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8章
この感情は
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食事を終え、レイフォードとシルヴィアは共に自室へ戻る。
シルヴィアが部屋に戻り暫くした後、ソニアが入室する。
ソニアが入って来ても、シルヴィアは気付かずに自分の掌を眺めている。
「どうされました?」
ソニアが声を掛ける。
いつもなら声を上げて驚くシルヴィアだが、ぼんやりとした表情で、ゆっくりと顔を上げてソニアを見た。
様子の違いに眉を寄せる。
そしてシルヴィアが静かな声で話し出す。
「ソニア、私一体どうしてしまったのしら?」
「・・・どう、とは?」
問い返すソニア。
未だシルヴィアは気もそぞろで、ソニアを見ている様で何処か遠くを見据えているようだった。
「何かおかしいの。」
シルヴィア自体も上手く言葉に出来ない状態だ。
それでもソニアはシルヴィアの言葉を待った。
シルヴィアは自分の体を摩る様に、たどたどしく口を開く。
「最近、レイフォード様と目が合うとよくなるの。
何だか・・・体がゾクゾクして、風邪を引いたわけでもないの。
レイフォード様に見つめられると、体も動かなくなってしまうし。
私は何か病に罹ってしまったの?」
不安気にソニアを見る。
ソニアは、
「ああ~・・・・。」
そう言っただけで、天井を見上げる。
(そう来たか・・・。さてどうしたものか。)
目の前には沈んだ様子のシルヴィアがソニアの返答を待っていた。
「・・・まず初めに言っておきますと、それは病では無いので安心してください。」
シルヴィアの表情が少し和らぐ。
「そうなのね。良かったわ。」
胸に手を当て息を吐く。
ソニアは続ける。
「そして、それはシルヴィア様がご当主をお慕いする感情を落ち着かせれば、少しはマシになるかもしれませんね。」
「ええと、それはどういう事?」
ソニアはとても苦々しい顔で、とても嫌そうに答える。
(こういうの苦手なんだよ、私は。)
「まぁ、つまり、シルヴィア様がご当主の事を好き過ぎるという事です。」
ポンッと音が聞こえる位、シルヴィアの頬が一瞬で赤くなる。
「そ、そうね。レイフォード様の事、とても、とても好きだわ。
でも、好きと体がゾクゾクするのはどう関係するの?」
「あ~、う~、それは、その・・・。」
(適当な事を言っても、シルヴィア様は納得しないだろうし、ああ、困った。)
シルヴィアはソニアをジッと見つめる。
グッと息を呑む。
そして観念したのか、伏し目がちにシルヴィアに伝える。
「ご当主に求められている喜びにも似た感情に因るものかと。」
「喜び?」
「自分が好きな相手から女性として好意を持たれて、尚且つ女として欲情されていると、無意識に感じ取ったシルヴィア様のお心が歓喜にうち震えているという事です。」
「よ、欲情!?
あの瞳はそうだったの?」
頬を押さえながら、シルヴィアが慌てる。
ソニアは額を押さえて言う。
「欲情以外の何物でも無いです。
シルヴィア様が類稀なる鈍感であるのが分かっています。
ご当主がシルヴィア様へ向ける感情はあれ程あからさまなのに全く気付いておられないなんて。」
「・・・・だ、だって・・・。」
「大分前から向けられていましたよ?」
「・・・・・。」
シルヴィアは何も言えずに黙っている。
「ご当主がシルヴィア様に好意を抱いているのも気が付かなかったので無理も無いですが。」
「うううう。だって、だって。」
俯き、膝に両手を置き、その手を固く握る。
もごもごと口籠るシルヴィア。
まるで昔に戻ったような気分になる。
ソニアは微笑ましくシルヴィアを見つめる。
子供の頃、ソニアに叱責された時、シルヴィアは今の様に俯き、肩をプルプル震えさせていた。
涙を堪えていた。
今は成長して泣くまではいかないのだが、肩は震えている。
「だって・・・、今までそんな感情、向けられた事無かったもの。
誰にも・・・、お父様達以外に誰にも。」
ソニアの顔が歪む。
鬼神の娘だと恐れられ、体の事を謗られ、彼女には悪意、中傷、蔑みの目しか向けられなかった。
それでもシルヴィアはそういった不遜な輩達を憎む事をせず、自分が悪いからと悲し気に笑うだけ。
シルヴィアほど純粋で、無垢で優しい女性は居ないのに。
ソニアは不当な評価を受ける主がこれ以上傷付く事が無い様、命を賭してでも守り抜くと心に誓った。
ポンと頭を撫でる。
シルヴィアはそろりと顔を上げる。
ソニアの穏やかな顔でシルヴィアを見つめていた。
シルヴィアはハッとした顔でソニアに言い寄る。
「あ!!ソニアも、よ!ソニアも私には凄く優しいわ!」
「はい。そうですよ。私はいつもシルヴィア様を思っています。」
「・・・うん。」
嬉しそうに撫でられているシルヴィア。
ソニアもシルヴィアを慈しむ目で見る。
「私、感覚が麻痺していたのかもしれないわね。
皆、私に向ける目が一緒だから。
あまり気にしないようにしていたもの。
誰も私を好きになる人は居ないんだって。」
シルヴィアは静かな声で話す。
「だから、レイフォード様にお会いして、
ああ、私は失敗してしまったと、レイフォード様にも嫌われてしまったと思ったの。
それでもお傍にいたかった。傍に居るのを許される位は頑張ろうと思ったの。
でも、好きになって貰えるなんて思ってなかった。
ましてや自分に触れたいなんて思われるなんて。」
ピクリとソニアの手が止まる。
此処での最初の出来事を思い出し、怒りがぶり返したのだ。
シルヴィアを傷付けておきながら、手の平を返した態度で愛を囁くレイフォードに腹が立つ。
それもシルヴィアが寛大な心を持っていたからなのだ。
普通の令嬢なら最初の段階で関係は破綻する。
自分の命よりも大事な姫。
彼女は盲目的にレイフォードを慕う。
結果レイフォードの心を癒した。
そんなレイフォードがシルヴィアに異常なまでに執着を見せるのは自明の理だろう。
自分に嫉妬の目を向けるレイフォードを脳内で何回滅していたか。
怒りを抑えようと沈黙しているソニアにシルヴィアは微笑みかける。
「そうなのね、体が震えるのは嬉しいからなのね。」
ソニアはシルヴィアの笑顔で、怒りの感情が霧散していくのが分かった。
彼女の笑顔にはそうさせる力があるのだろう。
自然とソニアも笑顔になる。
「じゃあ、早く慣れないといけないわね。
レイフォード様をずっとお待たせするのも良くないし。」
「ずっと待たせておけばいいのですよ。」
少し拗ねたようにソニアが言えば、シルヴィアは目を見開き、その後苦笑する。
「ふふ、貴女のそんな顔初めて見た。」
怒りや笑顔はあっても、拗ねるなんてソニアの表情で一度も見た事は無い。
そんな顔を見せてくれてシルヴィアは嬉しかった。
嬉しかったが、ソニアの言葉には同意出来ない。
「でも、駄目よ?折角レイフォード様が私を見てくれるようになったのに、また嫌われてしまうわ。」
いや、何回も言うが、それは絶対にない。
心の中でソニアは断言する。
嫌ってくれれば、シルヴィアを此処から連れ出せるのだが、あれは地の果てまでシルヴィアを追って来る。
絶対に逃がすつもりは無いのだ。
当のレイフォード自身もその事を断言している。
心底面白くない。
面白くないソニアはレイフォードへの嫌がらせを決行する。
「分かりました。シルヴィア様の決心の力添えを致します。」
「え?」
「男女の触れ合いがどんな物か、少しお教え致します。」
「本当!?わあ!嬉しい!!ありがとう、ソニア!!」
ソニアがとても綺麗な、それでいて意地の悪い顔で笑っていたのに、シルヴィアは嬉しさの余り気が付かなかった。
一時間後。
「・・・・・・う、嘘よね?まさか、そんな事をするなんて。
またソニアは私に嘘を付いているのよね?ね?」
「残念ながら、これは真実です。
夫婦ならば当然の行為です。」
顔が真っ青になり、瞳は色を失っている。
「そ、そんな・・・・。そんな事って・・・・。」
「言っておきますが、先程お話した事はほんの触り程度ですからね。」
「え・・・・。」
シルヴィアは言葉を失う。
自分の聞いた以上の事がまだあると?
愕然とするシルヴィアにソニアは淡々と話す。
「一度にお話すると、シルヴィア様が気を失いかねないので今回はこの位で。」
「あ、ありがとう。そ、そうね。ソニアの言う通り、ちょっと頭の中が混乱しているわ。
ど、どうしましょう・・・。明日レイフォード様と街へお出掛けするのに、どんな顔で会えばいいの?」
何故かシルヴィアは礼を言い、途方に暮れて沈み込む。
「別にいつも通りで良いのでは?」
ソニアがさらりと言う。
シルヴィアはソニアにかぶり寄る。
「そ、それが出来たらこんなに悩んでいないわ!!」
「明日、どうこうされる訳でも無いのでしょう?そこまで気になさらなくても。」
「それは・・・そうね。気にし過ぎて、レイフォード様に変な態度を取ってしまっても嫌だわ。
普段通り!普段通りね!」
シルヴィアが自分に言い聞かせる様に呟く。
ソニアは嘘の笑顔を貼り付けたまま何も喋らない。
ソニアは知っている。
シルヴィアが気にしない様にと心掛ければ心掛ける程、逆に意識して普段通りのシルヴィアでなくなることを。
ソニアは分かった上で、街へ出掛ける前日に話したのだ。
遅かれ早かれシルヴィアとレイフォードは結ばれる。
だが、まだ心情的にレイフォードを許す事が出来ない。
もう少し。
もう少しだけ。
自分勝手な思いを恥じる。
だが、ソニアには願わずにはいられなかった。
主を無垢な姫のままで、と。
シルヴィアが部屋に戻り暫くした後、ソニアが入室する。
ソニアが入って来ても、シルヴィアは気付かずに自分の掌を眺めている。
「どうされました?」
ソニアが声を掛ける。
いつもなら声を上げて驚くシルヴィアだが、ぼんやりとした表情で、ゆっくりと顔を上げてソニアを見た。
様子の違いに眉を寄せる。
そしてシルヴィアが静かな声で話し出す。
「ソニア、私一体どうしてしまったのしら?」
「・・・どう、とは?」
問い返すソニア。
未だシルヴィアは気もそぞろで、ソニアを見ている様で何処か遠くを見据えているようだった。
「何かおかしいの。」
シルヴィア自体も上手く言葉に出来ない状態だ。
それでもソニアはシルヴィアの言葉を待った。
シルヴィアは自分の体を摩る様に、たどたどしく口を開く。
「最近、レイフォード様と目が合うとよくなるの。
何だか・・・体がゾクゾクして、風邪を引いたわけでもないの。
レイフォード様に見つめられると、体も動かなくなってしまうし。
私は何か病に罹ってしまったの?」
不安気にソニアを見る。
ソニアは、
「ああ~・・・・。」
そう言っただけで、天井を見上げる。
(そう来たか・・・。さてどうしたものか。)
目の前には沈んだ様子のシルヴィアがソニアの返答を待っていた。
「・・・まず初めに言っておきますと、それは病では無いので安心してください。」
シルヴィアの表情が少し和らぐ。
「そうなのね。良かったわ。」
胸に手を当て息を吐く。
ソニアは続ける。
「そして、それはシルヴィア様がご当主をお慕いする感情を落ち着かせれば、少しはマシになるかもしれませんね。」
「ええと、それはどういう事?」
ソニアはとても苦々しい顔で、とても嫌そうに答える。
(こういうの苦手なんだよ、私は。)
「まぁ、つまり、シルヴィア様がご当主の事を好き過ぎるという事です。」
ポンッと音が聞こえる位、シルヴィアの頬が一瞬で赤くなる。
「そ、そうね。レイフォード様の事、とても、とても好きだわ。
でも、好きと体がゾクゾクするのはどう関係するの?」
「あ~、う~、それは、その・・・。」
(適当な事を言っても、シルヴィア様は納得しないだろうし、ああ、困った。)
シルヴィアはソニアをジッと見つめる。
グッと息を呑む。
そして観念したのか、伏し目がちにシルヴィアに伝える。
「ご当主に求められている喜びにも似た感情に因るものかと。」
「喜び?」
「自分が好きな相手から女性として好意を持たれて、尚且つ女として欲情されていると、無意識に感じ取ったシルヴィア様のお心が歓喜にうち震えているという事です。」
「よ、欲情!?
あの瞳はそうだったの?」
頬を押さえながら、シルヴィアが慌てる。
ソニアは額を押さえて言う。
「欲情以外の何物でも無いです。
シルヴィア様が類稀なる鈍感であるのが分かっています。
ご当主がシルヴィア様へ向ける感情はあれ程あからさまなのに全く気付いておられないなんて。」
「・・・・だ、だって・・・。」
「大分前から向けられていましたよ?」
「・・・・・。」
シルヴィアは何も言えずに黙っている。
「ご当主がシルヴィア様に好意を抱いているのも気が付かなかったので無理も無いですが。」
「うううう。だって、だって。」
俯き、膝に両手を置き、その手を固く握る。
もごもごと口籠るシルヴィア。
まるで昔に戻ったような気分になる。
ソニアは微笑ましくシルヴィアを見つめる。
子供の頃、ソニアに叱責された時、シルヴィアは今の様に俯き、肩をプルプル震えさせていた。
涙を堪えていた。
今は成長して泣くまではいかないのだが、肩は震えている。
「だって・・・、今までそんな感情、向けられた事無かったもの。
誰にも・・・、お父様達以外に誰にも。」
ソニアの顔が歪む。
鬼神の娘だと恐れられ、体の事を謗られ、彼女には悪意、中傷、蔑みの目しか向けられなかった。
それでもシルヴィアはそういった不遜な輩達を憎む事をせず、自分が悪いからと悲し気に笑うだけ。
シルヴィアほど純粋で、無垢で優しい女性は居ないのに。
ソニアは不当な評価を受ける主がこれ以上傷付く事が無い様、命を賭してでも守り抜くと心に誓った。
ポンと頭を撫でる。
シルヴィアはそろりと顔を上げる。
ソニアの穏やかな顔でシルヴィアを見つめていた。
シルヴィアはハッとした顔でソニアに言い寄る。
「あ!!ソニアも、よ!ソニアも私には凄く優しいわ!」
「はい。そうですよ。私はいつもシルヴィア様を思っています。」
「・・・うん。」
嬉しそうに撫でられているシルヴィア。
ソニアもシルヴィアを慈しむ目で見る。
「私、感覚が麻痺していたのかもしれないわね。
皆、私に向ける目が一緒だから。
あまり気にしないようにしていたもの。
誰も私を好きになる人は居ないんだって。」
シルヴィアは静かな声で話す。
「だから、レイフォード様にお会いして、
ああ、私は失敗してしまったと、レイフォード様にも嫌われてしまったと思ったの。
それでもお傍にいたかった。傍に居るのを許される位は頑張ろうと思ったの。
でも、好きになって貰えるなんて思ってなかった。
ましてや自分に触れたいなんて思われるなんて。」
ピクリとソニアの手が止まる。
此処での最初の出来事を思い出し、怒りがぶり返したのだ。
シルヴィアを傷付けておきながら、手の平を返した態度で愛を囁くレイフォードに腹が立つ。
それもシルヴィアが寛大な心を持っていたからなのだ。
普通の令嬢なら最初の段階で関係は破綻する。
自分の命よりも大事な姫。
彼女は盲目的にレイフォードを慕う。
結果レイフォードの心を癒した。
そんなレイフォードがシルヴィアに異常なまでに執着を見せるのは自明の理だろう。
自分に嫉妬の目を向けるレイフォードを脳内で何回滅していたか。
怒りを抑えようと沈黙しているソニアにシルヴィアは微笑みかける。
「そうなのね、体が震えるのは嬉しいからなのね。」
ソニアはシルヴィアの笑顔で、怒りの感情が霧散していくのが分かった。
彼女の笑顔にはそうさせる力があるのだろう。
自然とソニアも笑顔になる。
「じゃあ、早く慣れないといけないわね。
レイフォード様をずっとお待たせするのも良くないし。」
「ずっと待たせておけばいいのですよ。」
少し拗ねたようにソニアが言えば、シルヴィアは目を見開き、その後苦笑する。
「ふふ、貴女のそんな顔初めて見た。」
怒りや笑顔はあっても、拗ねるなんてソニアの表情で一度も見た事は無い。
そんな顔を見せてくれてシルヴィアは嬉しかった。
嬉しかったが、ソニアの言葉には同意出来ない。
「でも、駄目よ?折角レイフォード様が私を見てくれるようになったのに、また嫌われてしまうわ。」
いや、何回も言うが、それは絶対にない。
心の中でソニアは断言する。
嫌ってくれれば、シルヴィアを此処から連れ出せるのだが、あれは地の果てまでシルヴィアを追って来る。
絶対に逃がすつもりは無いのだ。
当のレイフォード自身もその事を断言している。
心底面白くない。
面白くないソニアはレイフォードへの嫌がらせを決行する。
「分かりました。シルヴィア様の決心の力添えを致します。」
「え?」
「男女の触れ合いがどんな物か、少しお教え致します。」
「本当!?わあ!嬉しい!!ありがとう、ソニア!!」
ソニアがとても綺麗な、それでいて意地の悪い顔で笑っていたのに、シルヴィアは嬉しさの余り気が付かなかった。
一時間後。
「・・・・・・う、嘘よね?まさか、そんな事をするなんて。
またソニアは私に嘘を付いているのよね?ね?」
「残念ながら、これは真実です。
夫婦ならば当然の行為です。」
顔が真っ青になり、瞳は色を失っている。
「そ、そんな・・・・。そんな事って・・・・。」
「言っておきますが、先程お話した事はほんの触り程度ですからね。」
「え・・・・。」
シルヴィアは言葉を失う。
自分の聞いた以上の事がまだあると?
愕然とするシルヴィアにソニアは淡々と話す。
「一度にお話すると、シルヴィア様が気を失いかねないので今回はこの位で。」
「あ、ありがとう。そ、そうね。ソニアの言う通り、ちょっと頭の中が混乱しているわ。
ど、どうしましょう・・・。明日レイフォード様と街へお出掛けするのに、どんな顔で会えばいいの?」
何故かシルヴィアは礼を言い、途方に暮れて沈み込む。
「別にいつも通りで良いのでは?」
ソニアがさらりと言う。
シルヴィアはソニアにかぶり寄る。
「そ、それが出来たらこんなに悩んでいないわ!!」
「明日、どうこうされる訳でも無いのでしょう?そこまで気になさらなくても。」
「それは・・・そうね。気にし過ぎて、レイフォード様に変な態度を取ってしまっても嫌だわ。
普段通り!普段通りね!」
シルヴィアが自分に言い聞かせる様に呟く。
ソニアは嘘の笑顔を貼り付けたまま何も喋らない。
ソニアは知っている。
シルヴィアが気にしない様にと心掛ければ心掛ける程、逆に意識して普段通りのシルヴィアでなくなることを。
ソニアは分かった上で、街へ出掛ける前日に話したのだ。
遅かれ早かれシルヴィアとレイフォードは結ばれる。
だが、まだ心情的にレイフォードを許す事が出来ない。
もう少し。
もう少しだけ。
自分勝手な思いを恥じる。
だが、ソニアには願わずにはいられなかった。
主を無垢な姫のままで、と。
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