彼女の独裁は止められない!? 〜超絶美女たちが支配する一党独裁国家に転生したら、絶対美少女の次期総書記様に気に入られた〜

歯牙内かつきち

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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗

第40話:派閥が絡む意思決定!?シーが握った最後の一票

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――全国代表大会開催の数週間前。
 
 「ボアの処遇は、私に一任された」
 
 合星国から帰国したシーは、テイと俺を集め、開口一番そう話した。
 
 「な!? そ、それは……、フー様、オン様もその意見に賛成されたのですか?」
 
 シーの説明にテイは驚いて、疑問をシーに投げかけた。
 
 党中央に身柄を渡されたオウは、ボアの不正やボアの妹であるターニャの殺人について、党中央に告発していた。
 
 証拠も十分ある。
 
 本来ならその告発だけでボアは党員資格剥奪のうえ、拘束されてもおかしくない。
 
 しかし、ボアは、支配者クラスの思力の持ち主だ。そんなボアを拘束出来る者など多くない。
 党中央の公安や、軍の精鋭を投入しても、拘束は難しいであろう。
 
 それが、処遇そのものをシーだけに一任されるとは、どういうことなのか。
 
 テイは、現中央政治局常務委員フラワーナイン、序列一位と三位のフーとオンの助力に期待していたのだ。
 
 その二人は、明らかにボアを嫌っていたのだから。
 
「ボアは、コウ様とシュウ様に取り入っている。だから、コウ様派の中央政治局常務委員フラワーナインが、ボアの処罰に反対したのだ」
 
 それは、華の国の政治の暗部であった。
 
 システム上、中央政治局常務委員会フラワーナインが華の国の政治を取り仕切っていることになっている。
 
 しかし、過去中央政治局常務委員フラワーナインだったものが、自分の息のかかった者を後継者にし、院政を敷く体制ができている。
 
 その体制を作ったのが前総書記であるコウだ。
 
 コウが作った派閥は、ツバキ市と同じ華の国の直轄市であるハクモクレン市とゆかりのある者が多く、ハクモクレン閥と呼ばれている。
 
 現在、中央政治局常務委員フラワーナインには五人、ハクモクレン閥の者がいる。
 その者達はコウの意向を実現しようと動く。

 そして、シーもその一人だとされている。
 
 一方、それに対抗するように現総書記フーも派閥を作っている。
 
 フーもオンも若くして党員に成ったエリートであるが、その若きエリート党員、おおむね十歳から十四歳が入れる組織がある。
 
 それが「華の国共生主義少女団」。
 
 通称ブルーローズ。ブルーローズ閥と呼ばれている。
 
 フラワーナインにはフーとオン含めて四人がブルーローズ閥だ。ブルーローズ閥には伝統的に親や先祖が党員であるものは属さない。
 
 そのため、シーもボアもブルーローズには属していない。
 
 ボアは、ハクモクレン市とは縁がないが、ハクモクレン閥に取り入ったのだ。
 
 ハクモクレン閥は、群を抜いて腐敗が凄まじい。金、権力、特権、取り入る方法はなんだってある。

 そして、中央政治局常務委員フラワーナインの意思決定は、多数決である。
 序列一位も九位も同じ一票だ。

 これは誰か一人に権力が集中するのを防ぐために考案された仕組みだ。
 
 そのため、今回、フーとオンがボアを処罰したくとも、ハクモクレン閥に邪魔をされたというわけだ。
 
 (しかし、シー様は、どちらに回ったのか)
 
 「今回、私が合星国に行っている間に中央政治局常務常務委員会が開かれた。そこで、ボアの処遇について多数決がなされ、賛成と反対が同数だった。だから、最後の一票を入れる私にボアの処遇が任されたのだ」
 
 シーは、無表情に淡々と説明した。
 
 「ハクモクレン閥は、私が反対に入れるのを期待しているが、私はこの件で、コウ様に義理立てする必要はない。むしろ、ボアの件はコウ様の影響力を削ぐ機会でもある」
 
 「それで、大丈夫なのでしょうか」
 
 「ああ、問題ない。コウ様も含め皆、腐敗が党を滅ぼすという危機感は共有しているからな。奴ら、自分たちは、権力をいいように使って私利私欲を満たしてるくせに。自分達を棚にあげて、腐敗とは断固戦うべきだと言っている。だから、私が賛成したからと言って、真っ向から反対はできない」
 
 「そうですか。そうするとボアは……」

 「ああ、私が拘束して、党員資格を剥奪する。すでに中央政治局常務委員フラワーナインフには伝えている。ハクモクレン閥もブルーローズ閥も次期総書記候補のお手並み拝見という姿勢だ」
 
 「……分かりました。必ずボアを倒しましょう」
 
 テイは隠そうとはしているが不安な表情だ。
 
 オウの亡命未遂によって、ボアの処遇不正を糾弾する材料は揃っていたのだ。

 あとは、ボアを拘束するだけ。それなら、ボアとは敵対するブルーローズ閥と共闘できると考えていたのだろう。
 
 「オウも言っていたな。『ルーは僥倖だ』と。まさしくだ。ルーがいなければ、私はブルーローズ閥に頭を下げて、助力を願わなくてはならなかった。そうすれば、次、総書記になっても私はただの傀儡に成り下がるしかないだろう。
 フー様は不正に心を痛めているが、派閥に縛られて任期中何もできなかった。だから、党に蔓延る不正を正すには、派閥を駆逐するしかない。
 今回の件、総書記になる私の権力を確固たるものにするために乗り越えなくてはいけない試練だ」
 
   テイの不安を払拭させるように、相変わらす無表情ではあるがシーは力強く話した。
 
 「シー様……。私はこの命に換えても全力でシー様のお力になります」
 
 テイはシーに陶酔しているかのようだ。

 なぜテイがシーにここまで陶酔しているのか分からないが、テイはシーの数少ない有能な側近だ。
 
 「テイ、ありがとう。だが、ここからは私だけで対処する。テイも中央に入るための大事な時期だ。この半年私のために動いてくれたが、そろそろ本職に戻らなくてはな」
 
 「シー様!そんな……。お気遣いもったいです。せめて、あと半月、この駄犬を使える犬程度には鍛えます。万が一にも失敗しないように」
 
 「ああ、そうだな。それは助かる。私はテイほど器用でないからな、本番前に壊してしまうかもしれない」
 
 シーは本気なのか冗談なのか分からない顔で笑いながらそう告げた。
 
 そして、二人の会話をただ聞くだけであった俺の方に二人同時に顔を向けた。
 
 二人ともドキッとするような笑顔だ。

 現実離れした美女の笑顔に感じた俺の感情は、もちろん恐怖でしかなかったのだが。
 
 
 
   
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