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名案だから褒めてください、アリス。
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『ねえ、もしこのアニメみたいに転生するなら、何に転生したい?』
『え?うーん?』
『何か無いの?王子とか、魔術師とか。』
『いや、王子は無いな。』
『じゃあ、何に転生したい?』
『うーん、なりたいって言われてもなあ、まぁ、強いて言うなら・・・。』
「これは・・・。何処の国の文字なのだろうか?」
ロランバルトさんは私の書いた紙をじっくり眺めて首を傾げる。
ロランバルトさんの反応を見て、アリスもその紙を見る。
そして、ハッとした顔で私を見る。
私はニヤリと笑う。
「ミリアム、これって・・・!」
「そうです。これは日本語です。」
「・・ニホンゴ?」
ロランバルトさんは眉を寄せる。
全く聞いた事の無いフレーズだろう。
「この文字は、私達が前世で使用していた文字です。
【平仮名】、【片仮名】、【漢字】という文字を組み合わせて文章を作ります。」
「複雑だな。」
ロランバルトさんはそう言いつつも、目は爛々と輝いている。
自分の知らない知識を知りたくて堪らない、そういう顔をしている。
ロランバルトさんに日本語を教えるのは後にして、先に本題を伝える。
「これをギルドの依頼ボードに貼って欲しいのです。」
「そうか!日本語で書いてある張り紙なんて、私達みたいな転生者じゃないと分からないもんね!」
アリスは謎が解けたという様な晴れ晴れとした表情で私に笑いかける。
はぁ、可愛いと(恐らくこれから言い続ける)にやけそうになるのを堪え、話を続ける。
「アリスの言う通り、この張り紙は日本語を知っている人間でないと読むことは出来ないでしょう。
この世界には存在しない言語ですから。
この偽の依頼に反応した人が居れば、私に教えて欲しいのです。」
「なるほど、それは妙案だな。」
ロランバルトさんは感心する。
「因みにこの依頼の内容は何て書いてあるんだ?」
あー、それ聞いちゃいます?聞いちゃいますよね。気になりますもん。
「まぁ、夫に宛てたラブレターみたいなもんです。」
私が言うと、アリスはぎょっとした表情をする。
アレがラブレターか?という顔だ。
アリスの顔に気付かなかったみたいで、
ロランバルトさんは、
「そうか・・・。」
と、少し同情的な表情をして、それ以上の追求はしてこなかった。
「では、早速今日にでも貼り出すとしよう。
反応した人間が現れたら直ぐに連絡する。」
「ありがとうございます。」
私とアリスは部屋を出る。
そしてまた鼻を摘まんで一階を早足で通り抜け外に出る。
「あれがラブレターなの?」
開口一番アリスが私に呆れた目を向ける。
「まぁ、夫なら分かるかなと。」
そう、別にラブレターではない。
夫と私だけが分かる内々の話だ。
「私は何となく分かるけど、ミリアム・・・。
アンタ、どんだけ注ぎ込んだの?」
半眼で私を見るアリス。
「え?何の事でしょう?」
私はとぼける。
「よく、旦那さん怒らなかったわね・・・。」
「え?怒りを通り越して悟りの境地でしたよ?」
アリスははあああああと長い溜息を吐く。
「旦那さんに同情するわ。」
「えええ?この名案、褒めてくれないんですか?」
おかしいな?褒めてくれると思っていたアリスが全く褒めてくれない。
「案自体は良いと思うけど、内容が。」
「内容も彼でしか分からない筈です!」
ドンと胸を張る。
諦めたのか、私の頭をおざなりに撫でるアリス。
いでで、もっと優しく撫でで。
禿げちゃうから。
さて、と。
取り敢えず、これで暫く様子見で良いだろう。
「アリス、帰りますか。」
「そうね。」
私達は家路に着く。
「今日は何か依頼更新されてるかな?」
「どうだろうな。」
二人の青年がギルドへ足を踏み入れる。
二人が入ると、一瞬空気が変わる。
気にする事の無い二人は、依頼ボードまで歩む。
「あ!何か新しい依頼張り出されてるぞ。
ん?何だこれ?これ、何語だ?おい!デイヴィッド!これ、見てみろよ。」
「何だ?」
「これ!何語かわかんね?」
「・・・・!!」
デイヴィッドと呼ばれる男は、依頼ボードにある一枚の張り紙を見て目を見開く。
「・・・・・ははっ。まだ、言ってる。
無限じゃないよ。有限だからね?」
「・・・デイヴィッド?」
「いや、気にしないでくれ。この依頼受けるよ。」
「お前、読めるのか!?」
「ああ。すみません、この依頼なんですが。」
相変わらずだな。本当に。
『え?うーん?』
『何か無いの?王子とか、魔術師とか。』
『いや、王子は無いな。』
『じゃあ、何に転生したい?』
『うーん、なりたいって言われてもなあ、まぁ、強いて言うなら・・・。』
「これは・・・。何処の国の文字なのだろうか?」
ロランバルトさんは私の書いた紙をじっくり眺めて首を傾げる。
ロランバルトさんの反応を見て、アリスもその紙を見る。
そして、ハッとした顔で私を見る。
私はニヤリと笑う。
「ミリアム、これって・・・!」
「そうです。これは日本語です。」
「・・ニホンゴ?」
ロランバルトさんは眉を寄せる。
全く聞いた事の無いフレーズだろう。
「この文字は、私達が前世で使用していた文字です。
【平仮名】、【片仮名】、【漢字】という文字を組み合わせて文章を作ります。」
「複雑だな。」
ロランバルトさんはそう言いつつも、目は爛々と輝いている。
自分の知らない知識を知りたくて堪らない、そういう顔をしている。
ロランバルトさんに日本語を教えるのは後にして、先に本題を伝える。
「これをギルドの依頼ボードに貼って欲しいのです。」
「そうか!日本語で書いてある張り紙なんて、私達みたいな転生者じゃないと分からないもんね!」
アリスは謎が解けたという様な晴れ晴れとした表情で私に笑いかける。
はぁ、可愛いと(恐らくこれから言い続ける)にやけそうになるのを堪え、話を続ける。
「アリスの言う通り、この張り紙は日本語を知っている人間でないと読むことは出来ないでしょう。
この世界には存在しない言語ですから。
この偽の依頼に反応した人が居れば、私に教えて欲しいのです。」
「なるほど、それは妙案だな。」
ロランバルトさんは感心する。
「因みにこの依頼の内容は何て書いてあるんだ?」
あー、それ聞いちゃいます?聞いちゃいますよね。気になりますもん。
「まぁ、夫に宛てたラブレターみたいなもんです。」
私が言うと、アリスはぎょっとした表情をする。
アレがラブレターか?という顔だ。
アリスの顔に気付かなかったみたいで、
ロランバルトさんは、
「そうか・・・。」
と、少し同情的な表情をして、それ以上の追求はしてこなかった。
「では、早速今日にでも貼り出すとしよう。
反応した人間が現れたら直ぐに連絡する。」
「ありがとうございます。」
私とアリスは部屋を出る。
そしてまた鼻を摘まんで一階を早足で通り抜け外に出る。
「あれがラブレターなの?」
開口一番アリスが私に呆れた目を向ける。
「まぁ、夫なら分かるかなと。」
そう、別にラブレターではない。
夫と私だけが分かる内々の話だ。
「私は何となく分かるけど、ミリアム・・・。
アンタ、どんだけ注ぎ込んだの?」
半眼で私を見るアリス。
「え?何の事でしょう?」
私はとぼける。
「よく、旦那さん怒らなかったわね・・・。」
「え?怒りを通り越して悟りの境地でしたよ?」
アリスははあああああと長い溜息を吐く。
「旦那さんに同情するわ。」
「えええ?この名案、褒めてくれないんですか?」
おかしいな?褒めてくれると思っていたアリスが全く褒めてくれない。
「案自体は良いと思うけど、内容が。」
「内容も彼でしか分からない筈です!」
ドンと胸を張る。
諦めたのか、私の頭をおざなりに撫でるアリス。
いでで、もっと優しく撫でで。
禿げちゃうから。
さて、と。
取り敢えず、これで暫く様子見で良いだろう。
「アリス、帰りますか。」
「そうね。」
私達は家路に着く。
「今日は何か依頼更新されてるかな?」
「どうだろうな。」
二人の青年がギルドへ足を踏み入れる。
二人が入ると、一瞬空気が変わる。
気にする事の無い二人は、依頼ボードまで歩む。
「あ!何か新しい依頼張り出されてるぞ。
ん?何だこれ?これ、何語だ?おい!デイヴィッド!これ、見てみろよ。」
「何だ?」
「これ!何語かわかんね?」
「・・・・!!」
デイヴィッドと呼ばれる男は、依頼ボードにある一枚の張り紙を見て目を見開く。
「・・・・・ははっ。まだ、言ってる。
無限じゃないよ。有限だからね?」
「・・・デイヴィッド?」
「いや、気にしないでくれ。この依頼受けるよ。」
「お前、読めるのか!?」
「ああ。すみません、この依頼なんですが。」
相変わらずだな。本当に。
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