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ゾンビではない
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「腐なのね・・・!」
あの単語だけで分かってくれた、やはり彼女は中々に理解の早い人だ。
「はい、腐って爛れてまでいます。」
そうだ、私は所謂腐女子だった。
「あ、一応言っておきますが、既存の漫画やアニメのキャラクターのカップリングではなく、
オリジナルのガチのやつに萌える方です。
あ、あとリアルのやつも大好物です。」
「いや、そんな説明まで要らないから。」
「いえ、ここは重要な事です。」
これは譲れない。
ここはちゃんと言っておく。
「・・・旦那さんとか、知ってたの?」
「はい。」
「ええ!嫌がられたりしなかったの?」
「んー。特には。」
夫は私のその腐った思考も受け入れてくれたまさに仏の様な人間だった。
人はそれぞれ色々な趣味があるもの。
そういう考えの持ち主で、私のアニメやら漫画やらも一緒に付き合ってくれていた。
まぁ、私のせいで変な知識が付いてしまって、
彼が友達にアニメとかの話をして、は?って顔をされたと、
悲し気に話されて、何か、凄く申し訳ない気持ちで一杯になったものだ。
腐の方は理解はしてくれているが、私がそういう系の漫画を携帯端末で読んでいるのを、
後ろから見てしまったらしく、視線に気付いて私が振り返ると、
生暖かく、それでいて可哀想な人を見る目で私を見守っていた。
『中々・・・ドギツイの見てる・・・。』
『すみません・・・。』
何か謝った。
こうエロ本を見てるのを母親に見つかった男子高校生の気持ちって、
こんなんだったのかな、と遠い眼をする私。
「どうしたの?」
「ああ、いいえ。何でもないです。」
「私は・・・友達にそういう子居たけど、私は乙女ゲームとか、
少女漫画とかかなぁ。
あ、腐を否定するとかは無いから。
人は色々な趣味があるし。」
彼と同じ言葉を言うアリスに少し驚き、
胸が少し痛くなった。
「・・・本当に良い人ですね。」
少し目に涙が溜まるのが自分でも分かる。
ああ、彼の切れ端だけでこんなにも苦しい。
彼への思いがまだ褪せていないんだ。
何処に居る?何をしている?
私の事を覚えてくれている?
胸の辺りの服をぎゅうと掴む。
堪えろ。堪えろ。
「いや、私別に良い人でも無いし。
アンタを嵌めようとしてたのに、良い人の訳ないじゃん。」
「それは、ここに転生してしまったからであって、
そうしなければ自分が危ういから仕方ない事ですよ。」
「まぁ・・・。そうだけど、アンタがゲーム通りの悪役令嬢だったら、迷わずそうしてた。」
「人を思いやる気持ちのある人だと、アリスはそういう人だと思います。」
「あ、あのねぇ。そういう言葉を恥ずかし気も無くさらっと言うとか。」
また顔が赤くなるアリス。
んー、でも。
「本当にそう思ったし、私、思った事そのまま言ってしまうようでして。」
「もう、分かったから、もう勘弁して。」
うむ、可愛いなぁ。
「可愛いなぁ。」
あ、また声が出た。
「その顔で言われたら、変な気持ちになるからもう止めてって!」
ん?
「このゲームでのアンタは最強の悪役令嬢で、ビジュアルも凄く可愛いし、
性格は悪いけど、正々堂々とヒロインと競う姿で、ファンも多かったんだから。
・・・私も好きだったから・・。」
ほう、この悪役令嬢はそんなキャラクターなんですか。
まぁ、確かに凄く整ってる顔していますよね。
「まぁ、私も初めてこの顔見て驚きましたよ。」
ペタペタと自分の顔を触る。
「そんな悪役令嬢に自分では勝てそうにないから、嵌めようと考えたのに。
中身がアンタだったから、何か拍子抜けしたわ。」
「えへへ。」
頭をぽりぽり掻く。
嵌められなくて良かったぜ。
「氷の令嬢って言われてるのに、変な事するわ、変な事言うわ、変な顔するわ。」
変な顔?こんなか?
私は鼻の穴を膨らまして白目を剥いてみる。
「ちょ・・・・ふぐっ。ぐふふ。やめ、ははは。」
アリスが口元を押さえて、笑う。
よしきた。
そういう事だな。
白目を剥いたまま、鼻と口の間を伸ばしてゴリラの真似をする。
「はははははは!だ、だめだって。それは、はははははは!!」
アリスが堪らず蹲る。
「アンタ、お、女・・ていう自覚無いの?ふふ、ふふふ。」
「うーん、脳内は限りなくオッサンに近い女だと思います。」
「何よそれ、はー笑った。この世界に来てこんなに笑ったの初めてよ。」
スカートの土を払いながら立ち上がるアリス。
「まぁ、私達が一緒にいたら、ゲームの様なイベントも起きる事もなさそうだし。
私は、攻略対象に拘らずに好きな人を見つけようかなぁ。」
「良いんですか?あのナルシストは。」
「いや、だからそれ。そんな事言われて好きにならないでしょ。」
ですよねー。
「んー。その前に私も、ミリアムの旦那さん探すの手伝おうかな。会ってみたいし。
アンタがそんだけ好きな人。」
神か!何と言う女神!
「大好きです!アリス!!」
「だから!抱き着くなって!!」
断る!!
抱き着く!!
人気のない場所でもだもだと縺れ合う美少女二人を
獲物を見るような目で見つめる四人の男に、
私は気付かなかった。
あの単語だけで分かってくれた、やはり彼女は中々に理解の早い人だ。
「はい、腐って爛れてまでいます。」
そうだ、私は所謂腐女子だった。
「あ、一応言っておきますが、既存の漫画やアニメのキャラクターのカップリングではなく、
オリジナルのガチのやつに萌える方です。
あ、あとリアルのやつも大好物です。」
「いや、そんな説明まで要らないから。」
「いえ、ここは重要な事です。」
これは譲れない。
ここはちゃんと言っておく。
「・・・旦那さんとか、知ってたの?」
「はい。」
「ええ!嫌がられたりしなかったの?」
「んー。特には。」
夫は私のその腐った思考も受け入れてくれたまさに仏の様な人間だった。
人はそれぞれ色々な趣味があるもの。
そういう考えの持ち主で、私のアニメやら漫画やらも一緒に付き合ってくれていた。
まぁ、私のせいで変な知識が付いてしまって、
彼が友達にアニメとかの話をして、は?って顔をされたと、
悲し気に話されて、何か、凄く申し訳ない気持ちで一杯になったものだ。
腐の方は理解はしてくれているが、私がそういう系の漫画を携帯端末で読んでいるのを、
後ろから見てしまったらしく、視線に気付いて私が振り返ると、
生暖かく、それでいて可哀想な人を見る目で私を見守っていた。
『中々・・・ドギツイの見てる・・・。』
『すみません・・・。』
何か謝った。
こうエロ本を見てるのを母親に見つかった男子高校生の気持ちって、
こんなんだったのかな、と遠い眼をする私。
「どうしたの?」
「ああ、いいえ。何でもないです。」
「私は・・・友達にそういう子居たけど、私は乙女ゲームとか、
少女漫画とかかなぁ。
あ、腐を否定するとかは無いから。
人は色々な趣味があるし。」
彼と同じ言葉を言うアリスに少し驚き、
胸が少し痛くなった。
「・・・本当に良い人ですね。」
少し目に涙が溜まるのが自分でも分かる。
ああ、彼の切れ端だけでこんなにも苦しい。
彼への思いがまだ褪せていないんだ。
何処に居る?何をしている?
私の事を覚えてくれている?
胸の辺りの服をぎゅうと掴む。
堪えろ。堪えろ。
「いや、私別に良い人でも無いし。
アンタを嵌めようとしてたのに、良い人の訳ないじゃん。」
「それは、ここに転生してしまったからであって、
そうしなければ自分が危ういから仕方ない事ですよ。」
「まぁ・・・。そうだけど、アンタがゲーム通りの悪役令嬢だったら、迷わずそうしてた。」
「人を思いやる気持ちのある人だと、アリスはそういう人だと思います。」
「あ、あのねぇ。そういう言葉を恥ずかし気も無くさらっと言うとか。」
また顔が赤くなるアリス。
んー、でも。
「本当にそう思ったし、私、思った事そのまま言ってしまうようでして。」
「もう、分かったから、もう勘弁して。」
うむ、可愛いなぁ。
「可愛いなぁ。」
あ、また声が出た。
「その顔で言われたら、変な気持ちになるからもう止めてって!」
ん?
「このゲームでのアンタは最強の悪役令嬢で、ビジュアルも凄く可愛いし、
性格は悪いけど、正々堂々とヒロインと競う姿で、ファンも多かったんだから。
・・・私も好きだったから・・。」
ほう、この悪役令嬢はそんなキャラクターなんですか。
まぁ、確かに凄く整ってる顔していますよね。
「まぁ、私も初めてこの顔見て驚きましたよ。」
ペタペタと自分の顔を触る。
「そんな悪役令嬢に自分では勝てそうにないから、嵌めようと考えたのに。
中身がアンタだったから、何か拍子抜けしたわ。」
「えへへ。」
頭をぽりぽり掻く。
嵌められなくて良かったぜ。
「氷の令嬢って言われてるのに、変な事するわ、変な事言うわ、変な顔するわ。」
変な顔?こんなか?
私は鼻の穴を膨らまして白目を剥いてみる。
「ちょ・・・・ふぐっ。ぐふふ。やめ、ははは。」
アリスが口元を押さえて、笑う。
よしきた。
そういう事だな。
白目を剥いたまま、鼻と口の間を伸ばしてゴリラの真似をする。
「はははははは!だ、だめだって。それは、はははははは!!」
アリスが堪らず蹲る。
「アンタ、お、女・・ていう自覚無いの?ふふ、ふふふ。」
「うーん、脳内は限りなくオッサンに近い女だと思います。」
「何よそれ、はー笑った。この世界に来てこんなに笑ったの初めてよ。」
スカートの土を払いながら立ち上がるアリス。
「まぁ、私達が一緒にいたら、ゲームの様なイベントも起きる事もなさそうだし。
私は、攻略対象に拘らずに好きな人を見つけようかなぁ。」
「良いんですか?あのナルシストは。」
「いや、だからそれ。そんな事言われて好きにならないでしょ。」
ですよねー。
「んー。その前に私も、ミリアムの旦那さん探すの手伝おうかな。会ってみたいし。
アンタがそんだけ好きな人。」
神か!何と言う女神!
「大好きです!アリス!!」
「だから!抱き着くなって!!」
断る!!
抱き着く!!
人気のない場所でもだもだと縺れ合う美少女二人を
獲物を見るような目で見つめる四人の男に、
私は気付かなかった。
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