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ご報告

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ギルドへ向かう道中、銀華さんは私の事、夫の事を根掘り葉掘り聞き出した。

「ほ、ほほほほ。ほんにミリアムは面白い。
いや、お主等はかの、ミリアムの話が真実であるならば。
妾も会うてみたくなったわ、ミリアムの番を。」

はっ!?
ミリアムの中の結愛が囁く。
これは、禁断のフラグが立つのでは、と。
折っておかねば!!

「銀華さん、幾ら銀華さんでも夫にちょっかいをかけるのであれば、刺し違えてでも私は闘う覚悟ですよ?」

先手必勝。

「ほ。」

銀華さんが目を真ん丸と見開く。
切れ長なのになんでそんなに大きく目が開くのだろう。
不公平さを感じる。

「ほほほほほほ!!!
ミリアムよ、お主、妾に嫉妬したのかえ?
ドラゴンである妾に!?
何と面白い!ほほほほ!!」

笑い事じゃねえぞ!
ドラゴンだろうと女であるには変わらないでしょうが!

「だって、銀華さんはとても綺麗だから。
もし、誘惑されたら幾ら夫でも・・・。」

「ほーほほほほ!!ドラゴンと人間じゃぞ!!万に一つも無いわ!!」

「いや、種族とか関係ないですよ。綺麗な存在は綺麗なんです。」

私は銀華さんの余りの笑い様に不貞腐れながら言う。
そうすると銀華さんは太陽を見る様な目で私を見つめる。

「ふふふふふ。安心せい。妾は言うたであろう?万に一つも無いと。
ミリアムが番を持っている様に、妾も番がおるからの。
他の雄に靡く事も、色を使う事も無いわ。」

うえ?
・・・うえ?

「銀華さん、伴侶が居るんですか?」

さも当然の様な顔をする。

「うむ。居るぞ。
ドラゴンは番うたら、他の者とは関係は持たぬ。」

それ、何て素敵!?
本当に番システムじゃん!
え?でも?

「ドラゴンの番とか、一時も離れたくないとかそういうメカニズムじゃないんですか?
前世の漫画とかでよく見ましたけど。」

私の話に興味深そうな顔をする銀華さん。

「めかにずむ?奇天烈な言葉じゃな。
・・・面白いのう。全く交わらぬ世界で妾達の生態が知られておるなんての。」

銀華さんにはここが前世で作られた乙女ゲームの世界だという事は伏せておいた。
何となく、怒りそうだから。

「じゃがの。妾達古龍種はその生態を克服しておる。」

「克服。」

弱点みたいに言ったな。
大きく頷く銀華さん。

「ドラゴンという物は、自由が基本じゃ。
じゃが、番となると話は別。
魂の半身と言うても過言ではない。
ミリアムの言う通り、離れる事は身を引き裂かれる程に辛い。
妾達エンシャント種を含む一部は例外なのじゃ。
知能が高い故にその番の本能を理性で抑える事が出来る。」

「では、離れていても、ある程度は大丈夫なんですね。」

「そうじゃ。
じゃからと言って、他の雄や雌に粉を掛ける事はせん。」

「なるほど。」

「それに妾達は、ほれ。」

銀華さんの白い腕からうっすらと羽の様なものが出現する。

「会おうと思えば直ぐに会えるからの。」

確かに銀華さんのあの大きな翼があれば、どこに居ようと飛んで行ける。

「いいなぁ。」

本心からそいう言うと、銀華さんが私の頭をポンポンと軽く触れる。

「ミリアムが望むのであれば、お主の番の所まで連れて行ってやっても良いぞ?」

「恐ろしく魅惑的な提案ですが、我慢します。・・・・あ!」

ふと気になった私は声を出してしまった。

「どうした?」

「デイヴィッドさん、今ドラゴンの撃退に行ってるんですけど、まさか銀華さんの番とかいうオチではないですよねぇ・・・?」

不機嫌になる銀華さん。

「お主、妾の話を聞いておったか?
お主の番はエンペラー種の撃退じゃろう?
あのような野蛮な種が妾の番な訳が無かろう。
妾の番は、同じエンシャント種じゃ。」

「そうですよね。ごめんなさい。」

言うんじゃなかった。

「全くじゃ。」

直ぐに謝ったのが良かったのか、機嫌が直ったみたいだ。
ああ、良かった。

「銀華さんの番さんは、今何処に?」

「さあて、此処よりずっと北の地でふらふらしておるのではないかの?
まぁ、暫くしたら帰ってくるじゃろうて。」

「ほえ~。」

本当に自由な感じだな。

「おい。ギルドに着いたぞ。」

銀華さんと話していたら、一瞬で着いた。



ギルドに入る。
それまで騒がしかったハンター達は私達の姿を確認すると、静まり返る。

凄く注目されている。
気まずい事この上無い。


「エンシャントドラゴンの依頼、終了しました。」

私は受付のお嬢さんに、村長さんから貰った依頼達成の証書を渡す。
お嬢さんは驚愕の眼でそれを受け取り、内容を確認する。

「た、確かに達成を確認致しました。
ですが、こんなに早いとは・・・。」

「自分でも余りにもあっさりと解決するとは思いませんでした。」

啞然としているお嬢さんに私は抑揚なく喋る。

「それは妾が御しやすいという事かの?」

私の背後の肩口からひょこりと顔だけ覗かせて銀華さんが唇を尖らせる。

「いや、そういう訳では。」

「ミ、ミリアムさん?その方は・・・?」

受付のお嬢さんが、恐る恐るという感じで私に聞いてくる。
さて、どうしたもんか。
どう言えば良いか考えていると、銀華さんはさらりと言う。

「ん?妾は件のエンシャントぞ?お主らの依頼通りにあすこから移動してやったのだ。」

部屋中で緊張が走る。
ある者は臨戦態勢の構えを取る。
駄目だろ。
銀華さんに殺気とか向けたら、殺されるぞ?

歯牙にもかけない銀華さんはカラカラと笑う。

「妾はミリアムが気に入ったのじゃ。
暫くの間ミリアムの住処に住まう事にしたのじゃ。」

「はっ!?えっ!?それは一体どういう・・・。」

パニックに陥るお嬢さん。
そうだよねぇ。
ドラゴンが人間の家に住むって言うんだもんねぇ。


「どういう事だ?」

「エンシャント種が人間の家に?」

「ありえない・・・。」

「そもそも、何故エンシャントドラゴンが人間に?」

「魔力が強いからって変身出来るなんて聞いたことないぞ。」


さわさわし出した。
どうしようかな。

「ええと、あの、一応。あの村から移動してもらったので、別に問題は無いと思ったのですが、
私の家に住むのは駄目?ですか?」

人間の姿だし、銀華さんは無闇矢鱈に悪さをしないだろうし。

「え、あ、ああ。ええと・・・。私では何とも・・・。」

「大丈夫だ。そのお方は思慮深い。」

上からの声。
ロランバルトさんだ。

「おお、坊か。久しいの。」

「・・・その呼び方は止めてくださいと言っているじゃないですか。」





あれ?知り合い?



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