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淑女の嗜み
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さてさて、そんなこんなで、
教室に着いても、お嬢様達の熱視線で、
私の顔はきっと日焼けしてしまう事だろう。
目立たずという最初の目標が脆くも崩れ落ちて、
この教室で一番注目を浴びる事となりました。
どうも、ミリアムです!
今凄く、恐くてガタガタ震えています。
え?見えない?
表情が無のせいです。
本当に恐いです。
何でって?
お嬢様達の肉食獣の瞳で私を見ているからですよ。
どうも、私に話しかけようと機会を窺っているらしく、
お前、行け。いやいやお前行けよ的なアイコンタクトを、
お互いに送っていらっしゃるのです。
お陰で少し移動しようものなら、ホーミングレーザーの様に、お嬢様達の視線も私を追尾してくる。
普通に話し掛けてくれたらいいのに・・・。
さて、学園に入って私はとても重要な事に気が付いた。
それは、
授業を全く受けていない。
というか、授業ってあった?
授業という授業がまともにあった試しがない気がする。
なので、今日はちゃんと授業を受けようと思う。
座学かと思ったら実地だった。
しかも男女混合の武術の訓練のようだ。
私としては大歓迎の授業だ。
この世界の貴族のお嬢様達は武闘派なのかな?
動きやすい体操着ならぬ、ドレスに着替えて訓練場に向かう。
武闘派では無かった。
男達の訓練を見るという何とも・・・・うん、どう言えばいいか分からない授業だ。
意気込んで着替えたのはどうやら、私だけだった。
私は、訓練場の端に居たアリスの元へ行く。
「どうしたのその服。」
アリスが怪訝な顔で下から上へ私の服を見る。
「いや、武術の訓練と聞いたので動きやすい恰好をと思って。」
「ああ、ゲーム知らないから、そうなるわね。
一応これ、ウルフィン様のイベントで、彼の武術をヒロインが見るっていう。」
「ああ、なるほど。」
何が悲しくて、自分が参加できない武術を見学しなければならないのかと思っていたら、
そういう事でしたか。
「うーん、私としてはこの授業に参加したいのですが・・・。」
もうやる気満々だっただけに、がっかり感が半端ない。
「え。剣術よ?危ないわよ。」
アリスが心配そうに見る。
「大丈夫ですよ。この世界の剣術に凄く興味があるんです。」
「え?何か習ってたの?」
「居合とか剣道とか、武道系は嗜む程度に。」
「・・・・。」
前世の私は刀の美しさに魅了されて、少しでも刀に触れたい一心で色々な習い事をした。
元来のヲタクの塊である私は、ある程度のレベルに到達するまではとことんやり切った。
しかし本当に嗜む程度だ。
実戦とかはきっと無理だろう。
「何か、元からスペックが高くない?」
「いえいえ、齧った程度ですから、全くそんな事はないです。」
アリスの半眼ににこにこ笑う。
「ミリアム嬢!俺の鍛錬を見に来たんだろ?」
この空気の読まない声。
振り向きたくないが、どうせ反応しなければずっと付き纏われるだろうと思ったので、
正直に答える事にしよう。
「いいえ、ウルフィン様。私は鍛錬の参加しようと思っていたのですが、
女性は参加できないと今聞いて、帰ろうとしている所です。」
「ははは!君が!?参加するのか!
まさか、そんな細い腕で?面白い冗談だ!!」
ほ。カチンと来ましたよ。
私、カチンと来ました。
「・・・私は冗談は言いませんが・・・。」
低めの声で言う。
「君の様なお嬢様がこんな重い剣を持てるわけないだろう。
冗談にしか聞こえないぞ。」
「やってみなければ分からないでしょう?」
「やってみなくても分かるさ。」
この人は何回も私を苛つかせるな。
「やってもいないのに、決めつけるのは良くないですよ。
貴方に勝ってしまうかもしれないでしょう?」
「はははは!!それこそ本当に冗談だ!!
俺は騎士団長の息子だぞ!
この学園の中で一番の実力がある。」
一番ねぇ、脳筋枠だからか。
ならば。
「では、貴方に勝てば、私がこの学園で一番強くなりますね。」
ウルフィンの眉が釣り上がる。
「・・・面白くない冗談だな。」
「冗談は言わないと言いましたよ、私は。」
「本気か・・・?」
「はい。私と勝負してくれますか?」
「俺は女性と言えど、手加減はしないぞ。」
「勿論ですよ。負けた時に手加減をしたからだと言われても困りますからね。」
「ふっ!!言ってくれる。
いいだろう!そこまで言うのなら、勝負しようじゃないか。
俺が勝ったら、ミリアム嬢!俺と婚約してもらうとしよう。」
「いいでしょう、その代わり私が勝てば、私の事は諦めてくださいね。」
ウルフィンは絶対に自分が勝つという自信に満ち溢れている。
安い挑発に乗ってくれた。
これで自分の事を諦めてくれたら、少しは動きやすくなる。
「ミ、ミリアム・・・。」
不安げな顔で私を見るアリス。
私は不敵に笑う。
「大丈夫ですよ、アリス。私は負けませんから。」
そう言って、壁に掛けてある剣を取る。
何回か振ってみる。
よし、良い感じだ。
久しぶりの感覚にニンマリする。
「いつでもいいぜ。」
ウルフィンは構えもせずに言う。
いいだろう。
君には早々に脱落してもらう。
私は柄をぎゅっと握る。
そして、足に力を入れて、
ウルフィン目掛け踏み込んだ。
教室に着いても、お嬢様達の熱視線で、
私の顔はきっと日焼けしてしまう事だろう。
目立たずという最初の目標が脆くも崩れ落ちて、
この教室で一番注目を浴びる事となりました。
どうも、ミリアムです!
今凄く、恐くてガタガタ震えています。
え?見えない?
表情が無のせいです。
本当に恐いです。
何でって?
お嬢様達の肉食獣の瞳で私を見ているからですよ。
どうも、私に話しかけようと機会を窺っているらしく、
お前、行け。いやいやお前行けよ的なアイコンタクトを、
お互いに送っていらっしゃるのです。
お陰で少し移動しようものなら、ホーミングレーザーの様に、お嬢様達の視線も私を追尾してくる。
普通に話し掛けてくれたらいいのに・・・。
さて、学園に入って私はとても重要な事に気が付いた。
それは、
授業を全く受けていない。
というか、授業ってあった?
授業という授業がまともにあった試しがない気がする。
なので、今日はちゃんと授業を受けようと思う。
座学かと思ったら実地だった。
しかも男女混合の武術の訓練のようだ。
私としては大歓迎の授業だ。
この世界の貴族のお嬢様達は武闘派なのかな?
動きやすい体操着ならぬ、ドレスに着替えて訓練場に向かう。
武闘派では無かった。
男達の訓練を見るという何とも・・・・うん、どう言えばいいか分からない授業だ。
意気込んで着替えたのはどうやら、私だけだった。
私は、訓練場の端に居たアリスの元へ行く。
「どうしたのその服。」
アリスが怪訝な顔で下から上へ私の服を見る。
「いや、武術の訓練と聞いたので動きやすい恰好をと思って。」
「ああ、ゲーム知らないから、そうなるわね。
一応これ、ウルフィン様のイベントで、彼の武術をヒロインが見るっていう。」
「ああ、なるほど。」
何が悲しくて、自分が参加できない武術を見学しなければならないのかと思っていたら、
そういう事でしたか。
「うーん、私としてはこの授業に参加したいのですが・・・。」
もうやる気満々だっただけに、がっかり感が半端ない。
「え。剣術よ?危ないわよ。」
アリスが心配そうに見る。
「大丈夫ですよ。この世界の剣術に凄く興味があるんです。」
「え?何か習ってたの?」
「居合とか剣道とか、武道系は嗜む程度に。」
「・・・・。」
前世の私は刀の美しさに魅了されて、少しでも刀に触れたい一心で色々な習い事をした。
元来のヲタクの塊である私は、ある程度のレベルに到達するまではとことんやり切った。
しかし本当に嗜む程度だ。
実戦とかはきっと無理だろう。
「何か、元からスペックが高くない?」
「いえいえ、齧った程度ですから、全くそんな事はないです。」
アリスの半眼ににこにこ笑う。
「ミリアム嬢!俺の鍛錬を見に来たんだろ?」
この空気の読まない声。
振り向きたくないが、どうせ反応しなければずっと付き纏われるだろうと思ったので、
正直に答える事にしよう。
「いいえ、ウルフィン様。私は鍛錬の参加しようと思っていたのですが、
女性は参加できないと今聞いて、帰ろうとしている所です。」
「ははは!君が!?参加するのか!
まさか、そんな細い腕で?面白い冗談だ!!」
ほ。カチンと来ましたよ。
私、カチンと来ました。
「・・・私は冗談は言いませんが・・・。」
低めの声で言う。
「君の様なお嬢様がこんな重い剣を持てるわけないだろう。
冗談にしか聞こえないぞ。」
「やってみなければ分からないでしょう?」
「やってみなくても分かるさ。」
この人は何回も私を苛つかせるな。
「やってもいないのに、決めつけるのは良くないですよ。
貴方に勝ってしまうかもしれないでしょう?」
「はははは!!それこそ本当に冗談だ!!
俺は騎士団長の息子だぞ!
この学園の中で一番の実力がある。」
一番ねぇ、脳筋枠だからか。
ならば。
「では、貴方に勝てば、私がこの学園で一番強くなりますね。」
ウルフィンの眉が釣り上がる。
「・・・面白くない冗談だな。」
「冗談は言わないと言いましたよ、私は。」
「本気か・・・?」
「はい。私と勝負してくれますか?」
「俺は女性と言えど、手加減はしないぞ。」
「勿論ですよ。負けた時に手加減をしたからだと言われても困りますからね。」
「ふっ!!言ってくれる。
いいだろう!そこまで言うのなら、勝負しようじゃないか。
俺が勝ったら、ミリアム嬢!俺と婚約してもらうとしよう。」
「いいでしょう、その代わり私が勝てば、私の事は諦めてくださいね。」
ウルフィンは絶対に自分が勝つという自信に満ち溢れている。
安い挑発に乗ってくれた。
これで自分の事を諦めてくれたら、少しは動きやすくなる。
「ミ、ミリアム・・・。」
不安げな顔で私を見るアリス。
私は不敵に笑う。
「大丈夫ですよ、アリス。私は負けませんから。」
そう言って、壁に掛けてある剣を取る。
何回か振ってみる。
よし、良い感じだ。
久しぶりの感覚にニンマリする。
「いつでもいいぜ。」
ウルフィンは構えもせずに言う。
いいだろう。
君には早々に脱落してもらう。
私は柄をぎゅっと握る。
そして、足に力を入れて、
ウルフィン目掛け踏み込んだ。
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