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んふ、ぬふ

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「セラフィナ、久しいの。」

学園に着き、セラフィナさんに会いに学園長室へ。
ノックもせずに開口一番の銀華さんの言葉。
まぁ、人間のマナーなんて銀華さんには関係ないからね。

「お久し振りです。お元気そうで何よりです。」

中々フランクな挨拶のセラフィナさん。
私が言えた義理では無いが。

「うむ。坊もだが、お主もほんに大きゅうなって。」

銀華さん、親目線入ってるな。
そら、長生きだもんな。

「うふふ、銀翼様にしてみたら、私は可愛い子供でしか無いですからね。
これでも一応、子等を導く教育者の地位なんですけどね?」

私を見て、ウインクし悪戯気に笑うセラフィナさん。
うへぇ!!
美しエルフに微笑まれましたぜ!?

「うえへへへ。そうでげすね。セラフィナさんは美しい学園長様ですだ。」

ああ、いかん。
思わず三下の子悪党みたいな台詞を吐いてしまった。

セラフィナさんもは?みたいな顔してる。

「おほん。」

漫画に思わず二次元っぽく咳払いをしてしまった。
そのまま美しい笑顔(本人談)でセラフィナさんに言います。

「私の問題行動を容認してくれるとても寛容な方です。」

セラフィナさんがビクリと肩を震わせる。
え?褒めたのに何故?

銀華さんはごふっと噴き出してから笑い出すし。

「ミリアムよ。念の為に問うが、それは笑っておるのだな?」

「?それ以外何が?」

「・・・ミリアムちゃん・・・。」

銀華さんもセラフィナさんも憐みの目で私を見る。
そんなに、そんなになのか。
私の笑顔はそんなにアレなのか・・・・。

二人共が私の肩に手を置き、顔を横に振る。
ドンマイとでも言いたげな表情だ。

同情は止めてくれ!
気にしてないのに居たたまれなくなるだろ!!

「・・・私の本気の笑顔はアリスが他人に披露してはいけないと言われてるので。」

「・・・ほう・・・。」

あれ?銀華さんのいつもの麗しい声が1オクターブ低いのは何故?

「のう、ミリアム。」

「・・・はい。」

壮絶な色気を纏った銀華さんが私に詰め寄る!!
ひえっ!
男に迫られるのは虫唾が走るけど、女性に、しかも最高に美しい女性に迫られるのは大変嬉し・・・困るのだ!
こう・・・危ない気持ちに・・・・なりません!
断固たる意思!
No!不倫!浮気、駄目、絶対!

そんな私の心の葛藤を知る由もなく、更に距離を詰めてくる銀華さん。

「妾には見せるのであろうな?その本気とやらを。」

「見せたいのは山々なんですがねぇ。」

銀華さん、すぅと目を細めるとか、何かもう悪い事企んでる人みたいだから止めて下さい。
麗しい人の悪人顔とかご褒美でしかないから。

「いや、そんな怖い顔で凄まれても。銀華さん知ってるでしょう?私が笑顔作れないの。」

私がそう言うと、はた、と銀華さんは首を傾げ何やら考え込む。

「おお、そうだったの。あの者と話していた時に申しておったの。」

思い出した!みたいな顔で私を見る。
良かった、いつもの銀華さんに戻った。
私は頷く。

「だから、自分で意図していない時の笑顔がそうみたいなんで、やりたくても出来ないんですよ。」

何回も言うが、自然な笑顔ってどうやるんだろうな~。
夫に
『ちょっと笑ってみて?』
って言われて満面の笑みを浮かべたら、

『それ、俺達が今やってるゲームの殺人者のお面の顔じゃん・・・。』

『うっそ!そんな酷かった?』

『うん。それが笑顔って、もうサイコパスだよ。』

笑顔がサイコパスとか聞いたこと無いわ。
ほんと、私が菩薩だからって言いたい放題で困ってしまうよね?

え?
え?

「ふう・・・。」

私がノスタルジックな気持ちでいると、

「済まぬ。誰しも得手不得手があると聞いた事がある。出来ぬ事を無理にさせるのは酷であろう。」

「いいんです。私の表情筋が著しく欠如しているのが駄目なんです。」

銀華さんに気を遣わせてしまった。

「そうね。貴女には沢山魅力的な所があるのだから、欠点の一つ位あってもおかしくないわよ。」

セラフィナさんにもフォローされた。しかも欠点って言われた。
ふふふ。その評価、甘んじて受けよう。
少ししょんぼりした風を装ったら、お二人に頭をなでこ、なでこされた。
やったぜ!!
終始大人のお姉さん達に慰められる私にしては癒し空間だった。




セラフィナさんとの話も終わり、銀華さんと教室へ。

あ、アリスが居た。
私に気付いたアリスが近づく。

「おはよう、ミリアム。」

そう可愛らしい笑顔で挨拶してくれるアリス。
可愛いなぁ。

「可愛いなぁ・・・。」

「はっ!?」

あ、心の声が。
アリスの顔が固まってる。

「おはよう、アリス。」

何事も無かったかのように挨拶を返す。

「・・・・・・・。」

アリスは無言で私を睨・・・見つめる。

「お主がミリアムの言うアリスじゃの。」

微妙な空気を物ともせず、銀華さんがアリスに話しかける。
アリスは銀華さんを見て、ギョッとした顔になる。
その後、一気に顔が真っ赤になった。

「は、はい!!アリスです。えと、その。」

銀華さんに問われ、たどたどしく返事するアリス。
その様子にニンマリしている私。
そうだろう、銀華さんの美しさが想像を遥かに超えているから、驚いたのだろうて。

銀華さんも物珍しそうな顔でアリスを眺める。
眺めれば眺める程、アリスは縮こまって、もう首無くなるんじゃないかって位、肩を竦めてる。
仕方ない。そろそろ助けてあげましょう。

「アリス、この人が話してた銀華さんです。」

まぁ、分かっているだろうけど一応。
アリスも首振り人形の様に何回も頷いている。
銀華さんはずっとアリスを凝視したままだ。
どうしたのかな?

私は銀華さんを見る。
すると、銀華さんは私に視線を遣り、ふっと笑う。

「お主はほんに、面妖な者を引き寄せるのぅ。
持たぬ者まで組しておるとは。」

「持たぬ者?」

何かしら?
私は首を傾げると、アリスはハッとした顔をする。
え。アリスは分かるの!?




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