいいから、気持ちいいのが分かれば活路も見いだせるだろ」
話の流れは理解できなかったが、その理屈はなんとなく納得できてしまった。
何より自分一人ではもうどうしょうもなくなっている現実が俺にはあるから尚更に。
ただそれにすぐさま飛びつけるほど、良識は失ってないつもりだった。
「……そうだとしても、気持ち悪くない?」
俺がと言うより朝陽の方がと思ったのだけど、俺の手を握り続ける朝陽はこんな時でも俺ファーストらしい。
「気持ち悪いならやめとくけど、別にそこまで変なことではないだろ?」
「そうか?」
「高校生のなんか抜くとこ見せるなんて普通にあったけど」
信じられない状況に驚かずにはいられない。
「マジで!? どういう状況?」
「一緒にエロ動画見たりしたとき」
「そんな状況がそもそもなかったんだけど」
「俺が男子校だからか。でも男兄弟で兄貴から教えてもらったってのは少なくないと思うけど」
兄はいるがそんな話題になったことなどない。男兄弟にしてはお互いマイペースで喧嘩もほぼしてこなかったし、呑気な話しかしたことがない。
「家ではなかった、兄貴がエロ動画見てるかも知らない」
朝陽は必ずなものではないからと、あくまでも事例の一種だとしながらも、変なことではないと強調した。
「だから試しにどう?」
「どうって言われても」
判断しきれない俺は、朝陽からしたら悩みに翻弄されているように見えるのだと思う。
いつも心配してくれているように、そんな俺に手を差し伸べずにはいられないのだろう。
朝陽は真剣に俺の悩みに向き合ってくれているようだった。
「少しでも興味あるなら俺が手伝う」
「興味……」
「ない?」
「……ある」
それこそ本能的に気持ちいいことなら知りたいだろ。自分ではもうすでにどうにもできないと諦めていたからこそ、この機会を無視できなかった。
「良かった」
「いや、だってさ、なんか聞く分にはすごく気持ちいって言うじゃん! それ知りたいってのは変じゃないだろ」
なんで朝陽に言い訳しているのか、自分でも分からなかったが、勝手に口が動く。
「変じゃない」
「だからもしそれが知れるなら知りたい」
「俺と試行錯誤してみよう」
優しく笑いかけられて、なんだかこれからしようとしていることの現実味が薄れた。
だからもう考えるのはやめることにする。
「どうしたらいい?」
何も分からないなら朝陽に任せるのが一番だ。
「そうだな、俺が自分でしてる感じでするなら、もたれてもらった方が良いかな」
「こう?」
朝陽の近くにすり寄って、胸に背中を預ける。
朝陽もソファーに背を預けて俺を支えて、立てた膝の間に俺を落ち着かせた。
息苦しくなるとまずいと言って、すでに緩めていたネクタイを抜き取られ、俺は自分の腕を所在無げに胸のあたりに置く。
「リラックスしてる方が良いと思うから、下も脱がすな」
「うん」
耳元から聞こえる声に言われるがまま、されるがままに履いていたもの全てを一気に脱がされるが、ワイシャツの裾で丸見えになることはなかった。
「緊張する」
見えはしないが、あからさまな無防備感は感覚としてあって、勝手に心拍数が上がり始める。
「大丈夫、痛いことは絶対ないから」
耳元から聞こえる朝陽の声に安心感は与えられるが、テンパリ気味な俺は目に入る自分の手足が落ち着かない。
「靴下は? 履いてていいのか?」
正解なんてないのは分かっているのに、もう何でも聞いてしまうほどに思考は投げ捨てている。
「脱いでおこうか、窮屈なものはできるだけ無い方がいい」
俺が足を寄せるとそれさえも朝陽が脱がせてくれた。
「俺はどうしてたらいいんだ?」
「何もしなくてもいい、目逸らしといたほうが良いならそれでいいし、見てる方が安心するなら見てて」
「どっちが良いのかも分からない」
「じゃあ」
俺の腕の下から朝陽の長い腕か伸びて、俺のペニスを下からすくい上げるように持ち上げた。
「うわっ」
見ていたくせに何に驚いたのか自分でも分からない。
「大丈夫。いつもは何か見たり、考えたりしたりしてる?」
感じたことのない体温がそこにあって妙な緊張感が走るが、不思議と急所を触られてる恐怖はなかった。
「考えてると手が動かないし、見ても興奮するより研究する感じになるから興奮しない」
初めてそういうものを観た時は興奮していたはずなのに、いつからか教科書の様になって、彼女と別れてからは遠ざけてすらいた。
「じゃあ感じるままに教えて」
「ん……」
撫でるように触られ始める。
「痛くないだろ」
「痛くないけど、自分でするのと全然違う」
俺はそこを見ずにはいられなかった。むしろ自分でする時の方が全然みてないことに気がついたくらい。
朝陽が空いている手で俺の頭を撫でる。
「それで良いと思う」
「……」
「しんどい?」
「……だいじょぶ」
自分のものじゃないみたいに朝陽に触られるから、いつの間にか朝陽の腕にしがみついていた。
それでもなんとか邪魔だけはしないように、手首より先には触れないように堪える。
「声出して大丈夫だから」
「……こえ」
いつも出ているかすら自覚がなくて、何を発するべきなのか、考えた時点でどんな声も出るはずもなかった。
「どこが気持ちいい?」
朝陽はどこまでも穏やかに聞いてくれる。
「えっ……わかんない」
「気持ちよくない?」
「……いつもと違うのはわかる」
自分でしていないんだから当たり前だろと心の中でツッコミつつ、それでも苦痛でない以上の知らない感覚も僅かには体験できているような気はしていた。
だから俺のペニスはそれなりに普段の様子とは異なり、早々に存在を主張し始めてはいるが、いつも通り長期戦の様相を呈していた。
俺にはもう慣れた状況で、これから続く膠着時間を考えため息が出そうになるが、朝陽は違った。
「ちょっと滑り良くしようか」
「なに?」
朝陽が徐ろに立ち上がって俺の背後からいなくなり、チェストを何やら探している。
「オイル、マッサージ用のだから肌にも優しいよ」
見つけ出したらしいそれを手に、俺の方に見せてくれた。
「そんなの持ってんだ」
透明のボトルに透明の液体が入っているのが分かる。パッケージもシンプルもシンプルで、俺でも知ってる無添加が売りのブランドのものだった。
「ローションとかのが良かった?」
「え! や、そんなエログッズ出されてもよくわからん」
元の場所に戻ってきた朝陽が俺をまた背後から抱き込みながら、自分の手にそのオイルを垂らす。
「ローションくらいなら普通に薬局とかで売ってるよ」
探そうという発想がないと目に入ってこないものだ。
「そんなんだ、ゴムもネットかコンビニでしか買ったことなかったから」
「ローションですらエログッズなんだったら他のなんか尚更使ったこと無いよね」
すぐには俺のモノには触らず、オイルをなじませるように片手を動かしている。
「朝陽はあるのかよ」
こぼさないで器用だなと思いながらなんとなく聞くと、朝陽は当たり前のように答える。
「好奇心で買ったことはあるけど、好き好きだねあれは」
思わず首だけで朝陽を振り返っていた。
「あれって何? 一人エッチ用の?」
存在は知っているがよく分からないものに自分のペニスを突っ込む勇気は出なかった。
標準サイズだけど取れなくなったらどうするんだと、未知への恐怖で日和っていたから手に入れようと思ったこともない。
朝陽は照れた様子もなければ、卑猥な話をしている風でもなく、日用品の話でもしているようだ。
「そうそう、それも薬局で売ってたりするよ」
驚愕の事実だった。
「マジで?! そのへんの? 普通の薬局?」
「そうそう、大手のドラッグストア」
なんだか知らな過ぎてキャパを超え始めた俺は、顔を戻し少し茫然としてしまった。
「……すげー」
朝陽はたっぷりのオイルでテカる手を俺のペニスに添える。
「ほら、ちょっと感覚変わるだろうから不快だったら言って」
「んっ……、知らない感触……」
さっきと同じように優しく握り込まれて、朝陽の方が感覚を確かめるように数回握り込む動作を繰り返した。
その後緩やかな動きで扱き出す。
「滑りが良くなると違うだろ?」
明らかに今までと違う感覚が体に走り始めていた。
「……うん……っ……なんか、きもちぃ、かも」
「そのまま」
「……はぁ、んっ……はあ……」
朝陽の腕にまたしがみついてその感覚に耐える。
「ヤバイ……なんか、へん……」
「それで大丈夫だから」
いつもより自分の物が硬くなっているのが分かる。
「はぁ……、ぁ……ん……これが、ふつう?」
「ちゃんと硬くなってるし、いわゆる我慢汁ってのも出てきてるから、普通」
朝陽からは聞かなさそうな卑猥な単語が気に止まることもなく、ただただ翻弄される。
「こんな、なんだ……っ……はぁ、いつもと……ちがう」
「いつもはどう?」
つい目を閉じて、知らない感覚に耐えながら自分の行為を思い出す。
「……頑張って、こすって、おわらせる……ん……ぁ……」
「力入れすぎなのかな、これはどう?」
どうと言われて目を開けば握り込む角度を変えられ、亀頭を親指で撫でる動作が加わる。
「そんなゆっくりで、いいんだ……」
「正解なんて無いと思うけど、気持ちいいって思えばそれが正解って感じかな」
「……じゃ、……おれ、んッ……まちが、ってた」
擦れば終わると思い込んでいた俺は、撫でまわす様なその手の動きを見ながら、間違いを身をもって体験していた。
ゆるゆるとしごかれ続ける自分のものが全く別のものになって、自分に知らない感覚を伝えている。
生れて初めて感じるそれは、信じられないほど、脳がしびれる。
息の吸い方さえ忘れてしまいそうで、でも呼吸をすると快感が体を上ってきて、首を振ってそれを逃して、朝陽の二の腕を抱え込むように体に力が入って、俺の腰が勝手に浮きそうになるのを、朝陽が空いている左手で優しく抑えてくれて、そうされると足の先に力が伝わってそこからまた快感が駆け戻ってきて、逃れる方法が分からない。
「あさひ……や……はあ、あ、……おれ……」
「イきそう?」
必死に頷く。
「そのまま、何も考えなくていいから」
「……ぁ……っんん……あさ、ひ、……こわぃ……」
目を逸らせなくて、自分の体ではなくなったように力が入ったままで、体の中で出口のない何が巡っているようでいて、でも本当は出口を知っててそこに向かって登っていくような、得体のしれないものを感じる。
「大丈夫」
その言葉だけを信じて、必死に耐える。
「……はぁ、は……っあ……んんん……ぁぁ……」
「我慢しないで」
「……ぁッ……ッぅ……」
「俺に任せて」
朝陽の手の速度が増さっていくのが分かる。そして力加減が絶妙で、あっという間に弾ける感覚を味わう。
「ぁっ!……んんっ! …………ぅ……ッ……は、はぁ……」
「頑張ったな」
脳が働くまで少し掛かってしまう。
「……はっ……はぁっ……はぁ……あさひ……ごめん」
「謝る必要なんてないよ、気持ちよかっただろ?」
「……うん」
準備よくティッシュに受け止められていたけど、汚してしまうと分かっていたのに、その手を見ると申し訳なくなった。
ついでに俺のについたオイルまで拭き取ってもらってしまった。
「手洗ってくるから、待ってて」
「……うん」
気恥ずかしさも拭えない。
のそのそとパンツとズボンを履く。
「ありがと、助かった」
戻ってきた朝陽に言うといつも通りの親切な朝陽だった。
「なら良かった、またいつでも言って」
隣りに座って、何もなかったみたいにグラスにシャンパンを注いでくれる。
ただ俺には言ってることがよく分からなかった。
「え? また、とかある?」
「いきなり上達しないと思うよ」
修行まで必要とは思わなかった。
「そうなの? してもらったみたいにすれば良いんじゃないのか?」
「試してみたら分かると思う」
そう言われて、イメージしてみた。
そしてため息が出る。
「……そっか、試さないとか……面倒だな」
「やっぱり面倒くさい?」
今さっき朝陽にしてもらったことを再現するのは簡単なようでいて俺には高度なことだとやっと理解した。
「今のこと振り返って力加減して手動かしてってするんだって思ったら、やっぱり面倒くさいけど、頑張るしかないもんな。自分のためだし」
朝陽がどうしてたか考えると絶対手は動かない。何度もイメトレして手順を覚えなくてはならない。そしたら実践して、同じ動きができるように訓練しなければ、同じ快楽は得られないし、そもそも没頭できないからそれを無意識にできるようにまで習得する必要がある。
マジでめんどい。
「来週も家来たら?」
「え……それって」
甘すぎる誘惑だ。
「俺がまたしてもいいし、昴がするのを見てアドバイスするんでもいいよ」
「朝陽の前で自分でするの? え、それは無理かも」
瞬時に想像して、恥ずかし過ぎた。
「それは無理なんだ」
「人に見られてオナニーなんかできないって」
射精を見られるより、俺が下手で苦労している様を観察される方がずっと恥ずかしい。
「そっか、じゃあ次も俺がするよ」
「そんなわけにはいかんって」
なんの努力もなく、あの快感を手に入れられるなんて魅惑的すぎるが、そんなこと頼むわけにはいかない。
「取り敢えず成果報告ってことで、来週も金曜の晩が良い?」
優しい朝陽はそんな逃げ道まで用意してくれる。
「分かんない、残業あるかもだし」
「じゃあ土曜ね」
「……決まり?」
「決まり、決定」
「……わかった」
なんかやけになった訳でもなかったが、その後も勧められるままに酒を飲み、この日仕事も一段落ついて、さらに体もスッキリした俺は朝陽のベッドまで借りてぐっすり一泊させてもらった。
それどそれからの一週間、なかなか辛い日々だった。週初めは良かったのだ、体はすっきりしているし、週末までに試せばいいやと考えることもなかったから。ただオイルだけは買った。一応ローションもドラッグストアで見つけたけど、買う勇気はなかった。
問題はいざ自分でしてみようとしたところからだった。
「どうだった?」
約束していた土曜日。
昼過ぎに朝陽の部屋にやってきた俺はもう辟易していた。
「無理、だった」
「頑張ったんだ」
朝陽はソファーの上で膝を抱えて俯く俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
「もう、よくわからん。自分の体なのにどうしたら良いのかマジで分かんなくなって、前より酷い。下手に気持ちいいの知ったから、違う違うってそればっかになって無理矢理イったから、なんか頭痛くなるし、もうしたくない」
泣くほどではないが、もう過去一嫌気が差していた。
「俺がしようか?」
しばらく考えたくもなくなっていた俺は、迷惑をかけることもありすぐに断る。
「今日はいい、昨日したし、もうしんどいしほっとく。溜まったら勝手に出るだろ」
「投げやりだな、そんなに辛かったんだ」
優しく撫で続けられる手に、俺の愚痴は止まらなくなる。
「……みんなよくやるよ、あんなこと」
「気持ちいいことだからね」
「気持ちよくなんか無い」
「気持ちよかったよな?」
顔を上げて、柔らかく微笑む朝陽につい弱音が漏れる。
「自分でできなきゃ意味ない」
「気にするな、そのうち慣れる」
「慣れたらできるようになる?」
「心配するな」
けれど俺が慣れることはなかった。
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