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第二章
第八幕 キロ
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「「「アオイ!!」」」
みんな無事でよかった。
おいおい、オードリー君。いつもは離れろってうるさいのに、抱きしめてくれちゃって。
「フサフサ~しあわせ~」
「無事だったんだな、すげー心配で…助けに行きたかったんだ、でもシンの事もあるだろ」
「そうよ、私だってアオイのところに行きたかッたのに、大丈夫なんて言われちゃうし。それにそれにさ、言われた通りにしたのに何にも起こらない上に変な声は聞こえるしさ、私たちどうしたらいいかわかっ…分かんなかったんだがらぁ~」
ノサはホントに泣き虫だなあ、そんなに泣くなって。それくらい心配かけちゃったかな……。
「僕だって心配したんだ!」
「あたしも」
みんないい奴だなぁ。それに引き替えケイコの奴は、あの状況で僕をほっぽり出して、オードリー達をからかうのに時間を費やしてるなんて。
「碧く……ん、あはっ」
笑顔で誤魔化そうとしやがって。マジ大変だったんだぞ。
「お前って奴は…お前って敵は見方か分かんないな」
「アオイ! お前にはあの声がなんなのか知ってるのか?!」
「……見えますね、姿形もハッキリと」
ホント、見たくないんですけどね。
「何なんだ、気配も全くしない上にお前にだけ見えるっていうのはどういう事なんだ」
「ボクが碧を連れてきたからだよぉーん☆ アイテッ、ちょっと碧ぃー叩かないでよ」
「お前が入るとややこしくなるから少し黙ってろ。まずはこの世界を救うのが先なんだろ」
オードリー達にこいつの姿が見えないことをこの時ほど嬉しく思うことはない。何せ格好がふざけてるだけじゃなくて、手に持ったあの箱ををカチャカチャといじっている。
でも表情だけ見れば真剣なようで、手元は忙しなく動いている。
「アオイをここに連れてきたのがこの声の奴…どういうことだ?」
「それはねぇー、碧にこの世界を救ってもらおう思ってなんだあー」
「え?」
驚いたのはもちろんみんなだった。
僕としてはケイコに黙っていろと言いたかった。でもその顔を見ていたら話し続けさせた方が良いんだと感じてしまった。ケイコは僕と話す時とは違う、仕事用の話し方をしている。
「ウフフ、吃驚した?」
「ビックリって…世界を救うのはシンなんだろ?」
「シンは救世主じゃないってことなのか」
「じゃあ本物はアオイって事…?」
「ザンネーン、みんなには教えられにゃいのだぁー」
「てめぇ、ふざけてんなよ!」
オードリーは手にしている剣を無茶苦茶に振り回し始めた。
ケイコの表情は変わらず硬いものだったが、姿が見えないオードリー達にしてみれば完全にからかわれてるとしか思えないだろう。
黙って見ていて上手くいくなら楽かもなんて思ったけど、このまま放っておくとますます面倒くさい事になりそうだ。
「ケイコ…」
「ナニ? 碧」
「お前は敵でも見方でもないな」
「フフ、そうだよぉ」
「ただのおじゃま虫だよ」
「む…し…」
「あと僕もケイコにはこの仕事向いてないと思うぞ」
「ヒドい…」
ケイコはいつかのようにサメザメ泣き出した。
悪いとは思ったけど、ここでグダグダしてる時間が勿体ない。
オードリー達にはしてもらわなきゃならないことがあるし、ケイコ曰く、僕も元の世界に戻ってしなくちゃならないことがあるらしいし、さっさとケリをつけていつもの日常に戻りたい。
「オードリー」
「何だ」
「そんなところで振り回してもあいつには当たらないよ。それよりもシンの儀式を手伝ってあげて」
固まっているシンの目の前まで行って、パンッと手を叩いた。
「シン。君が最後までやらなきゃダメだ。やる事は解ってるだろ?」
「ちょっと、アオイ。どういう事?」
「取りあえず今は儀式を成功させよう」
シンは池の真ん中に立ち、呪文を唱える。そして最後に祖父に教えられたという舞を舞った。
数回それをくり返すと空から雫が落ちてきた。雲一つ無い空から落ちてくる水は徐々に体積を増し、野球ボール大になり実際ボールのように地面をポンポン跳ねている。
「成功したのか?」
オードリーがぼそっと呟いた時、地面を跳ねていた水達が僕にまとわりつき始めた。
嫌な予感がする。
「アオイ?」
みるみる僕の体は水滴に覆われていく。こっちの世界に飛ばされた時と同じ。
そう気がついた頃には視界は水の幕に遮られ、オードリー達をどうしているか見る間もなく飲み込まれていった。
(言っただろう。別れはいつも突然来るものだ)
目を閉じた一瞬の間、再び懐かしいその声を聞いた。
みんな無事でよかった。
おいおい、オードリー君。いつもは離れろってうるさいのに、抱きしめてくれちゃって。
「フサフサ~しあわせ~」
「無事だったんだな、すげー心配で…助けに行きたかったんだ、でもシンの事もあるだろ」
「そうよ、私だってアオイのところに行きたかッたのに、大丈夫なんて言われちゃうし。それにそれにさ、言われた通りにしたのに何にも起こらない上に変な声は聞こえるしさ、私たちどうしたらいいかわかっ…分かんなかったんだがらぁ~」
ノサはホントに泣き虫だなあ、そんなに泣くなって。それくらい心配かけちゃったかな……。
「僕だって心配したんだ!」
「あたしも」
みんないい奴だなぁ。それに引き替えケイコの奴は、あの状況で僕をほっぽり出して、オードリー達をからかうのに時間を費やしてるなんて。
「碧く……ん、あはっ」
笑顔で誤魔化そうとしやがって。マジ大変だったんだぞ。
「お前って奴は…お前って敵は見方か分かんないな」
「アオイ! お前にはあの声がなんなのか知ってるのか?!」
「……見えますね、姿形もハッキリと」
ホント、見たくないんですけどね。
「何なんだ、気配も全くしない上にお前にだけ見えるっていうのはどういう事なんだ」
「ボクが碧を連れてきたからだよぉーん☆ アイテッ、ちょっと碧ぃー叩かないでよ」
「お前が入るとややこしくなるから少し黙ってろ。まずはこの世界を救うのが先なんだろ」
オードリー達にこいつの姿が見えないことをこの時ほど嬉しく思うことはない。何せ格好がふざけてるだけじゃなくて、手に持ったあの箱ををカチャカチャといじっている。
でも表情だけ見れば真剣なようで、手元は忙しなく動いている。
「アオイをここに連れてきたのがこの声の奴…どういうことだ?」
「それはねぇー、碧にこの世界を救ってもらおう思ってなんだあー」
「え?」
驚いたのはもちろんみんなだった。
僕としてはケイコに黙っていろと言いたかった。でもその顔を見ていたら話し続けさせた方が良いんだと感じてしまった。ケイコは僕と話す時とは違う、仕事用の話し方をしている。
「ウフフ、吃驚した?」
「ビックリって…世界を救うのはシンなんだろ?」
「シンは救世主じゃないってことなのか」
「じゃあ本物はアオイって事…?」
「ザンネーン、みんなには教えられにゃいのだぁー」
「てめぇ、ふざけてんなよ!」
オードリーは手にしている剣を無茶苦茶に振り回し始めた。
ケイコの表情は変わらず硬いものだったが、姿が見えないオードリー達にしてみれば完全にからかわれてるとしか思えないだろう。
黙って見ていて上手くいくなら楽かもなんて思ったけど、このまま放っておくとますます面倒くさい事になりそうだ。
「ケイコ…」
「ナニ? 碧」
「お前は敵でも見方でもないな」
「フフ、そうだよぉ」
「ただのおじゃま虫だよ」
「む…し…」
「あと僕もケイコにはこの仕事向いてないと思うぞ」
「ヒドい…」
ケイコはいつかのようにサメザメ泣き出した。
悪いとは思ったけど、ここでグダグダしてる時間が勿体ない。
オードリー達にはしてもらわなきゃならないことがあるし、ケイコ曰く、僕も元の世界に戻ってしなくちゃならないことがあるらしいし、さっさとケリをつけていつもの日常に戻りたい。
「オードリー」
「何だ」
「そんなところで振り回してもあいつには当たらないよ。それよりもシンの儀式を手伝ってあげて」
固まっているシンの目の前まで行って、パンッと手を叩いた。
「シン。君が最後までやらなきゃダメだ。やる事は解ってるだろ?」
「ちょっと、アオイ。どういう事?」
「取りあえず今は儀式を成功させよう」
シンは池の真ん中に立ち、呪文を唱える。そして最後に祖父に教えられたという舞を舞った。
数回それをくり返すと空から雫が落ちてきた。雲一つ無い空から落ちてくる水は徐々に体積を増し、野球ボール大になり実際ボールのように地面をポンポン跳ねている。
「成功したのか?」
オードリーがぼそっと呟いた時、地面を跳ねていた水達が僕にまとわりつき始めた。
嫌な予感がする。
「アオイ?」
みるみる僕の体は水滴に覆われていく。こっちの世界に飛ばされた時と同じ。
そう気がついた頃には視界は水の幕に遮られ、オードリー達をどうしているか見る間もなく飲み込まれていった。
(言っただろう。別れはいつも突然来るものだ)
目を閉じた一瞬の間、再び懐かしいその声を聞いた。
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