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私には良心は無いのです

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「見つけた~。」

間延びした声で私を呼ぶデイヴィッド。
あの後、吹っ飛んだパイソンタイガーを回収する為、三人で手分けして探した。
見つけたパイソンタイガーは全てにおいて昏倒していたので、そこまで苦労せずに済んだ。
正直此処まで吹っ飛ぶものなのかと疑問が残る。
何故そう思ったか、私は自分にしか強化魔法を掛けていなかったからだ。デイヴィッドには何の処置も施していないのだ。ん?何でデイヴィッドに掛けなかった?そりゃ、その方が楽しそうだからだよ!!でも、結果はデイヴィッドは無傷でパイソンタイガーだけが被害にあったという訳だ。

「ん?何?ミリアム。俺の顔何か付いてる?」

半眼でデイヴィッドを睨んでいると、デイヴィッドが首を傾げながら私に問い掛けた。

「何で君は無事なのかなぁと思ってさ。」

「?」

更に首を傾げる。

「こんだけパイソンタイガーが吹っ飛ぶ位の衝撃だったのに、デイヴィッド、かすり傷一つ付いてないじゃない。ほら、見なよ。パイソンタイガーそこらかしこに陥没した痕があるよね。これ、デイヴィッドと衝突した所でしょ?こんだけ凹んでるのに何で君は何もなってないのよ。」

そう、パイソンタイガーは胴体やら頭やらが吹っ飛んだ衝撃以外で損傷している。明らか靴の跡だと分かる形で陥没しているので、デイヴィッドの物だ。なのにデイヴィッドはこの通りぴんしゃんしている。解せぬ。
考え込んだ後、ああ!!と声を上げたデイヴィッドは自分の腕を強めに叩きながら笑う。

「そうそう!俺、何かさ、幾ら攻撃されても怪我しないんだよ!言うの忘れてた。」

「はい?」

「?怪我しないんだよ、俺。」

「はい?」

「ん?だから、攻撃されても怪我しないの。」

「・・・・・。」

攻撃されても怪我をしない。強化魔法を使わないでそんな事があるのだろうか。私が沈黙しているとデイヴィッドが説明する様に話す。

「物心付いてからなんだけどさ、気付いたのは友達と遊んでて階段から落ちた時なんだよ。一番上から、あ~ええと結構高かったな、で、そこから落ちたんだけど、頭から。」

「え、頭から?」

「うん。頭から。」

またデイヴィッドの脳細胞が・・・。

「違う事心配してるな。まぁ、いいけど。で、流石に大怪我したかなぁと思ったけど、かすり傷一つ無かったんだよな。血も出てないし、その時は運が良かったなと思って、そのままにしてたんだ。それから冒険者になってモンスターと戦っている内に、モンスターの攻撃を受けても傷が付かないから、あれ、と思ったんだよ。」

凄いなぁ~、階段から落ちて、それも頭から、怪我しなかったのを運が良いで済ませて疑問を抱かないなんて。

「それを俺がお前の体おかしいって言ったんですよ。何か運が良いのかなで片付けようとするんでね、デイヴィッドは。」

そらそうなるわな。セイさんは正しい。半ば呆れた顔のセイさんを見て私は大きく頷いた。デイヴィッドは後頭部をガシガシ掻きながら首を傾げる。

「え~、そんなにおかしいか?」

「「おかしい。」」

セイさんとハモった。

「セイは兎も角ミリアムに言われたくない。」

何故!抗議の目をデイヴィッドに向ける。そんな目を気にする様子もなくデイヴィッドはニコニコ笑う。

「だって魔法を変な事に使ってるし、全属性の魔法も使えるんだろ?しかも、魔王、だし?」

「魔王は確定要素では無いのだが?全属性はバカが勝手に付与したんだから、私のせいではない。」

「ああ!それだよ!俺もそれかも!!」

「それとは?」

今度は私が首を傾げる。

「そのバカ様がくれたチートってやつなんじゃないか?俺が怪我しないの!」

ああ。そうかもしれない。だが、デイヴィッドよ、バカ様って、バカに様付けても何も敬意示してないから。もう、私に感化されて、バカの事を軽く見てしまって、あれでも一応神様らしいんだよ?一応。まぁ、敬意を抱かない神様も居ると知れたが。あのアリスでさえ、アイツ見て引いてたしな。





「んもうっ!!!!!」


???
空耳か?
デイヴィッドを回しすぎて疲れたのか。

「ちょっと!!!」

また聞こえる。余程疲れている様だ。今日は早めに寝るとするか。

「わざとでしょ!!本当に性格悪いんだから!!この悪役令嬢!性悪!」

晩御飯は捕まえたパイソンタイガーを豪快に焼いてもらおう。肉ってのはそのまま焼くのが一番美味しいと思うんだよね。ハンバーグよりもステーキが好きだわ。何か肉食ってる!!て感じがするから。考えたらお腹空いてきた。

「根性悪!!悪魔!!意地悪!!・・・ええと・・・、」

「デイヴィッド、セイさん。もう依頼も達成したことだし、帰りましょうか。私はお腹が空きました。」

デイヴィッドとセイさんに帰宅を促す。デイヴィッドは含みのある笑みで頷くが、セイさんは顔面が真っ青で引き攣って私の後ろを見たまま固まっている。私の後ろに何があると言うのだろう。怖いなぁ。お化けとか嫌いなのにな。

「馬鹿ぁ・・・、無視しないでよぅ・・・、んもうぅ・・・・。」

流石にやり過ぎた・・・・・・・と全く思わないので、私はそのままスタスタ歩いていく。デイヴィッドは何も言わず横を歩き、セイさんはしきりに後ろを見ながら歩く。
後ろ、ずびずびと鼻をすする音が付いて来る。というか付いてくるのかよ。

「なぁ、ミリアムさん・・・。あの人、人なのか?一体・・・。」

セイさんが堪り兼ねて私に聞いてくる。優しいなぁセイさんは。デイヴィッドみたいに放っておけばいいのに。こういう時のデイヴィッドは私と同じ考えなのよね。面倒臭そうなのには関わらない。セイさんの方を向いて横目で後ろを確認する。まぁアイツにこの思考も読めているから、案の定パァッと鼻水でぐしゃぐしゃの顔を輝かせる。
う~ん、どうにも相手をしたくない。

「知らない人です。」

「ぶはっ!!」

隣でデイヴィッドが噴き出した。

「ひどいいいいいいい!!!!」

知らない人が顔を両手で覆って咽び泣いた。セイさんは更にオロオロと私と知らない人とで視線を彷徨わせる。デイヴィッドは腹を抱えて笑うだけ。

「いや、知らなくは無いだろう?絶対知り合いだろ?そんな酷い事言わずにちゃんと相手してやれよ。」

「ええ~。」

「ええ~、じゃなくてさ・・・。」

面倒臭いこの上ない。

「うううううううううぅぅ!!」

うわぁ、セイさんが援護してくれたから、これ見よがしに泣き真似してやがる。

「ほら、見ろ!あんなに泣いてるじゃないか!!」

「セイさん、騙されやすいって言われませんか?」

「え?」

「あれ嘘泣きですよ。」

「ええ!?」

ぎくりと肩を震わせて、さっきまで大泣きしていた奴がピタリと止む。

「人を騙しておいて、どちらが性悪なのか。」

大きな溜息が出た。すると、ペロリと舌を出して奴は笑う。

「だぁって!ずっと私を無視するのがいけないんだもん!!」

素でもんとか使う奴なんか無視するでしょうよ。関わり合いたくない。

「え?ええ!?ど、どういう・・・。」

セイさんが分かり易く狼狽している。私はセイさんの肩にポンと手を置く。

「セイさん、そんなんでよくデイヴィッドに言い寄る女を撃退してましたね・・・。」

特攻タイプの女しか居なかったのか、最初に出会ったセイさんは何処にいったのか。

「それだけ私の演技が巧かったって事さ!」

取り敢えずコイツは後だ。

「んもう!!」

私はコイツを指差して心底嫌そうな顔で言う。

「セイさん、コイツが諸悪の根源の神様っていうやつですよ。」

もう一度言う。心底嫌そうな顔をした。

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