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第二章:独裁の予兆!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》の選抜
第3話:ルーが改革!?フラワーナインをセブンにする理由
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(これは……、オウ様に亡命を進言した時と同じ!?)
周りの時が止まったかのようになり、シーから俺へ向かう闇を周りは誰も気付かない。
それは、俺がオウへ亡命を進言してしまった時と同じような感覚だった。
「はい。それでは私ごときが意見を述べるのも大変恐れ多いですが、お話しさせていただきます」
気付くと周りの状況は元に戻っていた。そして、俺は誰かに操られているかのように勝手に話し始めていた。
「皆様ご存知のように、党員、役人の不正は華の国隅々まで広がっております。我々一般庶民は賄賂や強制徴用で日々搾取されております。華の発展のためと耐えてきましたが、搾取する側ばかりが富むだけです。いつこの怒りが爆発してもおかしくはありません」
(なんで、スラスラとこんなことを……)
もちろん、俺が話している事に嘘はなかった。
俺も公安の末端として、そんな不正を何度も目にしてきた。そして、俺自身の力の無さで、その不正をただ見逃しているだけでもあった。
「不正を取り締まり、公平な社会にすることを我々は最も望んでおります」
フーも、オンも「まあ、そうだろうな」という表情だ。
シーは、フーの方を見ているのでどんな顔をしているのか、俺からは見えない。
「そうですね。それは我々に責任がありますね。今の中央政治局常務委員も不正には心を痛め、取締り強化に努めています」
俺の発言にフーは優しく応えてくれた。まるで小学生か、中学生に指導する先生のように。
「……ですから、次の中央政治局常務委員には不正と徹底的に闘うことを望みます。そのためには……、選出される人数を九人から七人、つまりフラワーナインをフラワーセブンにすべきです」
もう俺は自分の意思で話してるのか、そうでないのかすら区別がつかなくなっていた。
次期中央政治局常務委員が七人になる。これは、転生前の世界で実際に起こったことだ。そして、それが、強力な実権を握る事につながる。
部屋の緊張感が急激に高まった。
当然だ。ただの使用人が、国家の最高権力者にその権力の源である人事に意見をしたのだから。しかも、大きな改革を伴う意見だ。
(なぜ、俺はこんな発言を!。ま、まずいっ)
オンだけでなく、これまで比較的温和であったフーまでもが厳しい表情になった。にもかかわらず、俺の口は止まらない。
「一番問題なのには、党中央政法委員書記、つまり司法と公安のトップを序列九位の者が担う事です。捜査し、逮捕し裁く。この権限が一人に集中してしまってます。残念ながら今、党で後ろめたい事がない者などいないでしょう。仮になくても濡れ衣を着せればいい。そのいびつな権力の集中が、不正との闘いの足を引っ張っております。ですから、中央法政委員会書記長は、中央政治局常務委員から外すべきです」
――中央法政委員会書記長。
華の国全土に広がる公安組織と司法を束ねる、法を司る組織のトップだ。
華の国を不正や犯罪から守る番人だ。
しかし、それは前中央政治局常務委員序列一位のコウが、中央政治局常務委員引退後も党の実権を握り院政を敷くために用意したポジションでもある。
だから、その巷では誰のためのガーデンキーパーだと言われている。
今はコウの最側近であるシュウがその地位にあり、さらにコウは、次はあのボアをそのポジションにつかせるつもりであったことは、華の国の公然の秘密であった。
ボアは、犯罪組織撲滅の実績があり、もしも、オウの事件がなく、拘束されてなかったら、多くの華の国の国民はふさわしいとボアを絶賛していたであろう。
だからこそ、コウと敵対するフーもオンもボアの中央政治局常務委員入りは反対であったのだ。
「シー同志、貴様、その男を使って自分の大それた意見をフー様に陳情でもする気か!」
オンは席から立ち上がり激昂しながらシーに詰め寄ろうとした。
オンはシーが俺に言わせていると考えたのだろう。
俺はフーやオンから見てただの男の庶民、そんな政治の機微など知っているはずがないと考えるのは当然の事だ。
「いえいえ、オン様、今の発言は紛れもなくルーの意見です。権力争いに鈍感な私にはとてもそんな考えが及びませんでした。ただ、ルーが特別のなのではありません。民は民なりに華の国を考えているのです。なあルー」
シーはそう軽々とオンの怒りを受け流し俺に振り替えながら言った。その顔は、いつもの無表情でなく、心なしかいたずらっ子のような笑みを浮かべている。
「フー様、オン様のご苦労も顧みず、無礼にも大それた発言をしてしまい大変申し訳ありませんでした。シー様は誰にでも公正で、私のような者の意見も喜んで聞いて頂けます。そのため、つい調子に乗ってしまいました。ご無礼をお許し下さい」
俺はもはや、誰に媚を売っているのか、保身で自分のために言ってるのか、これもシーに言わされているのかすら自分では判断つかなくなっていた。
「……、フラワーナインをフラワーセブンにですか……。確かに中央法政委員会書記長の偏った権力構造は、我々の改革対象の一つでした」
「フー様?」
俺の意見を真剣に受け止めたフーに、オンは驚いたのか、フーの顔を見て唖然としている。そんなオンを気にせずフーは続けた。
「しかし、中央法政委員会書記長は、コウ様が作ったハクモクレン閥の特権構造。そうやすやすとその特権を手放すとは思えません。シー、貴女には何か妙案があるのですか?」
フーの射抜くのような眼差しがシーに向けられた。
次期総書記としての資格をオンはフーに問いているのだ。
その眼差しを真正面から受けながらシーは、少し考えるのよう間をおいた。
そして、突然俺にとって、いや、この部屋にいるシー以外の人間にとってとんでもない発言をした。
「そうですね……、おい、ルー何かいい案はないのか」
周りの時が止まったかのようになり、シーから俺へ向かう闇を周りは誰も気付かない。
それは、俺がオウへ亡命を進言してしまった時と同じような感覚だった。
「はい。それでは私ごときが意見を述べるのも大変恐れ多いですが、お話しさせていただきます」
気付くと周りの状況は元に戻っていた。そして、俺は誰かに操られているかのように勝手に話し始めていた。
「皆様ご存知のように、党員、役人の不正は華の国隅々まで広がっております。我々一般庶民は賄賂や強制徴用で日々搾取されております。華の発展のためと耐えてきましたが、搾取する側ばかりが富むだけです。いつこの怒りが爆発してもおかしくはありません」
(なんで、スラスラとこんなことを……)
もちろん、俺が話している事に嘘はなかった。
俺も公安の末端として、そんな不正を何度も目にしてきた。そして、俺自身の力の無さで、その不正をただ見逃しているだけでもあった。
「不正を取り締まり、公平な社会にすることを我々は最も望んでおります」
フーも、オンも「まあ、そうだろうな」という表情だ。
シーは、フーの方を見ているのでどんな顔をしているのか、俺からは見えない。
「そうですね。それは我々に責任がありますね。今の中央政治局常務委員も不正には心を痛め、取締り強化に努めています」
俺の発言にフーは優しく応えてくれた。まるで小学生か、中学生に指導する先生のように。
「……ですから、次の中央政治局常務委員には不正と徹底的に闘うことを望みます。そのためには……、選出される人数を九人から七人、つまりフラワーナインをフラワーセブンにすべきです」
もう俺は自分の意思で話してるのか、そうでないのかすら区別がつかなくなっていた。
次期中央政治局常務委員が七人になる。これは、転生前の世界で実際に起こったことだ。そして、それが、強力な実権を握る事につながる。
部屋の緊張感が急激に高まった。
当然だ。ただの使用人が、国家の最高権力者にその権力の源である人事に意見をしたのだから。しかも、大きな改革を伴う意見だ。
(なぜ、俺はこんな発言を!。ま、まずいっ)
オンだけでなく、これまで比較的温和であったフーまでもが厳しい表情になった。にもかかわらず、俺の口は止まらない。
「一番問題なのには、党中央政法委員書記、つまり司法と公安のトップを序列九位の者が担う事です。捜査し、逮捕し裁く。この権限が一人に集中してしまってます。残念ながら今、党で後ろめたい事がない者などいないでしょう。仮になくても濡れ衣を着せればいい。そのいびつな権力の集中が、不正との闘いの足を引っ張っております。ですから、中央法政委員会書記長は、中央政治局常務委員から外すべきです」
――中央法政委員会書記長。
華の国全土に広がる公安組織と司法を束ねる、法を司る組織のトップだ。
華の国を不正や犯罪から守る番人だ。
しかし、それは前中央政治局常務委員序列一位のコウが、中央政治局常務委員引退後も党の実権を握り院政を敷くために用意したポジションでもある。
だから、その巷では誰のためのガーデンキーパーだと言われている。
今はコウの最側近であるシュウがその地位にあり、さらにコウは、次はあのボアをそのポジションにつかせるつもりであったことは、華の国の公然の秘密であった。
ボアは、犯罪組織撲滅の実績があり、もしも、オウの事件がなく、拘束されてなかったら、多くの華の国の国民はふさわしいとボアを絶賛していたであろう。
だからこそ、コウと敵対するフーもオンもボアの中央政治局常務委員入りは反対であったのだ。
「シー同志、貴様、その男を使って自分の大それた意見をフー様に陳情でもする気か!」
オンは席から立ち上がり激昂しながらシーに詰め寄ろうとした。
オンはシーが俺に言わせていると考えたのだろう。
俺はフーやオンから見てただの男の庶民、そんな政治の機微など知っているはずがないと考えるのは当然の事だ。
「いえいえ、オン様、今の発言は紛れもなくルーの意見です。権力争いに鈍感な私にはとてもそんな考えが及びませんでした。ただ、ルーが特別のなのではありません。民は民なりに華の国を考えているのです。なあルー」
シーはそう軽々とオンの怒りを受け流し俺に振り替えながら言った。その顔は、いつもの無表情でなく、心なしかいたずらっ子のような笑みを浮かべている。
「フー様、オン様のご苦労も顧みず、無礼にも大それた発言をしてしまい大変申し訳ありませんでした。シー様は誰にでも公正で、私のような者の意見も喜んで聞いて頂けます。そのため、つい調子に乗ってしまいました。ご無礼をお許し下さい」
俺はもはや、誰に媚を売っているのか、保身で自分のために言ってるのか、これもシーに言わされているのかすら自分では判断つかなくなっていた。
「……、フラワーナインをフラワーセブンにですか……。確かに中央法政委員会書記長の偏った権力構造は、我々の改革対象の一つでした」
「フー様?」
俺の意見を真剣に受け止めたフーに、オンは驚いたのか、フーの顔を見て唖然としている。そんなオンを気にせずフーは続けた。
「しかし、中央法政委員会書記長は、コウ様が作ったハクモクレン閥の特権構造。そうやすやすとその特権を手放すとは思えません。シー、貴女には何か妙案があるのですか?」
フーの射抜くのような眼差しがシーに向けられた。
次期総書記としての資格をオンはフーに問いているのだ。
その眼差しを真正面から受けながらシーは、少し考えるのよう間をおいた。
そして、突然俺にとって、いや、この部屋にいるシー以外の人間にとってとんでもない発言をした。
「そうですね……、おい、ルー何かいい案はないのか」
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