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これは正に

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お昼ご飯である。
銀華さんの葡萄と自分の重箱を携え、アリスの席に行く私と銀華さん。

「何処で食べる?」

「何処にしよう?」

私とアリスは考える。
アリスは銀華さんの方を見て言う。

「銀華さんが興味ある場所で食べるというのは、どうでしょう?」

「妾の?」

キョトン顔の銀華さん。
おお、良い考えですな!

銀華さんは腕を組み、考えている。

「ふむ。何処でも良いのかえ?」

私とアリスは頷く。

「ならば、この館の頂上で食べるとしようかの。」

「ち、頂上!?」

アリスの声が裏返る。

頂上、という事は屋根?
また予想だにしない場所が出たなぁ。

「駄目かえ?
今日の様な空が美しい日に、妾は日光を浴びるのが何よりの楽しみでの。
この館の頂上ならばさぞ気持ちよかろうて。」

気持ちは分かる。
ご飯食べて、ぽかぽか陽気で寝るとか最高。

ただ・・・。

アリスが震えておる。
そういや、前に言ってたような・・・。

「アリス、高い所大丈夫?」

念の為確認してみる。

「う・・・。少し怖い。」

「何じゃ。お主、高所は不得手かの?」

アリスは小さく頷いた。

「何か、落ちた事を想像すると怖くて・・・。」

少し蒼褪めたアリスはそう言った。
確かに高層ビルとかの際に立って、眼下を眺めたら下腹部辺りがひゅんってなるよね。
此処で落ちたらどうなるんだろうって考えちゃう。

すると銀華さんは鼻で笑って、

「そのような余計な心配せずとも、妾が居るのだから落ちる事は無い。
お主は空の美しさを知らぬのだな。一度知るとそんな恐れなど吹き飛ぶ。」

ちょっとムッとしたアリスは銀華さんに噛みつく。

「私は只の人間ですから、ドラゴンの様に飛べないんで!
高い所から落ちたら大怪我どころか、下手をしたら死んじゃうんです!!
貴女が助けてくれたとしても、落ちる瞬間は絶対怖いです。」

そう言い放ってプイと顔を横に逸らすアリスの可愛い事。
今、確実に私の鼻の舌はデレエと伸びている事だろう。

「ああ、そうだったの。人間は妾の思うておる以上に呆気なく壊れる。
ましてお主の様に脆弱な体では、妾が少し力を入れるだけで、その首は圧し折れるであろうの。」

くすくすと悪戯気に笑う銀華さん。
アリスは飛び上がり私の背に隠れる。
私はふうと息を吐く。

「銀華さん、アリスが可愛いからって虐めないで下さい。」

「なに、この娘の振る舞いが妾の子によう似ておっての。つい、な。」

何だと!子供が居たのか!?
ああ、でも、そらそうか。
何百年も生きるドラゴンだもんな。
しかも伴侶も居るのなら、当然子供も居るだろう。

「アリスに似ているって事は、娘さんですか?!」

「お、おお?いや、似ておる子は雄じゃの。」

「そうですか・・・・。」

「お主、あからさまに落ち込みよって。」

ええ?アリス似のドラゴンさんって言われたら、女の子って期待しちゃうじゃないか。
男かぁ・・・。

「振る舞いが似ているだけであって、風貌がその娘に似ているとは申しておらんぞ。」

そう言って銀華さんは私の背後に回り、アリスに近づく。
アリスの頭にポンと手を乗せ、優しく撫でる。

「こう、妾に噛みつく姿がの、似ておる。
愛ごいのぅ。」

アリスは何だか複雑な顔だ。
口元がヒクヒクとしていて、眉尻が下がっている。
喜んでいるのか、悲しんでいるのか。

「まぁ、いずれ会ってみたいですねぇ。」

「その内に顔を出すであろうて。」

実家に顔を出す感覚かな?
ドラゴンさんに家というのがあるのかは分からない。
しかも今、私の家に居候してるしな。

「時折、妾の首を取りに来るでの。」

凄く恐ろしい事をサラリと言いのけた銀華さん。
何処の一子相伝の話?
何の気も無く先にスタスタと歩いて行く銀華さんに私と二人は大人しく付いて行った。
屋根飯は決定事項の様だ。
私はアリスの耳元で囁く。

「私も居るので、アリスを落とす様な事はしないから、安心してよ。」

「・・・うん。」

アリスは小さく頷く。





さて、場面が変わって、此処は屋根です。

「ふうむ。些か物足りぬが、致し方無いのぅ。」

葡萄を頬張りながら、寝転がる銀華さんは少し不満を漏らしながら空を眺めていた。
アリスは最初だけ不安な表情を見せていたが、直ぐに落ち着き持参のお弁当を食べる。
私はと言うと。

「これは、両手に花が如実に体現されていると言っても過言ではない。
ふぐうううう!!ああ、言いたい!!
覇王の台詞を、今此処で言いたい!!!」

「駄目だからね。」

私の左にアリス、右に銀華さんと、可愛い、綺麗に挟まれて食べる弁当の美味い事、美味い事。
私の中の荒ぶるヲタク魂が全力で叫びたがっているんだ!!
そんな葛藤を見越して、アリスが素早く鎮火活動に精を出す。

「馬鹿な事言ってないで、早くお弁当食べちゃいなよ。
午後からは実技の授業なんだから。」

「へぇだ。」

「それは返事なの?」

おお、怖い。アリスの冷えた目が突き刺さるぜ。
素早くご飯をかっ込んで、銀華さんに倣って私も寝転ぶ。

滅茶苦茶、いい天気。
このまま惰眠を貪りたい。

しかし、一応学徒である身。
キチンと授業を受けて、ササッと卒業して、夫と再会して冒険者になるんだ!

「おお、この後は何をするのだ?」

興味津々の銀華さんにアリスはもう慣れたのだろう、普通に答える。

「魔法の実技です。まぁ、初歩的な授業なんで、銀華さんは少しつまらないかもしれないですね。」

「んふふ。そんな事は無いぞ?人間の魔法の程度が如何程かを知れるしの。
じゃが、お主はまだ使えんのでは無かったか?」

「使えなくても、見てるだけでも勉強になります。」

揶揄う銀華さんにも負けじと反論する。
お嬢さん方が文句を言って来た時も、受けて立ってたもんな。
この子は強い子だ。

はっ!
何か親みたいな目線で見てしまった。

実際前世の年齢なら親子でも通る歳の差だし。

「そうかえ、そうかえ。ほほほ。」

アリスが何を言っても愉快そうに笑う銀華さん。
銀華さんも我が子を見る目をしている。
私は天下一のドヤ顔(それでも無表情だから:アリス)を見せる。

「銀華さん。」

「何じゃ?」

「うちの子可愛いでしょ?」

「そうじゃの。じゃが、妾からしてみればお主も愛い。」

「おっほ・・・。」

銀華さんの愛情深い瞳にヤられる所だった。
はぁ、美女の魅力堪らんです!!
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