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7章
信じる事
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「こんな気持ち初めてなんだ。
あの夜からずっと、誰かを想い焦がれるなんて、俺にはある筈がないと思っていた。
直ぐに手の平を返して裏切る女達を沢山見てきた。
あの病の時もそうだった。
あの時に居た・・・、いや、その場に居合わせた女は俺の状態を気味悪がった。」
あの時、レイフォードが別の女性の屋敷に滞在していたのは、
シルヴィアも知っているとゴードンから聞いたが、
己の愚行を口に出すのが憚られ、つい言葉を濁してしまった。
シルヴィアはそれに気付かず、それよりもあの時のレイフォードを思い出し、
悲痛な面持ちでレイフォードを見た。
「ですが、それはあの病の知識が無ければ仕方が無い事です。
誰だって未知の物は恐ろしい。
私は偶然あの病を知っていただけの事です。」
「だが、俺がシルヴィアの知らない病に罹っても君は放置などしないだろう?」
態とシルヴィアを試す様な発言をする。
勿論、シルヴィアがそうでない事を知っていながら。
「そんな事致しません!
未知の病だったとしても、必ず治療薬はある筈ですもの。
絶対に見つけ出してみせます!」
シルヴィアは語彙を強める。
レイフォードは自分の望む様な言葉を紡ぐシルヴィアを、愛おしくも苦しい感情で見つめる。
「シルヴィアならそうするだろうな。
だが、他の女は違う。
俺がどうなろうと構いはしないのさ。
そりゃあそうだ、俺の事を本当に思っていないのだから。」
シルヴィアはレイフォードの瞳が悲哀に満ちている様に感じて、レイフォードの手を握り返す。
「そんな事無いです。レイフォード様の事をお慕いしている方は沢山居らっしゃいます。」
レイフォードと街を歩いていた時、レイフォードを熱の篭った目で見つめている女性が何人も居た事を、
シルヴィアは知っている。
レイフォードが人目を惹く容姿である事も、優しい事も知っているシルヴィアにしてみれば、
それは当然の事だが、分かっていても胸が締め付けられる気持ちは抑えられなかった。
だから、その気持ちを振り払うかのように、敢えて明るく振舞った。
「そんな俺の上っ面だけ見ている女、俺は必要としていない。」
シルヴィアはビクリと肩を震わせる。
レイフォードの声が一瞬で冷えたものに変わったからだ。
そしてそのおかげか、今の状況を冷静に把握する事が出来た。
「!!??レイフォード様!お立ちになってください。
あ、いいえ、こちらの椅子に座ってください。」
レイフォードはずっとシルヴィアの前で跪いていたのだ。
自分だけ椅子に座っている。
何て失礼な事をしてしまったのか、慌ててシルヴィアはレイフォードに席を譲る為、
立ち上がろうとするが、グイッと腕を引かれてバランスが崩れる。
「あっ。・・・・!」
小さな悲鳴を漏らす。
だが、直ぐに言葉を失う。
レイフォードに倒れ込む形で抱き留められていた。
「レイフォード様、あの・・・。」
「・・・俺は、シルヴィアだけが居ればいい。
シルヴィアだけだ。他の女なんて要らない。
どうか、君の口から他の女がどう思っているかなんて言わないくれ。」
「あ・・・。申し訳ございません・・・。」
シルヴィアは離れようとしたが、そうはさせまいとレイフォードが腕に力を篭める。
自分の愛しいと思う女性が、他の女が自分を慕っていると言われる事の歯痒さ。
彼女には分からないだろう。
シルヴィアは勘違いとは言え、レイフォードに他に好きな人がいると思い、
身を引こうとしたのだから。
「・・・している。」
「え?」
シルヴィアは聞き返す。
レイフォードは絞り出す様な声で告げる。
「愛しているんだ。」
シルヴィアは、はっ、と声が漏れる。
「本当に愛している。
離れているだけで、胸が焼かれるように痛い。
シルヴィアの笑顔を見られるだけで、この上ない幸福感を感じる事が出来る。
もう駄目なんだ。
シルヴィアが居なくなる事を想像するだけで、気が狂いそうになる。」
シルヴィアはまた夢かと思ったが、レイフォードの篭める力の強さに夢ではないと感じる。
「君が俺から離れると言った時、
目の前が真っ暗になった。
絶望・・・という気持ちなのだろうな。
あんな思い二度と味わいたくない。」
「レイフォード様・・・。」
シルヴィアを抱き締めるレイフォードの体は震えていた。
シルヴィアは堪らず、レイフォードの背中に腕を回す。
レイフォードの腕が更に強くシルヴィアを抱き締める。
「離れて行かないで欲しい。もう誰かに裏切られるのは嫌なんだ。」
(ああ、レイフォード様の心の傷はまだこんなにも深い。)
実母に受けた仕打ちがレイフォードを苦しめているのかと思うと、
シルヴィアは胸が痛む。
レイフォードの背を摩りながら、優しく伝える。
「レイフォード様。あの時は私の勘違いで、レイフォード様が他の方をお好きだと思っていましたので、
レイフォード様のお幸せを考え、身を引こうと思いましたが、
私はあの夜に申し上げたように、レイフォード様のお側から離れません。」
レイフォードは腕の力を緩め、シルヴィアを見つめる。
シルヴィアは頬を紅色に染めてで笑う。
「だって、レイフォード様が私の事をお好きだと仰って下さったのに、
どうして離れる事が出来るのでしょう?
私もレイフォード様の事、大好きですもの!
嫌だと言っても、離れませんわ。」
レイフォードは胸が詰まる。
シルヴィアの笑顔に心臓が鷲掴みにされたようだ。
「ああ!シルヴィア!!」
胸の高鳴りを抑えきれず、またシルヴィアを強く抱き締める。
「きゃあ!」
流石に声を上げてしまうシルヴィア。
構わず、レイフォードはシルヴィアの肩に顔を埋める。
「シルヴィア、愛している。
俺の方こそ、シルヴィアが嫌だと言っても、絶対に離さないからな。」
「えええ!?私、嫌だなんて言いませんよ?」
「いいや、シルヴィアは言っている。
現に今だって、離れようとしているじゃないか。」
密着している状況に恥ずかしさから身じろぎしているシルヴィアを、
レイフォードは不満げな表情で責める。
「そ、それは・・・。」
好きな人に触れられるのは嬉しいのだが、
シルヴィアは今まで家族位しか、このような接し方をした事が無い。
免疫が無いのに、こうも抱き着かれると、
どうしても恥ずかしさが勝ってしまう。
レイフォードが分かりやすく不機嫌になる。
シルヴィアはどうしたらいいか考える。
ふと、ジュードやソニアに言われた事を思い出した。
「あ、あのレイフォード様?」
「・・・何だ?」
レイフォードはシルヴィアを離すつもりは無いらしく、
抱き締めたままシルヴィアの声に答える。
「あの、人前でこの様な事をしてはいけないとお父様に言われましたの。
ソニアにも淑女は男性にみだりに触れ合わないと。
レイフォード様に、以前・・・ええと、陛下の前で抱き締められた時に、
そう言われて、私はあれは演技だから、もうあんな事は無いって言ったのですが。」
レイフォードはシルヴィアの体から僅かに顔を離す。
「私もあの時、恥ずかしがった態度を取ってしまったので、
二人は私を心配して言ってくれたのだと思います。」
レイフォードは口元が引き攣った。
そういえばあの時のレイフォードの行動を、シルヴィアは演技だと思ったままだった事を思い出した。
更にはジュードとソニアがシルヴィアにそんな事を言っていたなんて。
「シルヴィア?言っておくが、あれは演技では無いからな?」
「え!?」
シルヴィアは大きく目を見開く。
「いや、それはそうだろう?俺はもうあの時にはシルヴィアの事を好きだったのだぞ?
好きな女が他の男に触れられているのを黙って見ている訳無いだろう?」
「え?あ、はい、そう、ですか?」
未だ自覚の無いシルヴィアに軽い頭痛がする。
こうなったら強硬手段だと、シルヴィアの顎に手を添えて、妖しく微笑む。
「・・・・もう、あんな事は無いってシルヴィアは言ったが、
想いが通じ合った二人なら、問題無いよな?」
「はえ?え?レイフォード様?な、にを?」
「口付けても?」
「な、ど、どうして!?」
目に見えて慌てふためくシルヴィア。
レイフォードはお構いなしに顔を近づける。
「どうして?俺達は夫婦だろ?口付けするのにどうしても無いだろう?」
「ちょ、ちょっと待って下さい!私、人前でこんな事、って言いましたよね!?」
「ん?誰も居ないぞ?」
シルヴィアの反抗を軽く躱す。
「誰も!?え?あら?さっきまで確かに・・・。」
レイフォードが人払いをしておいた。
「誰も居ないから問題ないだろう?」
「そ、そういう事では!!」
どんどん顔を近づけるレイフォード。
シルヴィアは最後の抵抗と手でレイフォードの体を制する。
シルヴィアの手を自分の手で握り込む。
そうしてまた美しく微笑む。
「シルヴィアは俺とこういう事、したくないのか?」
「こ、こういう事?」
「口付けして、それ以上の事も。」
「え?あ・・・。レイフォード様はしたいのですか?」
「したい。」
即答するレイフォード。
好きと自覚したら、もうシルヴィアに触れたくて触れたくて堪らない。
「私は、傍に居られるだけで・・・、良かったので、
そ、そこまで考えていなくて。
だから、まだ心の準備が・・・、出来ていなくて・・・。」
必死に言い募る。
あまりにも必死なシルヴィアが流石に可哀想に思えて来た。
レイフォードは溜息を吐く。
「・・・分かった。シルヴィアは慣れていないからな。
俺だけの欲を押し付けてシルヴィアに嫌われたくない。」
「!」
シルヴィアはレイフォードが引いてくれたと思い、
パッと顔を輝かせる。
その瞬間、レイフォードはシルヴィアの唇を軽く啄む様な口付けをする。
「これで我慢する。」
そう言って、とびきりの笑顔を見せる。
シルヴィアは最初、何が起こったか分からなかったが、
徐々に自分の唇に触れたのが、レイフォードの唇だと自覚し、
顔がボウンと爆発音と共に、真っ赤に茹で上がり、そのまま意識を手放した。
あの夜からずっと、誰かを想い焦がれるなんて、俺にはある筈がないと思っていた。
直ぐに手の平を返して裏切る女達を沢山見てきた。
あの病の時もそうだった。
あの時に居た・・・、いや、その場に居合わせた女は俺の状態を気味悪がった。」
あの時、レイフォードが別の女性の屋敷に滞在していたのは、
シルヴィアも知っているとゴードンから聞いたが、
己の愚行を口に出すのが憚られ、つい言葉を濁してしまった。
シルヴィアはそれに気付かず、それよりもあの時のレイフォードを思い出し、
悲痛な面持ちでレイフォードを見た。
「ですが、それはあの病の知識が無ければ仕方が無い事です。
誰だって未知の物は恐ろしい。
私は偶然あの病を知っていただけの事です。」
「だが、俺がシルヴィアの知らない病に罹っても君は放置などしないだろう?」
態とシルヴィアを試す様な発言をする。
勿論、シルヴィアがそうでない事を知っていながら。
「そんな事致しません!
未知の病だったとしても、必ず治療薬はある筈ですもの。
絶対に見つけ出してみせます!」
シルヴィアは語彙を強める。
レイフォードは自分の望む様な言葉を紡ぐシルヴィアを、愛おしくも苦しい感情で見つめる。
「シルヴィアならそうするだろうな。
だが、他の女は違う。
俺がどうなろうと構いはしないのさ。
そりゃあそうだ、俺の事を本当に思っていないのだから。」
シルヴィアはレイフォードの瞳が悲哀に満ちている様に感じて、レイフォードの手を握り返す。
「そんな事無いです。レイフォード様の事をお慕いしている方は沢山居らっしゃいます。」
レイフォードと街を歩いていた時、レイフォードを熱の篭った目で見つめている女性が何人も居た事を、
シルヴィアは知っている。
レイフォードが人目を惹く容姿である事も、優しい事も知っているシルヴィアにしてみれば、
それは当然の事だが、分かっていても胸が締め付けられる気持ちは抑えられなかった。
だから、その気持ちを振り払うかのように、敢えて明るく振舞った。
「そんな俺の上っ面だけ見ている女、俺は必要としていない。」
シルヴィアはビクリと肩を震わせる。
レイフォードの声が一瞬で冷えたものに変わったからだ。
そしてそのおかげか、今の状況を冷静に把握する事が出来た。
「!!??レイフォード様!お立ちになってください。
あ、いいえ、こちらの椅子に座ってください。」
レイフォードはずっとシルヴィアの前で跪いていたのだ。
自分だけ椅子に座っている。
何て失礼な事をしてしまったのか、慌ててシルヴィアはレイフォードに席を譲る為、
立ち上がろうとするが、グイッと腕を引かれてバランスが崩れる。
「あっ。・・・・!」
小さな悲鳴を漏らす。
だが、直ぐに言葉を失う。
レイフォードに倒れ込む形で抱き留められていた。
「レイフォード様、あの・・・。」
「・・・俺は、シルヴィアだけが居ればいい。
シルヴィアだけだ。他の女なんて要らない。
どうか、君の口から他の女がどう思っているかなんて言わないくれ。」
「あ・・・。申し訳ございません・・・。」
シルヴィアは離れようとしたが、そうはさせまいとレイフォードが腕に力を篭める。
自分の愛しいと思う女性が、他の女が自分を慕っていると言われる事の歯痒さ。
彼女には分からないだろう。
シルヴィアは勘違いとは言え、レイフォードに他に好きな人がいると思い、
身を引こうとしたのだから。
「・・・している。」
「え?」
シルヴィアは聞き返す。
レイフォードは絞り出す様な声で告げる。
「愛しているんだ。」
シルヴィアは、はっ、と声が漏れる。
「本当に愛している。
離れているだけで、胸が焼かれるように痛い。
シルヴィアの笑顔を見られるだけで、この上ない幸福感を感じる事が出来る。
もう駄目なんだ。
シルヴィアが居なくなる事を想像するだけで、気が狂いそうになる。」
シルヴィアはまた夢かと思ったが、レイフォードの篭める力の強さに夢ではないと感じる。
「君が俺から離れると言った時、
目の前が真っ暗になった。
絶望・・・という気持ちなのだろうな。
あんな思い二度と味わいたくない。」
「レイフォード様・・・。」
シルヴィアを抱き締めるレイフォードの体は震えていた。
シルヴィアは堪らず、レイフォードの背中に腕を回す。
レイフォードの腕が更に強くシルヴィアを抱き締める。
「離れて行かないで欲しい。もう誰かに裏切られるのは嫌なんだ。」
(ああ、レイフォード様の心の傷はまだこんなにも深い。)
実母に受けた仕打ちがレイフォードを苦しめているのかと思うと、
シルヴィアは胸が痛む。
レイフォードの背を摩りながら、優しく伝える。
「レイフォード様。あの時は私の勘違いで、レイフォード様が他の方をお好きだと思っていましたので、
レイフォード様のお幸せを考え、身を引こうと思いましたが、
私はあの夜に申し上げたように、レイフォード様のお側から離れません。」
レイフォードは腕の力を緩め、シルヴィアを見つめる。
シルヴィアは頬を紅色に染めてで笑う。
「だって、レイフォード様が私の事をお好きだと仰って下さったのに、
どうして離れる事が出来るのでしょう?
私もレイフォード様の事、大好きですもの!
嫌だと言っても、離れませんわ。」
レイフォードは胸が詰まる。
シルヴィアの笑顔に心臓が鷲掴みにされたようだ。
「ああ!シルヴィア!!」
胸の高鳴りを抑えきれず、またシルヴィアを強く抱き締める。
「きゃあ!」
流石に声を上げてしまうシルヴィア。
構わず、レイフォードはシルヴィアの肩に顔を埋める。
「シルヴィア、愛している。
俺の方こそ、シルヴィアが嫌だと言っても、絶対に離さないからな。」
「えええ!?私、嫌だなんて言いませんよ?」
「いいや、シルヴィアは言っている。
現に今だって、離れようとしているじゃないか。」
密着している状況に恥ずかしさから身じろぎしているシルヴィアを、
レイフォードは不満げな表情で責める。
「そ、それは・・・。」
好きな人に触れられるのは嬉しいのだが、
シルヴィアは今まで家族位しか、このような接し方をした事が無い。
免疫が無いのに、こうも抱き着かれると、
どうしても恥ずかしさが勝ってしまう。
レイフォードが分かりやすく不機嫌になる。
シルヴィアはどうしたらいいか考える。
ふと、ジュードやソニアに言われた事を思い出した。
「あ、あのレイフォード様?」
「・・・何だ?」
レイフォードはシルヴィアを離すつもりは無いらしく、
抱き締めたままシルヴィアの声に答える。
「あの、人前でこの様な事をしてはいけないとお父様に言われましたの。
ソニアにも淑女は男性にみだりに触れ合わないと。
レイフォード様に、以前・・・ええと、陛下の前で抱き締められた時に、
そう言われて、私はあれは演技だから、もうあんな事は無いって言ったのですが。」
レイフォードはシルヴィアの体から僅かに顔を離す。
「私もあの時、恥ずかしがった態度を取ってしまったので、
二人は私を心配して言ってくれたのだと思います。」
レイフォードは口元が引き攣った。
そういえばあの時のレイフォードの行動を、シルヴィアは演技だと思ったままだった事を思い出した。
更にはジュードとソニアがシルヴィアにそんな事を言っていたなんて。
「シルヴィア?言っておくが、あれは演技では無いからな?」
「え!?」
シルヴィアは大きく目を見開く。
「いや、それはそうだろう?俺はもうあの時にはシルヴィアの事を好きだったのだぞ?
好きな女が他の男に触れられているのを黙って見ている訳無いだろう?」
「え?あ、はい、そう、ですか?」
未だ自覚の無いシルヴィアに軽い頭痛がする。
こうなったら強硬手段だと、シルヴィアの顎に手を添えて、妖しく微笑む。
「・・・・もう、あんな事は無いってシルヴィアは言ったが、
想いが通じ合った二人なら、問題無いよな?」
「はえ?え?レイフォード様?な、にを?」
「口付けても?」
「な、ど、どうして!?」
目に見えて慌てふためくシルヴィア。
レイフォードはお構いなしに顔を近づける。
「どうして?俺達は夫婦だろ?口付けするのにどうしても無いだろう?」
「ちょ、ちょっと待って下さい!私、人前でこんな事、って言いましたよね!?」
「ん?誰も居ないぞ?」
シルヴィアの反抗を軽く躱す。
「誰も!?え?あら?さっきまで確かに・・・。」
レイフォードが人払いをしておいた。
「誰も居ないから問題ないだろう?」
「そ、そういう事では!!」
どんどん顔を近づけるレイフォード。
シルヴィアは最後の抵抗と手でレイフォードの体を制する。
シルヴィアの手を自分の手で握り込む。
そうしてまた美しく微笑む。
「シルヴィアは俺とこういう事、したくないのか?」
「こ、こういう事?」
「口付けして、それ以上の事も。」
「え?あ・・・。レイフォード様はしたいのですか?」
「したい。」
即答するレイフォード。
好きと自覚したら、もうシルヴィアに触れたくて触れたくて堪らない。
「私は、傍に居られるだけで・・・、良かったので、
そ、そこまで考えていなくて。
だから、まだ心の準備が・・・、出来ていなくて・・・。」
必死に言い募る。
あまりにも必死なシルヴィアが流石に可哀想に思えて来た。
レイフォードは溜息を吐く。
「・・・分かった。シルヴィアは慣れていないからな。
俺だけの欲を押し付けてシルヴィアに嫌われたくない。」
「!」
シルヴィアはレイフォードが引いてくれたと思い、
パッと顔を輝かせる。
その瞬間、レイフォードはシルヴィアの唇を軽く啄む様な口付けをする。
「これで我慢する。」
そう言って、とびきりの笑顔を見せる。
シルヴィアは最初、何が起こったか分からなかったが、
徐々に自分の唇に触れたのが、レイフォードの唇だと自覚し、
顔がボウンと爆発音と共に、真っ赤に茹で上がり、そのまま意識を手放した。
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