げに美しきその心

コロンパン

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6章

国王と鬼神

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「待ってたよー!!」

両手を広げてサリュエルがジュード目掛けて突進してくる。

ガッ。

サリュエルの頭を鷲掴み、抱擁を阻止する。

「・・・・用件は?」

「いたたたたたたた!!!!」

手に力を込める。
サリュエルが悲鳴を上げる。

パッと手を離すと、サリュエルは頭を摩りながら話す。

「どうだった?シルヴィアちゃんとレイフォード。」

「・・・・・・・・・・まさか、それだけじゃないだろうな。」

「え?それだけだけど。」




静寂が訪れる。



「譲位する息子は決まったか?」

すらりと剣を鞘から抜くジュード。

「え?まだだけど?」

「そうか、暫く王位が空席とはこの国の情勢が不安定になるなっ!!」

迷い無く剣をサリュエルの元へ、降り下ろす。

だが、サリュエルはひらりと身を翻し、
脱兎の如く逃げる。

「僕はまだまだ王位を譲る気は無いよー。」

「ふんっ・・・!」

「デューイ君がさ、なーんか怪しい雰囲気なんだよねぇ。」

サリュエルは逃げ込んだ柱の陰から顔だけ覗かせ、楽しそうな声で独り言のように呟く。

「・・・・・。」

ジュードは沈黙する。

「だからさ、あの二人がもたもたしていたら、結構ややこしくなるんじゃないかなあと、
僕にしてはすごーく親切心で、ジュードを呼んだつもりだけど。」

「・・・楽しんでいるだけだろう。」


気を静め、剣を鞘に戻す。
それを確認し、そろそろと柱の陰から出てくるサリュエルが先程とは打って変わって真剣な表情を見せる。


「正直な話、シルヴィアちゃんが他国へ渡るのはこちらとしても、避けたい案件だからね。
レイフォードがちゃんと繋ぎ留めて欲しいんだよ。」

ジュードは眉間を指で揉み、目を閉じる。

「仮に駄目だったとしても、僕の息子の奥さんにするとか対策は色々考えるけど、
シルヴィアちゃんはレイフォードの事、好きな訳だし、
レイフォードもシルヴィアちゃんに対して物凄く執着しているのは一目瞭然なのに、
なーんでくっつかないかなあー?」


「何度も言うようだが、お前の息子にだけは娘はやらん。」


「いや、対策の一つだから。」


ふうと一息吐き、ジュードはサリュエルを見据える。


「シルヴィアは兎も角、レイフォードはシルヴィアを手離さんだろう。
俺にも嫉妬の目を飛ばしてきたぐらいだからな。」


目を大きく見開き、

「鬼神の君に、そんな事したの?あの子。」

沈黙で肯定する。




「ふっふふふふふふふ。」


サリュエルは肩を震わせ、やがて大口を開けて笑い出す。


「あはははははは!!
凄いね!あの子!
鬼神にそんな目を向けるなんて!!
戦時下なら、一瞬で消し炭になっただろうに。」


「ふん。分別位弁えている。
する訳無いだろうが。」

不機嫌な様子でジュードは反論する。

「・・・少し灸を据えるだけだ。」

「ぶっくくくく。灸は据えるんだ。くくくく。」


腹を抱え、前のめりになり尚も笑い続けるサリュエルに、
静かな怒りを向ける。


それに気が付き、サリュエルも笑いを抑える様に口元に手を当てる。


「ごめん、ごめん。
それにしても、レイフォード。
大分揶揄い甲斐のある子になってしまったね。
シルヴィアちゃんのおかげかな?」


「どうだかな。」


ジュードはシルヴィアの居る屋敷の方角へ目線を遣る。



「取り敢えずは発破をかけて置いたが、どうなるかは二人次第だ。」


サリュエルは珍しい物を見る様な目でジュードを見る。


「レイフォードは元々飢えた男だった。与えられた物にしがみ付いているだけかもしれん。
それが良い形で昇華すれば、或いは。」


「随分と優しいね。」

穏やかな声でサリュエルは言う。


「レイフォードの事はどうでも良い。
シルヴィアがレイフォードを好きな内は、
それを叶えてやりたい。
俺としてはいつでも帰って来てくれてもいいのだがな。」

ぷっと吹き出すサリュエル。

「本当に子離れ出来てないねぇ、君は。」


フイと顔を剃らすジュードをニヤニヤと意地の悪い顔で見る。









「何にも起きないといいけどねえ。」


サリュエルの独り言にジュードは無言で同意した。









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