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第二章:独裁の予兆!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》の選抜
第1話:華の国の頂点!? 総書記フーからの問い
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――南頂海会議の三ヶ月前。
「…………」
目の前にいる美女二人は、明らかに訝しげな目線を俺に向けている。
言葉に発しなくても何を言いたいのか痛いくらいわかる。
『何故、お前がここにいるのか?』と。
長テーブルの向こう側に座っている二人の美女、それは、中央政治局常務委員 序列一位 、現在、華の国の頂点に君臨するフー・カイセイ党総書記とその右腕である同じく中央政治局常務委員序列第三位、オン・ルーシュン首相である。
フーは、薄い水色の長いサラサラな髪で、トレードマークのメガネがその美しさをより際立たせている蒼く輝く大きな瞳持ち、まるで天女のような存在感である。
約十年、党のトップとして総書記と国家主席、その他重要なポジションのトップを務めている。
俺が物心付く頃から党のトップとなので、シーよりも断然見慣れている。
フーはテレビ中継されるような重要な会見の時も常に柔らかく真面目な表情をしていた。
そんなテレビに映っている印象しかないこの国の紛れもなく頂点にいるフーが、今は困ったような表情を俺に向けている。
(ああ、そんな顔で見ないで下さい。俺だってなんでこの場に連れて来られたのか分かってないのですから)
「シー同志、ボアの件は良くやってくれた。今日はその事で話し合いたいのだが、しかし、何故そんな者を……」
この場にいる四人のうち三人が同じ疑問を持っていたであろうが、その疑問を最初に口にしたのはフーの右腕であるオンであった。
オンはフーと同じようにトレードマークのメガネをしているが、長身でスレンダーなフーとは異なり、小柄で、美しいというよりもまるで天使のような可愛い気のある雰囲気だ。
特徴的な少しくせっ毛のある亜麻色のボブヘアは元々童顔のオンをさらに幼く見せている。
フーもオンも約十年、フラワーナインを務めている。年齢的には三十歳をこえているが、二人とも年齢など関係なく美しい。
「ルーという、訳あって私の周りの世話を手伝わせている私設の秘書のような者です。ただの民間人ですので、あまりお気になさらずに」
シーは涼しげにそう答えた。
「しかし、シー同志よ。このような場にいくらシー同志の秘書とは言え民間人を同席させるのはいかがなものかと」
シーの回答にオンは当然の反論をした。
オンの一言で、場は空気が一瞬で凍りつくような雰囲気になった。俺は、これまでオンもテレビなどで、可憐な表情しか見たことなかったので、その落差に背筋が凍りついた。
「フー様、オン様。ルーはただの民です。だからこそこの場に連れてきました。我々の党はあまりにもこういう密室で物事を決め過ぎました。これが党高級官僚の特権意識に拍車をかけ、不正の遠因になっているのではないでしょうか。私は、次期総書記として、民を先導する役割になりますが、民の目から我々はどう見えるのか。それを知らなくては、正しい指導も出来ません。だから、私は、ルーをそばに置いているのです」
シーは淡々と無感動にそう説明した。
話の内容から、熱意のこもった演説になってもおかしくないような内容であったが、シーの口調は白雪のように静かで冷たかった。
「それは、そうだが……」
オンはまた困ったようにそのきれいな亜麻色の髪を触った。
「それに、ルーは男です。どうにでも……」
困ったオンにシーはそう答えた。明確に言葉にしなかったが、どうせ男なんだから後からどうとでもなる。シーはそう仄めかしたのだ。
「……それもそうだな」
ハァとため息をつくようにオンはそう言葉にした。そして、その一言で俺がこの場にいることが不問になった。
「突然でしたので少し面食らってしまいましたが、シー、今日は来てくれてありがとう。ボアの一件以来、慌ただしくなかなか時間が取れませんでした。今日は貴女と今後の党運営についてお話ししたいと思います」
フーの美しい声が、この会合の本題の入る事を告げた。
「……はい。フー様、オン様。お二方こそ今一番忙しいのにも関わらず、お呼び立てしていただきありがとうございます」
シーはやはり抑揚なく挨拶の言葉をのべた。
あまりにも心がこもってないので、こちらが心配になるほど、形式的な挨拶だった。
「さて、シー、まずはボアへの対処よくやってくれました。ボアのような者がのさばるようでは、党に対する信頼は崩れてしまいます。ですが、貴女がボアと敵対するという選択を取ったことには驚かされました」
フーの声は、その天女のような見た目同様、柔らかく、心地よく、何よりこの世のものとは思えないほど美しく聞こえた。
フーの話す姿など、テレビで何度も見ているのに、実際直接声を聞くと、それだけで心が鷲掴みされてしまう。
「ボアの悪行は、その功績と同じように私にまで聞こえてきました。むしろ、中央政治局常務委員で意見が割れたことが残念です」
フーに対して、シーはやはり涼しい顔してそう応えた。
(なんで、そんな涼しげな顔で……)
俺は、シーの発言に驚愕していた。
シーの発言は中央政治局常務委員を暗に批判する内容だ。それは、すなわち、中央政治局常務委員を統べるフーに対する批判とも言える。
「シー同志。あの場にいなかった貴様がそれを言うか」
案の定、オンがシーの発言に釘を刺した。
童顔の顔を無理に険しくしているような表情で、そんな顔もオンは可愛い。
しかし、纏う雰囲気は、急に臨戦態勢になった。
「オン、よいです。二つの派閥をまとめられなかったのは、確かに私にも責はあります」
オンをフーは優しくなだめた。そして、同じようにシーに優しげな眼差しを向け、フーはこの会合の最も中核となる話題を告げた。
「シー、次は貴女の代です。どのような華を望みますか?」
「…………」
目の前にいる美女二人は、明らかに訝しげな目線を俺に向けている。
言葉に発しなくても何を言いたいのか痛いくらいわかる。
『何故、お前がここにいるのか?』と。
長テーブルの向こう側に座っている二人の美女、それは、中央政治局常務委員 序列一位 、現在、華の国の頂点に君臨するフー・カイセイ党総書記とその右腕である同じく中央政治局常務委員序列第三位、オン・ルーシュン首相である。
フーは、薄い水色の長いサラサラな髪で、トレードマークのメガネがその美しさをより際立たせている蒼く輝く大きな瞳持ち、まるで天女のような存在感である。
約十年、党のトップとして総書記と国家主席、その他重要なポジションのトップを務めている。
俺が物心付く頃から党のトップとなので、シーよりも断然見慣れている。
フーはテレビ中継されるような重要な会見の時も常に柔らかく真面目な表情をしていた。
そんなテレビに映っている印象しかないこの国の紛れもなく頂点にいるフーが、今は困ったような表情を俺に向けている。
(ああ、そんな顔で見ないで下さい。俺だってなんでこの場に連れて来られたのか分かってないのですから)
「シー同志、ボアの件は良くやってくれた。今日はその事で話し合いたいのだが、しかし、何故そんな者を……」
この場にいる四人のうち三人が同じ疑問を持っていたであろうが、その疑問を最初に口にしたのはフーの右腕であるオンであった。
オンはフーと同じようにトレードマークのメガネをしているが、長身でスレンダーなフーとは異なり、小柄で、美しいというよりもまるで天使のような可愛い気のある雰囲気だ。
特徴的な少しくせっ毛のある亜麻色のボブヘアは元々童顔のオンをさらに幼く見せている。
フーもオンも約十年、フラワーナインを務めている。年齢的には三十歳をこえているが、二人とも年齢など関係なく美しい。
「ルーという、訳あって私の周りの世話を手伝わせている私設の秘書のような者です。ただの民間人ですので、あまりお気になさらずに」
シーは涼しげにそう答えた。
「しかし、シー同志よ。このような場にいくらシー同志の秘書とは言え民間人を同席させるのはいかがなものかと」
シーの回答にオンは当然の反論をした。
オンの一言で、場は空気が一瞬で凍りつくような雰囲気になった。俺は、これまでオンもテレビなどで、可憐な表情しか見たことなかったので、その落差に背筋が凍りついた。
「フー様、オン様。ルーはただの民です。だからこそこの場に連れてきました。我々の党はあまりにもこういう密室で物事を決め過ぎました。これが党高級官僚の特権意識に拍車をかけ、不正の遠因になっているのではないでしょうか。私は、次期総書記として、民を先導する役割になりますが、民の目から我々はどう見えるのか。それを知らなくては、正しい指導も出来ません。だから、私は、ルーをそばに置いているのです」
シーは淡々と無感動にそう説明した。
話の内容から、熱意のこもった演説になってもおかしくないような内容であったが、シーの口調は白雪のように静かで冷たかった。
「それは、そうだが……」
オンはまた困ったようにそのきれいな亜麻色の髪を触った。
「それに、ルーは男です。どうにでも……」
困ったオンにシーはそう答えた。明確に言葉にしなかったが、どうせ男なんだから後からどうとでもなる。シーはそう仄めかしたのだ。
「……それもそうだな」
ハァとため息をつくようにオンはそう言葉にした。そして、その一言で俺がこの場にいることが不問になった。
「突然でしたので少し面食らってしまいましたが、シー、今日は来てくれてありがとう。ボアの一件以来、慌ただしくなかなか時間が取れませんでした。今日は貴女と今後の党運営についてお話ししたいと思います」
フーの美しい声が、この会合の本題の入る事を告げた。
「……はい。フー様、オン様。お二方こそ今一番忙しいのにも関わらず、お呼び立てしていただきありがとうございます」
シーはやはり抑揚なく挨拶の言葉をのべた。
あまりにも心がこもってないので、こちらが心配になるほど、形式的な挨拶だった。
「さて、シー、まずはボアへの対処よくやってくれました。ボアのような者がのさばるようでは、党に対する信頼は崩れてしまいます。ですが、貴女がボアと敵対するという選択を取ったことには驚かされました」
フーの声は、その天女のような見た目同様、柔らかく、心地よく、何よりこの世のものとは思えないほど美しく聞こえた。
フーの話す姿など、テレビで何度も見ているのに、実際直接声を聞くと、それだけで心が鷲掴みされてしまう。
「ボアの悪行は、その功績と同じように私にまで聞こえてきました。むしろ、中央政治局常務委員で意見が割れたことが残念です」
フーに対して、シーはやはり涼しい顔してそう応えた。
(なんで、そんな涼しげな顔で……)
俺は、シーの発言に驚愕していた。
シーの発言は中央政治局常務委員を暗に批判する内容だ。それは、すなわち、中央政治局常務委員を統べるフーに対する批判とも言える。
「シー同志。あの場にいなかった貴様がそれを言うか」
案の定、オンがシーの発言に釘を刺した。
童顔の顔を無理に険しくしているような表情で、そんな顔もオンは可愛い。
しかし、纏う雰囲気は、急に臨戦態勢になった。
「オン、よいです。二つの派閥をまとめられなかったのは、確かに私にも責はあります」
オンをフーは優しくなだめた。そして、同じようにシーに優しげな眼差しを向け、フーはこの会合の最も中核となる話題を告げた。
「シー、次は貴女の代です。どのような華を望みますか?」
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