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第二章:独裁の予兆!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》の選抜
第46話:必要なのは力!?シュウからの恐ろしい提案
しおりを挟む中央政治局常務委員《フラワーセブン》の人事案が再考となった。
これは、前代未聞なのだろう。
会場のざわめきがそれを示している。
人事案の再考は、ハクモクレン閥だけでなく、派閥に属さない者たちも賛成に回った。
改革開放や経済発展に注力するあまり、貧富の格差解消や共生の理念といった、党の掲げる共生主義を、ブルーローズ閥は蔑ろにしていると思っている者たちもいる。
そのような保守派は、意外に多い。
フーが再考を承諾せざるを得なかったのは、そんな保守派から賛成を得られなかったからだ。
「新しい人事案は一ヶ月以内に中央政治局常務委員会《ティータイム》に提出します」
フーは悔しそうに、この会での結論を述べた。
これで、報告会はすべてのアジェンダが終わった。
この結論はシーにとっては好都合なのだろう。
新中央政治局常務委員《フラワーセブン》に選ばれる者は想定していたメンバーになる可能性がぐっと上がったのだから。
「再考というなら、もう一つ提案したい」
会議が終わるかと言うところで、この日始めて聞くような、強い声が、前方から上がった。
現中央政治局常務委員《フラワーナイン》序列九位。中央法政委員会書紀長《ガーデン・キーパー》のシュウからであった。
「この度、よく議論もされず中央政治局常務委員《フラワーメンバー》の数を九人から七人に変えました。それについて、一点異議がある」
立ち上がったシュウは大袈裟に、芝居かかるよう話始めた。
「まず、中央法政委員会を中央政治局常務委員会の下部組織に格下げすることについて、まるで、私の仕事ぶりが悪かったかのように思われ、心外だ。私は、在籍の間、常に華の国と党のため、身を惜しまず働いた」
シュウは自分がいかに働いたかの功績を挙げ始めた。
ここにいる多くの者、おそらくブルーローズ閥だけでなく、ハクモクレン閥の者も辟易したであろう。
中央法政委員会書紀長《ガーデン・キーパー》として好き勝手やりまっくたのは誰もが知っているからだ。
「…………、一つ言いたいのは、中央法政委員会書紀長《ガーデン・キーパー》は誰に務まるという訳では無い。力、思力が必要だ」
自分に酔っているかのように話すシュウ。
シュウの美しさは、ボアに引けを取らない。
今日もハルカの衝撃がなければ、党の一、二位を争うだろう。
もちろん、ファッションの好みもあるが。
ボアもそうだったが、シュウもド派手で、上品さはあまりない。
それでも、いかにもという外見は目を引くものがある。
長い手足に、バランスの取れたプロポーション。
男だけなく、女も欲情させるような魅力がある。
「誤解を恐れず言いましょう。この世には、法では縛る事の出来ない者たちがいます」
それは、その通りだ。
特にここにいるような面々は、思力によって黒を白に出来る者たちはがりだ。
それに、強大な思力を持つ者たちを物理的に抑える術もない。
そのような者たちを、拘束するのは、やはり思力でしかできないのだ。
「そのような者たちを拘束するための力、それが法政委員会書紀長《ガーデン・キーパー》に必要だ。そのポジションは、新中央政治局常務委員《フラワーセブン》では総書記、つまりシーの下に設けられるとのこと。それが私は不安なのだ」
シュウは、大きな声を挙げ、シーを指した。
指されたシーは、あい変わらず無表情で反応しない。
「シーが力を示しているのであれば、私も異論はなかった。しかし、シーは総書記として皆を纏め上げる能力はあるかもしれないが、思力の強さを示した事はこれまで一度もない」
相手を批判するときは、一度褒めてから、行う。
これは党でよく使われる構文だ。
シュウも本気で思っていない。
要は、シーの力が足りないと言いたいのだ。
「私が、この華の国で、私の跡を託せると思った程に強い思力を示した者は、ボア意外いなかった。」
ここに来て、シュウの演説を聞いていた者たちがざわめきだした。
処分が決まったボアの名前をシュウが、自分の後継者として出したからだ。
「中央法政委員会書紀長《ガーデン・キーパー》には、力が必要だ。力がなければ、華の国は、法に支配されない者たちで、めちゃくちゃにされてしまう。それに比べたら、少々の不正、しかも正式な捜査で得られた訳では無い証拠を根拠にした不正は目を瞑っても、力を持つ者に、任せるべきだ」
なんと、シュウは、今日も正式な処分が決まったボアの処遇を蒸し返したのだ。
これには堪らず、フーが、口を挟んだ。
「ボアの処遇は、決まりました!!今更覆す事はできません。それは、中央政治局常務委員《ティータイム》であなたも賛成したではありませんか!」
「ああ、裁判をすることには賛成しましたよ。そさて、当然、裁判で無罪となれば、党員資格の剥奪も撤回となるでしょう」
「なっ!なんて事を……」
「それが、貴女が、常日頃提唱してる法治なのではありませんか」
シュウは、ふてぶてしくフーに反論する。
そもそも、その裁判自体、党が判決を決める茶番なのではある。
ハクモクレン閥、中心に拍手が巻き起こる。
「中央法政委員会書紀長《ガーデン・キーパー》には力あるものを。私が言いたいのはそれだけです。そして、シーは残念ながらふさわしくない」
シュウは、これが結論と言わんばかりに言い切った。
ハクモクレンを中心にした拍手は鳴り止まず、コウもソンファも、それに同調している。
(あの時、簡単にボアの処分を認めたのはこういう事か)
シュウだけでなく、コウも、ソウファもボアを推していた。
この流れは、その三人が口裏を合わせて計画したのであろう。
(このままでは、あのボアが復活してしまう)
オウの自己犠牲によって、追い詰め、シーがリスクを負ってボアを拘束した。
その苦労がこんなところで水の泡になってしまうのだ。
「力がある者なら、他にもいます。オウキもですし、リーやマーリーもです。今更ボアの出る幕ではありません」
フーは今日一番怒っている。
「フー同志。この問題は現中央政治局常務委員《われわれ》の問題でなく、新中央政治局常務委員《かのじょら》の問題です。貴女が口を挟む話ではない」
シュウは、スジが通っているようないないような事を当然の如く言い切った。
フーは、信じられないと言わんばかりに黙ってしまった。
ブルーローズ閥はいよいよ爆発しそうであった。
先程の新中央政治局常務委員《フラワーセブン》の人選から、フーが、長らく苦心して失脚させたボア。そして、実権を掌握できずにいた原因である中央法政委員会書紀長《ガーデン・キーパー》のポジション。
すべて、ブルーローズを縛ったものだ。
このままだと、いよいよ、戦争になる。
ハクモクレン閥とブルーローズ閥の。
コウもシュウもその想定がなかったのだろうか。
「私が力を示せばいいことだろう」
いよいよ衝突の緊張が弾ける。
そんな瞬間に、相変わらず無表情な沈んだ声が響いた
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