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重過ぎる愛情

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結愛へ。

今の名前が分からないから、前の名前で書いてみた。

神様という変な人が、結愛がこの世界に居るって言っていたけど、本当に居たんだな(笑)

結愛とよく一諸に観ていた異世界転生が自分もなるなんて、面白かった。

すぐに会いに行こうと思ったら、
緊急クエストが入って、しばらくかかると思う。

俺の代わりにセイという男にこの手紙を結愛に渡してもらうように頼む。

もう時間が無いので、宿の人にセイに渡してもらうように伝えたから、多分結愛に届くはず。多分。

あと、セイの金を持って行ったままなので、もし大丈夫なら金を少し貸してあげてほしい。

セイは俺と二人で冒険している友達だから、
大丈夫だ。

結愛はまた変なもう想をするだろうけど、
俺とセイはそんな事無いから、残念だったな。

帰ってきたら、連絡します。


クリスタルは無限かもしれないけど、
お金は無限じゃないからね。


デイヴィッド









「また、字間違えてるよな。
しかも妄想という漢字分からなかったかー。」

「どうしたの?」

苦笑いを浮かべる私が気になって、
私の肩に顎を乗せるアリスに、内心悶えながら平静を装う。


「いやね、彼の手紙なんですが。」

私はアリスに手紙を渡す。

「え、いいの?私が読んでも。」

「ん?ああ、いいですよ。」

あっけらかんと言う私に、アリスは

「駄目な気がするんだけどな。あ、日本語なんだ。」

と、ブツブツ言いながら、手紙を読む。







「別にそこまで気にする事でも無いわね。まぁ、漢字が間違っているのがあったけど。
流石旦那さん、ミリアムの性格を分かってるからか、先手を打ってきたわね。」

何の事やら知らない振りをして誤魔化す。

「この字なんですけどね、前も間違えてたんです。
で、また間違えてるんです。
多分私が言った事を忘れてるんです。
まぁ、らしいな、と思いまして。」


その当時を思い出して、ふふふと笑う。

アリスはまたポッと顔を赤くする。
本当にミリアムの顔が好きなのだな。

「旦那さんの事になると、感情が豊かになるよね、ミリアムは。」

「ん?そうですか?」

アリスはプウッと頬を膨らませる。
可愛いなあ!もう!

「そうよ!他の人と線引いてる感じがする。」

「あー。まぁ、それはありますねぇ。」

アリスが自分の事を結構見てくれている。
純粋に嬉しい。

「・・・私とかにもさ、未だに敬語だしさ。
何か、他人行儀っぽいっていうか。
それが、少し寂しい。」

唇を尖らせながら、俯くアリス。

「ぐうっ・・・・!」

私は胸を押さえて蹲る。
アリスも慌ててしゃがみ込む。


「ミリアム!?どうしたの!気分でも悪いの?」

「・・・・苦しい。」

「え!?」

「アリスが可愛くて苦しい。」

「・・・・は?」

何なんだ、この可愛い生き物は!
私の心臓の機能を停止させにきているのか!?

美少女の拗ね顔とか、破壊力あり過ぎるだろ!!
拗ねてる内容も内容なだけに、可愛すぎにもほどがある。


「何言ってんの?」

一転、恐ろしいほどの白け顔になるアリス。
表情のバリエーション豊富だね!

胸を押さえながら、私はアリスに確認する。

「私、好きな人にはすごーく、すごーく執着する人間なんですよ。
それが鬱陶しいと感じる人が多くて、自分で此処までって決めているんです。」

「なんとなく分かる。旦那さんの執着心半端ないもんね。」

「で、それが同性のお友達だとしても適用されるんですね。
アリスはもうそのカテゴリーの中に片足突っ込んでるんですよ。」

「あ、うん。」

「アリスに嫌われたら嫌だなぁ、と思って、自分で止めてるんです。
だから、一度それを取り外せば大分ウザい私になりますが、
アリスはそれでも良いですか?」

「・・・・・・。」

アリスは考え込む。
考え込むのか、そこは。

夫はもう悟りの境地に至っていたから、私が何してこようが、うんうんと頷いて、全てを許容してくれた仏の様な人だったからなぁ。

居ないだろうな、そんな特殊な人。


「・・・ミリアムの粘着性が強いのは分かってるから、私は気にしてないの伝わらなかった?」

「え!?そうだったんですか!気づきませんでした・・・。」

「自分に向けられる感情に疎いよね。」

「うっ。痛い所を突いてきますね。」

自分は好きだと愛情を向けるが、他人に好きだと言われても信じないという面倒臭い性格の私。
アリスがそう思ってくれていても、やはり怖い。

「私だって、ミリアムが違う女の子と仲良くしてると、モヤモヤするし、
私にくっついてくれるのも・・・・、嫌じゃないわ。
だから、ミリアムも私に敬語を使わないで。」

「・・・!!アリス!大好き!!!」


ガバッとアリスを抱き締める。
ずっと女の子の友達が欲しかった。
何でも言い合える友達が。

私の背中をポンポンと宥める様に軽く叩くアリス。

「ほら、人前だから、ちょっと落ち着きなさい。」

そう、此処はセイさんを連れて、自分の家に帰る途中の道なのだ。

普通に人が行き交う中、自分で言うのもなんだが、
見目麗しい少女二人が抱き合っている光景は、中々に異様であろう。

通りすがりの全員が二度見してくる。

アリスから離れ、ジッと見つめる。

「もうアリスから離れる事は出来ないから、覚悟してね。」

この時の私の顔は、アリスから聞いた話では恐ろしく妖しげな微笑みだったそうで、

「の、望む所よ。」

顔が真っ赤に染まったアリスは、そう返すのが精一杯だったそうだ。












「俺は・・・何を見せつけられているんだろう・・・・。」


全く存在を忘れられていたセイさんが遠い目をして呟いていた。






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