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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗
第30話:ルーが主役に!? 仕組まれたボアとの対面
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「オウです。ルーを連れてきました」
荘厳なドアをノックしてオウはそう中の主人に伝えた。
俺は今、オウとツバキ市市庁舎のボアの執務室の前にいた。ボアが俺を呼び出した理由、それは『労い』だ。
先の思獣災害の対応では、俺はただ装備車両を現場に持っていただけだ。
それだけなのに、党機関誌と国営テレビが俺のことを、男なのに危険を省みず現場に駆けつけ、武装警官を助けた隠れた英雄と報道した。
これは、ボアを思獣征伐の英雄にしたくない中央がしたある意味プロパガンダだ。
ボア以外の関係者にスポットを当てて、ボアを目立たなくさせようとしている。
ただ、ボアは学生時代メディア研究をしていた経歴を持つ。
古くさい中央よりもボアの派手なメディア戦略の方が一枚もニ枚も上手だ。
今日は、執務室で俺に労いをし、そこをメディアに取材させる気なのだ。
「入りたまえ」
中から返事が返ってきた。はっきりとしていて、凛とした自信に満ち溢れた声だ。
「失礼します」
部屋の中に入った瞬間、けたたましいほどのシャッター音とフラッシュ、そして、拍手が巻き起こり、俺は面食らってしまった。
部屋の中には、報道陣がびっしりと詰めていた。テレビ放送用のカメラも何台もあった。
「やー、やー、ルー君。よく来てくれたね」
そう言いながらボアは、なんとこちらに向かってきた。
支配者クラスが俺のような下っぱを部屋に向かい入れるのにわざわざこちらに歩み寄るなんてあり得ない。
だが、ボアはそんなことは意に介さず颯爽と歩いてこちらに向かっている。
(なんと絵になるんだ……)
スラッとした長身に、ボディラインが目立つようなパンツスタイルのスーツ姿。
ハイヒールが様になった長い脚に、存在感のある胸元はくっきり開いており白い肌を惜し気もなく見せている。
そして、黒いまっすぐな長髪に、自信に満ちた双眸。強さと自信に満ち溢れた、華の国の女性なら誰もが憧れるような姿だ。
(同じ美女でもシー様とは正反対だ)
シーの美しさは神秘的でありながら、こちらがなぜか不安になるような美しさだった。
一方、ボアは身長、スタイル、顔、服装すべてが完璧で、今すぐにでも、膝をついて忠誠を誓いたくなるような神々しさだ。
「いやー、こんなに報道陣が詰めかけて面食らったかな。でも、みんなルー君を記事にしたいと来てくれたのだよ」
そう言いながらボアは、俺に手を出し握手を求めた。それをどう取っていいかわからず、俺は慌てて両手でボアの手を取りながらお辞儀をしようとした。
ボアはすかさず俺の肩に手回し、俺をカメラの方に向けて顔を上げさせた。
「さ、笑って、笑って。みんな市の英雄の笑顔が見たいんだ」
その後、しばらく報道陣の撮影タイムが続いた。俺は上手く笑えていたか分からないが、ボアは何か軽い冗談を言っては報道陣を笑わせ和やかな雰囲気にしていた。
「さあ、皆さん、改めて、我々を救って繰れた英雄ルー君です」
撮影会が終わり、ボアはそう報道陣に語りかけた。
「ルー君、市を代表して言わせてもらうよ。ありがとう。君の勇気のお陰で市は救われた」
ボアは俺に向かってそう言ったあと、拍手をした。続いて部屋にいた全員が俺に向かって拍手を行った。
「あ、ありがたき光栄です。ただ、私は現場に装備を持っていっただけで、思獣を食い止めたのは武装警官のメンバーとボア様のお力です」
「ああ、ルー君。君はなんて素晴らしい青年なんだ。あんな偉大なことを成し遂げたのにもかかわらず、傲らず、謙遜するなんて。素晴らしい精神だ」
ボアの口調は演技かかっており、俺にではなく報道陣に向けていた。
「皆さん、ルー君は、このツバキ市で初めて男として武装警官になったのです。始めは思力の弱い男に何が出来るのかと批判もありました。しかし!!ルー君は健気に日々訓練に励んでました。そして、重大災害クラスの思獣という危機に直面して、勇気を持って自分の出来ることを示したのです。もちろん、派手で大きな成果ではありません。しかし、ルー君のやった行いこそ、我々華の国と党の精神を示しているのではないでしょうか!!。つまり、女も男も関係ない。思力が弱くても、自分に出来ることを勇気を持って行う。その小さい行いひとつひとつが国民全体に広がり、お互い助け合う力になり、華の国と我々は豊かに発展するのです。皆さん、もう一度、ルー君の高潔な精神と我々、党の精神に対して拍手をしましょう」
ボアの高らかな演説で、部屋中、割れんばかりの拍手に包まれた。
拍手が収まった頃、ボアはもう満足だと言わんばかり、この会のお開きの号令を出した。
「皆さん、申し訳ないが、私はこの英雄と個人的に話がしたいのでね。今日はこのくらいにしましょう」
報道陣は、各々片付けを始め、片付けが終った者から退散していった。
その間、ボアは多くの関係者と挨拶や談笑していた。
相手は明らかに報道陣でなく、どこか企業のお偉方という者ばかりであった。何人かは外国の者もいた。
ボアは、どの相手とも気さくに話し、時には冗談で、周りを笑わせていた。
さらに何回は、お辞儀のような仕草も見せ全く偉そうなそぶり見せなかった。
そして、何よりボアは美しかった。
ボアの一挙手一投足が周りの雰囲気を明るくし、ただの談笑だけでも、まるで高級な活け花が飾られるような華やかさに満ちていた。
俺は事前に聞いていたボアの恐ろしさを忘れてしまったかのように魅入られていた。
荘厳なドアをノックしてオウはそう中の主人に伝えた。
俺は今、オウとツバキ市市庁舎のボアの執務室の前にいた。ボアが俺を呼び出した理由、それは『労い』だ。
先の思獣災害の対応では、俺はただ装備車両を現場に持っていただけだ。
それだけなのに、党機関誌と国営テレビが俺のことを、男なのに危険を省みず現場に駆けつけ、武装警官を助けた隠れた英雄と報道した。
これは、ボアを思獣征伐の英雄にしたくない中央がしたある意味プロパガンダだ。
ボア以外の関係者にスポットを当てて、ボアを目立たなくさせようとしている。
ただ、ボアは学生時代メディア研究をしていた経歴を持つ。
古くさい中央よりもボアの派手なメディア戦略の方が一枚もニ枚も上手だ。
今日は、執務室で俺に労いをし、そこをメディアに取材させる気なのだ。
「入りたまえ」
中から返事が返ってきた。はっきりとしていて、凛とした自信に満ち溢れた声だ。
「失礼します」
部屋の中に入った瞬間、けたたましいほどのシャッター音とフラッシュ、そして、拍手が巻き起こり、俺は面食らってしまった。
部屋の中には、報道陣がびっしりと詰めていた。テレビ放送用のカメラも何台もあった。
「やー、やー、ルー君。よく来てくれたね」
そう言いながらボアは、なんとこちらに向かってきた。
支配者クラスが俺のような下っぱを部屋に向かい入れるのにわざわざこちらに歩み寄るなんてあり得ない。
だが、ボアはそんなことは意に介さず颯爽と歩いてこちらに向かっている。
(なんと絵になるんだ……)
スラッとした長身に、ボディラインが目立つようなパンツスタイルのスーツ姿。
ハイヒールが様になった長い脚に、存在感のある胸元はくっきり開いており白い肌を惜し気もなく見せている。
そして、黒いまっすぐな長髪に、自信に満ちた双眸。強さと自信に満ち溢れた、華の国の女性なら誰もが憧れるような姿だ。
(同じ美女でもシー様とは正反対だ)
シーの美しさは神秘的でありながら、こちらがなぜか不安になるような美しさだった。
一方、ボアは身長、スタイル、顔、服装すべてが完璧で、今すぐにでも、膝をついて忠誠を誓いたくなるような神々しさだ。
「いやー、こんなに報道陣が詰めかけて面食らったかな。でも、みんなルー君を記事にしたいと来てくれたのだよ」
そう言いながらボアは、俺に手を出し握手を求めた。それをどう取っていいかわからず、俺は慌てて両手でボアの手を取りながらお辞儀をしようとした。
ボアはすかさず俺の肩に手回し、俺をカメラの方に向けて顔を上げさせた。
「さ、笑って、笑って。みんな市の英雄の笑顔が見たいんだ」
その後、しばらく報道陣の撮影タイムが続いた。俺は上手く笑えていたか分からないが、ボアは何か軽い冗談を言っては報道陣を笑わせ和やかな雰囲気にしていた。
「さあ、皆さん、改めて、我々を救って繰れた英雄ルー君です」
撮影会が終わり、ボアはそう報道陣に語りかけた。
「ルー君、市を代表して言わせてもらうよ。ありがとう。君の勇気のお陰で市は救われた」
ボアは俺に向かってそう言ったあと、拍手をした。続いて部屋にいた全員が俺に向かって拍手を行った。
「あ、ありがたき光栄です。ただ、私は現場に装備を持っていっただけで、思獣を食い止めたのは武装警官のメンバーとボア様のお力です」
「ああ、ルー君。君はなんて素晴らしい青年なんだ。あんな偉大なことを成し遂げたのにもかかわらず、傲らず、謙遜するなんて。素晴らしい精神だ」
ボアの口調は演技かかっており、俺にではなく報道陣に向けていた。
「皆さん、ルー君は、このツバキ市で初めて男として武装警官になったのです。始めは思力の弱い男に何が出来るのかと批判もありました。しかし!!ルー君は健気に日々訓練に励んでました。そして、重大災害クラスの思獣という危機に直面して、勇気を持って自分の出来ることを示したのです。もちろん、派手で大きな成果ではありません。しかし、ルー君のやった行いこそ、我々華の国と党の精神を示しているのではないでしょうか!!。つまり、女も男も関係ない。思力が弱くても、自分に出来ることを勇気を持って行う。その小さい行いひとつひとつが国民全体に広がり、お互い助け合う力になり、華の国と我々は豊かに発展するのです。皆さん、もう一度、ルー君の高潔な精神と我々、党の精神に対して拍手をしましょう」
ボアの高らかな演説で、部屋中、割れんばかりの拍手に包まれた。
拍手が収まった頃、ボアはもう満足だと言わんばかり、この会のお開きの号令を出した。
「皆さん、申し訳ないが、私はこの英雄と個人的に話がしたいのでね。今日はこのくらいにしましょう」
報道陣は、各々片付けを始め、片付けが終った者から退散していった。
その間、ボアは多くの関係者と挨拶や談笑していた。
相手は明らかに報道陣でなく、どこか企業のお偉方という者ばかりであった。何人かは外国の者もいた。
ボアは、どの相手とも気さくに話し、時には冗談で、周りを笑わせていた。
さらに何回は、お辞儀のような仕草も見せ全く偉そうなそぶり見せなかった。
そして、何よりボアは美しかった。
ボアの一挙手一投足が周りの雰囲気を明るくし、ただの談笑だけでも、まるで高級な活け花が飾られるような華やかさに満ちていた。
俺は事前に聞いていたボアの恐ろしさを忘れてしまったかのように魅入られていた。
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