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コーデリア様はお優しい?
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「アイリ様、聞いてくれますか?
貴女の隣に座っている男はですね、本当にどうしようもない男なんです。」
私は我が耳を疑いました。
どうしようもない男、そう聞こえたのですが。
「好きな女性を前にしたら、緊張してまともに話す事が出来ない。
いざ話しても、威圧的な態度を取ってしまう意気地のない男なんですよ。」
「え、ええ?」
「で、そんな、なのに、その女性に近寄る男が居ないか、側近に監視させたり、実際に近寄って来た男を自分の身分に物を言わせて牽制したりしてるんですよ?」
「そ、そんな事を・・・?」
「男どころか、女性にも嫉妬したりして、本当にお可哀想で・・・。
お陰でその女性、この学園でもそうですが、親しいご友人も作れない始末。
それもこれもこの男の器の小さいせいです。
独占欲だけは人一倍で、ホントーにどうしようもない!!」
捲し立てる様に早口で話すコーデリア様に圧倒されて、私は相槌を打つ事で精一杯です。
先程も同じ様な事を仰っていた気がするのですが、殿下が恋い慕う方に想いを上手く伝える事が出来ていらっしゃらないと言う事ですか。
「そう、なのですね・・・。」
殿下にそんな一面をお持ちになっていたなんて意外でした。
私の返答がコーデリア様の意に添わなかったのか、複雑な表情をされて顔を手で覆われました。
「はああああああ・・・。
これだけ言っても気付いておいでで無いなんて・・・。」
「リア様?どうなさったの?」
どうすれば良いのでしょう。
コーデリア様にどう言えば正解なのでしょうか。
お言葉にされていない殿下の想い人。
それはやはり・・・
「想いを告げる事はとても大切だと思いますわ。
きっと、その方も殿下の想いを気付かないまま過ごされていますわ。」
そう言いながら、私も自分の想いを殿下に告げぬままです。
でも、別の方を想う殿下に私の想いは迷惑でしかない。
「そう、来ますか・・・・。」
リア様の呟き。
彼女を見ると引き攣り笑いをされています。
「殿下?私はもう知りませんし、出来る事もありません。
というか、何故アンタ黙ったままなんですか!!
自分の事ですよね?何で私がアンタの事をアイリ様に説明しないといけないんです?
どんだけ腑抜けなんですか!?」
増々不敬発言をなさるコーデリア様にはらはらします。
すぐ隣の殿下の様子を窺うと、
「で、殿下!?」
大変です。
お顔が、
真っ青で、今にも倒れそうです。
「大丈夫でございますか!?今、医師の方を・・・・。」
私は立ち上がり、部屋を出ようと扉へ向かいます。
「っ大丈夫だ!!」
殿下の声で私は立ち止まりました。
あんなに顔色が悪い殿下に声を張らせてしまった・・・。
私は俯き、扉に伸ばそうとした手を引っ込めました。
どうして、いつもこうなのでしょうか。
私は、いつも間違える。
殿下の事を考えているつもりが、空回り。
殿下を煩わせるばかり。
やるせない気持ちで胸が痛みます。
ドレスの裾を握り絞め、涙を堪えます。
「アイリーン、戻って来てくれ。」
不意に聞こえた殿下の穏やかな声。
思わず顔を上げ、殿下へ向き直ります。
「もう、大丈夫だから、俺の話を聞いてくれないか。」
私をご覧になる殿下の瞳はいつもの冷えた瞳ではなく、何かを覚悟した決意の瞳。
それが何であるのか私には分かりませんが、
向けられた事の無い瞳に、私の胸は酷く高鳴ります。
あのような瞳で見つめられた事が無かった。
ただ、それだけなのに、こんなにも。
こんなにも心が騒めく。
諦めようと、沈めようとした恋慕が浮上する。
声は出る、かしら?
早く応えなければ、また殿下のお気に障るもの。
「は、はい・・・・。」
自身でも分かる掠れた声。
嫌だ。みっともない。
恥ずかしい。
喉に手を当て、殿下の元へ近寄ります。
落ち着いて、落ち着いて。
歩を進める毎に自分に言い聞かせて、私は淑女であると。
取り乱す事はしてはいけない。
ソファに近づき、私は思案します。
先程、殿下の隣に座るべきか、コーデリア様の隣へ座るべきか。
そんな私を見越してか、
「私は言いたい事は言いましたので、後はお二人でお話しくださいね。」
コーデリア様が席を立ち、私の肩に触れ、彼女の座っていた場所へ誘導してくれました。
「リ、リア様!?」
行ってしまうの!?
殿下と二人きりなんて、とてもではないですが、お話出来る自信がありません。
縋る様にコーデリア様を見上げます。
「んんっ!その様なお顔をなさっては駄目ですって、言ったじゃないですか・・・。」
心細い顔をしていたのでしょうか。
顔を引き締め、コーデリア様に言い募ります。
「此処に、居て下さらないの?」
私の懇願も虚しく、コーデリア様はまた美しい笑顔を浮かべて、私の耳元で囁きます。
「婚約者同士の睦言に部外者が居るのは無粋でしょう?
殿下に想いを伝える良い機会じゃないですか?」
ドレスを翻し、コーデリア様は部屋を退室されました。
貴女の隣に座っている男はですね、本当にどうしようもない男なんです。」
私は我が耳を疑いました。
どうしようもない男、そう聞こえたのですが。
「好きな女性を前にしたら、緊張してまともに話す事が出来ない。
いざ話しても、威圧的な態度を取ってしまう意気地のない男なんですよ。」
「え、ええ?」
「で、そんな、なのに、その女性に近寄る男が居ないか、側近に監視させたり、実際に近寄って来た男を自分の身分に物を言わせて牽制したりしてるんですよ?」
「そ、そんな事を・・・?」
「男どころか、女性にも嫉妬したりして、本当にお可哀想で・・・。
お陰でその女性、この学園でもそうですが、親しいご友人も作れない始末。
それもこれもこの男の器の小さいせいです。
独占欲だけは人一倍で、ホントーにどうしようもない!!」
捲し立てる様に早口で話すコーデリア様に圧倒されて、私は相槌を打つ事で精一杯です。
先程も同じ様な事を仰っていた気がするのですが、殿下が恋い慕う方に想いを上手く伝える事が出来ていらっしゃらないと言う事ですか。
「そう、なのですね・・・。」
殿下にそんな一面をお持ちになっていたなんて意外でした。
私の返答がコーデリア様の意に添わなかったのか、複雑な表情をされて顔を手で覆われました。
「はああああああ・・・。
これだけ言っても気付いておいでで無いなんて・・・。」
「リア様?どうなさったの?」
どうすれば良いのでしょう。
コーデリア様にどう言えば正解なのでしょうか。
お言葉にされていない殿下の想い人。
それはやはり・・・
「想いを告げる事はとても大切だと思いますわ。
きっと、その方も殿下の想いを気付かないまま過ごされていますわ。」
そう言いながら、私も自分の想いを殿下に告げぬままです。
でも、別の方を想う殿下に私の想いは迷惑でしかない。
「そう、来ますか・・・・。」
リア様の呟き。
彼女を見ると引き攣り笑いをされています。
「殿下?私はもう知りませんし、出来る事もありません。
というか、何故アンタ黙ったままなんですか!!
自分の事ですよね?何で私がアンタの事をアイリ様に説明しないといけないんです?
どんだけ腑抜けなんですか!?」
増々不敬発言をなさるコーデリア様にはらはらします。
すぐ隣の殿下の様子を窺うと、
「で、殿下!?」
大変です。
お顔が、
真っ青で、今にも倒れそうです。
「大丈夫でございますか!?今、医師の方を・・・・。」
私は立ち上がり、部屋を出ようと扉へ向かいます。
「っ大丈夫だ!!」
殿下の声で私は立ち止まりました。
あんなに顔色が悪い殿下に声を張らせてしまった・・・。
私は俯き、扉に伸ばそうとした手を引っ込めました。
どうして、いつもこうなのでしょうか。
私は、いつも間違える。
殿下の事を考えているつもりが、空回り。
殿下を煩わせるばかり。
やるせない気持ちで胸が痛みます。
ドレスの裾を握り絞め、涙を堪えます。
「アイリーン、戻って来てくれ。」
不意に聞こえた殿下の穏やかな声。
思わず顔を上げ、殿下へ向き直ります。
「もう、大丈夫だから、俺の話を聞いてくれないか。」
私をご覧になる殿下の瞳はいつもの冷えた瞳ではなく、何かを覚悟した決意の瞳。
それが何であるのか私には分かりませんが、
向けられた事の無い瞳に、私の胸は酷く高鳴ります。
あのような瞳で見つめられた事が無かった。
ただ、それだけなのに、こんなにも。
こんなにも心が騒めく。
諦めようと、沈めようとした恋慕が浮上する。
声は出る、かしら?
早く応えなければ、また殿下のお気に障るもの。
「は、はい・・・・。」
自身でも分かる掠れた声。
嫌だ。みっともない。
恥ずかしい。
喉に手を当て、殿下の元へ近寄ります。
落ち着いて、落ち着いて。
歩を進める毎に自分に言い聞かせて、私は淑女であると。
取り乱す事はしてはいけない。
ソファに近づき、私は思案します。
先程、殿下の隣に座るべきか、コーデリア様の隣へ座るべきか。
そんな私を見越してか、
「私は言いたい事は言いましたので、後はお二人でお話しくださいね。」
コーデリア様が席を立ち、私の肩に触れ、彼女の座っていた場所へ誘導してくれました。
「リ、リア様!?」
行ってしまうの!?
殿下と二人きりなんて、とてもではないですが、お話出来る自信がありません。
縋る様にコーデリア様を見上げます。
「んんっ!その様なお顔をなさっては駄目ですって、言ったじゃないですか・・・。」
心細い顔をしていたのでしょうか。
顔を引き締め、コーデリア様に言い募ります。
「此処に、居て下さらないの?」
私の懇願も虚しく、コーデリア様はまた美しい笑顔を浮かべて、私の耳元で囁きます。
「婚約者同士の睦言に部外者が居るのは無粋でしょう?
殿下に想いを伝える良い機会じゃないですか?」
ドレスを翻し、コーデリア様は部屋を退室されました。
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