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第二章:独裁の予兆!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》の選抜

第33話:一触即発の危機!? 挑み来るリー

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――リーとオウキ。
 
 この二人に少なからず因縁があることを俺はマロンから聞いていた。

 数年前、合星国の大手証券会社破綻による世界的な金融恐慌とそれを原因とする思獣災害。
 
 その時、リーは国務院常務副総理で、オウキは同じく国務院副総理であった。

 その金融大恐慌を乗り越えるための異次元の金融緩和。
 それを主導し、華の国を金融危機から救ったのが、オウキであった。
 
 その時リーはコウ率いるハクモクレン閥に邪魔をされ、具体的な対策が一切できなかった。
 
 各地で発生した思獣災害もオウキが暴れて止めたが、リーは思獣災害対策すら思うようにできなかった。
 
 そのため、その功績が世界的に認められたオウキに対して、リーは危機的な状況では何も出来ない無能と評されてしまった。

 その当時はまだ、フーの後継として、シーかリーかは、完全に決まっていなかったが、この件の評価が影響して、リーはシーの後塵を排した。

 シーは、この間、何もしていない。
 
 ライバルの減点によって、シーは総書記の椅子を手に入れたのだ。

 だから、リーがオウキに逆恨みしている可能性は大いにある。

 実際、オウキがリーの邪魔をしたのではなく、ハクモクレン閥が邪魔をして、その間オウキがその実力をいかんなく発揮したのだから、オウキが恨まれる筋合いはないのだが、そう理屈だけで、割り切れるものではないだろう。

 オウキの方は、実力のある者と思闘がしたいだけなのだから、リーはもってこいの相手だ。

 きっと挑発を重ね、何なら今直ぐ闘いたいと考えているだろう。

ブルーローズきみたちは、真面目で優秀過ぎるのだよ。それでは、コウ様には勝てないさ」

 リーの挑発に、オウキもニヤついた顔で挑発を返した。
 
 ぜひ、私に飛びかかってくれとでも言わんばかりの態度だ。

「負け惜しみを……。ブルーローズわれわれは、ハクモクレンやつらを上回る実力者が揃ってる。お前らは、邪魔さえしなければいい。ハクモクレンやつらに付くのなら排除するがな」

 厳しく顔つきではあるが、リーはオウキの挑発には乗らなかった。

 シーがリーに用があるという事だったが、リーがここに来たのも理由があるのだろう。

 それはシーとオウキが、ハクモクレン閥に付くのか確認すること。
 
 ハクモクレン閥に付かないのであればどうでもいいのだろう。

「リー、ブルーローズきみらには闘わせない。そんな事したら、党が崩壊し、国民がその代償を払うことになる」

 今度はシーが口を挟んだ。
 
 静かに、いつものように無感情に。
 
 ただ、シーの周りには闇が渦巻いている。
 
 シーの思力様式スタイルだ。
 
 思力装ドレスこそ出してないが、明らかな臨戦体勢。

 それに呼応するように、リーの周りに電光が走り出した。
 
 リーの思力様式スタイルだ。

 一触即発の空気が静かな海辺を緊張感で包んだ。

「やはり、ブルーローズわれわれの邪魔をするというのか! シー!」

 リーの纏う電光がより激しくなった。
 そして、その電光がリーを包んだ。

 リーの思力装ドレスだ。

 法を専門に学んだだけあって、今のリーはさながら裁きのイカヅチを落とす雷神のようだ。
 
 その美しさの前に、力を持たないものは、ただひれ伏して、裁きを待つのみだ。
 
 リーの思力装ドレス姿は、オウキに感じた力とはまた違った絶大な迫力があった。

 そのリーにオウキが反応している。
 
 歓喜の表情を浮かべて、自信の思力様式スタイルである風を纏いだした。

 やはり、オウキの迫力もリーに引けを取らない。

 三者三様の力で、この空間は、緊張感で破裂しそうであった。

「五年前、フー様の後継者として私とシーどちらが優れているか、南頂海ここで思闘するはずだった。コウ様に邪魔さえされなければ。闘えば私が勝っていた! 新中央政治局常務委員フラワーセブンを統べるのは私が相応しい!」

 激しく、神々しさえはるリーの咆哮が響いた。

 (そ、そんな。いきなり闘いが始まるのか)

 突如一人で現れたリーは、散々挑発をして、さらに自分から闘いを仕掛けようとしている。

 シーとオウキ、二人相手に。

 シーはともかくオウキの力は、知れ渡っている。

 一対一でも勝てるか分からない相手に一対二で挑もうとしているのだ。

 以前、シーは、中央政治局常務委員フラワーナインになるような者ならリスクは侵さないと言っていた。
 
 オウキもリーに蛮勇と声をかけていた。

 勝てるはずのない闘いをリーは仕掛けようとしている。
 
 感情で動くような人物ではない。

 何か狙いがあるのか。

 そうでなければ、説明がつかない。

  「ルー、やれ」

 戸惑っている俺に暗い静かな声がかけられた。

 シーの指示だ。

 つまり、リーの思力を消せということだ。

 まだ闘いが始まった訳では無いにも関わらず、そんな指示を出した理由は、分からないが、俺にな選択肢なんてない。

 リーの思力を消すのは簡単だ。
 
 避雷針でもたてて、その力を大地に放出すればいい。

 一瞬の思考実験を想像して、俺はそれを思力として放った。

 リーの思力様式スタイルは、俺が立てた避雷針に向かって流れ、スグその後には、思力装ドレスが剥がされ、思力的に丸裸になったリーが驚愕の顔して立っていた。

「こ、これは……」

「ダーハッハッハ。何回見ても面白いな。ルーに丸裸にされた者の顔を見るのは!」

 驚愕しているリーにオウキが、爆笑をぶつけた。

「どうだ、リー? 慣れない演技までして探ったシーの切り札カードは? 面白いだろ!」

 (え、演技? リー様が? え、え?)

 オウキは、リーが演技していたと言った。
 
 確かに、ここで闘いを仕掛けるリーには、違和感があった。
 
 つまり、闘おうとするのはブラフで、俺の事を探ろうとしていたのか。

「ほ、本当にその男がやったのか?」

 今だ、リーは驚きを隠せないでいた。

「ああ、そうだ! うちのルーは茶やコーヒーだけでないのだ! すごいだろ! あと、作る飯も上手いぞ」

 オウキはなぜか自分の手柄のように俺を自慢しだした。

「こんな事が、ある訳が……、いや、これでシーがボアに勝ったのも説明がつくのか……」

 リーはなんとか現実を受け入れようとしている。

「おい、ルー、よく見ておけよ。リーがこんな狼狽える姿、一生に一度だそ」

 オウキは相変わらず、笑ってリーを茶化している。

「リー、これが私の切り札カードだ。見せなくても良かったのだがな。敢えて見せた」

 今だ腹を抱えているオウキを尻目に、シーはいつものように無感情にリーに声をかけた。

「あ、ああ。そうか……」
 
 リーは今だ狼狽えているもののなんとかシーに返事をした。

「まあ、座ってくれ。私の切り札カードを見せた上で、リーにな頼みたい事があるのだ」

 そうシーはリーに声をかけた。
 
 闘いにならなかったとはいえ、シーは、今ねじ伏せる事もできたはずだ。
 
 それをせず、しかも頼みたいと頭をさけた。

 支配者層、それも限りなく上にいるものとして、そんな事を平然としてしまうのはシーだけであろう。

 先程、三者三様の思力様式スタイルが満ちたこの場で、今だシーの闇だけは残ってるように感じた。

 俺はなぜか、シーに恐ろしさを感じた。

 
 
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