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政常さんのおかげで結婚式の準備は順調に進んでいるし、ハネムーンの手配も政常さん任せ。
私は一体何をしているのだろうと、疑わしいことこの上ない。
だから日々筋トレできているのかも。
そう思いもして、やっぱり結局私の良さはよく分からない。
それに唐突な話題の理由もまだ。
「どうして急にそんな話を始めたんですか?」
政常さんは私を引き寄せると、ソファーの上で後ろから抱き込むように座り直させた。
「俺が光莉を好きなことをもっと伝えたいと思ったからかな」
「十分伝わってますよ?」
見上げると政常さんは苦笑といえるような表情をした。
「そもそもな話なんだよ。始めから俺は強引だと分かっていたんだ」
政常さんは後悔はしていないが反省はしてると、それでもなりふり構っていられなかったんだと言うが、私にはそれが本気で分からない。
政常さんはそれも承知の上だと私の真後ろで頷いている。
「とても仲良くなんて言えない間柄だったんだから、光莉が警戒するのは当たり前だよ」
それをきちんと分かっているのが政常さんなのに、あの突然の告白が異常なのだとあの当時にも思った。
付き合いたいという思いにも懐疑的ではあったが、それを横に置いたとしても距離を縮めるやり方を政常さんなら知っていそうなものだ。
営業成績の素晴らしさが物語っていたように、対人スキルは抜群なはずだ。恋愛関係は噂でしか知る由もなかったが、それだって人々の口に乗る話に悪いものはなかった。
すでに警戒はないものの、その解けない謎の答えを持っているのはもちろん政常さんだけだ。
「あそこであったのは偶然ですよね?」
偶然だけどその偶然を願っていたと、ぎゅっと抱きしめられた。
「二人きりで話せるチャンスが来たら絶対に告白しようって決めてたんだ。ギリギリなんとかお試し期間もらえたときは、真面目に仕事で成果上げてた自分も褒めたし、生まれて初めてこの顔で良かったとも思ったよ」
そんな必死感は全く分からなかったから凄い。
自信に満ちているから多少強引なことはできるのだと勝手に思っていた。
でもよく考えれば、そんな焦る必要を感じない。
「何か事情があったんですか?」
「賭けに出るくらいに急に距離詰めたのは、光莉の事狙ってるのが、光莉の近くにいると思ったから悠長にしてる余裕がなかったからだよ」
あの時振られても諦める気はなかったと付け加えた。
にわかには信じ難く、政常さんの勘違いだと首をひねる。
「いますか?」
政常さんは真面目な顔になった。
「今更意識してほしくないから絶対誰だかは教えないけど、俺が仲のいい同僚から始めてたら絶対に間に合わない距離にいる人間だから」
「絶対って二回も」
「絶対だから」
「少なくとも私は気づいてないんですが?」
当然と言わんばりに頷き、政常さんはそうでなければ困るらしい。
「気づかせるわけない、光莉が意識しだしたら、向こうはもっと意識していい感じになるの分かってたからね。先手必勝で、この一年我武者羅だったよ」
「我武者羅感はそんなになかったと思いますけど、手際はいいなぁとは」
お試し当初、いくら何もしないと言われても家に行くのに躊躇いがあった私は、家への招待を仄めかされても躱していた。数度のデートを繰り返して居心地が悪いことがないとは分かったが、外を歩くと人目を引くことは嫌というほど体感した。
早々にデートに疲れを感じそうになった時、政常さんは朝食デートを提案する。
朝の効果か人々の目をそれほど向けられずまだ喧騒もなくさわやかな空気はとても心地よかった。そして、朝食を今度は家でどうかと誘われた。
食べ終わったら外にデートに行こうと言われ、あっさり頷いていた。清々しい空気が背中を押した。
そして政常さんの初手料理に感動して、なんとも健康的な雰囲気も体感したから家に行くことに抵抗は減っていった。
もちろん政常さんがずっと紳士という意味でも真摯だったからなのは言うまでもない。
「必死だよ、光莉とできるだけ一緒にいたいけど、束縛だと思われることは避けなければならない。ただ他に現を抜かしてるなんて勘違いもしてほしくないから、俺には光莉だけだと信頼してもらいたい。もちろん他のやつに光莉を奪われるような隙も見せたくなかったからね」
「そこまで……」
そんなに必死になるほど価値があるとは思えない自分だからこそ、即座に嬉しいとなる話ではなかった。
それがまた伝わってしまう。
「結婚がゴールなんていったい誰が言い出したのか、離婚なんて選択肢が浮かびでもしたら光莉はそれに向けて動き出してしまう。そうなったら気持ちを取り返すのは並大抵のことではない」
私のどこがそんなに不安感を煽るのか自覚がないことこそがその元凶なのだろうか。
「それは私こそなんですが、政常さんの感情が普遍的だなんて思えませんよ」
「ほら危ない。それは危機管理能力なんだろうけど、光莉はそれでいつでも気配りを怠らないのも俺は少し不安だから」
「危機管理?」
政常さんは私の手に指を絡め始める。
「親しき中にも礼儀ありって染み付いてると言うのかな。とても素晴らしいことなんだけど」
「それが不安にさせるんですか?」
「焦るつもりはないって前提で聞いて。どうしても一線引かれてるような気がしてる」
すぐに思い当たることはある。
「話し方とかですか?」
「それもあるけど、そもそもタメ口にしたいって思われてないってことはその距離感が良いんだろうなって」
「直しますよ」
わざわざ距離感を維持しようとしてない……まあ当初はあったけど、今は変えるタイミングを失してるだけだ。
「形から入るのも大事だけど、俺は心理的距離を近づけたい」
「具体的にはどのように?」
「ソファーでゴロゴロしている姿を見せてくれたり」
政常さんがいる時はしていないはずだ。
仕事の後、一人帰ってきた後だけソファーに倒れ込むようなことはしたけど、絶対に見られてはいない。
「……いつ見たんですか」
「半年くらい前かな、丁度光莉が自分のマンションを解約したくらいの時。荷物の移動で疲れてたんだろうね。そこのソファーで寝ちゃったことがあっただろ?」
思い出した。
不用品は処分したけど、服とか小物とか自分の家の物を全部こっちに持ってきて、段ボールのままではずっと使わないままになるかもしれないから、整理していた。
その時は政常さんも手伝ってくれたし、一日でやり切ることもないと夕方前にはおやつ休憩を提案してくれた。
その時うっかり眠ってしまったのだ。
でもそれはゴロゴロしてたわけじゃなくて、引っ越し準備で草臥れて気が付いたら寝てしまっていただけだ。
夕飯の買い物に行こうと話していたけど、政常さんが一人で行ってくれた。
「あの日途中で一回帰ってきてたんだ」
「え!」
全く気づいていない。
「眠ってる間に帰ろうと思ってたから、買い物は近くで簡単に済ませて帰ったら、リビングに入る直前で光莉が飛び起きて、そのあとズルズルソファーに横になったから体調崩したかなってドアを開けようとしたんだけど」
必死でその時のことを思い出そうとしても、はっきり記憶を引き出せず焦る。
「私なにか失礼なことでも言いましたか?」
「あー、やっちゃったって」
「良かった、一応反省してた」
そっと胸を撫でおろしたのだが、それさえも政常さんは不服そうにする。
「それがまず良くない。昼寝してくれるくらいがいいし、買い物も俺が勝手に一人で行ったんだから気にしなくていい。でもその後にも光莉は呟いたんだよ」
「一人で何を」
また私は緊張が走る。
「虚ろな声で怠け者も直さなきゃって言った、それでそのまままた眠っちゃったんだよ」
「言葉と行動がチグハグですね」
「疲れてたんだよ、その前からだけどそれからも光莉が怠けてるところなんて見たことない。由々しき事態だ」
日々の努力が実っているようで私には喜べるところだが、政常さんはどうやら違うようだ。
「良いことだと思いますけど」
「また倒れたらどうする? 俺といることが疲れると気が付いたら終わりだろ?」
「別に疲れたりはしてませんよ」
気を張り詰めさせているわけではない。政常さんのご機嫌を伺っているわけではなくて、共同生活における気遣いは当たり前のことだ。
一人だったらめんどくさいと放り出す家事も、結局後で自分でしなくてはならないのだから多少後回しにしてもそのツケを払うのは自分だから良いのだ。けれど、誰かと暮らすとそれは相手のストレスになりかねない。後でやるからと見過ごせることは個人で違う、それは血の繋がった家族だろうと長く一緒に生活している者同士だろうと、例え慣れたとしてもいつ塵積で不満となって爆発するか分からない。
だからこそ、お互い、気遣いと提言は必要だと私は考えている。
今がその意識の擦り合わせの時なのだろうか。
一緒に暮らし始めた時から少しずつしているはずなんだけど。
「絶対政常さんの方が忙しいですし、それなのに私の世話までしてるようなもんですよ?」
「光莉が無意識だから余計怖い。悟られて振られるのが嫌で言わなった」
そう言って政常さんはまた私を抱き締めた。
家事の分担などは寧ろ政常さんの方が割合が多いと思うのに、私が振られるとはあっても、逆になる要素は見当たらない。
「そんなに心配しなくても」
「だから甘やかしたいんだ。俺をその無意識に入れてほしい」
「掛け替えのない人にはもうなってますよ」
気が抜けないというのは確かにまだあるけど、一緒にいて疲れるというのとはまた違う。張り合いとでも言えば良いのか、無理のない範囲で律していられるのだから、無駄にだらだら暮らすよりはずっと良いと今の私は思っている。
けれど、それが政常さんには心配事になってるのはまた問題でもある。
でも無理だなー、今となってはこっちこそ嫌われたくないんだから。
「光莉、少しずつでいい。ここからは俺ゆっくり光莉のペースに合わせるから」
「そうですね。結婚したからと張り切り過ぎないようにします」
少し距離を取って顔を見詰めて笑いかけた。
すると今度はぎゅぎゅうとまた抱きしめられた。
私は一体何をしているのだろうと、疑わしいことこの上ない。
だから日々筋トレできているのかも。
そう思いもして、やっぱり結局私の良さはよく分からない。
それに唐突な話題の理由もまだ。
「どうして急にそんな話を始めたんですか?」
政常さんは私を引き寄せると、ソファーの上で後ろから抱き込むように座り直させた。
「俺が光莉を好きなことをもっと伝えたいと思ったからかな」
「十分伝わってますよ?」
見上げると政常さんは苦笑といえるような表情をした。
「そもそもな話なんだよ。始めから俺は強引だと分かっていたんだ」
政常さんは後悔はしていないが反省はしてると、それでもなりふり構っていられなかったんだと言うが、私にはそれが本気で分からない。
政常さんはそれも承知の上だと私の真後ろで頷いている。
「とても仲良くなんて言えない間柄だったんだから、光莉が警戒するのは当たり前だよ」
それをきちんと分かっているのが政常さんなのに、あの突然の告白が異常なのだとあの当時にも思った。
付き合いたいという思いにも懐疑的ではあったが、それを横に置いたとしても距離を縮めるやり方を政常さんなら知っていそうなものだ。
営業成績の素晴らしさが物語っていたように、対人スキルは抜群なはずだ。恋愛関係は噂でしか知る由もなかったが、それだって人々の口に乗る話に悪いものはなかった。
すでに警戒はないものの、その解けない謎の答えを持っているのはもちろん政常さんだけだ。
「あそこであったのは偶然ですよね?」
偶然だけどその偶然を願っていたと、ぎゅっと抱きしめられた。
「二人きりで話せるチャンスが来たら絶対に告白しようって決めてたんだ。ギリギリなんとかお試し期間もらえたときは、真面目に仕事で成果上げてた自分も褒めたし、生まれて初めてこの顔で良かったとも思ったよ」
そんな必死感は全く分からなかったから凄い。
自信に満ちているから多少強引なことはできるのだと勝手に思っていた。
でもよく考えれば、そんな焦る必要を感じない。
「何か事情があったんですか?」
「賭けに出るくらいに急に距離詰めたのは、光莉の事狙ってるのが、光莉の近くにいると思ったから悠長にしてる余裕がなかったからだよ」
あの時振られても諦める気はなかったと付け加えた。
にわかには信じ難く、政常さんの勘違いだと首をひねる。
「いますか?」
政常さんは真面目な顔になった。
「今更意識してほしくないから絶対誰だかは教えないけど、俺が仲のいい同僚から始めてたら絶対に間に合わない距離にいる人間だから」
「絶対って二回も」
「絶対だから」
「少なくとも私は気づいてないんですが?」
当然と言わんばりに頷き、政常さんはそうでなければ困るらしい。
「気づかせるわけない、光莉が意識しだしたら、向こうはもっと意識していい感じになるの分かってたからね。先手必勝で、この一年我武者羅だったよ」
「我武者羅感はそんなになかったと思いますけど、手際はいいなぁとは」
お試し当初、いくら何もしないと言われても家に行くのに躊躇いがあった私は、家への招待を仄めかされても躱していた。数度のデートを繰り返して居心地が悪いことがないとは分かったが、外を歩くと人目を引くことは嫌というほど体感した。
早々にデートに疲れを感じそうになった時、政常さんは朝食デートを提案する。
朝の効果か人々の目をそれほど向けられずまだ喧騒もなくさわやかな空気はとても心地よかった。そして、朝食を今度は家でどうかと誘われた。
食べ終わったら外にデートに行こうと言われ、あっさり頷いていた。清々しい空気が背中を押した。
そして政常さんの初手料理に感動して、なんとも健康的な雰囲気も体感したから家に行くことに抵抗は減っていった。
もちろん政常さんがずっと紳士という意味でも真摯だったからなのは言うまでもない。
「必死だよ、光莉とできるだけ一緒にいたいけど、束縛だと思われることは避けなければならない。ただ他に現を抜かしてるなんて勘違いもしてほしくないから、俺には光莉だけだと信頼してもらいたい。もちろん他のやつに光莉を奪われるような隙も見せたくなかったからね」
「そこまで……」
そんなに必死になるほど価値があるとは思えない自分だからこそ、即座に嬉しいとなる話ではなかった。
それがまた伝わってしまう。
「結婚がゴールなんていったい誰が言い出したのか、離婚なんて選択肢が浮かびでもしたら光莉はそれに向けて動き出してしまう。そうなったら気持ちを取り返すのは並大抵のことではない」
私のどこがそんなに不安感を煽るのか自覚がないことこそがその元凶なのだろうか。
「それは私こそなんですが、政常さんの感情が普遍的だなんて思えませんよ」
「ほら危ない。それは危機管理能力なんだろうけど、光莉はそれでいつでも気配りを怠らないのも俺は少し不安だから」
「危機管理?」
政常さんは私の手に指を絡め始める。
「親しき中にも礼儀ありって染み付いてると言うのかな。とても素晴らしいことなんだけど」
「それが不安にさせるんですか?」
「焦るつもりはないって前提で聞いて。どうしても一線引かれてるような気がしてる」
すぐに思い当たることはある。
「話し方とかですか?」
「それもあるけど、そもそもタメ口にしたいって思われてないってことはその距離感が良いんだろうなって」
「直しますよ」
わざわざ距離感を維持しようとしてない……まあ当初はあったけど、今は変えるタイミングを失してるだけだ。
「形から入るのも大事だけど、俺は心理的距離を近づけたい」
「具体的にはどのように?」
「ソファーでゴロゴロしている姿を見せてくれたり」
政常さんがいる時はしていないはずだ。
仕事の後、一人帰ってきた後だけソファーに倒れ込むようなことはしたけど、絶対に見られてはいない。
「……いつ見たんですか」
「半年くらい前かな、丁度光莉が自分のマンションを解約したくらいの時。荷物の移動で疲れてたんだろうね。そこのソファーで寝ちゃったことがあっただろ?」
思い出した。
不用品は処分したけど、服とか小物とか自分の家の物を全部こっちに持ってきて、段ボールのままではずっと使わないままになるかもしれないから、整理していた。
その時は政常さんも手伝ってくれたし、一日でやり切ることもないと夕方前にはおやつ休憩を提案してくれた。
その時うっかり眠ってしまったのだ。
でもそれはゴロゴロしてたわけじゃなくて、引っ越し準備で草臥れて気が付いたら寝てしまっていただけだ。
夕飯の買い物に行こうと話していたけど、政常さんが一人で行ってくれた。
「あの日途中で一回帰ってきてたんだ」
「え!」
全く気づいていない。
「眠ってる間に帰ろうと思ってたから、買い物は近くで簡単に済ませて帰ったら、リビングに入る直前で光莉が飛び起きて、そのあとズルズルソファーに横になったから体調崩したかなってドアを開けようとしたんだけど」
必死でその時のことを思い出そうとしても、はっきり記憶を引き出せず焦る。
「私なにか失礼なことでも言いましたか?」
「あー、やっちゃったって」
「良かった、一応反省してた」
そっと胸を撫でおろしたのだが、それさえも政常さんは不服そうにする。
「それがまず良くない。昼寝してくれるくらいがいいし、買い物も俺が勝手に一人で行ったんだから気にしなくていい。でもその後にも光莉は呟いたんだよ」
「一人で何を」
また私は緊張が走る。
「虚ろな声で怠け者も直さなきゃって言った、それでそのまままた眠っちゃったんだよ」
「言葉と行動がチグハグですね」
「疲れてたんだよ、その前からだけどそれからも光莉が怠けてるところなんて見たことない。由々しき事態だ」
日々の努力が実っているようで私には喜べるところだが、政常さんはどうやら違うようだ。
「良いことだと思いますけど」
「また倒れたらどうする? 俺といることが疲れると気が付いたら終わりだろ?」
「別に疲れたりはしてませんよ」
気を張り詰めさせているわけではない。政常さんのご機嫌を伺っているわけではなくて、共同生活における気遣いは当たり前のことだ。
一人だったらめんどくさいと放り出す家事も、結局後で自分でしなくてはならないのだから多少後回しにしてもそのツケを払うのは自分だから良いのだ。けれど、誰かと暮らすとそれは相手のストレスになりかねない。後でやるからと見過ごせることは個人で違う、それは血の繋がった家族だろうと長く一緒に生活している者同士だろうと、例え慣れたとしてもいつ塵積で不満となって爆発するか分からない。
だからこそ、お互い、気遣いと提言は必要だと私は考えている。
今がその意識の擦り合わせの時なのだろうか。
一緒に暮らし始めた時から少しずつしているはずなんだけど。
「絶対政常さんの方が忙しいですし、それなのに私の世話までしてるようなもんですよ?」
「光莉が無意識だから余計怖い。悟られて振られるのが嫌で言わなった」
そう言って政常さんはまた私を抱き締めた。
家事の分担などは寧ろ政常さんの方が割合が多いと思うのに、私が振られるとはあっても、逆になる要素は見当たらない。
「そんなに心配しなくても」
「だから甘やかしたいんだ。俺をその無意識に入れてほしい」
「掛け替えのない人にはもうなってますよ」
気が抜けないというのは確かにまだあるけど、一緒にいて疲れるというのとはまた違う。張り合いとでも言えば良いのか、無理のない範囲で律していられるのだから、無駄にだらだら暮らすよりはずっと良いと今の私は思っている。
けれど、それが政常さんには心配事になってるのはまた問題でもある。
でも無理だなー、今となってはこっちこそ嫌われたくないんだから。
「光莉、少しずつでいい。ここからは俺ゆっくり光莉のペースに合わせるから」
「そうですね。結婚したからと張り切り過ぎないようにします」
少し距離を取って顔を見詰めて笑いかけた。
すると今度はぎゅぎゅうとまた抱きしめられた。
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